Magical Girl Lyrical NANOHA ZERO   作:shimoyuki

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それぞれの日常


1話 『予兆』 ②

「それじゃ、また明日ね、みんな」

 

「うん。また明日ー」

 

「日曜日、ちゃんと予定開けときなさいよー」

 

「うん。そうしとく」

 

「ほななーお二人さん」

 

 送迎車に乗り込むアリサとすずかを見送り、なのは、フェイト、はやての三人も学校を後にする。

 帰り道は三人共公園まで一緒だ。そこからの進行方向は、なのははそのまま直進、はやては公園を横切る形で、フェイトは目の前の横断歩道を渡って散り散りになる。

 

「今日もレティ提督に呼び出されてたけど、捜査官のお仕事ってどんな感じなの?」

 

 何となくなのはが切り出すと、はやては「せやなぁ」と呟く。

 

「こっちで言う警察みたいなもんやからなぁ。加えて、各部署で何か面倒事があったらその都度出向する、言うてしまえば『何でも屋』やな。今はまだ上官の側で研修中で、ヴィータ達に手伝ってもらったりと未熟者やけど、これから色々任される思うたら、ちょっと気疲れしてしまいそうや」

 

 苦笑するはやて。はやてが就いているのは、捜査官の中でもレアスキル保有者が主に就任する、『特別捜査官』という役職だ。それについての知識はなのはやフェイトも有しているが、本人の口から直接聞かされると改めて大変そうだという共感を覚えた。

 

「でも今日はヴィータとシグナムも私達と模擬戦だけど……」

 

「うん。今日は珍しく私だけ呼び出されたんよ。何か失敗やらかしてしもうたんかなぁ……」

 

「もしかしたら昇進のお知らせかも」

 

「あはは……ないない。少なくとも今の立場で後三年は経験積まんと、次のステップには行かれへんらしいからなぁ。一人前になる頃には、多分中学生か高校生やね」

 

「そっか……実は私もそんな感じ。先は長いなぁ。フェイトちゃんも確か、今執務官の試験の勉強やってるんだっけ?」

 

「うん。クロノやエイミィに色々見てもらってるけど、思ったより厳しくて……で、でも頑張るよ。皆の期待にちゃんと応えなくちゃいけないし、それよりも私自身が絶対なるって決めたし……」

 

 か細げな声ながらも、強い意志を感じさせるフェイトの口調に、なのはは明るい笑顔を見せる。

 

「大丈夫だよ。フェイトちゃんなら、きっと上手くいくよ」

 

「せやせや。私らフェイトちゃんが頑張り屋さんなん、よぉ知っとる。試験受けても、一発でパスする筈やで」

 

「うん……ありがとう、なのは、はやて」

 

 そうこうしている内に、帰路の分かれ道である公園に三人は到着する。

 

「ほななーお二人さん」

 

「じゃあねー、はやてちゃん。フェイトちゃんは、また後で。訓練室前に、三十分後くらいでいい?」

 

「うん、分かった。――はやて、また明日」

 

 互いに手を振り、そして三人は各々の自宅に向かって歩き出した。

 

 

 

 

~八神宅~

 

「ただいまー」

 

 はやてが玄関のドアを開けると、真っ先にヴィータが駆けてきた。

 

「おかえりーはやてー」

 

 大きく結ったお下げを揺らしながら軽く抱きついてきたヴィータを、はやては優しく抱き返す。そしてあやすように頭を撫でながら、

 

「ただいま、ヴィータ。家にはヴィータ一人か?」

 

「ううん、リビングに全員いるよ。なんか結局シャマルとザフィーラも管理局に用事が出来たみたいで、結局全員で行くことになるって」

 

「なんや、そうなん?」

 

「えっとね、シャマルは医療局に出向で、ザフィーラは何かよく分かんないけど力仕事の雑用で呼ばれたみたい。まぁ特に急いでないから、はやてが帰ってくるまで皆待ってるみたいだけど」

 

「そか。ほんなら、出かける前にちょっとお茶でもしよか。ちょうど冷蔵庫に昨日行きつけの八百屋さんからもろてきた梨もあることやし。食べるやろ? ヴィータも」

 

