つよきす 愛羅武勇伝   作:神無鴇人

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初仕事

レオSIDE

 

 え〜、どーもおはようございます、先日生徒会に参加した対馬レオです。

今日も乙女さんに起こされ、今は顔を洗って学園に行く準備をしている。

 

「今日は弁当いらないんだったな」

 

「うん、学食で食うから」

 

 こんな会話を終えて乙女さんは朝の時代劇のオープニングだけ見て一足先に学校へ行った。なんでも本人曰くコレを聞くと風紀委員として身が引き締まるらしい。

んで、朝飯だが……。

 

本日の朝食メニュー

肉じゃが(レオ作、昨日の晩飯の余り)

おにぎり(乙女さん作)

 

 またおにぎりか……いや、美味しいから良いんだけどね。ああ、なんか褒めてやりたい、肉じゃがという彩りを加えた自分自身を。

 

 

 

 そして授業。現在は祈り先生の担当、英語の時間だ。

 

「Zzz」

 

古今東西命知らずなバカというものは居るものであり、よりにもよって祈り先生の授業で居眠りをしているバカが居る。

そう、愛すべき馬鹿、カニだ。だが俺は優しいから起こさずそっとしておいた。

 

「ふぁ……よく寝た」

 

 あ、起きた。

 

「お目覚め?ではお仕置きの時間ですわ」

 

「げぇっ!!」

 

「約20分寝ていたので20P(ページ)分の宿題をご用意しますわ」

 

「えぇえ、20P!?ま、負けてください先生」

 

「ダメと言ったらダメですわ」

 

 あくまで上品な笑顔を崩さない祈先生。その笑顔が逆に怖い……。

 

「それをやってこない場合……島流しになります」

 

「や、やる、ボク喜んでやります!」

 

 これぞ祈先生の授業の実態である。

勝手な真似する奴には厳しい刑罰が下される。俺でさえ恐怖を隠せない……。

 

 

 

 そして放課後、生徒会にて……。

 

「で、それぞれの役職だけど、対馬君は副会長、カニっちとフカヒレ君は会計監査、伊達君はよっぴーの補佐、つまり書記ね、仕事についてはよっぴーか乙女センパイに聞いて」

 

「副会長ね、要するに乙女さんの後任って訳」

 

「ああ、これで私も風紀委員に専念できるからな、分からない事があれば遠慮なく聞いてくれ、私がしっかり教育してやる」

 

 なんだか知らんが乙女さんはやる気満々である。

ちなみにカニとフカヒレの会計監査の仕事は殆ど名ばかり、要するに二人とも事務職においては戦力外通告である。

スバルは適任だ、アレで結構気配り上手で几帳面だしな。

 

「それじゃあ、早速仕事に入ってもらうわ」

 

「何すりゃ良いの?」

 

「ファーストミッション・人材登用、折角4人入ったんだし、ココで一気に生徒会の頭数をそろえたいのよ、会計のポジションが1つ空いてるし、それにふさわしい人物をスカウトしてきて頂戴」

 

 成る程ね、会計か……しっかりしてそうな奴が良いな……俺達じゃ無理だ。全員ちゃらんぽらんだし。

 

「スカウトするとしたら、やっぱり優秀な人材?」

 

 しっかり者と言えば近衛を思い浮かべるが、アイツはダメだ。

アイツは超が付く程のアンチ姫だし、何よりカニがアイツの事を嫌って…………いや、憎んでるからな……。

 

「とりあえず美人で胸が大きそうなのがいいわ」

 

「はぁ……」

 

 佐藤さんが溜息を吐く、実は姫はおっぱい大好きなおっぱい星人なのだ。

 

「あと、1年生が好ましいわ」

 

 また条件が増えた……。

 

「それじゃ、士気向上のために霧夜スタンプ帳を授けます」

 

 PCゲームショップとかで配布してそうなカードが配られる

 

「何だこれ?」

 

