つよきす 愛羅武勇伝   作:神無鴇人

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過去最長だ……。



※カオス注意!!




NO SIDE

 

『おぉーーと!!山城選手と大倉選手、まさかのダブルダウンだぁーー!!』

 

 決勝戦が錬と弘之のザ・リバーシブルの不戦勝という思わぬ結果に終わったタッグトーナメント。

その会場では、本来行われるはずだった決勝戦の代わりにザ・リバーシブルとD&Iハリケーンズのエキシビジョンマッチが行われていた。

そしてその頃、本来ならリングに上がるはずだったレオと乙女は……。

 

「ほらレオ、あ〜ん♪」

 

「お、乙女さん……ここ、病室なんだけど」

 

「良いじゃないか。私たちだけなんだから」

 

「それもそうか♪」

 

「あの〜〜、俺達居るんですけど」

 

 病室内で準決勝での負傷を療養しながらすぐ近くにスバル、カニ、フカヒレ、素奈緒が居るのにもお構いなしでイチャついていた。

 

「レオ……胸の傷、痛くないか?」

 

「全然平気、むしろ俺にとっては勲章も同じだよ」

 

「レオ……」

 

「乙女さん……」

 

 二人は今、完全に自分たちだけの世界に入っていた。

 

「ダメだこりゃ。俺達の事なんて全然見えてねぇよ」

 

「腹ん中がムカムカするぜ。イチャついてんじゃねーぞバカップル!」

 

 あまりの甘い空気にカニの野次が飛ぶが……

 

「「…………」」

 

 二人はj自分たちだけの世界に入って見つめ合ったままである。

 

「返事が無い。ただのバカップルのようだ……。そして俺のムカつく気持ちは無限大だ」

 

「うぅ……私の中の鉄先輩のイメージがどんどん崩れていく……」

 

 そしてフカヒレは例によって僻み全開、素奈緒は乙女の普段の態度との圧倒的な違いに嘆く。

 

「ほらレオ、もう一回あ〜ん♪」

 

「あ「あ〜ん♪」……」

 

 この時、きっとフカヒレは魔が差したのであろう。

フカヒレはレオと乙女の間に割って入り、乙女の差し出す箸とおかずに向かって大口を開けた。その行為が地獄の入り口とも知らずに……

 

「何をしてるんだ?テメェはぁ……!」

 

「グギャアアガガガガガガガガァァーーーーー!!!!!」

 

 フカヒレの愚考から僅か0.3秒後、レオの殺人級の握力がフカヒレの頭を鷲掴んだ。

 

「鮫氷……誰にでも邪魔されたくない至福の一時というものがある。それを邪魔するとどうなるのか……教育的指導が必要なようだな?」

 

 そして直後に乙女のパロスペシャルが炸裂!

フカヒレの両腕両肩を凄まじい怪力で締め上げた。

 

「あがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁっぁぁっぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 断末魔の如く叫び声をあげ、フカヒレは僅か1秒弱で泡を吹いてノックアウトされたのだった……。

 

「……試合が終わった昨日の今日だってのに相変わらず騒がしいな」

 

「でもだからこそ面白いじゃない?対馬君と乙女センパイのバカップルぶりはちょっとムカつくけど」

 

「確かにそうだけど、こんなバカップルに負けたって思うと少し泣きたくなるんだけど」

 

 そんな騒ぎの中、病室に新たに入ってくる三人の人影。

エリカと大和、そして準決勝でレオと死闘を繰り広げた羽丘ふぶきだ。

 

「お?大和に姫じゃないか。……それに羽丘も、橘さんはどうした?」

 

「親父さんの艦隊に帰って行ったよ。はいコレ、お二人に手紙」

 

 レオの問いに答えながらふぶきは二人に瀬麗武からの手紙を手渡す。

 

 

『対馬レオ 鉄乙女へ

 

 今回の戦いは私の完敗だ。約束通り対馬の事は諦めよう。

悔しい話だが、お前達の間に私が入る隙が無いという事も痛感させてもらったしな。

まぁ、精々末永くイチャついていろ。

 

 だが、対馬の事は仕方が無いとして、地獄蝶々に関しては話が別だ。

いずれ今回のリベンジと共に地獄蝶々は取り戻す。それを忘れるな。

 

                                          橘瀬麗武  』

 

「なるほど。……これは返事を書かないとな。『いつでも相手になってやる』と」

 

 好戦的に笑いながら乙女は読み終えた手紙を机に置く。

この時、乙女にとって瀬麗武は恋のライバルから純粋な好敵手となっていた。

 

