女の子だらけの職場で俺が働くのはまちがっている 作:通りすがりの魔術師
さて今回は夏!ということでプール!可愛いらしい女の子が水着を着てはしゃぎ回ってる姿なんて2次元だけだと思って興味ねぇや。それに水着が見たければこのシーズンにイズミ〇にでも行けば見れるし。マネキンマジでスタイルよすぎな、マネキンと結婚した男がいるって聞いたけど納得はしたわ。理解はしてないけど。
プールは従姉妹とは行ったことあるけど、ビーチバレーしたり鬼ごっこしたりくらいしか覚えてないな。あ、そうだ。僕の従姉妹めちゃくちゃ可愛いんですよ。1つ上と5歳くらい歳下のいるんですが、下の方が「お兄ちゃん」って呼んでくれるのでとてもいいです。しかも普通に可愛いのでよりいい。もう彼女なんていらねぇわ。ところで最後に遊んだ時にだけど、従姉妹の友達に俺がSECOMって言われたんだけどなんで?
それでは本編。時系列は八神さんがフランスを飛び立つ前の最後の休みでしょうか。休みの理由はそれっぽくでっち上げてます。
学校が社会の縮図と呼ばれるのには、社会が学校よりも悲惨であることを現している。学校では無理な人付き合いは体育でのペアを組んだり、修学旅行や遠足などでの班行動くらいなもので、部活や委員会、生徒会に入らなければそれくらいで済むのだが社会は違う。
まず、新入社員という立場にいれば先輩から仕事のいろはを教えてもらわねばならないし、年を追えば後輩にその逆をしなければならない。ここで拒否すれば居づらい状況を作ることになり、還暦まで仕事を続けられるか危ぶまれる。なので、どんなに先輩が嫌な人物でも耐えて耐えていかねばならないのだが、ここイーグルジャンプではその心配がない。上司は変わっているが事務的なことがなくても話しかけてくれる優しい人ばかりで、強制的な付き合いの強要もなく、女性ばかりの職場だが過ごしやすい環境である。それは俺が一年もこの職場に居ることが証明であり、これからも何事もなければいようという気持ちになっていることも起因している。
だから、たまには、こんな俺をキャラデザとかに使ってくれる上司や会社に感謝して、わがままにも付き合ってやろうと思ったのだが。
「なんでこんなことに...」
壁一面に配置されたロッカーを一望すると俺は上着を脱いで貴重品など共に8番のロッカーに放り込んだ。水着なんて高校卒業以来だなと普段から半パンとして使えるシンプルな蒼一色水着を見る。
近年よく見る猛暑に、雲一つない空、今日もフフ、フハハハハ!と降臨する太陽。地表が太陽を映せし鏡になったかのような暑さが日本を襲う中、今日も元気に仕事...ということはなく、イーグルジャンプの会社員全員に与えられた休みである。なんでも社長室と会議室のクーラーが不調に陥ったため、PECOの製作も落ち着いたということでこの機に社内のエアコンを全て点検する運びになった。そのおかげで社員には2日間の特別休暇が言い渡されたのだ。その報告を受けた俺たちは一喜一憂し残りの仕事を定時までに片付けようと手を動かす。
『全員休みなんでしょ?じゃ、プール行くぞー!』
どこから貰ってきたのか複数の優待券を掲げた八神さんは終業時間に見知った面々を集めてそう高らかに言い放った。それに苦色を浮かべた者はおらず、八神さんがフランスに行く前の思い出作りに丁度いいだろうと遠山さんやうみこさんが言うと全員が頷いた。俺も一日くらいならいいかと、首肯したが家に戻って水着があるか見てみれば、そもそも自前の水着を着たのが小学生の頃だと気付いた。そのため水着を買いに近くのショッピングモールへと足を運んで普段から短パンとして使える水着を購入したのだった。
そして、やってきた当日だが予定とか取り決めてる時は楽しいのに、いざ当日になるとテンションが下がるという状況に瀕しており、一種の賢者モードになっていた。
まず、来るまでにめちゃくちゃ汗かいたし、空いてるロッカーが少ないことを見て人が多いのは確信したし、トドメに俺以外のメンバーが女子なことも気分を低迷させている一因となっている。まぁ折角、優待券を使ったし八神さんの申し出だから来たのだ。たまにはサービスサービス!しなくては。日焼けしないようにと買った白いパーカーを羽織って、扉をパタンと閉めながら周りを気にしながら呟く。ゴーグルをポケットに突っ込んで、ロッカーキーを腕につけるとシャワーを浴びてから俺は炎天下の外へと駆り出した。
「あ、遅いよ八幡!」
