インフィニット・オーケストラ   作:剣とサターンホワイト

11 / 32
主人公小島航verが書きたい…と思ったり、マーチから短編でも1つ書こうかな…なんて思ったりしちゃってるけど、今はこっち…インフィニット・オーケストラが優先だ!

そんなわけで、前回の続きでござる。

ちょっとしたキャラ崩壊が起きてるので、嫌悪感その他マイナス感情を感じたらブラウザバックで早く逃げた方がいいッスよ。

OKと言う方、毎度有難う御座います。ようこそ私の描く平行世界(パラレルワールド)へ…


1-3:不穏な雰囲気? 入学初日の男たち

――3限目開始時刻

 

「早く席につけ、授業を始める」

 

千冬が戻ってきて生徒に着席を促す。

 

「まずこの時間は再来週に行われるクラス対抗戦に出場する、クラス代表を決める」

 

「先生、クラス代表って何をするんですか?」

 

1人の生徒が質問した。

 

「クラス代表はそのまんまの意味だ。対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会への出席…ま、クラス長だと思ってくれていい。ちなみにクラス対抗戦はクラスの実力の推移を測るものだ。現時点ではどのクラスとも大した差はないだろうが、競争は向上心を生む。1度決まったら1年間は変わらないのでそのつもりで。…あと自薦他薦は問わないぞ」

 

千冬の説明が終わると、少し教室内がざわついた。大方、誰がいいかを相談しているのだろう。しばらくすると1人の生徒が手を挙げた。

 

「はいっ!私は織斑くんがいいと思います!」

 

「えぇっ!?お、俺ぇ!?」

 

急に自分の名を出され一夏は焦った。

 

「あ、私も!」

 

最初の推薦から賛成票がどんどん入っていく。

 

「はーい!じゃあ私は、竹内くんがいいと思いまーす!」

 

「えっ、僕?」

 

竹内もまさか自分が選ばれるとは思っておらず、少し驚いた。

 

「織斑と竹内か…他にはいないか?いないならこの2人で多数決を採るが…?」

 

「ちょ、ちょっと待った!俺はそんなのやらないぞ?!」

 

採決をとる雰囲気になったとき一夏が焦って抗議した。しかし…

 

「自薦他薦は問わないと言った。他薦されたものに拒否権などない。お前も選ばれた以上覚悟を決めろ」

 

「いや…でも…」

 

「それとも何かお前は。推薦した人たちの厚意を無げにするつもりか?」

 

「うッ…」

 

そこを言われると一夏とて何も言えなくなってしまう。一方、竹内は…

 

「(うーん…自信はないけど、せっかく推薦してくれたんだ。なら、頑張ってみようかな)」

 

…すでに覚悟を決めたようだ。

 

「待ってください!こんなの納得できませんわ!」

 

その時、割って入る声があった。最早耳馴染みとなったこの言葉遣い、セシリア・オルコットである。

 

「このような選出は認められません!大体男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!私に、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を1年間も味わえとおっしゃるのですか!?」

 

彼女の叫びはまだまだ止まらない。

 

「実力からいけば、私がクラス代表になるのが当然。それを物珍しいという理由で極東の猿にされては困りますわ!それに私はこの島国までISの修練をしに来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

 

セシリアの主張はいつしか日本そのものへの侮辱になっていた。

 

「!?」

 

その時、竹内はセシリアを見るクラスメートの目が冷えきってることに気付いて少し怯んだ。しかし、熱くなったセシリアはそれに全く気付かず、彼女はさらに捲し立てる。

 

「大体、文化としても後進的な国で暮らすこと自体、私には耐えがたい苦痛で…」

 

ここまで言いかけたとき、

 

「って言う割りには、日本語お上手ですよね…」

 

竹内がポツリと呟いた。頭の中で考えていたことが口をついて出てしまったようで、本人も「あ」という表情をしている。

 

「………………!!」

 

しかしそれは彼女にとって皮肉以外の何物でもなかった。

 

「何言ってるんだよ優斗、そうじゃねえだろ!」

 

流石にこれには一夏もツッコミをいれる。そして今度はセシリアの方を見て…

 

「それにお前も『文化としても後進的』って、イギリスだって世界一不味い料理何年覇者だよ!」

 

トドメの一言を放った。彼もまたセシリアの発言に腹を立て、我慢の限界に来たのだ。

 