 ヴィータは見る見る内に顔を綻ばせ、大きく頷いた。

 

「うんっ! 食べる食べる!」

 

「よっしゃ。そしたら食器の用意してもらおかな」

 

「りょーかいっ!」

 

 踵を返して、ヴィータがリビングへとすっ飛んで行く

 そんな慌ただしげなヴィータを瞳で追ってから、はやてもリビングへと続いた。

 

 

 

 

「すると、主はやては本来の仕事で呼び出されたわけですね?」

 

 皆でシャリシャリと梨を食べる中(ザフィーラは相変わらず床に皿を置かれてるが)、シグナムはそうはやてに問うた。

 

「そうなるなぁ。いつもなら皆と一緒に召集かかんねんけど……」

 

 特別捜査官という役柄、担当する事件は実に様々だ。現場では何が起こるか分からないのが常である。クロノ等のような、十代前半で現場に赴く局員もいることはいるが、殆ど例外の域である。

 能力はあるとは言え、はやてはまだ十一歳の少女だ。いずれは一人前になることが目標ではあるが、まだ彼女をサポートする人員が必要だという管理局側の判断で、今のところ総務部(特別捜査官の管轄である)に出向する時は、基本的にヴォルケンリッターが随伴することとなっている。

 加えて、呼び出した人が人である。

 レティ・ロウラン。役職は提督。初めて会った時はリンディの友人として紹介され、今の地位を色々と取り計らってくれた恩人である。正直はやてにとっては頭が上がらない存在だ。

 だが、それ以上に驚いたのだが、後から聞くところによるとなんと階級は中将なのだという。当然ながら、管理局の地位的立場において、上から数えた方が圧倒的に高い。

 そんな人が、緊急で秘匿通信を用いて単独で呼び出しをするなんて……

(ちょっと変な気はするけど……まぁなんや、行ったら分かるやろ)

 

 すると口いっぱいに梨を頬張り、リスのようになったヴィータが間に割って入る。

 

「ふぇふぃへいふぉくはあはひはひのふぉふぉ……」

 

「こーらヴィータ、食べながら喋ったら行儀悪いやろ。いそがへんから、ちゃんと味わって食べ」

 

 はやてに注意され、「ふぁーい」と返事をするヴィータ。

 

「んぐんぐ……ぷはぁっ! でさ、レティ提督は、アタシ達のこと何も言ってなかったの?」

 

「んーもしかしたらレティ提督もみんなの予定知ってて、敢えて言わんかっただけかもしれへんなぁ」

 

「でもちょっと初めてのパターンねぇ。私達本当についていかなくていいのかしら」

 

 頬に手をやるシャマルの言葉に、シグナムも追随する。

 

「そうしたいのは私もやまやまだが……如何せんヴィータと私はこの後外せない模擬戦を控えていることだし……」

 

「私も、運用部の方に呼び出された故、申し訳ありませんがお供することが出来ません。ご容赦を」

 

 ヴォルケンリッターの面々が済まなさそうに弁明するも、はやては軽く受け流す。

 

「まぁまぁ、呼ばれたのは私だけやし、皆は各自のお仕事頑張ってきてぇな」

 

「……はい。そのように」

 

「何か困ったことがあったら、すぐに呼んでくれて構いませんからね」

 

「ありがとうな、シャマル。でもまぁ、出来るだけ自分の力で何とかしてみるわ。いつまでも皆に頼ってるようじゃ、主失格やからなぁ」

 

 そんなはやての言葉に、ヴィータが真っ先の声を上げた。

 

「そんなことないよ。はやてはちゃんと、立派にアタシ達の主じゃんか」

 

 シグナムも、シャマルも、ザフィーラも、声には出さずとも心の中で頷く。

 今まで数えきれない程の主に仕えてきた彼らが、唯一心を許した主――それが八神はやてという少女だ。戦闘力とか指揮能力とか、実践的なそういった能力は後からでも十分身につく。他人を思い遣り、他人の気持ちを我が身のように共感することの出来る彼女こそが、自分達の主であるとヴォルケンリッターの四人は強く思っていた。