ちょうどシャワーを出たところで待っていた涼風が不服そうに抗議の声をあげる。華奢な身体をした涼風はピンクと白のストライプの三角ビキニに裾のないズボンを履いているがそういうオシャレなのだろうか。
「お前が早いんだよ」
俺がそう言うとぷくーっと頬を膨らませる涼風を一瞥してから周りを見渡す。世間はまだ夏休みで、プールは芋洗いみたいにぎゅうぎゅう詰め。せっかくの休みなのにこんな人の多いところに来なくてもと頭を搔く。
「そんなことないよ。みんなもう待ってるよ」
「えぇ...最近の女子ってそんなに着替えるの早いの?」
「それはわかんないけど...みんな下に着てるから」
おかしいな、俺も履いてきたんだけどな。これが熱意の差なんだろうか。夏をエンジョイしようとする者と、もう既に帰りたい民族とではただ上着を脱ぐだけでも差がつくのだろう。やはり、俺には速さが足りないらしい。別に超速変形しなくてもプールの水は逃げないと思うんだがな。
「......あの、それでさ」
「あ?」
さっきと変わって躊躇いがちにかけられた声に思わず涼風の顔を見ると、もじもじと足裏を擦り合わせている。
「どした」
「いや、そのさ、ど、どうかなって」
歯切れ悪く言葉を発する涼風に何がと尋ねたくなるが、腕を後ろで組んでチラチラと俺に何かを求めるような視線を送ってくる。訳が分からず首を傾げていたら涼風は唐突に表情を顰める。
「もういい!行くよ!」
何がもういいのか分からないが、いいんならいいのだろう。もしかしたら水着の感想が欲しかったのだろうか。だとしたら、まぁ見た目は別として年相応だと思います!
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涼風の後に続きながら歩いて進んでいくとどんどん人が多くなっている気がする。気のせいかと思えば俺達が向かっている先に人々が興味を持つ者達がいるのだ。有象無象の人だかりの間を避けながら涼風が立ち止まった場所はモデルの撮影会かと見間違うほどの水着姿の美人美少女達がいた。
「みなさーん!連れてきました!」
涼風がその集団に溶け込むと俺の方へと視線が集まる。それは集団の外からも同じことでナンパを狙っていたのだろう輩は散り散りになり、単に騒いでいた女子もいそいそと離れていく。アレが連れかよみたいな顔もされたが、俺だって来たくて来たわけじゃないと心の中で弁明する。
「あ、やっときた」
「遅いわよ。比企谷くん」
真っ先に俺に気づいた八神さんと遠山さんは日焼け止めクリームを塗る手を止める。さらにその奥にいたはじめさんは体操しながら、ゆんさんは浮き輪を膨らませながら俺を見つめる。
「あ、八幡、遅かったねー」
身体を捻ったり曲げたりする度に黄色と茶色の蜂蜜大好きな熊さんみたいな水着のはじめさんの胸が揺れる揺れる。まさかその中にはたくさんの蜂蜜が...!?
「よしっ!じゃぁね!」
準備体操を終えてプールサイドを駆けて早速監視員に注意されているはじめさんに苦笑いすると、呆れてみていたゆんさんの方と目が合う。
「...なんやその目は、しゃーないやろ。泳げへんねんから」
無意識にはじめさんと比較して哀れむ目を向けてしまったのだが、ゆんさんがそういう解釈をしてくれて助かった。案外、ゆんさんは体重関係以外のことでは自分のスタイルというのを気にしないらしい。にしても、相変わらずゆんさんの水着はゴスロリじみてる。フリルのついたホルタービキニに腕にはハイビスカスのような赤いシュシュを手に巻いている。
「な、なんや...ジロジロ見て...」
「あ、いや、似合ってるなと思って」
見つめていたことを不審に思われて咄嗟にそんな言葉が飛び出す。言ってからしまったと思ったが妹には女性の水着は褒めとけば大丈夫というアドバイスをされたことを思い出す。褒めたんだし、大丈夫だろうとゆんさんの様子を窺う。
「...そ、そか…」
恥ずかしかったのか俺に背を向けて再び浮き輪に空気を入れ始める。妙に手馴れた感じに息を吹き込んでるのを見るに家族で行く度に妹や弟のためにもやっているのだろう。その姿を生暖かい目で見ていると今度は俺の背中に寒気が走る。ピリリリリン!と新人類かのような瞬発力で振り向くと涼風と八神さん、さらに遠山さんが腕を組んで仁王立ちして俺を睨みつけていた。
「...ねぇ、八幡はそういうのが好きなの?」
「え、何が」
「んー、もう少し幼い感じの方が良かったかしら…」
「りんはスタイルいいんだし紐のやつにしたら良かったんじゃない?」
「もうコウちゃん!」
何故かご立腹な様子の涼風と遠山さんと違い八神さんはニヤつきながら遠山さんを揶揄うと1歩前に出て胸に手を当てる。