「…あなたたち…この私を…私の祖国を侮辱しますの…!?」

 

「先に侮辱したのはそっちだろう?」

 

「んー…僕はそういうつもりはないんですけど、言いたいことが少し…まずはオルコットさん、周りをよくご覧ください…」

 

竹内は立ち上がって口を挟んだ。そしてセシリアに周囲を見回すように言った。セシリアは言われた通り周りを見ると…

 

―――ジトー…

 

「…!?」

 

ほぼ全員の生徒が彼女に冷ややかな視線を向けているのにようやく気付いた。

 

「それだけじゃない、先生方の顔もよーくご覧ください…決して目をそらしてはいけません…」

 

クラスメートの雰囲気に呑まれたセシリアは竹内の言葉に逆らえなくなり、言われた通り千冬と真耶の方を見た。千冬は不機嫌度5割増な表情でセシリアを睨み付けているし、真耶は逆に物凄く悲しげな顔をしている。

 

「ほぅ、それは私たちに対する侮辱と受け取ってもいいのだな?」

 

「あ、その…いえ、そんなつもりは…」

 

ドスの利いた千冬の声にたじたじになるセシリア。千冬の威圧感は教室の中央辺りにいるセシリアに向けられたものだが、教卓の真ん前の席の一夏をもその余波で萎縮させている。後に彼は「あんなに機嫌の悪い千冬姉は初めて見た」と語っている。

 

「オルコットさん…あなたはさっき、ここではやってはいけないことをやってしまった…それはこの国…日本を侮辱することです。日本を侮辱すること、すなわち、僕や織斑くんを含めたクラスメートの大半と、このクラスの担任で元日本国家代表の織斑先生、そしてあなたが使っているISを開発した篠ノ之博士を侮辱するに同じ。そういうことを理解した上での発言ですか?」

 

「くぅ…」

 

セシリアはようやく、自分の発言の重大さに気付いた。

 

「確かに実力から言えば、あなたがクラス代表をすべきでしょう。ですが人望を失ったあなたが代表になっても、誰もついては来ない。これじゃ代表でもリーダーでもない、ただの独善者ですよ?僕や織斑くんが気に入らないならそのことだけ言えばいいのに、そうやって余計な敵を作る必要もないでしょう?」

 

「……………ッ!!」

 

セシリアは悔しくて怒りに震えてる。しかし竹内の言う通りなので何も言い返すことは出来なかった。

 

「あとこれは2人に言えることですが、互いの国の悪口を言い合うこと自体ナンセンスですよ。僕たちはクラス代表を決める話し合いをしているのに、関係のないことで互いの足の引っ張り合いをしているなんて、おかしくないですか?」

 

「………」

 

「え…?」

 

竹内に言い負かされたセシリアを「ざま見ろ」と思いながら見ていた一夏だったが、急に矛先が自分に向いたことに驚き、軽くショックを受けた。

 

「………本当は穏便に話し合いで決めたかったんですが、どうもそんな簡単に済む状況じゃなくなってきましたね。…いっそのこと、実際に戦って白黒はっきりつけた方がいいのではないでしょうか?……すみません織斑先生、勝手に長々と喋ってしまって……」

 

竹内は千冬に謝り、椅子に座った。冷静になって「少し言いすぎたのではないか」と、今の自分の行いに反省をしている。

 

「フン、そんなことは別に構わん。それでオルコット、お前の演説などもう聞くつもりはない。この選出方法に納得がいかないのならお前はどうするつもりだ?」

 

「…もちろん、立候補しますわ。そして、あなたたちに決闘を申し込みます!」

 

セシリアが一夏と竹内を交互に睨む。

 

「…あなたたち2人を倒し、このセシリア・オルコットこそがクラス代表にふさわしいことを証明して見せましょう!」

 

彼女はすごく張り切っている。どうやら、地に落ちた己の人望を、決闘に勝つことで取り戻そうと目論んでいるらしい。

 

「ああいいぜ、四の五の言うより分かりやすい」

 

「…焚き付けたのは僕ですしね、やりましょう」

 

一夏も決闘に賛成と声を張り上げ、竹内も了承した。

 

「それで、ハンデはどれくらい必要ですの?」

 

余裕たっぷりにセシリアが尋ねるが…

 

