つよきす 愛羅武勇伝   作:神無鴇人

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対馬レオの日常 登校風景

NO SIDE

 

 対馬レオは健康優良児である。

道場で空手を習っていた頃の習慣で、日頃から筋トレを欠かさす事無く続け、筋力は落ちる事無く維持され、レオの肉体は丈夫そのものである。

それに加え、寝る前は常に20分ほどのストレッチを毎日欠かさずやっているため、睡眠は基本的に熟睡。

故にレオは怪我以外で医者の世話になる事はほとんど無い。

しかし、そんな彼も意外と寝起きは普通だったりする。決して遅くも早くも無い。

人間には睡眠欲という三大欲求の一つがあるし、何よりレオは早寝などしない。

そんな彼を目覚めさせる役割を持つのは目覚まし時計、そして……。

「おい、起きろ坊主、起きないなら俺のドギツイのぶち込むぜ」

 

「ん……ああ、分かった、起きる」

 

 目をこすりながらレオは起き上がる。

レオを起こしたその赤髪長身の男の名は伊達スバル……レオの幼馴染の一人で親友である。

某自動車修理工のナイスガイみたいな台詞を口にしているが基本的にノーマルなので安心して友人関係を結べる男である。

 

「先行ってるぜ、いつも通りカニ起こして来い」

 

「了解」

 

 それだけ言ってレオは服を着替え、一度家を出て隣の家に向かう。

 

「お姉さん、おはようございます」

 

 家の前に居る女性(マダム)に声を掛ける。

どっからどう見ても『お姉さん』なんて歳じゃないがコレは社交辞令である。コレを言わないと後が怖いのだ。

 

「レオちゃん、いつもすまないねぇ、あんな出涸らしのためにいつもいつも……よかったら嫁にもらってくれない、アレ?」

 

「俺にいきなり『舞空術を教えてくれ』なんて言う娘はちょっと……」

 

「そうよねぇ、私が男でも絶対嫌だもん」

 

 そんないつも通りの会話をしてレオは2階へ上がる。

扉を開けるとベッドに寝そべる少女が目に映る。

典型的な幼児体型、栗色のショートヘア、恥も外聞もなく丸見えのパンツ。

コイツが出涸らしこと蟹沢きぬ、通称カニである。

蟹沢家の長女であり優秀な兄と違いどうにも頭の出来がイマイチで両親から出涸らし扱いされ、ほとんど放任されている(といっても別に家族中が険悪という訳では無い)。

ちなみに彼女は自分の下の名前がお気に召さないらしく、下の名前で呼ばれるとキレて暴れまくるので取り扱いには要注意である。

 

「Zzz……」

 

「お~い起きろ出涸らし、いつまで馬鹿面晒してる気だ?」

 

「……やっぱ……ボクって可愛いよねー」

 

 実に器用な寝言。レオは時々彼女の馬鹿さはある意味凄いと思ってしまう。

取り敢えずそろそろ起こさないと自分まで遅刻してしまうのでさっさと起こす事にする。

いつも通りカニの頭を掴んで軽く少しずつ力を加えていく。レオの得意技の一つ、アイアンクローである。

 

「いででででででででで!!!!」

 

「よぅ、起きたか」

 

 丁度カニの意識がハッキリし始めたところで手を離す。

 

「んーー、おはよう…………」

 

 先程の痛みも忘れて再び寝ぼけ眼になるカニ。鈍いと言うか図太いと言うか…………。

 

「じゃあ、20分後、二度寝したら置いてくからな」

 

「んーー、分かった…………」

 

 多分分かっていない…………。

しかしレオはそんな事気にしない、何故なら泣きを見るのはカニであって自分じゃないのだから。

 

 

 その後、スバルがおせっかいで用意してくれた朝食を食べて支度を済ませて家を出る。

カニは来て……ない。どの道予想していた事である。

 

コレによって至る結果→レオはカニを置いていく。

 

