つよきす 愛羅武勇伝   作:神無鴇人

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再会 鉄の風紀委員、鉄乙女!!

レオSIDE

 

 走る、疾走する。

本気を出せばもっと凄い速さを出せるが、如何せんカニをつれている以上見捨てるわけにはいかない…………いや、見捨てても良いんだけどそれだと後が厄介になる。

え?何故俺がこんなに急いでいるかって?

決まっている、寝坊して遅刻寸前だからだよぉ!!

俺とカニだけじゃない、スバルとフカヒレもだ(結局いつものメンバー)。

そして…………。

 

「無情だ……」

 

「くぅ……見事に校門閉まってるじゃん、こうなると遅刻届貰うしかないんだよね?」

 

「いや、俺は納得しないぞ、折角頑張って走ったのに、こうなったらフォーメーションで裏側から入ろう!」

 よし、久しぶりにやるか。

校舎の裏側に回り込み外壁の前に立つ。並の人間ならこの高い壁を飛び越えるのは無理。だが俺達は4人で連携すれば簡単だ。

まず俺とスバルをジャンプ台にカニとフカヒレが壁を上る。

続いてスバルが俺をジャンプ台に壁を上り、最後に俺が単独で壁を飛び越える。

コレでも俺は日払いのバイトで軽業をやってたりするので某Wの名無しの少年並に身軽なのだ。

何はともあれコレで全員潜入成功。後はこのまま何食わぬ顔で校舎に入れば万事解決だ。

 

「そこの4人、ちょっと待て」

 

 後ろから凛とした声が聞こえた。

だがまだ後ろは振り向かない。顔を見られるわけにはいかない。

 

「どうするよ?」

 

「当然、逃げる!!」

 

 一斉に逃げ出す俺達4人、しかし……。

 

「止まれ、止まらないと制裁を加える」

 

「おい、何か言ってるぞ」

 

「止まれって言われて止まる馬鹿はいねぇよ」

 

「俺も逃げ足だけなら自信があるぜ」

 

 こいつらは頼もしい事を言ってくれているが……何だ?妙な不安が……。

 

「警告に従う気は無いと判断した……実力行使だ」

 

 !?まずい、あの女!!

 

「止まれ、皆!逃げても無駄だ!!」

 

「ふむ……賢明な判断だ」

 

 一瞬女の殺気が薄れた。

 

「何言ってんだよ!諦めたらそこで試合終了だろうが!!」

 

「俺は逃げ切るぞ!!たとえ友(レオ)を見放しても!!」

 

 カニはいつも通りとして、フカヒレお前は最低だ。

 

「坊主が血相変えて止めてんだぜ、止めた方がいいんじゃね?」

 

 さすがスバルよく分かってらっしゃる。

 

「ぶげらっ!?」

 

「うぎゃ!」

 

 もう遅いけど…………。しかしこの女、どこかで…………。

 

「一撃で終わりか……」

 

 アレは、たしか……ガキの頃。

 

「根性無しが」

 

 !!

お、思い出した。アイツは、あの人は……

 

 

『くちごたえするなコンジョーナシ!くやしかったらわたしにかってみろ!』

 

 

「お、乙女さん?」

 

「ん?レオ、お前ようやく思い出したのか?」

 

 やっぱりだ……。

 

「知り合いか?」

 

「従姉だよ……」

 

「は?それって前に言っていたあの……」

 

「ああ、あの鉄乙女(くろがねおとめ)さんだ」

 

 俺の運命を変えた張本人だ。

 

 

 

 で、説教タイム突入と相成った。

 

「本来、こういうものは同じ学年の風紀委員が注意するのが筋なのだがな、あいつはもう、自分では抑えられないと言っている」

 

 クソ、2年の風紀委員(名前知らない)め、アイツの方がよっぽど根性無しだ。

 

「なんだよ!じゃあ俺が感じてた視線ってこの女のだったのか!」

 

「この女、だと?」

 

「ひっ、ひぃぃいいいっーー!?」

 

 いかん、フカヒレのアホがトラウマ発動してやがる。

フカヒレこと鮫氷新一には姉が一人いる。彼女はとても美人だが、筋金入りのドSであった。

フカヒレのトラウマは相当重く、下手にトラウマが蘇ると恥も外聞も気にせず泣き叫んでしまうほどに……。

ちなみに、現在フカヒレの姉は家を出ており、東京で働いている。

 

「お前たちは特に違反が多い。とりあえず今週見た限りでは、屋上への侵入、廊下の爆走、図書館での飲食、下校時間の超過、漫画持ち込み……だな」

 

「畜生……偉そうに説教しやがって……」

 

「止めとけ、相手が悪すぎる……闘技場で言えばチャンピオンクラスだぜこの人」

 

 小声で恨み言を呟くカニを諫める。

 

「うぅ……」

 

 悔しそうに唸るカニ。普段なら絶対噛み付いているだろうがチャンピオンクラスが相手では相手が悪すぎるという事は俺という実例を持って痛感しているのだ。

 

