問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ? 作:ほにゃー
十六夜たちに共闘の話を持ちかけた翌日。
俺は二人の後ろを歩いていた。
早い話、共闘の話は断られた。
まぁ、アイツ等にとって俺は、見ず知らずの人間で、この“箱庭”に呼び出された人間じゃないって思われてるからそれも仕方がないか。
こんなことなら、過去から来ましたって正直に言えばよかったかもしれん。
ていうか、共闘の話を断ったの十六夜だけなんだよな。
飛鳥の方は警戒しているが、割と友好的に接してくれる
何故なんだ?
「で、お前はいつまで付いて来るんだ?」
十六夜がウザったそうに俺の方を振り返って聞いて来る。
「着いて行ってねぇよ。偶然、お前達と行く方向が一緒なだけだ」
そう言うと、十六夜は何か言いたそうだったが、すぐに前の方を向く。
このままだと話が続かなさそうだから、飛鳥の方に尋ねる。
「なぁ、飛鳥。今、何処に向かってるんだ?」
「黒ウサギと白夜叉、後情報屋さんの所よ」
情報屋ってネズさんのことか?
「あの三人は一緒に居るのか?」
「ええ、ちょっとした訳アリでね」
「飛鳥、こんな見ず知らずの奴に其処までは話す義理はねぇ。さっさと行こうぜ」
十六夜がそう言い、さっさと前を歩く。
そんな十六夜に飛鳥は呆れたように肩を竦め、その後を追った。
こうしてみると本当に夫婦なんだなって思う。
二人に連れられて(後を付いて行って)着いたのは、人がやたら多い河原の橋だった。
「こんな所にあの三人が?」
まぁ、人を隠すなら人の中って言うぐらいだし、この人だかりなら、密会してもバレないだろう。
「八鍬君、こっちよ」
飛鳥に連れてかれたのはなんと人だかりの前の方だった。
「なぁ、飛鳥一体黒ウサギたちは何処に?」
「あそこよ」
目を移すと、河原の岸に黒ウサギが腕を後ろに縛られた状態で断頭台に置かれていた。
ついでに死んだ目で。
「月の兎だってよ」
「初めて見る月の兎が罪人とはな」
野次馬たちの言葉が聞こえて来た。
「……………えっと………これは?」
「黒ウサギったら一ヶ月前ぐらいに審判の仕事で出掛けたら、実はそこが賭博会場だったのよ。それで、どっかのコミュニティが治安維持の為に、その会場に乗り込んでそこに居た黒ウサギは捕獲。黒ウサギは箱庭の法に倣って、公開処刑よ」
「…………何やってんだよ!あの駄ウサギ!」
思わず橋の手すりにしがみつき、前のめりになる。
アホな奴と思っていたが、そこまでアホだったか!
何捕まってるんだよ!
自慢の足はどうした!?
逃げろよ!
「そうだ!白夜叉は!黒ウサギはアイツのお気に入りだ!あの変態幼女の事だ!絶対に助けに来るは………ず………」
思わず、言葉が途切れた。
何故なら、次に現れたのは黒ウサギ動揺腕を後ろで縛られた白夜叉だった。
ちなみに目は死んでないが、何処を見てるのか分からない眼差しだ。
「白夜叉様だぞ」
「白夜叉様も犯罪者になっちまったか」
………どうしてこうなった?
「………これは?」
「白夜叉ったら、黒ウサギのスカートの中を盗撮しようと黒ウサギの後を付けていて、賭博の参加者だと思われて捕まって、公開処刑よ」
「あの駄神も同じ理由かよ!アホかよ!アホとアホが奇跡的にコラボしたぞ!」
俺が怒鳴っていると、白夜叉はこっちに気付いたらしく、処刑人に頼んで、髪と筆を貰っていた。
筆を口に加え何かを書き始めた。
「何を書いてるんだ?」
十六夜が目を細めて見る。
「まさか、何か情報を伝えようと!」
そして書き終わったらしく、白夜叉は口に紙を加え、書いたものを見せる。
『チラリズム最高。特に太腿いい』
「…………十六夜、飛鳥。俺、アイツ見捨てたいんだけと」
「同感ね」
「お前と同じ意見ってのは癪だが、全く持って同感だ」
白夜叉はそれだけやって満足したのか、黒ウサギの様に断頭台に置かれた。
「どうするんだよ、このままじゃ二人が処刑されちまうぞ」
「待て、まだ終わりじゃない!」
十六夜が叫び、再び処刑場に目を移す。
現れたのはネズさんだった。
「情報屋のネズミだ」
「アイツの情報ヤバいからな。処刑も仕方ないか」
うん、まぁ………なんていうかね……………
「アンタかよ!いや、薄っすら予想してたけど、もしかしてってこともあるじゃん!だけど、予想通りかよ!」
頭を抱え、その場に膝から崩れ落ちる。
「俺達が来たのも、あの三人の救出の為だ。本当ならサウザンドアイズのメンバーも来るはずだったか、今日までなんの連絡もない。だから俺達でやる」
十六夜が拳を鳴らし、何時でも飛び出せる準備をする。
「飛鳥、俺が飛び出したら広範囲に威光を頼む」
「分かったわ」
「南月。お前は好きにしろ。傍観するのもいいし、勝手に暴れるのもいい。だが、助けたりしねぇぞ」
「………上等だ」
そう言って立ち上がり、飛び出せる準備をする。
「あいつが、処刑をしようとした瞬間に飛び出すぞ」
俺達は無言で頷く。
処刑人が刀を抜き、ギロチンを支える縄を切ろうとする。
その瞬間―――――――――
刀が処刑人の手から零れ、処刑人が蹲る。
見ると、処刑人の腕から血が出ていた。
そして、処刑人の背後には刀を持った黒装束に白い半そでの羽織を着た男が居た。
「おいおい、人の嫁さんと母親を処刑しようとはいい度胸だな」
男は怒気と殺気を放ちながら、周りにゆらりと紅焔を出す。
「ちょっと痛い目見てもらうぞ」
現れたのは、黒鬼。
俺の兄だ。