「ハンデなんかいらねえよ」

 

「僕もです。むしろ、ノーハンデマッチを希望します」

 

一夏と竹内はその申し出を突っぱねた。すると…

 

『ワハハハハハハハ!』

 

大半のクラスメートが笑いだした。

 

「2人ともそれ本気で言ってるの?」

 

「男が女より強かったのは昔の話だよ」

 

「そうだよ、ハンデつけてもらいなよ」

 

そして今度は2人にハンデをもらうように促す。

 

「男に二言はない。ハンデは要らない」

 

一夏は言いきった。

 

「それより、皆はいいんですか?これはクラスの代表を決める戦いなんですよ?自分達のリーダーをそんなテキトーなやり方で決めちゃって良いんですか!?もしも仮に…仮にハンデをもらった僕や織斑くんが勝ったとしても、オルコットさんはもちろん皆だって『ハンデがあったから…』って、納得しないでしょう?」

 

「………」

 

竹内の指摘を受け、みんなさっきまでの笑いは消え、押し黙った。どうやら図星らしい。

 

「僕だってハンデをもらって勝つより、本気で戦って負けた方がスッキリします。ですからオルコットさん、手加減も遠慮も一切無用です。僕が気に入らないのなら、全力で潰していただいて結構です。僕も全力で抗ってみせますので…!」

 

完全なる宣戦布告。教室には異様な空気が立ち込めている。

 

「話はまとまったようだな。では対決は1週間後の月曜日、場所は第3アリーナ、クラス代表候補者3名による総当たり戦を行う。各々対決に向けてしっかりと準備をしろ。ではこの議題については以上、授業に戻る」

 

千冬が締め括り、通常の授業に戻った。しかしそのあとずっと教室の空気は何となくピリピリしていた。

 

――そしてその日の放課後。

 

1年1組の教室には竹内と一夏の2人だけが残り、今日の授業の復習をしていた。

 

「…全然わからん…何でこんなに複雑なんだ…」

 

頭を抱えつつも、なんとかこなしていく一夏。竹内もまたともに参考書を見ながらさらに理解を深めていく。

 

「失礼しまーす…って何だ君たちだけかぁ」

 

しばらくすると岩崎が教室に入ってきた。

 

「…誰だ?」

 

「あ、岩崎くん。どうかしたんですか?」

 

一夏は突然の来客に疑問をもらし、竹内は親友の来訪にどうしたのか尋ねた。

 

「うんうん、誰と尋ねられれば自己紹介をしなければ…僕は岩崎仲俊、君と同じ男性IS操縦者だ。あと年齢は君より歳上の16歳だけど、気にせず接してくれたまえ。そして何しにここへ来たのかと言えば、織斑先生が僕に話があるらしく、1組で待ってろって担任の誉田先生に言われたのでここに来たんだよ」

 

「あ、3人とも揃っていたんですね」

 

岩崎が説明を終えたちょうどその時、真耶と千冬が教室に入ってきた。

 

「えっとですね、3人の部屋が決まりました。これがお部屋の鍵になりますので、なくさないでくださいね」

 

真耶が事情を説明しながら3人に鍵を渡す。

 

「俺たち男子の入寮はまだ先だったはずじゃありませんでしたか?前に聞いた話じゃ1週間は自宅から通学してもらうって話だったと思うんですが…」

 

「本当はそのつもりでしたが、事情が事情だけに一時的な処置として部屋割りを無理矢理変更したらしいです」

 

一夏の疑問にも、真耶は丁寧に答えていく。

 

「部屋番号を見たところ僕たち3人ともバラバラの部屋のようですね…さっき無理矢理部屋割りを変更したって言ってましたけど…まさか女の子と相部屋ですか…?」

 

「…ごめんなさい…岩崎くんの言う通り、女の子と相部屋です…」

 

真耶が申し訳なさそうに言うと、竹内と一夏の顔が青ざめた。

 

「「(それって結構マズいんじゃ…?)」」

 

対して岩崎は小さくため息をついた。

 

「う~ん…そういうことなら仕方ないですよね。何せ世界唯一のIS教育機関ですし、国際的な問題も色々あるでしょうしね、うんうん」

 

彼は真耶を励ますように言うと、今度は青ざめた2人を見て

 

「ってことだから、君たちも理解してあげようよ。なぁに、しばらくの辛抱さ。そうですよね?山田先生」

 

