つよきす 愛羅武勇伝   作:神無鴇人

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色々と大変な姉弟喧嘩

NO SIDE

 姉弟喧嘩なんてもんは大抵うやむやに終わるもんだけど、この姉弟(従姉弟だけど)の場合色々と大変だったりする……。

……だって二人はぷりきゅ……………じゃなくて超人的な強さだから。

 

 

レオSIDE

 今日の俺は機嫌が悪かった。そりゃもうすこぶる。

なぜなら朝からずっと嫌な事の連続だからだ。

まずカニの寝坊のせいで遅刻。

昼休みに食おうとした定食は近くで騒いでいた馬鹿なヤンキーが誤ってひっくり返してしまい(当然この馬鹿なヤンキーはぶちのめした)、結局その日の昼食は購買に余ってたおにぎりだけ。

育ち盛りの体におにぎり一個はきつく、その後の英語の授業に身が入らず祈先生から補習を貰う始末。

そしてようやく補習を終えてコンビニで空腹を満たし、家に帰った訳だが。

 

「レオ、丁度良いところに帰ってきた。」

 

 何やら不機嫌そうな顔の乙女さんが仁王立ちして待ち構えていた。

 

「何?」

 

「これは何だ?」

 

 乙女さんが取り出したもの……こ、これは!?俺が机の中に隠してたエロ本!!

 

「…………開けたの?机の中、しかも勝手に」

「その前に言う事があるだろ!大体お前はまだ17……」

 

 乙女さんが言い終わる前にエロ本を引ったくって取り返した。

 

「こんなもん年頃の健全な男子なら誰だって持ってるよ」

 

「そういう問題ではない!!」

 

 今度は逆に引ったくられた。

 

「とにかくこういう不健全な物は……」

 

 すぐに引ったくって取り返しけど。

 

「言い終わる前に取るな!!」

 

「ウルセェ!!人の部屋勝手に漁ったコソ泥女に言われる筋合いはねぇ!!」

 

 もう限界……こちとら朝から嫌な事ずくめで腹の虫が治まらないって時に勝手に部屋漁られて堪ったもんじゃねえんだよ!!

 

「貴様……言うに事欠いてコソ泥だと?……どうやら貴様には一度上下関係という物を体に刻み付ける必要があるようだな」

 

 おーおー、鋭く睨んじゃって……上等だコノヤロウ!!

 

「表出ろやねえちゃん」

 

「面白い……この前の借りを今返してやる」

 即座に庭に出て向かい合ったと同時に互いに頭突きを喰らわせ合う。

 

「オラァッ!!」

 

「墳ッ!!」

 

 『ズガァァアンッ』と凄い音が鳴り響くがそんなもん気にする必要無い!!

そのまま何度も何度も頭突きを繰り出し、頭突きの応酬となる。

 

 

NO SIDE

 頭突きの応酬はやがて殴り合いへと発展する。

 

「私はお前をあんな不健全な物を隠すような奴に育てた覚えはないぞ!!」

 

「育てて貰ってねーよ!!」

 

「弟(レオ)のくせに生意気なんだ貴様は!!」

 

「ウルセェ!!時代遅れのサムライ女が!!メインヒロインだからっていい気になりやがって!!」

 

 最早ただの子供の口喧嘩である。

 

「原作ではヘタレのくせに!!」

 

「あー!言った!!とうとうその台詞言った!!そっちだってアニメ版は近衛にメインヒロインの座取られたくせに!!」

 

 これ以上の発言は色々とヤバいので割愛させていただきます。

 

「《真空鉄砕拳!!》」

 

「《修羅旋風拳!!》」

 

 遂に必殺技同士でのラッシュ合戦となってしまった。

当然衝撃の余波で周囲に与える被害はかなり多い。

しかしその事に二人が気付くのはもう暫く後である。

 

 

スバルSIDE

 レオの家が騒がしいから今日はカニの部屋に来た訳だが、カニもフカヒレも窓の外で喧嘩してる二人を観戦している。

 

「どっちが勝つと思う?ボク乙女さんに千円!!」

 

「俺はレオに千円!!弟だって下克上できる!!」

 

 なにやってんだか……。

 

「スバル、お前も賭けろよ」

 

「ん?じゃあ引き分けに千円で」

 

 

NO SIDE

「ハァハァ…………」

 

「ゼェゼェ…………」

 

 1時間ほど殴り合って怒りも治まりはじめた頃、二人は漸く庭がボロボロになった事に気付く。

 

(俺……何やってんだろ、たかがエロ本一つの為に。つーか、流石にコソ泥はまずかったかも……)

 

(……わ、我を忘れていたとはいえやり過ぎてしまった……。たかだか本一つの為にこんな事になってしまうとは)

 

 やり過ぎという事実に気付き、乙女とレオは怒りが急速に覚めていく感覚を覚える。

 

「…………あー、その」

 

「やり過ぎ、たな…………」

 

 くだならい事で喧嘩していた事に気が付くと『自分達は何くだらない事で喧嘩してたんだろう?』と急に恥ずかしくなっていく物である。

 

「ゴメン、コソ泥は言い過ぎた」

 

「私の方もスマン……勝手に部屋を漁ったのは間違いだった。ただ、私も女だからな、ああいう本は私の見えない所で読め」

 

「うん、そうする」

 

 こうして、今回の姉弟喧嘩は引き分けに終わった。

この後、レオと乙女は庭の片付けと自省の為に二人並んで1時間ほど正座していたのはまた別の話である。

 

 さらに余談だが、翌日カニ達は二人の喧嘩を勝手に賭けの対象にしていたのがばれてお仕置きを受けた。


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