つよきす 愛羅武勇伝   作:神無鴇人

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従姉との日常 風紀委員のお仕事編

レオSIDE

 

 以前の俺の日常はどちらかといえば……大体6割方不規則といえるものだった。

乙女さんと同居するようになってから少し変わり多少ではあるが規則正しくなった……と思う。

 

「起きろ、朝だぞ」

 

「ん?……おk」

 

 いつものように乙女さんに起こされる。

 

「先に下に降りてるぞ」

 

 そう言って1階に降りていく乙女さん。たぶんさっさと朝飯を済ませて学校に行くんだろう。

 

(なんか、おにぎりにも慣れちまったね……もうそれが当たり前って感じで)

 

 人間の慣れってのは本当に凄いな……。

 

 

 とりあえず朝食のおにぎりを食べ終えた後はカニを起こして学校へ向かう。

いつものように校門の前には乙女さんが立っている。

 

「鉄先輩、おはようございます」

 

「ああ、おはよう」

 

 校門を通る生徒たちが口々に乙女さんに挨拶する。

 

「やっぱ人望あるよね、乙女さんって」

 

「ああ、威厳ってものがあるからな、乙女さんは」

 

 だからこその風紀委員なんだろうけど。

 

「おい、レオに蟹沢、シャツが出てるぞ」

 

 え?あ、本当だ(ゴソゴソ)。

 

「あはは、バカみてぇ」

 

 お前も出てるだろうが。

 

「そんな入れ方じゃまたすぐ出てしまうぞ、ほらこっちに来い」

 

 乙女さんにシャツを入れられた。なんか恥ずかしい……。

 

 

 

 時間をすっ飛ばして放課後、今日は風紀委員の見回りの手伝いをすることになった。

まずは校門、しかし…………。

 

柔道部員「…………」

 

空手部員「…………」

 

 本来なら武闘派の連中が乙女さんの前ではどいつもこいつも畏まる。

 

「ねぇ、この学校に乙女さんとタイマン張れる奴って俺以外にいるの?」

 

「ん?いるぞ、最もその人が相手では私もお前もまだまだ相手にならないだろうがな」

 

 え、マジで!?そんな猛者がまだいたとは。

 

「それ誰?」

 

「館長だ」

 

 ああ、なるほど……教師を考えに入れてなかった。

 

 

 続きまして3年生の廊下。

 

「てっちゃん、チィース」

 

「こんにちはてっちゃん」

 

 乙女さんの同級生たちが口々に声を掛けてくる。っていうか……。

 

「てっちゃん?鉄だからてっちゃん?」

 

「……ああ」

 

「…………プックックック」

 

「次笑ったらお前でリフティングするからな」

 

 ゲ、それは嫌だな……。

 

「いいじゃん、チャーミングなあだ名で」

 

「お前みたいな反応する奴がいるから嫌なんだ、佐藤の気持ちがよく解る」

 

 佐藤さんも本人の意思とは関係無しにあだ名で呼ばれてるからなぁ。

 

「見回り?ご苦労様てっちゃん」

 

「てっちゃん、跡で料理部顔出してーな、後輩がお菓子作ってるから」

 

「ああ、分かった」

 

 みんな乙女さんに話しかけてくるな。

 

「てっちゃん聞いてよ、うちのクラスの女子でさ、禁止されてるタイプのマニキュアべっとり塗ってくる奴がいるんだけど」

 

「そうか、それは私からよく言っておこう」

 

「ありがと、てっちゃん」

 

 てっちゃん……てっちゃん………………プクククククククク。

 

「あっはははははははっ、ダメだ、笑う所でしょココ、あはははははは!!」

 

「…………レオ、人間誰しも指摘されたくないものがある、私の場合それだ」

 

「あははは……え?」

 

「制裁!!」

 

「フゲッ!?」

 

 制裁蹴りを喰らってしまった。

 

「リフティングのコツはボールから目を離さない事だそうだ」

 

「な、何の!」

 

 紙一重で避ける、一発目は甘んじて喰らったが二発目はそうはいかない!