「しかしレオ、まさかこんな形でお前と久しぶりに話す事になるとは」

 

「うん、まぁね」

 

 というか、さっきまで乙女さんだって気付かなかったから。

 

「まったく、今の今まで忘れているとは、嘆かわしい……生活も少々自堕落気味みたいだしな」

 

 ヤバ……説教の矛先が俺に。

 

「ほぅ、派手にやっているようだな、良いぞ良いぞ」

 

 あ、館長登場。

 

「館長、おはようございます」

 

「おはよう、鉄、今日も指導か?」

 

「はい、先輩として後輩を導いていました」

 

「うむ!な ら ば 良 し !ビシビシ鍛えてやれ」

 

 さすが館長、ノリが体育会系だ…………。

 

「では皆、今日も勉学に励めよ!」

 

 そう言って館長は去っていった。

 

「まぁいい、とにかく近い内にお前の家を訪問するからそのつもりでな」

 

 マジですかい…………。

 

「そろそろHRだ、さっさと行け」

 

「はい……」

 

 やっと解放された。

 

……………ん?

 

「よっと、セーフティー!壁越えクリア!」

 

 姫…………。

 

 

 

NO SIDE

 

 昼休み

 

「畜生ぉっ!!黒豆おかめの野郎!ゼッテー仕返ししてやる」

 

 完璧な逆恨みであるがカニの闘志はみなぎっていた。

 

「戦闘力がレオと同等でも不意を付いて痛手を喰らわせればアイツのプライドはズタボロじゃあ!!」

 

 最早勝つことよりも一矢報いることに主眼が置かれている。

 

「フカヒレ、お前も来い!!」

 

「は、俺?やだよ、ああいうタイプねーちゃんに似てて怖いんだよ」

 

「いや、やられっぱなしだからこその克服でしょ?やられっぱなしの君でいいかい?」

 

「そ、そうだよな、確かに俺のイズムに反する」

 

「フカヒレがいつも主張してる事は何さ」

 

「女の子は男に尽くすべし!コレは古来からの鉄則である!」

 

 どこが?

 

「勘違いしている女は教育してやるッ!」

 

 ツッコミ所満載の理論でフカヒレは燃え上がる。

 

 

 フカヒレのこの主張は数年前に遡る。

当時のフカヒレはクラスメートの女の子を自分のガールフレンドにしようとして告白した、しかし…………

 

「フカヒレ君ってザリガニの臭いがするからイヤ」

 

 見事玉砕。

 

「そんな……俺本気だったのに……」

 

「何泣いてるの……やだ、気持ち悪い……」

 

 フカヒレはレベルが上がった!女を殴れるようになった。

 

 

 とまぁ、こんな感じである。

 

「ま、そんなわけで俺は女子供には容赦しねぇ」

 

「言ってる事は最低だけど今はそんなフカヒレが頼もしいなっ!」

 

 そんなこんなで馬鹿二人は勝ち目の無い戦いに出陣する。

そんな様子をレオとスバルは呆れ顔で見つめていた。

 

 

 そして……

 

「いくら強いといっても女子は女子!男子の腕力の前には……」

 

「制裁!!」

 

「ぐっぼぁぁああ!!!」

 

 フカヒレ、気絶して廊下でお寝んね状態。

 

「この役立たずが地面にキスしてな!!」

 

 更にカニの容赦ない追撃が入る。

 

「おい小さいの、もう気絶しているぞ……というかソイツはお前の仲間じゃないのか?」

 

「お前じゃないやい、蟹沢っていうちょっと微妙な苗字があるんだからなっ!それに小さいって何だコラ!!」

 

「そんなに気にする事か?顔がそれだけ可愛ければいいじゃないか」

 

 乙女は何気なく言ったつもりだろうがこの『かわいい』という言葉はカニの脳髄まで響いた。

 

「…………乙女さんってさぁ、よく見たら結構格好いいね」

 蟹沢きぬ、陥落……。

 

 

 

 そして翌日の木曜日

 

 

 

レオSIDE

 

 現在俺は乙女さんに何時(いつ)リベンジを挑むか+リベンジのための適当な口実を考え中だ。

 

「対馬君、鉄先輩が呼んでるよ」

 

 向こうから来ちゃったよ……。また説教か?

 

「スバル、30秒後に電話頼む」

 

「あいよ」

 

 それだけ聞いて廊下に出る。

 

「ん、来たか……」

 

「うん、で、何か用?」

 

 ジャスト30秒、やれ!スバル!!

 

「ああ、すでにご両親から話は聞いているだろうが、私が明日から……」

 

 〜〜♪

携帯に着信が入る。さすがスバルだ、時間ぴったり。

 

「あ、ちょっとゴメン、もしもし…………え、マジで、うん分かった……ゴメン乙女さん、急用入った」

 

「ん、そうか?まぁいい、どの道週末にまた会うんだからな」

 

 よし、華麗にスルー出来たぜ。

 

 しかし俺はまだ知らなかった。この時乙女さんが話そうとしていたのは非常に重要な事実だという事を。

 


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