「成果を挙げるたびにスタンプ1個押してあげる、全部溜めるとどんな願いでも一つかなうという凄い特典があるわよ、勿論私の出来る範囲でだけど」

 

「ど、どんな願いでも適う!?」

 

 そりゃ凄いな。

 

「ど、どんな願いでも……チキンカレーお腹いっぱいになるまで!」

 

 安っ!カニ、お前安すぎるぞ。

 

「新品のフライパンが欲しいな……」

 

 家庭的だ、それでこそスバル。

 

「姫とデートしてぇ!」

 

「デートか……ええ、『考慮』してあげるわ、今ならお得期間でよっぴー付き」

 

「ええ!?」

 

「メッサすげぇ、両手に花かよ!もうその日は帰れねぇよ!」

 

 おい、フカヒレよ……姫は『考慮』すると言ったんだぞ、政治家の使う常套手段だ……はっきり言って非常にきな臭い。

つーか揃いも揃って皆安上がりだなぁ、おい……俺の友達って物欲主義者ばっかり……。

 

「対馬君は何か望み無いの?」

 

「俺?俺はそうだな……サウスタウンに行きたい」

 

「それってあのアメリカにあるっていう?」

 

「うん」

 

「サウスタウンか……7歳の頃に翁に連れて行ってもらったことがある。あそこは良いぞ……凄まじい強さを誇る武道家達が沢山居る」

 

 乙女さんも認めるほどの強者揃いの街にして武道家達の社交場。武の道を歩む者なら一度は行ってみたい場所だ。たしか教官もその街の出身だった筈。

 

「もしくは、全員でモツ鍋でも囲んで宴会かな」

 

「あら、急に庶民的になったわね?本当読めない男……コレだから対馬君は飽きないわ」

 

 俺はアンタのお気に入りのおもちゃかよ?

 

「それじゃ頼んだわよ、タイムリミットは1週間」

 

「任しといてよ!」

 

 既に臨戦態勢なフカヒレ。威勢『だけ』は一人前だ。

 

「それじゃ行くか」

 

 

 

NO SIDE

 

 さて、生徒会に入会して初仕事を任されたレオ達だが……

 

「本来なら飼い犬にはならない俺たちだけど」

 

「霧夜スタンプは是非ともほしい、ってことで気合入れて探そうよ!」

 

「ココまで意見が一致するのも珍しいな、オイ」

 

「人を動かすのは物欲で釣るのが一番って事だ」

 

 実際その通りである。大概の人間は物欲でいとも簡単に動いてしまうものなのである。

 

「ま、俺だけ抜けるのは寝覚めが悪いからな、部活が味丸までは協力すっからよ」

 

「一年の可愛い子を連れて行けば良いんでしょ?どういう風に動こうか?」

 

「それだったら俺に任せてよ」

 

 真っ先にフカヒレが答える。やる気満々のようだ。しかし……。

 

(((不安だ……)))

 

 殆ど当てにされてなかった…………。

それでも他に意見を出すものがいなかったので渋々レオ達はひとまずフカヒレに従い校門の前に移動する。

 

 

「ココで女の子が来るのを待つわけだ、で、その娘がイケてるようなら俺が声をかける、そのままキャッチして生徒会室へってね、シンプルだけど有効な作戦だろ?」

 

 たしかに有効である。フカヒレでは不可能という点を除いてだが。

 

「ナンパ作戦なら、美形のスバルでしょ」

 

「いや、かには慣れてるだろうけどスバルだと始めてみた人は怖がる可能性が極めて高い」

 

 それは人によりけりなのだがフカヒレは決してその事を悟らせないように断言する。

 

「かといってレオは初対面相手にベラベラ喋れる性格じゃない、つまりは俺に任せとけって事」

 

 あくまで自分が行くという事は譲らないようだ。

 

「そこまでいうなら(勝手に)行け」

 

「任せな、カッコイイ所見せてやるよ」

 

 意気揚々と突貫するフカヒレ。果たして彼は勧誘という名のナンパに成功するのだろうか?いや、ほぼ確実に不可能である(笑)。

 

