つよきす 愛羅武勇伝   作:神無鴇人

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決戦!ドラゴンファイターズ!! その1

レオSIDE

 

「これより、体育武道祭メインイベント、ドラゴンファイターズを開始する!!」

 

 体育武道祭2日目、遂に始まったドラゴンファイターズ!!

館長の宣言によって戦いの火蓋は切って落とされた。

 

「ではまず1回戦、東軍対北軍、両陣営選手前へ!!」

 

 乙女さんを筆頭とした東軍メンバーとその対戦相手である北軍のメンバーがリングに近付く。

 

「ルールは先鋒から大将戦までの5本勝負3本先取。たとえ決着がついても希望さえあれば敗戦した軍のでも最後まで戦うことを許可する」

 

 つまりどっちみち乙女さんと闘うことはできるって事か、ありがたい限りだ。

 

「それではこれより試合を開始する。東軍先鋒・山手、北軍先鋒・今井、リング中央へ……始めぃ!!」

 

 開始の合図と共にゴングが鳴り響き、ドラゴンファイターズの幕は上がった!!

 

 

 

NO SIDE

 

 結果を端折って言えば、東軍VS北軍は東軍の快勝に終わった。

北軍の敗因を挙げるとするならば乙女の存在と焦り過ぎにある。

鉄の風紀委員こと拳法部主将、鉄乙女の存在は北軍の士気を下げるには十分すぎるものがあり、戦う前から北軍の士気は下がっていたといっても過言ではないだろう。

もちろんチーム戦である以上北軍にも勝てる可能性はあった。しかし乙女を相手にすることを恐れる北軍は勝負を焦り、結果敗北。労せず東軍は2回戦へ駒を進める。

そして第2戦、レオ率いる西軍の試合が始まる。

 

 

 

レオSIDE

 

 さて、俺達の出番になり、俺達はリングへと向かう。

 

「見ろよ、姫が出てるぜ!!」

 

「伊達君が副将?大将だと思ってたのに……」

 

「お、おいあの2年、前に鉄と互角に蹴り合ってたやつじゃねぇか!?」

 

 観客からさまざまな声が聞こえてくる。と言っても殆どの話題がスバルと姫だけど。

 

「西軍先鋒・大野、南軍先鋒・島田、リング中央へ」

 

 さっそく先鋒戦が始まる。西軍(こっち)の先鋒は拳法部一年のハンサム大野(本名は知らん)、敵側は空手部の3年生だ。

結果は実戦経験の豊富さが上回り大野の負け、あ〜あ早速1勝落としちゃったよ。

つづく次鋒戦は西軍(こっち)の勝ち。まぁここら辺はモブ同士の戦いなので語る必要も無いだろう。

そして続く中堅戦と副将戦だが……

 

まず中堅戦。

 

「お嬢様キック♪」

 

「ぎゃうっ!?」

 

「勝者、霧夜エリカ!」

 

 姫、圧勝……負けた相手は何故か嬉しそうな顔で倒れてる。

 

そして副将戦。

 

「うおりゃぁぁぁ!」

 

「ふぎゃああぁっっ!!」

 

 スバル圧勝。これで3勝1敗で俺達の勝ちが決まった。

 

「まだ続けさせてください!このままやられっぱなしは御免です!!」

 

 南軍大将は諦めが悪かった。一矢は報いたいようだ。

 

「良かろう。では西軍大将・対馬、南軍大将・上原、前へ!」

 

「しゃーねぇな、行くか」

 

 俺は準備運動がてらリングに上がった。

 

 

 

NO SIDE

 

 リングに上がったレオに南軍の大将である上原はニヤリと笑う。

 

「久しぶりだな、対馬。俺のことは覚えているだろ」

 

 戦意を剥き出しにレオに話しかける上原。しかしレオは……

 

「誰?」

 

 シリアスそうなシーン台無しである。

 

「上原だよ!上原始(うえはらはじめ)!!中坊の頃同じ道場に通ってただろ!!」

 

「…………ああ、居たなそんなの」

 

「フッ、分かってるぜ対馬、そうやって俺をいらつかせる戦法だろ。だが俺にそんな手は通用しないぜ!」

 

(いや、本当に忘れてたんだけど)

 

 上原始……彼はレオと同門の道場で空手を学んだ男であり、レオを一方的にライバル視しているがレオに勝ったことは一度も無い男である。

 