「で、大和と姫はどうしたんだ?っていうか、まだコンビ組んでたんだな……(この二人の性格からして大会終わればお互い用済みとばかりにコンビ解消するとばかり思っていたが……)」

 

 内心でかなり失礼な事を考えつつも問うレオにエリカと大和は快活に笑みを浮かべる。

 

「いやぁ〜〜、大会終われば用済みだとは思ったんですけどね。思いの外ふぶき共々気が合っちゃって」

 

「なのよね〜〜。なーんか同じ匂いがするって言うか、同志を見つけたって言うか」

 

「今度は僕と大和で組んで霧夜さんにマネージャーやってもらうのも良いかな」

 

 三人は仲良く笑い合う。

 

「うぐぇぇ……」

 

 揃ってフカヒレを踏みながら……。

 

【…………ドSトリオか】

 

 この時、この場にいるドSトリオ以外の全員の心の声がハモった。

 

「ま、それはともかくとして……大会ももう終わる事だし、私もこの大会の収入で結構お小遣いが手に入ったから、私達と本戦出場者全員で打ち上げでもやろうと思ったのよ。この大会、霧夜グループも出資してるから」

 

「マジ!?飯名に出るの?焼肉?寿司?」

 

 エリカの提案に真っ先に反応したのはカニだった。

 

「って事は、本戦出場者の親族や友人の女とお近づきになれる可能性も……!」

 

 つづいて反応したのはフカヒレ。相変わらずこういう時の回復力だけは凄まじい。

だがしかし……

 

「大半は姉属性持ちだぞ」

 

「嫌ぁぁ〜〜〜〜〜〜!!!!」

 

 ニヤニヤしながら大和はフカヒレに耳打ちしてその反応を楽しむ。

 

「面白いね、コイツ(黒笑)」

 

「だろ?弄くり甲斐があるよなぁ……ケケケケ(黒笑)」

 

 意気投合しながらフカヒレを弄る大和とふぶき。

この光景を見た誰もがこう思う『コイツらを敵に回したくない』と……。

 

「チクショー!大和だって自他共に認める猿属性じゃねぇかよぉ!!俺とコイツで何が違うってんだ!?」

 

「飛猿とメガネ猿を一緒にすんな」

 

「ギェェェエエエエ!!!」

 

 触れてはいけない事に触れてしまったフカヒレは、キャメルクラッチの刑に処されたのであった。

めでたしめでたし……

 

「めでたくねーーー!!作者までボケるなぁぁ!!!!」

 

「……何か、この病室」

 

「とんでもないカオスだな……」

 

「最初にカオスな空気作ってたのは対馬と鉄先輩でしょうが……」

 

 混沌の中、素奈緒の突込みが虚しく消えていった。

 

看護師と医者に注意されてこの場が収束するのは、これから約五分後の事である。

 

翌日

 レオ達本戦出場者と、対馬ファミリーをはじめとしたその同伴者達は、霧夜カンパニーが経営する大型居酒屋の宴会場に集まり、大宴会が始まるのだった……。

 

 

 

レオSIDE

 

「それでは、無事大会終了を祝して……」

 

『かんぱーい!!』

 

 姫による乾杯の音頭で宴会は開始され、参加者は皆それぞれ酒や会話に花を咲かせる。

 

「美味ぇーー!!このカルビめちゃくちゃ美味ぇぜ!!」

 

 カニは真っ先に食い気に走り出す。

まぁ、目の前に出された食い物が焼肉(しかもかなり上等なヤツ)じゃカニの反応はある意味当然だが……。

 

「しかし、本当に美味いな。すまんが、ロースとホルモンの追加を頼む」

 

「かしこまりました」

 

 橘さんも満足そうに肉を食って……ん?

 

「「橘(さん)!?」」

 

 艦隊に帰ったはずの立花さんの姿に俺と乙女さんの声が見事にハモった。

 

「お前、橘司令の下に戻ったんじゃなかったのか?」

 

「宴会に招待されたのでな、父様から許可をいただいて来た。手紙を贈った昨日の今日で少し格好悪いが、焼肉は魅力だ」

 

 思いの外、短い別れだったな……。

 

「Hey彼女!誰の連れ?俺と一緒に飲まない?」

 

「え?いや、ちょっとそれは……」

 

 フカヒレは早速ナンパか。

あれ?あの娘って……

 

「俺の義妹に何か用か?フカヒレ……」

 

「げぇっ!大倉先輩!?」

 

 ああ、大倉先輩の彼女の妹か……。

フカヒレの奴、フラグを建てたな……悪い意味で。

 

