つよきす 愛羅武勇伝   作:神無鴇人

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オアシスでの出来事 辛口キング(クイーン)登場!!

レオSIDE

 

 放課後、今日は英語の補修があったので遅くなり、空はもう夕方になっていた。

その後スバルとフカヒレの二人と合流し、カニのバイト先であるカレー専門店『オアシス』で晩飯という事になった。

 

「いらっしゃいませーっ……って、何だフカヒレ達か」

 

 この松笠市の名物はカレー。

キャッチフレーズは『カレーの街、松笠』。

町中にはカレー屋が数多く点在しこの『オアシス』も例外ではない。

 

「ご注文はお決まりですか?“可愛いウェイトレスの気まぐれオススメコース”なんていかがでしょうか?」

 

「そのコースは福神漬け大盛りとか来るからイヤだね、ビーフカレー甘口」

 

「チキンカレー辛口、ライス大盛り」

 

「ポークカレー辛口、ルー多めで」

 

「ノリの悪い……日本人はこれだから、ちょっとはインド人のテンチョーを見習えってんだ」

 

「HAHAHA」

 

 落書きみたいな顔をしたターバン男(店長)がカレー作りながら笑う。

あれ本当にインド人か?

 

「店長の名前はアレックスって言うんだ」

 

 絶対インド人じゃない……いやいや、そんなのどうでもいい、要はココのカレーが美味いか否かだ。

カレー好きのカニがまかない目的でバイトに入っただけあってこの店のカレーはかなり美味い。まぁ、じっくり味わおう……。

 

「いらっしゃいませーっ……ゲゲッ!」

 

 来客を知らせる鐘に素早く反応したカニが、突然硬直した。

 

「……」

 

 シャギーのかかった長い黒髪、鋭い切れ長の瞳に背丈は170センチを超えているだろう。

細身のジーンズに赤いスカジャンという格好は、活動的というより攻撃的に映るが、それを差し引いてもかなりの美人だ。

 

「おっ、美人!」

 

 それも顔にうるさいフカヒレが認めるほどの美人だ。

 

「て、テンチョー!辛口キングだ!」

 

 おい、女にキングは無いだろ……。

 

「OH!落ち着きマショウ、カニさーん、まずはオーダー、デース」

 

「……ご注文は?」

 

「超辛スペシャルカレー、チャレンジ」

 

 キングはクールに答えた。

 

「超辛スペシャルカレー入りましたー!」

 

 あ、アレをか?

 

「超辛スペシャル……おお、完食すればタダ、何度でもチャレンジ可能ってコレか」

 

「以前俺、あれにチャレンジして一口でダウンしたんだけど……変な汗出たよ」

 

 超辛スペシャルカレー。俺も挑戦した事はあるが……。

一般人なら一口で炎上、三口で発狂、そこから先は地獄で、次の日もトイレで地獄。

俺でさえ七口が限界だったんだぞ!!

 

「シィイイィット! おそらくまた食べられてしまいマース。ここは白旗あげまショウ!」

 

「くっ……それしかねーのか……。だから何度でもチャレンジ可能は無限コンボ喰らうからやめようって言ったのに」

 

 早くも諦めモード、あの女マジで完食したのか?

 

(ニヤリ)

 

 あ、笑った…………どう見ても嘲笑だが。

 

「笑いやがったなあのアマぁ!ちょっと胸がデカそうだからっていい気になりやがって!構わないやテンチョー、完食されたらボクの給料から差っ引いていいから、勝負を受けよう!」

 

 さすがカニ、勝算が無くても諦めない蛮勇の持ち主だ。

 

「そこまで言い切るならいいデスけどー。すでに一回完食されてるのに勝算とかソウイウノあるんデスかー?」

 

「なぁに、香辛料を限界まで入れれば大丈夫、火ぃ吹くから」

 

「ソレ、普通に致死量デスよー」

 

「構わないっしょ、別に」

 

 鬼だ、カニの皮被った鬼がココに居るよ……

 

「味を落とさずに、コレ以上辛くするの大変なんデスけどねー、わかりましター」

 

 いや、止めろよ店長……。

 

「ってわけで、超辛カレーお待たせしましたー」

 

 王の卓に置かれたのは、赤味の強いカレー……………ブクブクと気泡が上がって、ありゃ最早カレーじゃねぇよ。

 

「いただきます」

 

 一切の動揺も無く、キングは超辛カレーを食べ始めた。

 

(もぐもぐ)

 

 一口、二口……ぜ、全然ダメージを受けてない…………。

 

「やっぱりおいしい」

 

 そしてこの台詞である。

 

「おいおい、平然と食ってるぞ、何者だありゃあ」

 

「味覚、絶対ぶっ壊れてるぞ…………」

 

 俺もスバルもあいた口が塞がらなかった。

俺でさえ七口で敗北したあのカレーをああも簡単に…………くそぅ、プライドが傷つくぜ。何のプライドかは知らないが

 

「よっしゃ、今こそ俺がやりたかったことを実行してやる。おい、バカ面してるウェイトレス!」

 

 ?…………フカヒレの奴何する気だ?

 

「んだよ、ダメ人間」

 

「あの美人に、セイロンティーを」

 

「その出来の悪い脳みそでも、“あちらのお客様からです”って言うのだけは忘れるなよ!」

 

「いいよ、セイロンティーね」

 

 ニヤリと笑ってカニが準備に取り掛かる。またよからぬことを考えて……。

 

「サービスのホット・セイロンティーですぅ!ちなみに、あちらの眼鏡をかけたお客様からです」

 

 ほらやっぱり……あの超辛にホット・セイロンティーって……死にかねんぞ。

 

「ばっ……辛いもん食ってんだから普通アイスだろ、なんで湯気出てんだよ」

 

「ン……グツグツしてていい、カレーに良く合う」

 

 カニの期待は大いに裏切られ、キングは悠々とセイロンティーを飲み干す。

 

「そんな馬鹿な……。喉を火傷させて殺すつもりで熱したのに」

 

「おいしかった。全部食べたから無料ね」

 

 恐ろしい女だ…………。

 

「ウアァゥ……その通りデース。ありがとうございましターっ!」

 

「セイロンティーごちそうさま」

 

 帰り際にそう言った。ただしぶっきらぼうにであるが。

 

「あっ、いえいえどういたしまして………………へへへ、あのコと会話しちゃったよ」

 

 あの程度で喜ぶか、コイツはコイツで別の意味で凄い。

 

「くぅっ……負けた……、完食された……」

 

 結局、カニはバイト代から超辛カレーの代金を差っ引かれたのであった。

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