「八幡!私の水着はどうかな!」
ドン!と背景に文字が浮かんでそうなくらい勇ましい聞き方。しかし、聞いてることはこちらとしてはとても困る。クリームソーダのような白と水色のビキニは八神さんの綺麗な白い肌をより主張している。だが、堂々とする八神には絶対的に足りないものがある。パッと見、涼風と同じくらいかと思えばスタイルがいいせいでその無さを発揮しているが、それが逆にいいと言える。
「いいんじゃないですか」
「なんか適当だなおい」
俺の感想が気に入らなかったのか肩を落とすとじゃあと遠山さんの両肩に手を置く。
「りんは?私よりも胸あるしスタイルいいよ?」
「ちょっ、ちょっとコウちゃん!!?」
好きな人に押し出されながら褒められて喜びの絶頂なのか、悲鳴のような声を上げると俯きながら俺の方を見る。フリルがトップスを覆い、バスト部分にボリュームアップを持たせる桃色のフレアビキニにより、遠山さんの働く女性らしいくびれと腰つきがより強調されている。遠山さんが水着を合わせたと言うよりは、水着が遠山さんに合わせたと言わんばかりにベストマッチしている。恥じらう乙女のような顔をする遠山さんに思わずギャップを感じて言い淀むがなんとか言葉を選び出す。
「なんというか、インスタとかにあげたら遠山さん目当てでいいねがめちゃくちゃつきそうですね。あ、今の八幡的にポイント高い!」
と、妹の真似を照れ隠しのために入れてみると遠山さんは面食らったように顔を固めると頬を緩める。
「ふふっ、なにそれ」
良かった。思いのほかウケたらしくホッと一息つく。そんな一悶着を終えるといつの間にやら浮き輪を膨らませ終わったのかゆんさんの姿はなく、八神さんと遠山さんも涼風に何か言い残してプールの中へと入っていく。そして、この場に残った涼風はというと、日陰のパラソルの中に入ると俺のパーカーの裾を二度引く。
「どうした」
「私は?私の水着は?」
「えぇ...」
「ちょっとなにその顔。八神さんや遠山さんにはちゃんと言ってたじゃん」
「それは先輩だし、ちゃんと要望には応えないと」
「あ、たしかにそれは分かるかも...」
だろ?と俺は胸をはる。いつだって先輩や上司、先生とかの目上の人からの命令は断れないのだ。同年代だし涼風が理解を示してくれたのは嬉しかったのだが、涼風は頷きかけてすぐにハッと開眼すると首を横に振る。
「それとこれとは別だよ!この水着、昨日ねねっちとももちゃんとツバメちゃんとで買いに行ったんだよ!」
「いや、聞いてないし。てか、その桜たちはどうしたんだよ」
キョロキョロと辺りを見渡すがここにその3人がいた形跡はない。ゆんさん達がいたならひふみ先輩の姿も見えるはずだったのだが。それにうみこさんの姿も見ない。ここに多人数で固まるのは蒸し暑いからと別の場所で集まってるのだろうか。
「私も知らないよ。多分、3人だけでウォータースライダーにでも行ったんじゃない?」
涼風が見るその先を見れば、天まで届きそうで届いていないビッグで巨大な長くロングでスパイラルコースの多い滑り台が聳えている。CMでも見たことはあったが実際に見ると本当にでかいんだな。庶民が熱中するわけだ。
「じゃ、お前も行ってきたらどうだ?」
「いいよ私は。それに荷物見てないといけないし」
苦笑しながら頬を掻くとブルーシートの上に腰を下ろす。俺が見てるから行ってこいよと言おうと思ったが、本人がいいって言ってるしいいか。
「それよりさ、どうなの?私の水着は?」
「かわいいかわいい」
「...!.........他には」
「ハラショーハラショー」
「......?.........他」
「ラヴィンラヴリィラヴリミン」
「......なにそれ」
「あぁもう世界一可愛いよ」
「............適当すぎ!!」
おかしいなウサミンパワーを使えば大体の子に自信を持たせられるはずなのだが。しばらく瞬きを繰り返した後、流石に腹を立てたのか涼風は立ち上がると足音を立ててどこかへ去っていく。次会う時に何言われるかわからんが俺に水着の感想を求めるのは間違っているのだ。それに俺に可愛いだの綺麗だの言われても嬉しくはないだろう。そういう褒め言葉は葉山みたいなイケメンが言ってこそ意味を持つもので俺が言っても変態のそれにしかならん。だが、求められたなら嘘でも褒めようじゃないか。...まぁ涼風も含めてあの人らは褒めれる部分しかないから困るのだが。
「あ...の...」