「お前に香帆はやらん!」

 

「グハッ!」

 

 フカヒレは制裁(拳骨)を喰らった。フカヒレが戦闘不能になりなりました……ってか。

元々戦力外だけど。

 

「レオ、そろそろ良い焼き加減だぞ」

 

「お!本当だ。それじゃ、今回は俺が……はい、乙女さん。あ〜ん♪」

 

「コイつめ、この前は人前じゃ恥ずかしいと言っておきながら」

 

「伝染(うつ)ったんだよ、乙女さんの想いと情熱が」

 

「嬉しい事を言ってくれる。だったら私は今まで以上にお前の事を愛してやるぞ」

 

「じゃあ、俺はそれに全力で応えるぜ!」

 

 そして俺は乙女さんと人目も気にせずにイチャつきました♪

 

この時、俺達はこの後の更なるカオスを知る由も無かった。

 

 

 

NO SIDE

 

 そこそこに時間が経ち、宴会も中盤に入った頃、突如としてある人物が立ち上がり会場全体に聞こえるように声を上げ始めた。

 

「それじゃ、本日のメインイベント!王様ゲームやるわよ!いっておくけど本戦参加者と竜命館のメンバーは強制参加よ♪」

 

「面白そうじゃねぇか。けど、人数多いからくじ作るの大変じゃね?」

 

 姫の突拍子も無い発案に大和が口を挟むが姫はにやりと笑みを浮かべて見せた。

 

「大丈夫、参加者全員の名前を書いたルーレットでやれば問題無し!ついでに王様の命令は犯罪行為以外なんでも自由。そして絶対!!」

 

「面白そうじゃん!ボク参加する!!」

 

「俺も!(上手くいけば女の子と……イヒヒ)」

 

「強制参加なんですか?」

 

「強制参加よ♪」

 

 周囲からのさまざまな言葉にエリカは満足げに笑いながら準備を開始した。

そして数分後……

 

「それじゃ、始めるわよ!『第一回スーパー王様ゲーム!!』」

 

 超混沌(スーパーカオス)タイム、スタート!!

 

 

 

1回目

 

 ルーレットが回転を始め、カタカタと音を立てる。

 

「さぁ〜て、誰が王様かなぁ〜〜」

 

 エリカはニヤニヤと笑いながら目を光らせる。

 

(俺になれ!!女とお近づきになるんじゃ〜〜!!)

 

(ボクになれ!!ココナッツを跪かせてやる!!)

 

 物欲に正直な馬鹿二人、フカヒレとカニ。

 

(誰でもいいけど、変な命令をしない奴にしてくれよ……)

 

(何か変な事になってきたなぁ〜〜)

 

 カオスな展開を嘆くスバルと優一。

 

(ケケケケ……)

 

(フフフフ……)

 

 そしてドS達は不適に笑う。

 

そして……

 

「お!そろそろ止まるぞ!」

 

「さぁ、最初の王様は……」

 

 ルーレットの矢印が止まった先の名前は……

 

 

『椰子なごみ』

 

 

「うわ、何でアタシが……」

 

 まさかの展開になごみは不満全開な表情を浮かべる。

 

「まぁまぁ、良いじゃないなごみん。王様になったんだから大抵の事は命令して良いのよ」

 

「……じゃあ私を生徒会から」

 

「今この場ですぐに出来ることじゃないとダメ♪学校じゃなきゃ手続き不可だから」

 

 なごみの考えを予見していたかのように、エリカは即座になごみの言葉を遮る。

 

「チッ……じゃあ、モノマネで良いです」

 

 目論見を潰され、結局は適当な命令に変更するなごみだった……。

 

「それじゃあ、そのターゲットは……」

 

 嬉々としてエリカは再びルーレットを回す。

そしてルーレットによって決定されたモノマネ役は……。

 

 

『山城優一』

 

 

「俺!?俺モノマネのレパートリーなんて一つしか無いぞ」

 

「じゃあそれで良いんでやってください」

 

「……是非も無し、か」

 

 投げやりな感じにモノマネを催促され、数秒ほど間を置いて優一は観念したかのようにため息をついてバッグから(なぜか用意されていた)怒り顔と無表情な顔の二枚のお面を取り出し、顔の両端に挟み込むように取り付けた。

 

「フンッ!!」

 

 そして影分身で腕を左右二本ずつ増やし、六本の腕を持った身体となった……。

 

「……カーカッカッカッカ!!」

 

「なるほど、お前にしか出来ないモノマネだぜ」

 

