Magical Girl Lyrical NANOHA ZERO   作:shimoyuki

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戦闘シーン難しい。


1話 『予兆』 ③

 時間は前後して――四月二十三日、日曜日。

 時空管理局本局A4区画。

 デスクワークに勤しんでいたクロノは、そのコール音で一旦手を止めた。

 いつしか眼前に浮かび上がっている空間モニターにタッチし、音声受信を許可する。

 

「こちら総務部、クロノ・ハラオウンだ」

 

「クロノ執務官、ライン110より通信が入っています」

 

「分かった。通してくれ」

 

 一度空間モニターが閉じ、再び今度はもう一回り大きいそれが出現する。今度は画面に見知った人物が映っており、クロノは少し肩の力を抜いた。

 

「セシルか。何の用事だ?」

 

 短髪の健康そうな顔立ちのその男の名は、セシル・マクミラン。役職は執務官兼古代遺物管理部機動二課課長。歳はクロノより五歳年上の十九歳。とは言え士官学校からの旧友であり、エイミィと同じくクロノが気兼ねなく話せる数少ない一人だ。

 セシルは堅苦しいクロノの言葉に、やれやれと肩を竦めるモーションを見せる。

 

「おいおい連れないなぁ。友人同士が顔を合わせたら、まずは軽く世間話って相場が決まってるだろ?」

 

「知らないよ。僕は今忙しいんだ」

 

「まぁまぁンなこと言わずに。……でさ? どうなの? 最近エイミィちゃんとの仲は」

 

「……切るぞ」

 

「あーーータンマストップ待て待て待て! ったく相変わらず冗談が通じねぇ奴だな。そんなんじゃこの先上手くやってけねぇぞ?」

 

「余計なお世話だ」

 

 お節介を焼くセシルに、クロノは盛大に溜め息を吐く。こう見えてセシルは敏腕執務官として局の中でも一目置かれている存在で、人望もこう見えて厚い。執務官試験も一発でパスしたこともあって、クロノも少なからず尊敬している。ただ一つ、この軟派な性格さえもう少し改善してくれれば、もう言うこと無しなのだが……

 昔からクロノを弟分のように可愛がってくれることに不快感は抱かないクロノだったが、このテンションには当分まだ慣れそうにはなかった。

 

「で? 用件は何なんだ?」

 

「あぁ、そうそう。ちょっと急なんだが、頼み事がある」

 

「……面倒事の間違いじゃないだろうな」

 

「まぁそう言わずに――古代遺物探索部隊に同行する武装隊員を五人ほど派遣してほしい」

 

「? 何でそれを僕に言う。そういった申請は運用部に頼むものじゃないのか?」

 

 クロノが渋い顔を見せると、セシルは少し表情を引き締めて続けた。

 

「まぁそうなんだが、出向する所がちょっと厄介でね……探索先の観測指定世界が第二種危険区域なんだ。君の知り合いにさ、確か腕の立つ新米魔導師がいただろう? ぶっちゃけた話そこまで重労働じゃないと思うし、現場に慣れるためにもいっちょどうかなぁ、と思ってみたんだが」

 

「……そういうことか」

 

 管理局法で、第二種危険区域へ赴く際には出向する魔導師に、最低二人はAAランク以上の魔導師をつけることが定められている。

 セシルが言っているのは、もしかしなくてもなのは達のことを示しているのだろう。

 

「正直緊急の時を除いて、運用部に頼んでもなかなか申請通んないんだよなぁ。ましてやAAランク以上の魔導師なんてすぐに捕まらないだろうし。大体ロストロギア絡みなんだから緊急に決まってんだろうが。ったくこれだから縦割り組織はいけない」

 

「君もその内の一人だろうに……。て言うかそれが本音か。それで、探索日はいつなんだ?」

 

「一応流動的に調整出来るが、早ければ早いほどいい。明日とか」

 

「明日か……」

 

 スケジュールを確認すると、明日はなのはとフェイトは模擬戦の訓練が入っている。とは言え、その時間も三十分程度。ウォーミングアップと考えれば、そこまで支障とはならないだろう。

 

「ひとまず彼女らに連絡を取ってみる。返答が入り次第すぐに連絡する」

 

