レオSIDE
生徒会の雑務を終えた頃、時間は午後5時半を回っていた。
「レオー、今日帰りにゲーセン寄ってこうぜ!」
「悪ぃ、今日俺乙女さんと帰る約束があるから」
カニからの誘いを丁重に断って荷物をまとめる。
「何だよ付き合い悪ぃな……あーもうやだやだ、コレだからカップルってのは……」
「落ち着けって、付き合い始めのカップルなんて大体そんなもんだろ。じゃあな、レオ」
不機嫌なカニを宥めながらスバルも下校。
さて……俺はどうするかな?とりあえず拳法部の様子でも見てくるか……。
「あ、あのー、対馬君……」
俺が部屋を出ようとしたときに佐藤さんが声をかけてきた。何か困惑しているようだ。
「どうしたの?」
「何か、こんなのが入り口に挟まってたんだけど」
そう言いながら一通の封筒を取り出しす佐藤さん。
その封筒に書かれているのは……
乙女SIDE
「だぁああああーーーーーー!!!!」
「甘い!!」
「ウグッ!!」
襲い掛かってくる女子部員の攻撃を軽くかわし、カウンターの一撃を打ち込む。
それにしても今日は変だな……何だか対戦相手の女子部員の大半が妙に殺気立っているような気がするんだが?
「鉄!次は私だ!!」
他の者より一層強い殺気を出しながら次の対戦相手に日上が名乗りを上げた。
「さっきから気になっているんだが、何故そんなに殺気立っている?」
「そんな事……アンタが抜け駆けしたからに決まってんでしょうが!!」
何故か怒り心頭の様子で日上は私に殴りかかってくる。
「抜け駆けって何の事だ?」
「対馬の事に決まってるだろ!!私は3ヶ月も前から狙ってたのに!!」
こ、コイツ……そんなに前からレオの事を……。
「情けない男ばかりの中で数少ない強くて逞しいあんな良い男、そうそう見つからないのにぃ……たかが1ヶ月ちょっと同居してるだけのアンタに掻っ攫われるとか、これが怒らずにいられるか!!」
……たかが、だと?
「日上、お前の気持ちは解かるし申し訳ないとも思う。だけど……私がレオと共に過ごした時間を『たかが』などと言われる謂れは無い!!」
「ふぎゃっ!!」
怒りを込めた私の拳に日上は一撃でノックアウトされた。
「ち、畜生……骨折が完治してない今なら一撃ぐらい入れられると思ったのに……」
フン、肋骨が折れようがそう簡単に弱くなるほど私は甘くは無い。
「さぁ、次は誰だ?」
「鉄先輩!」
突然佐藤が血相を変えて飛び込んできた。
「どうした?」
「実は、対馬君宛てにこんな手紙が……」
『果たし状
我々は貴様が鉄乙女と付き合うなど認めない。
屋上にて待つ。
来ないのであれば直接貴様の家に襲撃をかける』
「何だと……」
男子にもいたのか……私達が付き合うことに文句を言う輩が……。
「レオはどうした?」
「お、屋上の方へ……(うわ、絶対怒ってる……)」
「そうか。村田!」
「は、はい!!」
「少しの間席をはずす、後は任せた……」
私は感情を抑えながら静かに屋上へと向かった。
NO SIDE
余談ではあるがこの時道場にいた誰もがこう思った。
(ああ、もうすぐ屋上が地獄絵図に変わる……)
レオSIDE
屋上に上がった俺を待ち構えていたのは10人近い男達だった。
「来たな……悪の根源、対馬レオ!!」
いきなり突っ込み所満載な言葉が飛んできた。
「何言ってんだお前らは?」
「とぼけるな!汚い姦策で鉄先輩から勝利を奪ってその上手篭めにするなど、我々『鉄乙女ファンクラブ』は絶対に貴様を許さんぞ!!」
……コイツら本物の馬鹿だ。
「よって我々は貴様に天誅を…ぐべぇっ!!」
いい加減鬱陶しいので取り敢えず殴る。
「姦策とは随分くだらねぇ言い掛かりつけてくれるなぁ、そんなに三途の川渡りたいのかコノヤロウ」
「クッ……お、おのれ、何してる!全員掛かれ!!奴は手負いだ!全員で掛かれば絶対勝てる!!」
リーダー格の男の号令と共に馬鹿共が一斉に襲い掛かってきた。
「死ねぇぇ!!」
背後からバットで襲い掛かってくる馬鹿Aの攻撃を軽く避けて鼻っ柱に肘鉄をぶち込む。
「ひぎゃっ!?」
「はい一人目」
続いて襲い掛かってきた馬鹿Bの頭を掴んで近くにいた馬鹿Cの頭に叩きつける。
「ひでぶっ!?」
「あべしっ!?」
そしてラストは馬鹿Dの体を持ち上げて残りの馬鹿全員目掛けて投げ飛ばす
「「「「「「くぁw背drftgyふじこlp;@:!!?!?!?」」」」」」
見事全員にぶち当たって馬鹿共は全滅。その光景はまさに人間ボーリングだ。
「そ、そんな……肋骨が折れてるはずじゃ……」
運良く意識を失わずにいたリーダー格の男が怯えながら声を上げる。
「ああ、今でも折れてるぞ。その程度で雑魚にやられるほどやわな鍛え方してないってだけの話だよ」
「ち、畜生……卑怯者の分際で」
まだ言うか……ん?
「ほぅ、では私はその卑怯な手口に後れをとったという事か」
「く、鉄せんぱ…ぶぐえぇっ!!」
馬鹿の顔面に乙女さんの制裁蹴りが叩き込まれた。
「私を慕ってくれるのはありがたいが……私の人生で最高の闘いを侮辱し、その上怪我人を大人数で襲うなど愚の骨頂。……覚悟は出来てるだろうな?」
「ヒィィィッッ!!お、お助けぇぇぇぇっぇぇっぇぇぇっぇ!!!!」
「聞く耳持たん!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
この日、鉄乙女ファンクラブは乙女さん自身の手によって壊滅した。