 引きつった笑みを浮かべながらアシュラマンのモノマネをやってのけた優一の姿にその場にいる全員が何となく納得した表情を浮かべた。

 

 

 

2回目 王様・羽丘ふぶき

 

「これから二回ルーレットを回して、一回目に当たった人を二回目に当たった人がビンタ」

 

【え゛……!?】

 

 ふぶきの命令に一般人メンバーが冷や汗を流す。

ただでさえ規格外な戦闘力を持つ人間が周囲にごろごろいるのだ。

もし自分が叩かれる側になったらと思うと気が気でないだろう。

 

 

「それじゃ、一回目!」

 

 サディスティックな笑みを浮かべふぶきはルーレットを回す。

その結果は……

 

 

『鉄乙女』

 

 

【良かった……】

 

 一般人たちは非常に安堵した。

 

「羽丘テメェ……!!」

 

 しかしレオはふぶきを思いっきり睨み付けたが……。

 

「運が悪かったんだよ。彼女さんが力自慢にひっぱたかれないように祈る事だね。はい、じゃあ二回目」

 

 レオを無視して再び回るルーレット。

結果は……。

 

 

『佐藤良美』

 

 

「わ、私が鉄先輩を?」

 

「あら?これは意外……」

 

「逆だったら危ないけどね」

 

「佐藤さんなら……まぁ、ギリギリセーフか。良かったな、レオ」

 

 思わぬ展開に周囲から驚きとアンドの言葉が漏れる。

 

「結果は結果だ。お手柔らかに頼むぞ、佐藤」

 

「はい、それじゃあ……」

 

 遠慮がちに良美は手を振りかぶる。

この時、良美とその親友であるエリカを除いた者達全員が気づいていなかった。

 

(対馬君は……対馬君は私が先に好きになったのに!!従姉だからって、この……泥棒猫ぉぉっ!!!!)

 

 長い事溜まっていた鬱憤が、誰にも知られること無く爆発していた事を。そして……

 

『パァァァン!!』

 

「はうっ!?(……わ、私、佐藤に恨まれるような事したか?)」

 

 かなり小気味の良い音を立てて、良美のビンタは乙女の頬に炸裂したのだった。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

 そして普段通りの態度に一瞬で戻り、良美は乙女を心配そうに見つめる。

 

「だ、大丈夫だ。……佐藤、お前思ったより力があるな」

 

 思わぬ痛手に少し狼狽しつつも、乙女は平常心を保ちつつそう答えた。

 

 

3回目 王様・蟹沢きぬ

 

「よっしゃ!じゃあルーレットで当たった奴、かくし芸やれ!パンツと尻(ケツ)で割り箸真っ二つにするヤツ!!」

 

『仮にも女の子が命令する事か!?』

 

 その場にいた全員が下品過ぎる命令に口を揃えて突っ込んだ。

 

「ウルセー!当たった奴(出来ればココナッツ!)は大恥掻きやがれー!!」

 

 ブーイングを気にも留めずにルーレットを回転させるカニ。

結果は……

 

 

『士慢力』

 

 

「ウゲ……俺かよ!?」

 

「チキショー!ココナッツ(なごみ)に当ててやろうと思ったのに」

 

「ぶっ殺すぞこのクソ蟹が……」

 

 当たった奴と当てた奴、二人そろって別々の意味で悔しがるという奇妙な図が生まれた。

 

「ええい、俺も男だ!!やってやらぁ!!」

 

 やけくそ気味にズボンを脱ぎ、士慢はその巨体のでかい尻とパンツ(ブリーフ)の間に割り箸を挟みこむ。

 

「どりゃあああ!!!」

 

 そしてそのままベキリと音を立てて割り箸を割って見せた!

 

(バカでかいケツにしか目が行かねぇよ……)

 

(……カニ、お前どうするんだこの殺伐とした空気?)

 

「……何か、ごめん」

 

 

 

4回目 王様・柊空也

 

「それじゃ、ココは在り来たりだが、当たった奴は自分の一番最近起きた恥ずかしい話を暴露だ」

 

 ある意味安全策とも言える命令に周囲の人間は『やっとまともな命令が来た』と安心感を漂わせた。

 

「それじゃ、そのターゲットは……」

 

 

『冬島香苗』

 

 

 覚えていない意図のために説明。

冬島香苗……彼女は一回戦で弘之に完膚なきまでに叩きのめされたS女である。

(ただし、超ドSである大和曰く『見せ掛けだけの偽のドS』との事)

 

「実は私、この前の試合で負けてから虐められるのも良いなぁ〜って思うように……///」

 

(ゾクッ……)

 

 弘之を見ながら顔を赤らめて恥らう香苗。

しかしそれを睨み付ける女が一人いた。

 

「むぅ〜〜〜〜。ヒロ君!」

 

「え?んむぅっ!!?」

 

 弘之の婚約者、宮森香純は弘之の顔を両手でがっしりと掴んで濃厚なキスをかました!!