「オーケー、頼んだ。それじゃ――」

 

「あ、ちょっと待て。一つこちらからも訊ねたいことがある」

 

「ん? 何だ?」

 

「指定観測世界の第二種危険区域と言ったな。……探索指定遺物について、何か情報はないのか? 武装隊員を率いて調査ってことは、既に初動調査は終わってるんだろう? そんな場所に赴くのなら、少しでも情報が欲しい。なのは達にも伝えれることは伝えとかないといけないしな」

 

 セシルからの返答はすぐだった。

 

「――ない。と言うか、それを知る権限は俺達にはない」

 

「……どういうことだ?」

 

「俺にも分からん。実際この調査は委託でな、だがその依頼先が伏せられてるんだよ。俺だって部長に訊いたけど、適当にかわされちまった。だから今のところ俺はそれに従うしかないって状況」

 

「…………」

 

 不穏な何かを感じ、クロノは暫し思案する。指揮官レベルの人間にさえ詳しい情報が伏せられたままの任務など、不安に感じるなと言う方が無理な注文だ。それがロストロギアに関するものならば、尚更である。

 そうなると、任務を指揮しているトップは一体――

 難しい顔をしているクロノを見て、セシルは嘆息しながら、

 

「まぁあんまり深く考えるのもアレかもしれねぇけどな。たまにこういう案件もあるもんだよ、管理局には。組織ってのはそういうもんだ」

 

「まぁ、な……」

 

「他に訊きたいことは?」

 

「いや、特にもうない。じゃあ後ほど」

 

 通信が終わり、空間モニターが閉じられる。

 ……何かが引っかかる。セシルはそこまで気に留めてないようだったが、やはり何かがおかしい。かと言って、上層部からそう言われているのならば黙って従事するしかないのだが……

 

「はぁ……やっぱり面倒事じゃないのか……?」

 

 そう呟きつつ、クロノはまずなのはに連絡しようと、机に備え付けられた通信用の受話器型デバイスを手に取った。

 

 

~・~・~・~・~

 

 

 模擬戦が始まって五分三十秒。既に戦局は固定されつつあった。

 ヴィータのシュワルベフリーゲンによって繰り出される鉄球を高速飛翔で回避、加えて迎撃しつつ、なのはは一度距離を置いてヴィータと対峙する。

 そこでなのはは、ヴィータの後方にふと目を遣った。まるで火花のように紫色と金色の魔力光が弾け、拮抗し合っている。向こうは向こうで白熱している様子だった。

 

「おいさっきから逃げてばっかじゃねーか! 勝負しろ勝負!」

 

 先程から中~遠距離に形勢を持ち込まれ、痺れを切らしたヴィータが怒鳴り声を上げる。

 

「別に逃げてない! これでも頑張ってるの!」

 

 そう言う通り、なのはは逃げているわけではない。これでも間合いを計ろうと必死なのだが、近接の鬼であるヴィータはなかなかそうはさせてはくれない。一度体勢を崩したら最後、ラケーテンハンマーで吹っ飛ばされてしまうだろう。防御力には自信があるなのはだが、あれを真っ向から受け切れるとは言い切れないのが本音だ。

 だからと言って、このまま硬直状態にするつもりはない。そろそろアレを仕掛けるべく、なのははレイジングハートを握る手に一層力を込めた。

 

「そっちがその気なら、ぶっ潰すまでだッ!」

 

 ヴィータが再び特攻をかましてくる。

 反面なのはは落ち着いて、精神を研ぎ澄ませる。

 

「アクセル――」

 

 なのはの周囲に魔法弾が瞬時に出現する。

 その数、最大発射限界数の十二発。

 誘導効果を付与した魔力弾を制御すべく、思考が焼き切れるほど集中する。

 そして、カッと目を見開いた。

 

「シューターッ!」

 

 目にも止まらぬ速さで、魔法弾がなのはの元から離れる。

 発射されたアクセルシューターは、予測不能な軌道を取りながらもヴィータへと一気に迫る。

 

「こな――くそッ!」

 