 

「ほぅ、避けたか、いい度胸だ」

 

「やられっぱなしは趣味じゃないんで」

 

 そのまま蹴りと蹴りの応酬になった。もちろん周囲が周囲なのでお互いに手加減してだが。

 

 

 

NO SIDE

 

「お、おい見ろよあの2年、鉄と互角に渡り合ってやがる!?」

 

「す、すげぇ!何者だアイツ!?」

 

 これが一般人(普通)の反応である(笑)。

 

 

 そして30秒後。

 

 

「今回は引き分けにしておこう」

 

「だね、続きはまた今度って事で」

 

 たった30秒の短い闘いの中にドラマが生まれた瞬間だった。

 

 

 

レオSIDE

 

 俺と乙女さんのキック合戦も終わり、それから先は小さな騒動(お菓子持込み、強引な部活勧誘etc)はあったものの無事に見回りを終えて竜宮に戻ろうとした、その時だった。

 

『キャーーーッ!!』

 

 部室の更衣室から女子生徒の黄色い悲鳴が聞こえてくた。ただ事ではないようだ。

おいおい事件かよ?この平和な日本で。

 

「何かあったのか?」

 

 たまたま近くにいた豆花さんに状況を尋ねる。

 

「盗撮しようとした男がいたみたいネ!!」

 

 そういや竜命館の女子達はガードが固い分レアで値段が高いとかフカヒレが言ってたような……。

 

(しかし、命知らずのアホもいたもんだ)

 

 よりにもよって乙女さん(+俺)がいるってのに。

取り敢えず捕まえるか、新技の丁度良いサンドバッグだ。

 

「盗撮者(ホシ)は……あそこか」

 

 急発進する自転車に乗って逃走を図る盗撮魔を発見!

 

「先に行くよ、乙女さん止め担当お願い」

 

「いいだろう、お前の手並み、見せてもらうぞ」

 

 すぐさま自転車を追いかける。全力で飛ばしているだろうが俺の脚に勝てるよ思うなよ!!

 

 

 

NO SIDE

 

「ワォ、撮影できなかったぜ、さすがにココはガードが固いぜ、まったく変な学校だ」

 

 愚痴りながら逃げる盗撮魔、しかし次の瞬間凄まじいスピードで追いかけて来たレオが彼の前に立ちふさがる。

 

「!?な、なんだコイツ!?」

 

「よぅ盗撮魔、黙って止まれば痛い目に遭わずに済むぞ」

 

 一応警告するレオ、しかし盗撮魔は諦める気は無いようだ。

 

「改造スタンガンを喰らえ、ワォ!!」

 

 スタンガンを構えて突っ込んでくる盗撮魔、しかしレオは簡単に避けてみせる。

 

「きゃわしたぁっ!?」

 

「抵抗するってか?なら俺も遠慮なくやれるってもんだ」

 

 ニヤリと笑ってレオは右手を凄まじい勢いで振り上げる。

 

「トルネードアッパー!!」

 

 レオの振り上げられた腕から竜巻の如き風が巻き起こり盗撮魔を自転車ごと吹き飛ばした。

 

「飛んでるぅ〜〜〜〜〜〜!!!!?」

 

 文字通り校門前に吹き飛ばされた盗撮魔。そしてその体、正確には頭を乙女が受け止めた。

 

「レオの奴中々の手並みだ、そしてよく戻ってきたな盗撮魔」

 

「ヒッ……ギャアアアアア!!!!!!」

 

 そのままアイアンクローで頭を締め付けられ、哀れな盗撮魔はそのまま気絶した。

 

「トルネードアッパーか……私の青嵐脚とどっちが上だ?」

 

 気を失った盗撮魔を放り投げながら乙女はそんな事を考えた。


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