 

「ヒロ君は私の旦那さんなんだからぁぁ!!」

 

「そ、そんなぁ……彼女持ちだったなんて……」

 

 命令は安全策でも、相手によっては十分地雷になりえる。

これが王様ゲームの怖いところである。

 

 

 

 この後も様々なお題の数々が会場内をカオスと化していった……。

 

5回目 王様・小野寺拓己 お題・大和とフカヒレによるコサックダンス

 

「オラ!もっと足上げろフカヒレぇ!!」

 

「痛っ!踊りながら蹴るなぁ!」

 

「はい、その状態で後10分」

 

 

6回目 王様・上杉錬 お題・エリカと素奈緒による正義の心得20ヵ条朗読

 

「一つ!正義の戦士は常に実直であれ!!」

 

「「正義の戦士は常に実直であれ!!」」

 

「一つ!更生可能な奴は更生させろ!!」

 

「「更生可能な奴は更生させろ!!」」

 

(うぅ〜〜、なんでこの私が、こんな乙女センパイよりも堅苦しい台詞を……)

 

(これよ!これこそ私が求める正義の在り方よ!!)

 

 エリカはゲンナリと、そして素奈緒は溌剌としていた。

 

 

7回目 王様・直江大和 お題・スバル、錬による声優ネタ

 

「WRYYYYYY!!!!貧弱貧弱ゥゥ!!!!」←ヤケクソ

 

「俺のこの手が真っ赤に燃えるぅ!勝利を掴めと轟き叫ぶぅぅっ!!!!」←同じくヤケクソ

 

((何やってんだ俺達は……))

 

 

 

8回目 王様・近衛素奈緒 お題・村田によるカラオケ熱唱

 

版権問題があるため割愛。

 

「僕の出番がぁ〜〜!!」

 

 

そして9回目……

 

「フフフフ……遂に来たわね!この時が!!」

 

『王様・霧夜エリカ!』

 

 待ち続けたチャンスにエリカはニヤリと笑う。

この時、男性メンバーの大半に妙な怖気が走った……。

 

「これから二人、ターゲットを選抜するわ。選ばれた者は皆の前でポッキーゲーム!もちろんキスまでいくのが絶対条件!!」

 

 会場内に戦慄が走る。

 

ポッキーゲーム……二人の人間が一本のポッキーを両端から食べ、やがて唇が触れ合いキスに至るという、王様ゲームの定番だ。

 

 しかし、王様ゲームにおけるポッキーゲームの恐ろしさは、プレイヤーがランダムでセレクトされるという点にある。

即ちそれは、望まぬ者同士によるキス、最悪同性同士でキスをせねばならないという事でもあるのだ。

そしてエリカが望むのは……

 

(腐腐腐……じゃなくて、フフフ……目の前でBLシーンを拝める絶好のチャンス到来!!カメラ持って来て大正解だわ!)

 

 BL好きなエリカが狙うは当然男同士のポッキーゲーム!!

 

「この際一気に決めるわ。一人目はルーレットの矢印。そして二人目はこのダーツの向かう先!それじゃあ、ルーレット……スタート!!」

 

 ポケットから取り出したダーツを構え、エリカはルーレットを回す!!

 

【はずれろぉぉ〜〜〜〜!!!!】

 

 彼氏彼女持ちの者は全員必死になって外れる事を祈る。

 

(俺になれぇぇ!!美少女と初キスだぁぁーーーー!!!!)

 

 モテない男の代表フカヒレこと鮫氷新一は物凄い形相で自分と美女のの当たりを願う。

 

「ルーレットが止まるぞ……!」

 

「これで、決めるわ!!」

 

 そしてエリカの手からダーツが放たれ、的に刺さったその直後、ルーレットは遂に止まった。

その結果は……

 

矢印の指し示す名は『対馬レオ』

ダーツの刺さった場所に刻まれた名は『小野寺拓己』

 

「「ゲェェーーーーーッ!!!!」」

 

「「何ぃぃぃ〜〜〜〜っ!!!!」」

 

「やったぁぁぁぁーーーーーーっ!!!!!」

 

 ターゲットに決まってしまった対馬レオと小野寺拓己。その彼女である鉄乙女と霧島皐月。

そして元凶、霧夜エリカの叫びが同時に木霊した!!