一見冷たい選択に見えるがレオはそんな事気にしない、何故なら泣きを見るのはカニであって自分じゃないのだから。

大事な事なので2回言いました。

 

 

 

レオSIDE

 

 やはり朝のこの時間は通学路であるドブ坂通りは非常に静かだ。

どの店もまだ開店前なので仕方ないと言えば仕方ないが……。

 

「ちょっと待てやぁああぁーーーーーーーー!!!!」

 

 静けさをぶっ壊すチビが一人、カニだ。

 

「おお、やっと来たか?」

 

「来たか?じゃねぇよ!!ボクを忘れんじゃねぇよ!!余りにも大事な存在だろうが!!」

 

「お前か遅刻しないかで言えば俺は遅刻しない方を取るんでな」

 

「そこはボクを選べ!!」

 

 無茶言うな。

 

 

 

NO SIDE

 

5分後

 

「よぉ、レオ」

 

 ジュースを買いに行ったカニを待っていると現れた猿面の眼鏡男、鮫氷真一(さめすがしんいち)。

格好良いのは苗字だけ、他は全く駄目。

彼の事を説明する言葉があるとすれば

『ヘタレ』

これ以外に無いだろう。

 

「何か今遥か天空の誰かに悪口言われた気分なんですけど」

 

「気にするな(いつもの事だろ)」

 

「そんな事よりさぁ、聞いてくれよ俺昨日ケイコちゃんとデートの約束を……」

↑言っておくがコレはギャルゲーの話である。

 

「オメェのギャルゲー談義なんて聞きたかねぇよ」

 

 いつの間にか戻ってきたカニが盛大な毒舌を炸裂させる。

 

「うっせえよチビ!お前にケイコちゃんの良さが分かってたまるか!!」

 

 実に下らない事で言い争う二人だった。

 

 

 

レオSIDE

 

「ん?」

 

 騒ぐ二人の馬鹿を無視して先に進もうとした時、俺の六感がこっちに迫ってくる殺気を拾い取った。

 

「っ!!」

 

 乗っていたMTB(マウンテンバイク)を飛び立つように乗り捨て、背後から鋭い蹴撃が繰り出される。

 

「っ…………」

 

 即座に反応し、ブリッジのように体を反らして回避。

 

「チッ!」

 

 襲撃者は一瞬舌打ちして肘鉄を繰り出してくるが…………。

 

「フンッ!」

 

「グ……!やるわね…………」

 

 腕を付かんで捻り上げ、関節を極める。

 

「相変わらず朝っぱらから随分な挨拶だね、姫」

 

「あら、コレくらい対馬君には挨拶代わりでしょ?」

 

 襲撃者の名は霧夜(きりや)エリカ、通称『姫』。

俺の通う学園、竜鳴館の生徒会長にして世界に名立たる霧夜グループの令嬢。

頭脳明晰、運動神経抜群、容姿端麗にして高いカリスマ性を持ち、人の上に立つ器を持った女だ。

ただしその性格は傲岸不遜で傍若無人。味方も多けりゃ敵も多く、竜鳴館には親姫派と反姫派の二大勢力があるほどだ。

故にその姫と言うあだ名は尊敬と皮肉両方の意味がある。

彼女とは半年程前からこんな風に物騒な挨拶を交わす様になったのだがそれはまた別の機会に……。

 

 

 んで、そんなこんなでようやく校門にたどり着いたわけだが。

 

「…………」

 

 何故か日本(ポン)刀を持っている風紀員の前を通り登校。

しかし、最近妙にあの風起因から視線を感じるんだよな。

どっかで見たことあるような気がするけど…………誰だっけ?

 

 

 

おまけ フカヒレ、男の涙

 

 カニとの下らない言い争いを終えたフカヒレはレオとエリカの(自称)スキンシップをじっと見つめていた。

 

「畜生、レオの野郎……あんなに姫に障りやがって…………悔しくなんかないぞ」

 

「本心は?」

 

「悔 し い で す ! !」

 




感想ですが、自分は携帯版でアクセスしているので返信がかなり遅れると思います。

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