 はやては少し驚いた風に目を丸くするが、ふふっと軽く微笑んだ

 

「……そう思てくれるんなら、うれしいなぁ。それでもいつかは一人で仕事出来るようにならなあかんし、まぁそれまでは色々手伝ってもらおかな」

 

 そこでふと空気が物静かになっていることに気付き、はやてが話題を変えようと再度口を開く。

 

「あはは……なんかちょっとしんみりしてもうたな。そう言えば、みんな時間は大丈夫なんか?」

 

「私とヴィータはご心配なく」

 

「私も四時頃に来てって言われたから……あと二、三十分あるわねーザフィーラは?」

 

「同じ頃合いだ。終わるのはいつになるのか分からぬが……夕飯までには間に合うだろう」

 

「そしたら、もうちょいゆっくりしよか。お茶、淹れてくるなー」

 

「あっ、それアタシが行くよ。はやては座ってて」

 

 それからもう少しの間、皆は団欒に花を咲かせた。

 はやては思う。何でもないこの時が、いつまでも続けばいいのにと。

 

 

 

 

~ハラオウン宅~

 

 フェイトがリビングでノートを広げていると、ふいに玄関のドアが開く音がした。

 没頭しすぎて約束の時間をオーバーしてしまったのか、と一瞬焦って時計を見るが、まだ帰宅してから十分と経っていない。ほっと胸を撫で下ろすと同時に、スーパーの袋を提げたリンディがリビングへと入ってきた。

 

「あら、フェイト。帰ってたの?」

 

「うん。今さっき。……おかえりなさい、母さん」

 

 一時期はなかなか気恥ずかしくてなかなか言えなかったその一言を、フェイトはそれでもまだ少し頬を赤らめながら口にする。

 

「えぇ、ただいま。って、あら、お勉強中だったのね。学校の宿題?」

 

「ううん。執務官試験の勉強。クロノが受験の時に使ってたノートを貸してくれたから、それを使って……あと問題集も自作してくれて、今ちょっとずつ頑張ってるところ」

 

 簡単に言ってのけるフェイトだが、その内容は学校の宿題とは比べ物にならないレベルである。執務官試験と言えば、一次の筆記試験と二次の実技試験の合格率が『それぞれ』十五パーセントな上に、合格者の平均受験回数がなんと七回。その鬼畜さを例えるなら、日本における国家試験の最難関と言われた旧司法試験に匹敵する。

 英才教育を受け、エリート街道を歩いてきたクロノでも、一回落ちたほどの難しさだ。……と言っても、それでも十分すぎる経歴であるのだが。

 フェイトもまた、幼少期からのリニスの指導によって身についた類稀なる魔力知識と戦闘能力を持っているが、現在魔法法等の執務官として必須である知識の習得に四苦八苦しているところである。

 

「あらあら、クロノったらそんなことまで……まぁ、ああ見えてあの子、結構世話焼きだから」

 

「そう、なんですか?」

 

「えぇ。エイミィが執務官補佐になりたてだった時も、色々手取り足とり教えてあげてたわねぇ。ふふっ、周りからはどっちがサポート役なんだかってからかわれたりもしてたけれど」

 

 今でさえクロノのパートナーとして手腕を振るうエイミィだが、そのような過去があるのを聞いてなんだか自然と笑みがこぼれたフェイトだった。

 

「あの二人、お似合いですよね。見てて微笑ましいと言うか……」

 

「そうね。士官教導センターの頃から同期というのもあるけれど、何かどこかで似た者同士というか……あら? もしかしてフェイトさん、焼きもちだったり?」

 

 少し意地悪そうに口元を緩ませるリンディに、フェイトが顔を赤くして動揺する。

 

「そ、そういうんじゃないです」

 

「本当に~?」

 

「えっと、その…………もう……母さんのいじわる……」

 

 可愛らしくフェイトが頬を膨らます。何と言うか、リンディが本気で言っていないとは分かってはいるので、まんまと泡を食ってしまった自分自身が恥ずかしかったフェイトだった。