 

 

 

レオSIDE

 

 ちょちょちょ、ちょっと待てぇぇーーー!!

どうすんだよコレ!?男同士でキスとか絶対嫌だぞ俺は!!

それに……

 

「れ、レオぉぉ!!」

 

「拓ちゃん!何でこんな……」

 

「はーい、邪魔しないでね、お二人共。コレはルールなんだからw」

 

 ニヤニヤと笑みを浮かべて乙女さんと小野寺の彼女を制止する姫……。

クソ!姫のBL趣味に付き合わされた挙句、乙女さんの前でこんな事出来る訳ないだろ!!

 

「くそぉ……どうすれば良いんだ」

 

「俺のブラックホールで……いや、ばれずに作るのは流石に無理だ……」

 

 小野寺も必死になって考えるがまるで良い案が浮かばないようだ。

 

「畜生!相手が皐月だったら文句無くやってやるのに!!……対馬、お前は何か思い浮かばないのか?この状況を逆転出来る発想とか……」

 

 そんなもの思い浮かべば苦労はねぇよ。

俺だって乙女さんが相手だったらすんなり受け入れるのに……。

 

「ん?」

 

 自分の思考と小野寺の言葉に何かを感じた。

何だか……とんでもなく大きなヒントを得たような感じだ。

 

(逆転出来る発想……発想、逆転……)

 

 不意に頭の中で何かのピースが音を立ててはまり合う。

俺達が取るべき行動は……。

 

(逆転を発想するんだ……)

 

(何?)

 

 俺は小声で小野寺に話しかける。

俺一人よりも二人で知恵を出した方が良い!

 

(『どうやってキスを回避するのか』じゃなくて、『どうやってルールに抵触せずに俺達でキスするのを回避するか』……それを考えるんだ!)

 

(ルールか……確か『ターゲットに選ばれた者は皆の前でポッキーゲーム』『キスまでいくのが絶対条件』だったな……ん?ターゲット“に”…………あぁっ!!)

 

 !!…………小野寺の言葉に俺も閃く。そうだ、これなら!!

 

「は〜い、それじゃポッキーゲーム、始めるわよ!」

 

 っ…まずい!姫がポッキーを取り出した。

 

(チャンスは一度。ポッキー咥えてスタートの合図が出てすぐだ!!)

 

(応よ、上手くいったら一緒に酒でも飲もうぜ……行くぜ拓己!!)

 

(ああ、抜かんなよ、レオ)

 

 覚悟を決め差し出されるポッキーを受け取って口に咥え合い、俺は乙女さんに、拓己は彼女である皐月さんに目配せする。

幸い今の姫はBLの写真を取る絶好のチャンスを目の前に興奮している。

姫が俺達の作戦に気づく前にやるんだ!!

 

「それじゃあ、スタート!!」

 

((今だ!!))

 

 スタート直後、俺と拓己はすぐにポッキーを半分にへし折った!!

 

(乙女さん!)

 

(皐月!)

 

 そしてすぐに自身の恋人の下へ駆け寄る。

これが、俺達の考えた『ルールを守り、望まぬ接吻を回避する』唯一の方法!!

 

((これを、咥えろぉぉーー!!))

 

 頼む!伝わってくれ!!

 

 

 

乙女SIDE

 

 絶望が一気に驚きと困惑に変わる。一体どういう事だ?

開始直後に突然レオと小野寺はポッキーを真っ二つに折ってこちらへ向かってきたのだ。

まるでレオは私、小野寺は自分の恋人である霧島とポッキーゲームをするかのように……ッ!!

 

(そ、そうか!その手があったか!!)

 

(分かった!分かったよ拓ちゃんの考え!!)

 

 私と霧島はほぼ同時に二人の真意を見抜いた。

ルールの穴を付くのは少々気が引けるが、これが最良の選択だ!!