「始め!!」

 

 戦闘開始のゴングが鳴り響く。先に動いたのは上原だ。

 

「喰らえ対馬ぁ!!」

 

 渾身の正拳突きがレオに向かう。しかし残念ながらレオと上原の実力差は中学時代と比べて遥かに開いているのだ。

故に上原はレオがカウンター気味に繰り出した鳩尾への一撃を避けることなど出来ない。

 

「うげぇぇっっ!!?!?」

 

 恐らくこの時上原は自分に何が起きたのかまったく理解できなかっただろう。

気がつけば胃液を吐いて倒れていた……と言った感覚で上原はマットに沈んだ。

 

「勝者、対馬レオ!!」

 

 会場が騒然とするなか平蔵の勝利宣言により試合は幕を閉じ、歓声が巻き起こった。

 

「結局準備運動にもならなかったな……」

 

 そして20分の休憩後、いよいよ竜鳴館史上最大の戦いへのカウントダウンが始まる。

 

 

 

レオSIDE

 

「皆さーん!いよいよドラゴンファイターズ決勝戦、東軍対西軍をはじめまーす!!優勝チームにはドカンと3千億ポイントが加算されますので、細かいことなど気にせず派手に戦(や)っちゃってくださーい!!なお、実況はこのボク、竜鳴館のマスコット、蟹沢きぬが……」

 

 カニの突っ込みどころ満載な実況によって遂に始まった決勝戦。というかアイツで実況大丈夫なのか?

 

「解説は鎌倉で空手教室の講師をしている柊空也さんを呼んでまーす」

 

 く、空也!?

 

「何か見物に来てたら頼まれたんだが……」

 

 ご、ご愁傷様としか言いようが無い。

 

「さーて、それでは早速先鋒戦、テコンドー部期待の新星、山手淳!」

 

「押忍!」

 

「対するは拳法部屈指の美形、一回戦での敗北の汚名を挽回出来るか、ハンサム大野!」

 

 汚名を挽回してどうする?

 

「必ず勝つ、竜鳴館一のイケメンはこの僕だ!!」

 

 いかん、勝つことに躍起になってカニの間違いに気付いてない、これヤバイぞ。

 

「さぁ、今こそ覚醒の時!リューメイファイト、レディー、ゴー!!」

 

 

 

NO SIDE

 

 先鋒戦、山手VS大野。

一気呵成に攻める先方を得意とする大野は開始直後、一気に派手に攻め立てる。しかし山手はその一撃一撃を確実に防ぎ、隙を見つけては強烈な蹴りを大野に浴びせる。

 

(こりゃ、負けたな……)

 

 開始数分でレオは大野に勝ち目が無いことを見抜く。

 

「まったく、格好に拘り過ぎるなといつも言っているというのにあの馬鹿は……」

 

 背後から聞こえてきた聞き覚えのある声にレオは振り向く、そこにいたのは……。

 

「半田?半田じゃねぇか?」

 

 プロローグ以来全く登場していなかったこの小説第一のオリキャラ、半田紗武巣である。

 

「おお対馬、久しぶりだな」

 

「ああ、何でここに?」

 

「いや、大野(アイツ)は私の従弟でね、アイツが今回の団体戦とやらに出ると聞いて、見に来たわけだが……」

 

 そこまで言って一度会話が止まる。山手の蹴りが大野の下顎に入ったのだ。

 

「こりゃ決まったな」

 

「ああ、あの馬鹿者め、次の訓練は倍だな」

 

「勝者、山手淳!!」

 

 東軍、1勝。

 

 

 

レオSIDE

 

「勝者は東軍の山手淳!堅実な守りと攻めに軍配が上がったぁーー!!」

 

 出鼻挫かれたなぁ、こっからどうなる事か……。

 

「つづきまして次鋒戦、空手部のエース、志村仁一!!対するはボクシング部の暴れ牛、海鶴正人!!」

 

 うん、まぁこれもモブ同士の戦いだな。

 

「お〜〜い、レオ〜〜」

 

 そんなことを思っていたらまた誰かから声をかけられた。

 

「錬、お前も来てたのか」

 

「ああ、森羅様や他の皆も一緒にな」

 

 空也が来ていたからもしかしたらと思っていたが案の定だ。

 