 

 

フカヒレSIDE

 

 スバルは女子に人気があるし、レオは細マッチョで引き締まった肉体(からだ)だから地味にもてる(本人に自覚は無い)からなぁ。

俺の女にするんだから先にあいつ等に惚れられちゃ厄介だぜ。

恋愛とは戦争だ、抜け駆け上等よ。

 

 

 

NO SIDE

 

 フカヒレが邪な考えに浸っていた時、一人の女子が校門の前に近づく。

 

「あっ、早速来たよ、アレなんてどうよ?」

 

「魅力度たったの5……ゴミだ」

 

 酷い言い様である。

 

「そこまで悪くないだろ?」

 

「姫が53万ぐらいあるから、せめて4万ぐらいはほしいんだよ」

 

「オメー自分がオゲチャのくせに好き放題言うなぁ」

 

 カニが珍しく至極真っ当な意見を出す。

 

「男なんてそんなもんさ」

 

 フカヒレがさわやかな笑顔で開き直る。全面否定できないのが少し悲しい所だが…………。

 

「次のはどうだ?」

 

「太ももがむちむちしていいな、でも唇が厚ぼったいからボツだ」

 

「さらにその次、今来たのは?」

 

「顎がしゃくれてる」

 

 もう言いたい放題である。高望みもココまで来ると見苦しいのを通り越してしまう。

 

「贅沢すぎ……」

 

「じゃあ、アレぐらいにしておくか」

 

 ようやくフカヒレは狙いを定める。なかなか可愛い二人組みの女の子達だ。

完全にフカヒレの趣味で選んでいるが。

 

「本当にやれるのか?」

 

「安心しろって、言葉の書く当選ならお手のもんだ、やったるで!!」

 

 はい、この時点で既に失敗フラグ。

 

「ねぇ君たち、ちょっといいかな?」

 

「はい?」

 

「生徒会に興味ない?」

 

「生徒会長には興味があります」

 

「そっか、あのさ、生徒会長がキミたちみたいな可愛い娘と一緒に仕事したがってるんだ」

 

「あ、あなたも生徒会の一員なんですか?」

 

「ああ、俺は鮫氷新一、シャークって呼んでね、鮫って言ってもキミたちを食べたりしないから安心してね」

 

 だんだん話がおかしな方向へと向かっていく。

 

「食べるっていやらしい意味と違うぜ?」

 

 完全に自爆である。

 

「なんであいつはああも自爆するかね?」

 

 カニの疑問に誰も答えることが出来ない、恐らくフカヒレ本人にも。

 

そうこうしているうちに、妙な展開になっているようだった。

 

「あ、あのぉ……」

 

「だからさ、ハァハァ……ちょっと来るだけでも……な、いいだろ」

 

「え、遠慮しておきますっ……」

 

「それともなんだぁ?先輩の頼みが聞けないってのか? 竜鳴館はワリと縦社会なんだぜ?」

 

 あっーと、フカヒレ遂に強攻策に出た。

 

「そ、その」

 

「いいじゃないか、なな?親には内緒だぜ?」

 

「「アホかテメェは!」」

 

 おーっと!?フカヒレのあまりに馬鹿な暴挙に業を煮やしてカニとスバルのツープラトン・ミドルキックがフカヒレに炸裂だぁーー!!

 

「ふぎゃあああ!!!」

 

「いっぺん死んどけ、お前は!!」

 

 さらに吹っ飛んだフカヒレをレオが待ち受け、レッグラリアートで華麗に止めを刺した!!