 

 

 

NO SIDE

 

 レオと拓己……二人の行動に会場内が驚愕に静まり返った。

二人は開始直後にポッキーを真ん中からへし折り、それぞれ自分達の恋人の下へ走り、そのまま恋人の口に折れたポッキーの端を咥えさせ、そのままポッキーゲームに移行し、キスをしたのだ。

 

「え!ちょっ、何やってんのよ二人とも!?」

 

 自身の予測の斜め上を行く展開にエリカは抗議の声をあげる。

だがレオと拓己は揃って笑みを浮かべてエリカを見返す。

 

「ポッキーゲームはしたし、キスもした。……これで俺達は条件を満たした筈だが?」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!普通に考えてルーレットで選ばれたターゲット同士がキスするのが普通でしょ!?」

 

 拓己の言葉に対してエリカの反論が飛ぶ。

しかし二人は動じない。まるで勝機を完全にものにしたかの様にふてぶてしく笑う。

 

「たしかに、姫はそのつもりで言ったのかもな。だが、よく思い出してみろ!あの時姫はこう言った!『選ばれた者は皆の前でポッキーゲーム!もちろんキスまでいくのが絶対条件!!』とな!!」

 

「逆に言えばターゲット同士でキスをしろとは一言も言っていない!!」

 

「あ……ああぁぁぁぁっ!!」

 

 今になって自身のミスに気付き、エリカは激しく動揺する。

 

「つまり、俺達がそれぞれ自分の彼女とポッキーゲームをやってしまえばそれで条件クリア!」

 

「これがこの命令の攻略法だ!!」

 

 まるで青いスーツに後ろ髪が尖った髪型の弁護士の如く、レオと拓己は真っ直ぐに人差し指をエリカに向けて言い放つ。

レオ達の脳内において、宴会会場は今や地方裁判所の法廷へと姿を変えていた。

 

「グ…グ……な、直江検事……」

 

「残念だが、アンタは目先の欲望に気を取られ、ミスを犯した。……反論は出来そうにねぇな」

 

 助けを求めるような声を出すエリカに、何故か顔の上半分をバイザーで覆い、珈琲を飲みながら大和は諦めたかの様に返す。

 

「グ……ク…………………………………………私の、負けよ。……でも、BLの生写真を手に入れる夢は、いつか必ず……!!」

 

 逃げ場の無い言葉のロジックに対し、遂にエリカは肩を落として観念し、敗北を認めたのだった。

 

「では、判決を言い渡します……《無罪!》」

 

 そしていつの間にか裁判長役になっている錬によって判決が言い渡される。

果たしてこれは何の裁判なのか、誰が無罪なのか、様々な謎を残したままノリと雰囲気のまま裁判は閉廷したのだった。

ただ、言える事があるとすれば、レオ達は恋人への想いを裏切らずに済んだという事だろう。

 

「っていうか、何この超カオス……」

 

 似非裁判を覚めた目で眺めながら、数少ない常識人である近衛素奈緒はそう呟いた。

 

 

 

その後、色々とありながらも王様ゲームは進み、遂にゲーム残り1回……オーラスを迎えた。

そして王様に選ばれた人物は……。

 

「来た来た来た来た!遂に来たぁぁぁぁ!!俺が王様だぁぁーーーー!!」

 

 その名は、鮫氷新一。またの名をフカヒレという男である。

 

「ゲッ!よりにもよってオメーかよフカヒレ」

 

「コレばっかりは甲殻類に同意。……絶対変な命令になるから」

 

 カニとなごみが珍しく意見を一致させて引く。

しかしそんな事はどこ吹く風、フカヒレは喜々として自分が王様になった事で出来る命令に心躍らせる。

 

「俺の出す命令はコレしかない!ルーレットで選ばれた奴と王様がディープキスだぁぁーーー!!」

 

【やっぱりか……】

 

 予想を悪い意味で裏切らぬフカヒレに会場内の人間ほぼ全員ががっくりと肩を落とす。

そして同時に自分が選ばれないようにっと必死になって祈る……特に女子が。

 

「行くぜぇぇ!!」

 

 そして回される運命のルーレット!

その結果は……

 

 

『村田洋平』

 

 

「「げぇぇーーーー!!」」

 

 まさに悪夢再び、かつての体育武道祭での悪夢が今ココに蘇った瞬間だった。

 

「ままま、待て!やっぱりこの命令取り消s……」

 

(((ニヤリ……)))

 

 慌てて命令を取り消そうとするフカヒレ。

しかし、フカヒレが言い終わる前、瞬時に動く三つの影があった。

 

「おいおいおい、いくら王様でも命令取り消しは出来ないぜぇ、フカヒレ先輩よぉ……ケ〜ケッケッケ!」

 

「君も男なら、もう覚悟決めちゃいなよ。……フフフフ」

 

「もうこの際この二人で妥協するわ♪」

 

 大和、ふぶき、そしてエリカ……ドS三人衆はフカヒレと村田の身体を羽交い絞めにしてゆっくりと二人の身体を近付けていく。

 

「い、嫌だぁぁ〜〜!レオぉ!スバルぅ!助けてくれぇぇ〜〜〜!!」

 