 ほぼ反射的にヴィータはフィールド出力を上昇。そのままスピードを緩めず突っ込んだ。

 四方八方から誘導弾がヴィータへと着弾する。爆発が起き、ヴィータの姿がたちまち猛煙に包まれる。

 だがそれも束の間。ヴィータはラケーテンフォルムと化したグラーフアイゼンを構え、煙の中から彗星のように飛び出してきた。不安定な体勢になりながらも、ダメージはほぼなく、グラーフアイゼンも健在である。

 

「――ッ!」

 

 と、次の瞬間、目の前の光景にヴィータは瞠目する。

 既になのははレイジングハートの標準をヴィータへと向けていた。その形態はバスターモード。先端部分からは、ほぼチャージ済みの魔力が唸りを上げていた。

 なのははヴィータの姿を再確認すると同時に、トリガーにかけた指を一気に引いた。

 

「バスターーーッ!」

 

 極太の魔力砲撃が、容赦なく放たれる。

 しかし、ヴィータが不意に、不敵な笑みを浮かべた。

 

「へっ! その程度お見通しだっての!」

 

 その軌道は分かっていたと言わんばかりに、ヴィータが体勢を崩したまま一気に急降下する。標的を失い、虚しく空を翔けるデバインバスターの真下へと、ヴィータは潜り込む形で回避した。

 

「なっ!?」

 

 今度はなのはの方が、驚愕に目を見開く番だった。デバインバスターの稼働中は、自分自身は基本的に動けない。故の固定砲台。今からバスターをキャンセルして回避行動を取ろうとするなのはだったが、あっという間に下方からヴィータが急上昇してくるのが見えた。

 間に合わない。恐らく急場凌ぎの結界程度じゃ、ラケーテンハンマーを防げやしないだろう。

 焦りの表情を貼りつかせるなのはに、更にブーストをかけたグラーフアイゼンが迫る――

 

「レイジングハート!」

 

 唐突になのはが叫んだ。その不可解な行動に、ヴィータが眉を顰める。

 異変はすぐに察知出来た。

 先程全弾受け切ったと思われたアクセルシューターだったが、一発だけなのはの後方に待機状態となっていた。その瞬間ヴィータは悟る。恐らく先程のは全て囮。そしてディバインバスターも囮。全てはこの不意打ちのための布石……

 

「クソッ!」

 

 回避しようとヴィータは滑空の軌道を変えようとするが、どこに逃げるかを考えている内に手詰まりになる。さっきの予測した上での回避行動とは、わけが違う。

 

「――シューターッ!」

 

 号砲。

 

 なのはの声に呼応するように、レイジングハートに操作を任せたシューターが発射する。

 この一撃にまでコントロールの制御が及ばなかったなのはだが、こっちはこっちでレイジングハートに全てを委ねている。最後の締めをデバイスに任せるという、一般常識からしたら賭けのようなものだが、なのははそうは思わない。

 なのははレイジングハートを信頼している。ただそれだけのこと。

 だから何も憂うことなんてないのだ。

 

 ――その筈だった。

 

「…………へ?」

 

 間の抜けた声を漏らしたのは、なのはとヴィータ、二人共だった。

 計算上は間違いなかった。ラケーテンハンマーが届くよりも前に、アクセルシューターがヴィータを急襲する筈だった。

 だが結果として、シューターはヴィータの側を掠めるようにして遥か後方へ飛んで行ってしまった。

 

 それを意味するのは、レイジングハートの失策。本来なら、あり得ない筈の軌道演算ミス。誤差にしてほんの数センチ。しかし、その数センチは勝負の結果を明白に左右する、あまりに遠い距離だ。

 なのはは瞬時の内に茫然とする。今までレイジングハートに魔法の制御を任せて、こんなことは一度たりともなかったというのに……

 

 まさかの展開に混乱するなのは。ハッと気付いた時には、ヴィータが振り下ろしたグラーフアイゼンが、すぐそこにまで接近していた。

 

「食らえぇぇっ!」

 

「――きゃあっ!」

 

 中途半端な防御結界を展開するも、その程度ではヴィータは止められない。

 パリィッ! とガラスが割れたような甲高い音と共に、結界が破られる。

 なのはは思いっきり後方に吹っ飛ばされ、そのまま滑落した。

 

 

 勝負は決した。しかし、両者ともどうも煮え切らない思いを抱えたままの決着だった。

 

 

~・~・~・~・~

 

 