 リンディは「ふふっ、ごめんなさいね」と付け加え、

 

「まぁ執務官試験のことだったら、遠慮なく私にも色々訊いてくれていいのよ?」

 

「えっ? 母さんも試験、受けたことがあるんですか?」

 

「えぇ。と言ってももう十年以上前のことですけど。年々傾向は変わってきているとは言え、試験内容は殆ど一緒だから、アドバイス出来ることもあると思うわよ? ――でもね」

 

「?」

 

 ふっとリンディの目付きが一層穏やかになる。フェイトに向けられる表情は、紛れもなく我が子を慈しむ母親のそれだった。

 

「無理だけはしちゃダメよ? 貴女が執務官になろうと思ってることはとても素晴らしいことだと思うし、私も応援してる。それでも貴女は学校に行って、友達と遊んで……そういった毎日を楽しむ権利があるわ」

 

「……うん」

 

「目標は大切だけど、そればかりに目を奪われないようにね。疲れたら、いつでも言ってちょうだい。私でよければ全力で胸を貸してあげるわ」

 

「うん……ありがとう、母さん」

 

 親子の絆を再認するように言葉を交わした後、リンディは紅茶を淹れにキッチンへと向かった。

 フェイトは問題集に視線を落とすが、そのままゆっくりと目を閉じて静かに思った。

 何でもないこの時が、いつまでも続けばいいのにと。

 

 

 

 

~高町宅~

 

 なのはの自室。机に座るなのはの眼前には、魔法陣を媒体として出現している空中投影ディスプレイ――空間モニターが展開されていた。

 バストアップで画面に映っているのは、ユーノだ。彼の背景から見るに、どうやらいつも通り無限書庫での作業中のようである。

 

「今日はゴメンね、ユーノ君。そっちもお仕事あるのに……」

 

 両手を顔の前で合わせ、謝罪の言葉を口にするなのはだが、ユーノは特に気にしたようすもなく笑い返す。

 

「別に全然気にしてないよ。訓練用の結界を張りに行くくらい。それに、ここ最近ずっとここで働き詰めだったから、ちょっと気分転換したかったところだし。寧ろ有り難いよ。ははっ」

 

「えっと……本当に大丈夫……?」

 

「大丈夫大丈夫……それに好きでやってることだしね。遣り甲斐はあるし」

 

 だがそう言うユーノの顔は、心なしかやつれて見えた。無限書庫の司書長になって、早一年。まだ発言権も弱いからか碌に人員も回されず、ユーノは心の中で溜め息を吐く。

 一応クロノに幾度か申請はしているのだが、まぁ彼も彼で苦労しているようだった。どうやら艦長になるためのキャリア積みで、夏頃から多忙らしい。流石にポストの重要度が違うので、ユーノもあまり大きく声を出せず、結局現状維持が続いている状態だ。

 

 時空管理局に関わる前までは、あそこは実はブラックだと風の噂で耳にしたことがあったが、どうも自分はそれを今身を以て知っているようだ。まぁ待遇云々は置いといて、実際周りの人間は良い人ばかりだから強ち百パーセントそうとは言い切れないのだが。

 それに、若干潤んだ瞳で申し訳なさそうに僅かに首を傾げるなのはを前に、一体どの口で文句を吐けようか。あんな顔されたら何でも許さざるを得ない。恋愛感情とかそういった自覚はないが、なのはに対してはいつもどこか甘くなってしまう自分がいると、ふと思うユーノだった。

 

「なのはこそ、教導隊の下士官候補生だっけ? 研修、結構厳しいって聞くけど」

 

「うん、まぁ、それなりにね。でもやるべきことがハッキリしてるから、辛いとは思わないよ。魔法使うの、楽しいし」

 

「そっか。まぁ、無茶はしないようにね」

 

「ユーノ君こそ」

 

 互いに向かい合っていたが、どちらともなく可笑しげに二人は笑いだす。

 

「あ、今度翠屋のお菓子差し入れしてあげよっか。今日呼びだしちゃったお詫び」

 

「え? お詫びだなんてそんな……」

 

「いいのいいの。今旬のフルーツタルトがね、すっごくおいしいの」

 