不意に声をかけられて下げていた頭を上げる。紅蓮のチューブトップでも押さえつけられない包容力を秘めた胸部にむき出しになったピンク色の肩。レッドブラウンの髪を黒のゴムで束ねてポニーテールにしたひふみ先輩は前髪を耳にかけながらこちらを覗き込む。
「ど...どうかな...?」
その時、俺は思い出した。籠の中の鳥だということを。井の中の蛙だったということを。スタイルのいいショッピングモールのマネキンとは比較にならないほどに、生を得ている女性が着る水着はこんなに素晴らしいのだと。
「......」
「えっと......変...かな...?」
いや、変じゃない...これは恋だ...。全然変じゃない。むしろ最高だと思いっきり何度も首を右往左往させるとひふみ先輩はほっとしたような顔を浮かべる。守りたいこの笑顔。
「......あ、あの、青葉ちゃんたちは......?」
涼風や八神さん達の荷物があるというのに俺しかいないことが気になったのか、ひふみ先輩は上目遣いで尋ねてきて俺はそれに自分を律しながら声を発する。
「...さぁ、桜たちでも探しに行ったんじゃないですかね」
「そっか...」
シュンと落ち込むように手を止めて辺りを見渡して、その涼風達の姿を探すためにひふみ先輩は立ち上がる。その時に万乳引力によって引き寄せられたそれにあるものが映り込む。ひふみ先輩の右乳の上の方に何かゴミが乗っているように見えた。しかし、取ろうにもひふみ先輩は立ち上がったため、俺は見上げる形になり、そうは出来ない。まぁ、水の中に入れば取れるだろうが。
「というか、ひふみ先輩は八神さんとかゆんさんとかと一緒じゃなかったんですね」
「あ、うん。......着替えるのに時間......かかっちゃって」
なるほど。やっぱりそうだよな。女の子って着替える時にそれくらい時間がかかるもんだよな。
「うみこさんとかは見てないですか?」
「......多分、来てると思う...よ?」
なんだか要領の得ない答えだ。女性同士だから一緒に更衣室へ入ったのだろうに。入場の際はいたのだから、どこかにいるのだろう。それにあの人は根っからのスポーツマンだし、一人で自由に泳ぎ回ってるのかもしれない。
「八幡は...荷物番...?」
無言で頷くと、ひふみ先輩は今度は意味もなくキョロキョロと挙動不審になるとその瞼を何度も開閉し、こちらに何か伝えようという意思を持った眼差しを向けてくる。
「えっと...その...みんなと着替えるの...遅れて......」
たどたどしいがちゃんと一つ一つ言葉を繋げていく。下に水着を来てこなかったひふみ先輩は下に着てきた組の涼風達とはぐれてしまった。
「だから......サン......オイル......塗ってなくて......」
サンオイル?日焼け止めのことだろうか。それを塗っていないというのは白い柔肌乙女のひふみ先輩にとっては大ピンチだろう。副業(コスプレ)のこともあるし。
そういえば、俺も塗ってないがこのままパラソルの下にでもいれば問題ないだろう。最悪水の中に引き込まれても肩を出さぬようにしていれば平気平気!おっと、話が逸れてしまった。続きを目線で促すとひふみ先輩は手に持っていた日焼け止めを俺に手渡して正座すると紅潮した顔で震えながら口を開く。
「......八幡が......良かったら......なんだけど.........塗って........くれないかな......?」
その瞬間、俺の思考がフリーズした。
これから全員分書こうと思うと長くなるのでキリのいいところで投稿。個人的にしつこく「これどう?」って求める青葉をあしらいつつも最後に照れながらぎこちなく「いいんじゃねぇの?」とか言われて喜ぶ青葉が見たかったりします。
八幡が少しばかし変態チックになってますが夏の過ち(A+)ということで。てか、ひふみ先輩みたいな人を前にして平常心保ってられる男はヤベーよ。好きな人にサンオイルは男の夢みたいなのを聞いたことあるけど、自分は恥ずかしいので遠慮したいです。流石にどうしてもと頼まれたら塗りますけど。
どれくらい続くか分かりませんが、あと2話お付き合いいただければなと。ちなみに全員の水着はTVアニメオフシャルガイド1、2を参考にしています。まだ今回は出ていないのがいますが、次には全員出ると思います。出来れば水着を買いに行くみたいな話もしたかったんですが、経験がないものでそれは割愛させてもらいました。
近況報告も兼ねて8月中に個人ルートについての話を活動報告にてさせてもらおうと思います。
それではまたいつか。8月が終わる頃に次は出せたらいいですね。