「なのは、いる? ――って、まだ着替えてなかったの? もうそろそろ出ないと、間に合わないよ?」

 

 先に飲み物を買いにシャワールームの更衣室を出たフェイトが戻ってくると、なのははまだバリアジャケット姿で部屋の中央の長椅子に座っていた。

 フェイトの入室に気付き、なのはは顔を上げる。

 

「あ、フェイトちゃん……うん、すぐ行く。ちょっと外で待っててくれる?」

 

「う、うん……」

 

 どこか表情に影が落ちているなのはに、フェイトは少し心配そうな目を向ける。

 

「えっと、大丈夫? なのは。もしかして、さっきの模擬戦で怪我とかしたの? なんかヴィータのラケーテンをまともに食らっちゃったとか聞いたけど……」

 

「へ? あぁ、そのことなら大丈夫大丈夫。特に診てもらうほど怪我はないよ?」

 

「そう、なの?」

 

「そうなの。だから心配しなくていいの。ほら、行った行った」

 

 体よくフェイトを追い出し、なのはは再び椅子へ腰を下ろした。

 そして、今まで握っていた手を開き、掌の上のスタンバイモードのレイジングハートへと話しかけた。

 

「――じゃあ、もう機能は正常なの?」

 

《Yes. I'm sorry for causing you worry.(はい。心配を掛けて申し訳ないです)》

 

「うん……でも、あの時何が起こったのか、よく分かってないんだよね?」

 

 数秒の沈黙の後、レイジングハートは答えた。

 

《…Yes. But I'd say, I felt like someone had interfered with me.(……はい。ですが、強いて言うなら、何者かが私に干渉してきたように感じました)》

 

「干渉……? どういう、意味?」

 

《It was a feeling like Someone was controlling me.(誰かが私をコントロールしていたような、そんな感じです)》

 

「…………」

 

 発言の意味がすぐに理解出来ず、なのはは怪訝な表情を浮かべる。

 とすると、その何者かがレイジングハートに何らかの遠隔操作系の魔法をかけ、意図的にデバイスのOSを乗っ取ろうとしたということだろうか。

 

 だが仮説は出来るものの、現実問題としてはまずあり得ないと言える。そもそもここは管理局内であり、そのような違法な魔法を使う人間などまず存在しないだろう。その上、訓練室にはユーノの強固な防御結界がされており、これを突破するとなるとまずユーノ自身が異変に気付く。最後にレイジングハートも、自らの機能の一つとして厳重なファイアウォールを備えている。

 以上のことを考慮すると、AIやシステムに影響するレベルの魔法の影響など受けない筈……なのだが……

 

「……今は、何も感じない?」

 

《Yes. That is absolutely fine.(はい。問題ありません)》

 

「うーん……」

 

 なのはが顔を上げ、時計を見る。シャワーを浴びる時間も考えると、そろそろ本気で集合時刻に遅れそうな頃合いだ。

 本来なら技術部へとメンテナンスに行った方がいいのだろうが、土壇場で人員に穴を開けてしまうことに対して、なのはは気が引けた。

 

(レイジングハートもこう言ってるし、それに任務は戦闘になる確率は低いってクロノ君は言ってたし……)

 

 少し考え、なのははレイジングハートに語りかける。

 

「……もし次ちょっとでも変に感じたら、すぐに言ってね?」

 

《Absolutely.(もちろんです)》

 

 ハッキリとしたレイジングハートの返事を聞き、安堵を取り戻すなのは。

 ともあれ今は目先の仕事だ。これ以上フェイトを心配させる前に、なのはは気持ちを切り替えて立ち上がった。

 

 

~・~・~・~・~

 

 

~時空管理局本局・中央センター、第三応接室~

 

 はやてはレティから聞かされた一連の命令を受け、暫く声を出すことすら出来なかった。

 内容は理解出来た。だが、そうする意味が全く分からない。

 考えても考えても、納得するどころか疑念は更に膨れるばかりだった。

 

「…………それは、どういうことですか?」

 

 ようやく絞り出したその言葉に、レティはいつになく厳しい表情を崩さない。

 

「今報告した通りです。質問は受け付けません。先に言ったように、これは極秘任務です。ヴォルケンリッターを除き、他言は許されません。もし他者への情報漏れが発覚した場合、処罰の対象になるので、彼らにもよく聞かせておくようにして下さい」

 

「……納得出来ません。その指令に対する、意義と目的の説明を要求します」

 

 はやても負けじと食い下がる。こんなこと、詳しい説明もなしに、はいそうですか、と納得出来るわけがない。

 そもそも何もかもおかしい。何故それを私に言うのだろうか。本人に直接言えばいいことを、どうして私に……?

