NO SIDE
今日は土曜日。普段なら学校は休みなのだが生徒会メンバーは5日後の体育武道祭の打ち合わせで学校へ登校しなければならない。
「めんどくせーなぁ、何でボク達まで登校しなきゃいけないんだよ?」
カニが自分の立場も忘れて愚痴る。
「愚痴んなよ、今日は打ち合わせだけだから楽なもんだろ」
レオの言う通り今日の生徒会活動はあくまで今後の打ち合わせのみであり、肉体労働担当のカニ、スバル、フカヒレの三人は必要ないといっても過言ではない。連絡事項さえ知ってくれればいいので形式上生徒会質に居るだけである。
レオ自身今日はそれほど時間をかけずに打ち合わせだけさっさと終わって何事もなくそのまま家に帰ると思っていた。
しかし、レオの予想は本人も想像していない形で裏切られることとなる。
この日、学園は少々慌ただしかった。
レオたちが学園に着いた時掲示板の前には体育会系の部活動生を中心に人だかりができていた。
「おい、どうしたんだこの人ごみは?」
思わぬ人ごみに驚きながらもレオは近くにいた一人の男に声をかける。
(プロローグを含めて)第4話以来久しぶりの登場となる村田洋平だ。
「ああ、館長からのお達しでな、今年の体育武道祭のボクシングトーナメントが中止になったらしい」
「嘘!?メインイベントなのに!?」
「ああ、だが驚くのはそこじゃない。確かにトーナメントは中止になったが、代わりに男女自由参加の異種格闘技の団体戦を行う事になった」
「マジで!?」
レオはすぐさま人ごみの中に入り掲示板を確認しに向かう。
『体育武道祭についての重要なお知らせ。
今年度のボクシングトーナメントは中止し、代案として異種格闘技戦を行う
・試合は各軍に分かれての5対5の団体戦、3本先取形式。
・参加希望者は男女、部活、学年など一切問わない。
・受付締切は火曜日。その翌日の水曜日に各陣営の代表5名を決める予選を行う。
己の力に自信を持つ参加希望者を待つ 竜鳴館館長、橘 平蔵』
「なるほどな、コイツは凄いことになりそうだ」
確認し終えてレオはそう遠くない未来に激戦を予感してニヤリと笑った。
レオSIDE
「……と、いう訳で月曜からそれぞれの担当で体育武道祭の準備って事で。何か質問ある人はよっぴーにでも聞いて、以上」
一時間もかからずに会議は終わり、俺達はさっさと帰る支度をする。
「レオ、話がある。ついて来い」
乙女さんが静かに、しかし有無を言わさず俺にそう言った。
(やっぱり来たか……)
こうなる事はさっきの張り紙を見て予想できていた。俺は無言のまま乙女さんについて行く。
「レオ、例の体育武道祭での団体戦の知らせは見たか?」
「見たよ、男女問わず……って所とかしっかりと」
俺の答えを聞いて乙女さんは満足そうな表情を浮かべる。
「それなら話が早い。私が何を言いたいか分かるな?」
「まぁね、でも折角だから口で言ったほうが格好良いと思うけど?」
「……レオ、私はお前と戦いたい」
乙女さんからのストレートな挑戦に俺は思わず気持ちが昂り、笑みを浮かべてしまう。
乙女さんとは先月の戦いの後も何度かスパーリングなどで闘い、勝ったり負けたりを繰り返している。
しかしその戦いはあくまで非公式、公式な勝負は先月の一戦だけだ。
正直な所、乙女さんと一緒に暮らしながらも、もう一度あの時のように戦いたいと思っていた。
「臨むところだ、俺も乙女さんと戦いたい」
「決まりだな」
お互いに笑い合い、ガッチリと握手を交わす。
「体育武道祭までの間、私は実家に戻らせてもらう。キッチリ修行を積みたいのでな」
「OK、俺も勝負の日まで修行に専念させてもらうよ」
その後、俺と乙女さんは団体戦にエントリーし、それぞれの修行場所へ向かった。
修行期間は今日を含めて5日間、それまでに徹底的に自分を鍛え上げて見せる!!