「どうするんだ?俺が見た限りじゃお前のチームの次鋒、あの志村とかいうやつより弱いぞ」

 

 やっぱり錬もそう見るか。

 

「多分負けるだろうな、パワーだけなら海鶴も負けちゃいないけどアレは完全に力押しだけで戦うタイプだ」

 

 それに比べると対戦相手の志村は全体的にバランスが良く冷静に相手の弱点を探りながら戦うタイプ、はっきり言って相性悪すぎ。

 

「そこまで!勝者、志村仁一!!」

 

「決まったぁーー!!9分25秒テクニカルノックアウト、これで東軍早くも2勝だ!!」

 

 そしてやはりこの結果。俺達の予想通りこっちの2敗目。

 

「おいおい、大丈夫かよお前のチーム?」

 

「残り3戦全部勝てばいい」

 

 俺が笑ってそう言うと錬も笑った。

 

「お前らしいな。じゃ、頑張れよ」

 

 

 

NO SIDE

 

「さぁ、次は中堅戦、もう後が無い西軍はここで巻き返したいところ、果たして西軍は勝つことができるのか」

 

「さ〜て、私の出番ね」

 

 立ち上がり、リングへと歩いていくエリカ。その表情には一片の緊張も無い。

 

「西軍中堅、竜鳴館が誇る頭脳明晰容姿端麗文武両道のカリスマ生徒会長、霧夜エリカ!!」

 

 紹介と共に意気揚々とリングに上がるエリカ。観客からの黄色い声援が巻き起こり、エリカはそれに手を振ってアピールする。

 

「対する東軍の中堅は拳法部3年の特攻隊長の異名を持ち、アンチ霧夜エリカの筆頭女戦士、日上順子!!」

 

 対戦相手である女が無言のままリングに上がり、敵意むき出しでエリカを睨み付ける。

彼女の名は日上順子、拳法部内の女子の中では乙女に告ぐ実力者であり拳法部副部長の女だ。スレンダーな体つきと釣り目だが整った顔つきで男女問わず人気は結構高い。ただし彼女のコンプレックスである貧乳を指摘すると一気にキレて凶暴化するので恐れられてもいる。

そして彼女も他のアンチ霧夜エリカの例に漏れずエリカを強く敵視する人間の一人だ。

 

「さぁ、今こそ覚醒の時!リューメイファイト、レディー、ゴー!!」

 

 開始のゴングが鳴り、順子は身構える。

 

「あんたは前から気に入らなかったんだ、今日ココで叩き潰させてもらうよ!!」

 

 宣戦布告と共にエリカに襲い掛かる順子。激しい攻撃が連続してエリカを襲う。

 

「へぇ、アナタやるじゃない。これで胸が大きければ完璧」

 

「ッ……殺す!!」

 

 コンプレックスを指摘され、順子の攻撃が鋭さと勢いをを増す。

 

 

「日上選手すさまじい連続攻撃だ!」

「あれは軍隊式格闘技(サバット)がベースだな、確実に相手にダメージを与えることを主眼においている」

 

 

(予想以上ね、激しい攻撃の割に隙も少ない。この娘やるじゃない)

 

 順子の攻撃を防御、もしくは回避しながら冷静に分析するエリカ。しかしその表情はどこか楽しそうだ。

 

「それじゃ、そろそろ反撃いきますか」

 

 軽くステップを踏むように構えを変え、エリカは臨戦態勢に入る。

 

「何をごちゃごちゃ言ってる!!」

 

 順子から正拳突きが繰り出される。

 

「シッ!」

 

 しかしエリカは体勢を低くして正拳突きを回避すると同時に順子の体に蹴りを叩き込む。

 

「グッ……!」

 

「アナタちょっと無骨すぎるわ、女の子ならもう少しエレガントに闘いなさい」

 

「う、うるさい!!」

 

 蹴りによるダメージも忘れて再びエリカに襲い掛かる順子。しかしエリカの余裕は崩れない。

 

「わぉ、結構速いじゃないアナタ。でも残念、私のほうが速いのよね」

 

 そう呟くと同時にエリカは順子の攻撃より早く蹴りを繰り出す。

 

「クッ…速い!?」

 

 

「おぉーっと、霧夜選手ここから一気に反撃か!?」

「あれは……カポエラか?しかもなかなか技のキレだ」

 

 