「へぇ。じゃあ、楽しみにしておくよ」

 

「うんっ」

 

 その後、なのははユーノとお互いの最近のことについて話していると、レイジングハートが桜色の澄んだ輝きを見せた。

 

《It’s about time,master(そろそろ時間です、マスター)》

 

「えっ? もう?」

 

 なのはが机の端にある置時計を見ると、待ち合わせの時間の五分前だった。

 

「ユーノ君、それじゃあ……」

 

「うん。アースラの転送ポートを作動してくるよ。二、三分そこで待っててくれる?」

 

「分かった。また後でね」

 

 ユーノが頷き、空間モニターが閉じられる。

 なのはは一度目を閉じ、背もたれに寄りかかって天井を仰ぐ。

 そして両手を組み、グッと大きく伸びをする。

 そのままボーっとしていると、レイジングハートがなのはの視界の端で光った。

 

《Do you have worries?(悩み事ですか?)》

 

 些か遠慮がちな彼女の声に、なのはは苦笑で返した。

 

「あはは……分かっちゃう?」

 

《I’m your device.(私は貴女のデバイスですから)》

 

 お見通し、というわけだろうか。図星を指されたなのはだったが、それよりも自分の気持ちを推し量ってくれたレイジングハートを愛おしく思った。

 なのははゆっくりとベッドへと移動して、すとんと腰を下ろした。そして俯き加減で、ぽつりと言葉を漏らす。

 

「……たまにね、もっと強くならなきゃって、無性に思う時があるんだ。そんなすぐになれるわけないのは当然だけど、何と言うか、今までが今までだったから……そりゃ今の訓練も大切なことが分かってるけど、それでも…………あーっ! 上手く言葉に出来ないなぁ…………なんか、まだまだだね、私って」

 

 頭を抱え、懊悩するなのは。それは贅沢な悩みであることは自覚していた。最初から豊潤な魔力を有していた故の、贅沢な悩み。だからこそ、こんなところで足踏みしていることに、なのはは焦りを覚えていた。

 もっと、誰かの役に立ちたい。かつてそれが出来なかったことに対する反動が、今になって押し寄せてきたのだった。

 すると、レイジングハートは「大体言いたいことは分かった」といったように、数度点滅した。

 

《Take it easy.There’s more to come,master(焦る必要はありません。これからですよ、マスター)》

 

「……レイジングハート……」

 

 短い言葉。だが、変に飾った励ましを受けるよりか、そっちの方がずっと心に染みた気がした。

 さっき彼女は、自分はなのはのデバイスだから、と言ったが、それは間違っている。

 その程度の関係などではない。初めて自分を心から受け入れたレイジングハートは、自分の半身と言ってもいい。普段が当たり前すぎて思いもしなかったが、今改めてなのははそう感じた。

 なのはは肺に溜まっていた重たい空気を吐き出し、レイジングハートに向き直った。

 

「……ん。頑張る。ゴメンね、変なこと言っちゃって」

 

《Don’t worry.(お気になさらず)》

 

 そうする内に、部屋の中央にミッド式の魔法陣が出現した。どうやら向こうの方で準備は整ったらしい。

 気を取り直して、なのはは立ち上がる。そして机の上に置いていたレイジングハートを手に取り、微笑みかけた。

 

「行くよ、レイジングハート」

 

《Ok.(了解です)》

 

 なのはが魔法陣の中心に立つ。すぐに転送ポートが開き、魔力光が部屋全体を満たす。そして次の瞬間には――

 

 

 悩みもある。辛い時もある。だけど、それでもやっぱり自分を支えてくれる人がいる。

 自分では気づかないことを、周りのみんなは教えてくれる。

 そんな毎日が、とても愛おしい。

 そしてなのははそっと思う。

 何でもないこの時が、いつまでも続けばいいのにと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、永遠なんてものはない。

 何もかもは、いつかは終わる。

 それがどのような形で降りかかるのか、今はまだ誰も知らない。




はい。全編通しての日常シーン終わりました。
あ、ちなみにアリサやすずかはこの後もちゃんと出演予定あります。
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