NO SIDE
遂に始まった準決勝。第一試合はザ・リバーシブルVSサラマンダーボーイズ。
錬と空也の試合は早くも決着が付こうとしていた。
昨日の試合でのダメージが最も残っている空也が相手なら長期戦に持ち込めば有利な展開に持ち込めるだろうが錬はあえて短期決戦を狙い一気呵成に攻め込んだ。
錬にとっては運や策で勝つよりも対等な条件で勝負を決める事の方が重要なのだ。
「《鳳凰、飛天脚!!》」
空也の顎目掛けて繰り出される錬の蹴り上げ。
空也はそれを寸での所でガードするがその強烈な一撃は空也の身体を宙に浮かせる。
「ぐぅっ……!!」
「行くぜ空也ぁ!《我流・鳳凰乱舞!!》」
空中にて繰り出される錬の凄まじい連続蹴り。
鞭と金棒を足し合わせたような衝撃が嵐のように空也を襲う。
「グ……オォォ……嘗め、んなよコラァ!」
無数の蹴りの中、空也は己の右拳に渾身の力を込める。
「これで、ラストォッ!!」
「ぬぉおおおおおおっ!!《真・天地覇煌拳(しん・てんちはおうけん)!!》」
互いに鉄杭のように穿たれる両者の渾身の一撃に会場中の視線が釘付けとなる……。
「こ、これで……58戦22勝22敗……」
「……14分けか」
「「ガフッ……!」」
二人揃って血反吐を吐き、反発しあう磁石のように二人は逆方向に仰け反り合い、そのままダウンした。
「……両者(ダブル)KO!ドロー!!」
準決勝第一試合のファーストバトル、錬VS空也の戦いは引き分けに終わった。
戦いの行く末は弘之とゆうじに委ねられた。
「オラァッ!」
「クッ、これぐらいで!!」
(チィッ……コイツ、ガキの癖してどんだけ固い防御だよ?)
試合開始から数分、未だ両者共に一撃の有効打も与えられない展開が続き、予想をはるかに上回るゆうじの防御の堅牢さに弘之は内心悪態を吐く。
「《焦点連破棍!!》」
ゆうじの棍から一点への集中連打がカウンター気味に繰り出される。
「ぐぁっ!」
ゆうじのカウンターを避けきれず、弘之は顔面に痛恨の一撃を受ける。
「クソが……!」
本戦出場者最年少の少年に先制打を決められ、弘之は表情苦々しく口元の血を拭った。
「ガキが、舐めやがって!!」
口調を荒々しくしながら弘之は再びゆうじへ殴りかかる。
「(パワーで押し切ってやる!)《ブラストアッパー!!》」
「っ!」
弘之の衝撃波を伴うアッパーがゆうじの身体を棍ごと打ち据え、ゆうじの身体は上空へ吹っ飛ばされた。
しかし表情を歪めたのはゆうじよりも弘之の方が強い。
(クッ……手応えがねぇ!?完全に入る前に自分から飛び上がりやがったのか!?)
「今だ!《逆さ雀落とし!!》」
食う龍で上下逆さまのままゆうじの棍は関節部を伸ばして弘之を中距離から殴りつける。
「ぐがっ……ち、畜生が」
相手の鉄壁以上とも言える防御と不覚を取った己を毒づきながら弘之は再び立ち上がる。
試合の主導権はゆうじが握りつつあった。
スバルSIDE
「……これはもう、あのゆうじって子の勝ちなんじゃない?」
主導権を握っている空也のパートナー、ゆうじの戦いぶりに近衛はそんな言葉を漏らす。
「確かに、あんだけ守りが堅いんじゃ大倉先輩もそう簡単にダメージを与える事は出来ないからな」
あんなに強いガキが大和以外にも居たなんてな……。
「ケケッ……馬鹿が、やっぱ素人目じゃその程度の認識か?」
!?……こ、このあからさまな嘲笑とSっ気たっぷりな笑い方は…………。
「大和!?」
「よぅ、全員雁首揃えてるじゃねぇか」
「私が居るのもお忘れなく♪」
大和と姫のドSコンビ……まだ解散してなかったのか。
「ちょ、ちょっとアンタ!いきなり出てきてその言い方は無いんじゃないの!?第一アンタ年下でょ!?」
「……姫さんよ、誰だこの思いっ切り弄り倒したくなるツインテールは?っていうか弄り倒して良い?アホのフカヒレとは別の意味で弄りたい」
「弄るのはともかく弄り倒すのはダメよ、竜命館の生徒は基本的に私のシマなんだから」
「こ、コイツ等トサカ来るぅぅ〜〜〜〜っ!!」
……姫が二人居るみてぇだ。
「それで大和、お前はどう見てるんだ」
とりあえず訳の分からない騒ぎになる前に話題を変えておこう。
「大倉のダンナ……あの人はただ猪突猛進なだけの馬鹿じゃない。昨日会ったばかりだが目を見れば分かる。感情的な様でしっかり周りを見据えている……追い詰められてるのは、あの鹿島の方かもな。……ケケケケ(笑)」
確かに、大倉先輩ってアレでも有名進学校出身で結構思慮深いからな。
こりゃ一波乱あるかも……。
「コラ、私を無視するな!!」
「……そのツインテールをシニヨンヘアかお団子にして青のチャイナ服着てピースサインしながら『やったぁ!』って言えば考えてやるよ」
「ムッキーーーーー!!姫よりトサカ来るわコイツ!!」
…………見なかった事にしよ。
NO SIDE
「オラァッ!!」
弘之の猛スピードの拳がゆうじを狙うも、未だ彼の拳はゆうじの身体に入る事無くすべて棍で防がれてしまう。
「っ……喰らえっ!!」
対するゆうじはカウンターをメインに弘之の体力をじわじわと削り、試合の流れを掴んで行く。
しかしその表情には何処となくではあるが警戒心が滲み出ている。
(何なんだ?攻撃は全部防げているはずなのに、妙な不安が拭えない……)
ゆうじのファイターとしての第六感が警報を鳴らし続ける。
逆に弘之は劣勢であるにも関わらず闘志はまるで衰える事が無い。
(そろそろ感付く頃か……次でコイツの防御を崩す!)