「ちょっとだけ見せてあげるわ、私の本気」

 

 不適に笑みを浮かべエリカは息もつかせぬ連続攻撃を繰り出す。

 

「グァッ!?く、クソォッ!!」

 

 反撃の間も与えないエリカの連続攻撃に順子は先ほどまでの勢いを失い、瞬く間に体力を奪われる。

 

「サービスよ、私の必殺技見せてあげる……《ローリングファング!!》」

 

 逆立ちしながらの回転キックが順子の顔面に直撃する。

必殺の一撃を受けた順子は成す術なくダウンしてしまう。

 

「そこまで、カウントを取る」

 

 順子のダウンと同時に平蔵がリングに上がり、カウントを数える。

順子も立ち上がろうとしたものの、無情にもカウントは10を迎える。

 

「これまで!勝者、霧夜エリカ!!」

 

「ま、当然よね」

 

 西軍、1勝!!

 

 

 

スバルSIDE

 

 お姫さんが勝ってさっきまでの敗戦ムードが少し改善され、いよいよ俺の出番となった。

 

「スバル、負けんなよ!」

 

「おう、勝って来るぜ!!」

 

 セコンドのフカヒレからの声援に応え、リング上の洋平ちゃんと睨み合う。

 

「副将戦!東軍は2−Aの理性を持った狼、村田洋平!対する西軍は陸上部のエースにして情に厚いアウトロー、伊達スバルだ!!」

 

「伊達、貴様とようやく決着を付けるときが来たようだな」

 

「いつの間に俺はお前のライバルになったんだよ?」

 

 ったく、コイツは勝手にライバル意識を持つから困る。

 

「リューメイファイト、レディー、ゴー!!」

 

「去年のトーナメントでの借りを返してやる!!」

 

 即効で仕掛けてきた洋平ちゃん、勇ましいねぇ。

 

「悪いが俺も負けられないんでね!」

 

 負けじと俺も攻撃、お互い顔面にパンチが入る。

 

「チィッ……」

 

「グッ……クソ!」

 

 

「おおっーと!いきなり相打ちだ!!」

「ダメージは村田のほうが大きいな、パワー勝負なら伊達の方に分がある」

 

 

「チッ、やはりパワーでは適わんか。ならば手数で!!」

 

 洋平ちゃんが連続でラッシュを繰り出してきた。

 

「出たぁーー!!村田選手必殺のガトリングガン!!」

 

 相変わらず大した弾幕だ、だが……。

 

「!?」

 

 俺はガードを固めながら洋平ちゃんのこぶしの弾幕の中に突っ込んでいく。

 

「ば、馬鹿な!血迷ったか!?」

 

 ハッ、違うね!!

 

「こんなラッシュ、レオのに比べりゃ子供だましだ!!」

 

 弾幕を突き破って懐に入り、洋平ちゃんの顔面に渾身の一撃を叩き込む!!

 

「グハッ!!」

 

 俺の一撃に思わずダウンする洋平ちゃん。表情には焦りが見え始める。

 

 

「……決まったな」

 

 

 解説席の空也がそんな事を呟くのが聞こえたが今はそんな事どうでもいい。

 

「く、クソ!まだだ!!」

 

 立ち上がって再び俺に殴りかかる洋平ちゃん。

こちも迎え撃ち、殴り合いになる。

 

「今だ!!」

 

 しばらく殴り合って突如洋平ちゃんが仕掛けてきた。洋平ちゃんの必殺技ハイキックだ。

 

「見え見えだぜ!」

 

 俺は姿勢を低くしてそれを回避する。

 

 

「ああっーと!!村田選手、必殺のハイキックを避けられてしまったぁーー!!」

「当たり前だ、あんな焦った状態で大振りな技が当たる訳無いだろ」

 

 

「終わりだ!!」

 

 隙の出来た洋平ちゃんに俺は立ち上がる勢いでアッパーを放つ。

 

「うぐはっ!!?」

 

 綺麗にクリーンヒットした俺のアッパーに洋平ちゃんはそのまま大の字になって倒れた。

 

「そこまで!勝者、伊達スバル!!」

 

「よっしゃあ!!」

 

 これで2勝2敗の五分と五分。レオ、前座はキッチリ決めてやったんだ、大将戦は任せたぜ!!




登場人物紹介にキャラを追加しました。

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