「お前、下手すりゃ乙女さんに不埒な真似しでかす所だったからなぁ……助ける気になれん、諦めろ」

 

「悪い、俺もとぱっちりは食いたくないんだ。洋平ちゃん、身代わりになってくれや」

 

「「そんなぁぁ〜〜〜〜!!」」

 

 無情な結末にフカヒレと村田の嘆きが室内に響く。

しかしそうしている間にも、二人の身体は刻一刻と近付き、遂には文字通り目と鼻の先にお互いの顔が……

 

「「嫌!ダメ!!やめt……」」

 

 

『ぶちゅぅぅぅぅっ!!』

 

 

「「むぎゅあぁぁぁぁぁぁあぁっぁあぁぁっぁ!!!!?!??!??!」」

 

 

 この時、ごく一部を除いて会場内の人間がこの光景から目を背けたのは、言うまでもない。

 

後に残ったのは、真っ白になった二人の姿だった……。

 

 

レオSIDE

 

 騒がしくも楽しい宴会も終わり、参加者は皆と共に帰路に着く。

と言っても、大抵の面子は駅で別れるけどな。

 

「じゃあな、次に戦(や)る時まで、腕落とすんじゃねぇぜ」

 

「今度は絶対に俺達が勝つ!!」

 

「ああ、お前らもな!けど、そう簡単にリベンジされてやるつもりは無いぜ!!」

 

 駅前に着き、俺は拓己と優一のD&Iハリケーンズと再戦の約束を交わし……

 

「戻ったら、また一から修行のやり直しだな。相手が相手とはいえ、一回戦負けじゃ様にならねぇし」

 

「だったら、今度僕とスパーリングでもする?タッグ組む前にシングルで戦ってみたいしね」

 

「良いぜ。どっちが真のドSか決めようじゃねぇか!」

 

「面白そうじゃない。立会人は私がやってあげるわ」

 

 大和とふぶきはもう既にコンビを組むことが確定しているらしい。

姫もノリノリだし……とんでもないタッグが誕生しそうだ。

 

「錬と弘之は、それぞれもうすぐ結婚式だよな?その時は呼んでくれよ」

 

「ああ、日取りが決まったら連絡する」

 

「全員に招待状送ってやるよ」

 

「結婚式か……礼服あったかな?」

 

 空也達は錬と大倉先輩の今後の話に華を咲かせる。

 

「鉄、貴様と対馬にはいずれまた会うだろう。その時はもう一度、正々堂々と戦わせてもらうぞ。そして私が勝って刀を頂く」

 

「ああ、いつでも来い!お前との再戦を楽しみにしているぞ、橘」

 

「楽しみ、か……私もだ」

 

 橘さんは乙女さんに雪辱を果たすことを宣言するが、以前のような刺々しさは無くなって、今じゃお互い好敵手って感じだ。

 

そして俺と乙女さんは皆と別れ、自宅へと向かって歩を進めた。

 

 

 

 

 

 そして一時間後……俺達は無事帰宅し、二人でベッドに腰掛けながら今までのことを振り返る。

 

「なぁ、レオ」

 

「何?」

 

「い、その……何て言うか、格好良かったぞ。大会でのお前の戦う姿も、宴会で機転を利かせた姿もな」

 

 不意に俺に声をかけた乙女さんは、少し頬を赤くしてはにかんだ笑顔を見せてくる。

ヤベ……超可愛い。

 

「そうかな?」

 

「当たり前だ。一回戦でも準決勝でも、何度もときめいたんだぞ。……お前は私の、自慢の弟分で、ライバルで……最高の恋人だ!」

 

 何だろう?……物凄く歯の浮くような台詞なのに、すごく嬉しくて乙女さんの事がより一層愛おしく感じる。

 

「乙女さん……俺もだよ」

 

 想いに飲まれ、俺は乙女さんを抱き寄せて唇に顔を近づける……。

 

「あ、待て……せっかくだから……」

 

 不意に乙女さんが動きを止めて棚からポッキーを取り出して自分の口に咥える。

 

「宴会のときは緊急回避みたいだったから、今度はちゃんとしておきたい。良いか?」

 

「当然」

 

 乙女さんの要望に快諾し、俺は乙女さんの咥えているポッキーの先端を咥える。

そしてお互いにゆっくりとポッキーをカリカリと食べ進み、やがて……

 

「んっ……」

 

「……んむっ………甘いな」

 

 俺達の唇は触れ合い、文字通り甘いキスを堪能した。

 

「もう一回、しようか?」

 

「ああ」

 

 それからポッキーが尽きるまでポッキーゲームを続けたのは言うまでもない。


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