ゆうじの変化を察し、見破ったかのように弘之はニヤリと口元に笑みを浮かべ、右腕から拳にかけて気と力を込める。
「歯ぁ食いしばって覚悟しな!《F(フラッシュ)・P(ピストン)・M(マッハ)・P(パンチ)!!》」
瞬時に距離を詰め、弘之の拳が閃光の如く一瞬にして十数発のパンチがゆうじを襲う。
「!!……こ、これは」
マッハパンチの名に相応しい音速ともいえる速度のパンチの弾幕を前にゆうじは棍を振るって防御し続ける、が……
(ぼ、防御は、間に合う……間に合うけど…こ、棍が……?)
仕込まれたチェーンと気で補強しているはずの棍が徐々に中心から罅割れていく。
「これで、ラストだぁっ!!」
そして渾身のアッパーカットが棍とゆうじの顔面目掛けて繰り出され、棍は音を立てて真っ二つにへし折り、そのままゆうじの顎を打ち据えた。
「ぐがぁ!?」
下顎に直撃を喰らい、ゆうじは無防備な体勢で中に浮かび上がる。
そしてその好機を逃す程弘之は甘くはない。即座に体勢を整え直し、右拳に一気に気を集中させる。
「釣りはいらねぇ……取っておきな!!」
そして落下するゆうじの身体に容赦なく弘之の拳が振るわれ、その刹那、拳に集められた気は砲弾となって零距離から放たれる!
「《ナックル・マグナム!!》」
悲鳴を上げる間も無くゆうじの身体は気の砲弾によって吹き飛ばされ、リング外へ放り投げられ、そのまま床に激突するように落下した。
「か、は…っ……(やっぱり、強いや。この人)」
一瞬だけ喉の奥から呻き声を漏らしながら、ゆうじは弘之の強さを実感し、意識を手放した。
「……そこまで!勝者、大倉弘之!!」
ゆうじの気絶を確認した審判が弘之の勝利を告げ、客席からは歓声が沸きあがる。
歓声がこだまする会場の中、弘之は無言のまま拳を握り締め、右腕を虚空に向けて突き上げたのだった。
○ザ・リバーシブル―サラマンダーボーイズ●
勝敗 1勝1分
レオSIDE
「流石だな……」
控え室で試合を見ている中、乙女さんは不意にそんな言葉を呟いた。
「どっちが?」
「両方だ。大倉の剛と知を併せ持った強さ、そして鹿島のどんな技術も通さない防御……あれを大倉が崩せたのは身体能力の差と手数をフルに活かせたからだ。どちらにしても戦ってみたいと心から思ってしまうよ」
「……確かにね」
乙女さんに同意しながら俺は自分の掌が汗を掻いている事に気付く。
きっと俺はファイターとしての血が騒ぎ、興奮しているんだろう……。何となくではあるがそう思う。
「この大会に参加して良かった。理由はどうあれ、こんなに素晴らしいライバルに巡り会えたんだ。ある意味、橘に感謝しないとな……お前を渡す気はないが」
俺の手を握りながら乙女さんは次に控えた試合に意気込む。
今のコンディションなら、戦うには最適……実力をフルに発揮できるぜ!
「行くぞ、レオ!!この戦い、ストレート勝ちで決めるぞ!!」
「ああ!!」
俺達はリングに向かって歩き始める。
この大会に参加した最大の目的を果たすために!!
約5ヶ月ぶりの更新……完結は近いってのに……どうにもIS×東方の方に執筆が行ってしまう……。
お気に入り登録してくれてる方々、本当すいません。