 あまりに判断材料が少なすぎて、はやてはとにかくレティへ詰め寄ることしか出来ない。

 だがレティは事務的な口調で、はっきり言い放つ。

 

「それを知る権利は、今の貴女にはありません」

 

「そんな……っ」

 

 頑ななレティの態度に、はやては思わず口を噤む。ここまで問答無用だと、首を縦に振ることなんて出来そうにない。確かに組織の中にいればそういう理不尽もあることははやても知ってはいたが、実際自分の身に降りかかると話は別だった。

 すると、レティは幾分か表情を和らげる。眼鏡の奥の眼光が少し弱まった。

 

「……はやてさん。勘違いしないで欲しいのだけれど、これは貴女に『敵』になれと言っているわけではないの。寧ろ、時として救うことになり得るわ。貴女だって、何も分からないまま目の前であの子達が傷付くのを見たくないでしょう?」

 

「だからって、そんな皆を裏切るようなこと……」

 

「その表現は間違っているわね。そもそもこの事案には第三者の介入が必須なの。恐らく当事者に伝えても、土壇場で冷静に事を対処出来る可能性は限りなく零に近いでしょうね。もし貴女が同じ立場なら、そう思うでしょう?」

 

「っ……そんなこと――」

 

「分からない、と? 確かに信頼することは大切ね。だけど、全てをそれで片付けることは出来ないわ。……それを、理解してくれるかしら?」

 

「…………」

 

 聡明なはやては、言葉に出さずとも確かに理解した。その現実を受け入れることが出来るかどうかは別として。

 それは十一歳の少女が請け負うには、あまりに酷な責任だった。

 しかし、これ以上有無を言わせないレティの態度を見て、はやてはぐっと唇を噛んだ。

 まさかたった一人で決断することが、これほどまで辛いことだとは。はやては改めて、今まで当たり前のように意思疎通してくれてきたヴォルケンリッターが、自分を支えていてくれたのだと気付かされた。

 

「今日ここに貴女だけを呼び出したのは、そういうわけよ。恐らく私から彼らに直接話したところで、紛糾するのは目に見えているし。……これは彼らの指揮官としての貴女に対する任務とも言えるわ」

 

 その言葉を聞き、はやてはポツリと呟く。

 

「私を……試そうとしてるんですか?」

 

「……そう言われても仕方ないかもしれないわね。だけど、これから絶対に必要となってくる資質よ。私は、貴女だから出来ると思って呼び出したの。そうでなければ、最初から交渉の余地はなかったわ」

 

「もし私が、ここで嫌だと言うたら……?」

 

「……その時はその時よ。だけど、そうする気もないんでしょう?」

 

「……………………」

 

「本当ならもっと穏便に事を図りたかったのだけれど、事態がそうしてくれないわ。本当はもっと荒事に持ち込む案も出たのだけれど、これが最大の譲歩策として何とか通すことが出来たの。だから――よろしく頼むわよ」

 

 レティは先に席を立ち、はやての返事を待たずして退出した。

 残されたはやては、暫く座ったままの体勢でじっとしていた。

 そして深く、深く、息を吐く。

 

「……どうしたらええんやろ、ほんまに……」

 

 誰にともなく漏らした言葉は、そのまま虚空へと溶けていく。

 自分に突きつけられた、この身に余る程の責任ある任務。

 レティはああ言っていたが、果たして自分もそれに直面した時、冷静に対処することが出来るのだろうか……

 と言うよりかそれ自体よりも、もっと大前提のことに考えを巡らせたはやては、今一度眉を顰めることとなった。

 

 

「管理局で、何かが起こってる……?」

 

 

 

 大きな何かが、知らない所で動いている。

 漠然としながらも、心のどこかで確実性を感じるはやてだった。

 

 




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