 

「あべしっ!!」

 

 強烈なキックにフカヒレはその場に崩れ落ちる。

その姿はまさにモンゴルマンに成す術無く倒されたミスターカーメンを髣髴とさせる無様さであった。

 

「あースマン、今起こったことは忘れてくれ、ビスケットあげるから」

 

「「い、いえ……///」」

 

 何故か一年女子二人はレオを見て顔を赤らめていた。

たまにではあるが対馬レオはこんな風に本人の知らない所でフラグを立てて行くのである。

そして数分後、うめき声とともに、フカヒレは立ち上がる。

生命力だけならゴキブリ並みである。

 

「おぉぁ……痛ぇ、邪魔すんなよな、あと少しだったのに」

 

「どこがじゃーい!」

 

「グベッ!!?」

 

 カニの逆水平チョップが、フカヒレを再びダウンさせた。

 

「お前ただの変態だったぞ」

 

「完全に怯えてたじゃん、一年生」 

 

「わかったわかった、興奮してたことは認めてやる、でもさ……なんか俺、女の子を見るとすぐに頭の中でそいつを裸にしてるんだよな」

 

 ココまで来るともう救い様が無いのを通り越して最早この男が何なのかさえ分からない。

 

「もういい……それ以上しゃべるな」

 

「次は真面目にいくさ、よし、単独で行動してるあの娘を狙うぜ」

 

 フカヒレ、再出撃。しかし……。

 

「HEY彼女、今一人?」

 

「何コイツ。キモ〜イ」

 

 はい、秒殺。フカヒレは肩を落としながら戻ってきた。

 

「つっかえねぇヤツだなぁ、このキモ野郎」

 

「お前、チビのクセに態度でかいんだよ!」

 

 カニのダメ出しが引き金となり、フカヒレはやり場の無い怒りをかににぶつける。

 

「んだよ、相手にされなかった腹いせにボクの悪口を言おうってんだ! サイテー!」

 

「落ち着けって……こんな挑発に乗ってたらフカヒレの同類に思われるぞ」

 

「うわ、それ最悪、絶対嫌だし」

 このままではまたくだらない乱闘になるのでレオはカニを止める。

当然フカヒレの名誉など無視した止め方だが誰も咎めはしない。そもそもフカヒレに名誉なんてものがあるのかさえ疑わしい。

 

「畜生!!こうなったら今度こそ女をゲットしてやる!!」

 

 ヤケクソ気味に再び特攻するフカヒレ。

 

下手な鉄砲数撃ちゃ当たるというが、弾丸そのものが発射の衝撃に耐えられず粉々に砕けてしまえば何の意味も無い。

フカヒレはまさにその典型と言えよう。そしてその事に当の本人は全く気付いてないので余計に性質が悪い。

 

「ねぇねぇキミたち、ちょっといいかな?」

 

「……」

 

 今度はガン無視である。

 

「あの……キミ話聞いてる?」

 

「……」

 

「てめぇ! それほど美人でもないくせに、お高くとまってるんじゃないぞ!」

 

 完全に無視を決められてフカヒレは遂に逆ギレする。本当に最低な男である。

最早これはナンパではなく単なる精神的な通り魔だ。

こんな奴を周囲の人間が放置しているはずも無く…………………。

 

「あいつです、あいつがなんかワタシを飢えたケダモノの目で見てるんです」

 

「ほう」

 

 先ほどフカヒレを秒殺した女生徒が日本刀を持った女、つまり乙女を連れてきた。

それを眺めながらレオ達は一応有人としてコレからフカヒレが歩むであろう地獄を思い浮かべ、心の中で静かに合掌……したかどうかは定かでは無い。

 

「おい鮫氷」

 

「うるせぇっ、俺は女でもグーで殴れるんだぞ!……って乙女さん!」

 

「制裁!」

 

 その言葉と共に見事な蹴りがフカヒレに炸裂した。

 

「ありがとうございますっ!」

 

 何故かお礼を言うフカヒレ。意外と体育会系なのかもしれない。

 

 

 

数分後

 

「――俺も仕事のためとはいえ、ちょっとはしゃぎ過ぎたって言うか……スイマセンでした」

 

「以後、気をつけるようにな。生徒会の問題にもなりかねんのだぞ」

 

「怒られちゃった、うふふ」

 

 なぜか嬉しそうに笑うフカヒレ。どうやらMの兆候があるようだ

 

 

 フカヒレのナンパ勝負、その結果は…………………負け!!

 


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