「は、はい!1ヶ月もすれば調整が利くと思います」

 

「ね?3年間のうちのたった1ヶ月我慢すれば良いだけの話だ。だからそんな青い顔はしない!先生方だって大変なんだから」

 

「「…は、はい…わかりました…」」

 

岩崎の口調は決して荒くも厳しくもないのだが、妙な威圧感があった。それゆえ、2人は首を縦に振るしかなかった。

 

「えーっと…部屋の事はわかりましたから、とりあえず荷物を取りに家へ戻ってもいいですか?」

 

一夏が開きっぱなしだったノートを閉じながら尋ねた。

 

「あ、いえ、荷物なら…」

 

「私が手配しておいた。着替えと充電器があれば十分だろう。他に必要なものがあれば休日にでも取りに行け」

 

真耶の言葉を遮り、千冬が言った。一夏は手配された荷物の内容を聞いて苦笑した。

 

「竹内、岩崎、お前たちの荷物もすでに送られて、今はそれぞれの部屋にある。あとでお礼を言っておけよ」

 

「「はい、わかりました」」

 

さらに真耶の説明は続く。

 

「じゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は6時から7時、寮の1年生食堂で取ってください。ちなみに各部屋にはシャワーがありますけど、大浴場もあります。学年ごとに使える時間が違いますけど、残念ながら3人はまだ使えません」

 

「え?何でですか?」

 

一夏が少し残念そうに尋ねる。

 

「あー織斑くん?ここはほぼ女子高みたいなものだよ。僕たち以外はみんな女の子…ここまで言えばわかるよね?さもないと、鉢合わせちゃうよ」

 

岩崎が説明した。それを聞いた一夏はその状況を想像してしまい、顔を赤く染めている。

 

「お、織斑くん!?女の子と一緒にお風呂に入りたいのですか!?いけませんよ!」

 

真耶が暴走してしまった。どうやら真耶も岩崎の言った説明内容を想像してしまったようだ。

 

「い、いえ!入りたくないです!」

 

「ええっ!?女の子に興味がないんですか!?それはそれでまずいのでは…」

 

一夏は誤解されてはまずいとすぐ否定するが、言い回しが悪かったのか、真耶はさらに暴走する。

 

「「………………」」

 

一方、蚊帳の外におかれる形になった竹内と岩崎は真耶の暴走に関して何もすることができない。自分(達)では手に負えないと判断したようだ。

 

「山田先生、落ち着いてください」

 

そんな真耶を止めたのは千冬だった。今のたった一言で真耶の大暴走を止めてしまった。その様子に男子生徒3人は呆気にとられていた。

 

「私たちはこれから会議だ。お前たちも早く寮へ帰れ」

 

「道草しちゃダメですよ、まっすぐ帰ってくださいね」

 

そう言うと教師2人は教室を出た。

 

「…道草食うような距離、ないよな?」

 

「うんうん、要するに余計なところには行くなって事だろうね」

 

「はぁなるほど…僕たちも寮へ行きましょうか」

 

3人それぞれ一言ずつ漏らすと、ようやく帰り支度をして家路(寮路?)についた。

 

―――――――――

 

「なぁ、2人はIS学園(ここ)に来る前からの知り合いなのか?」

 

帰り道、一夏が竹内と岩崎に尋ねた。

 

「え?まぁそうだけど、また何で?」

 

「いや、何か2人とも初対面にしては仲良いなって思ってな…そうだ。岩崎さんのこと『トシさん』って呼んでいいですか?」

 

「うんうん、もちろん構わないよ」

 

そんな話をしながら歩いているときだった。

 

「ねぇ、そこの君?」

 

後ろから誰かに声をかけられた。声のした方へ振り返ると、そこには水色の髪に赤い瞳の女子生徒がいた。

 

「そこの灰色の髪のキミ、ちょっとお姉さんと話していかない?」

 

誘っている。誰が見てもそう思うであろう様子だった。

 

「誰だ?」

 

「さぁ…?岩崎くんの知り合いですか?」

 

「いやぁ僕も知らないなぁ。ただ…」

 

「「ただ…?」」

 

「うんうん、何となく心当たりはあるかな…」

 

男3人が目の前に現れた人物について議論している。すると…

 

「ん?なになに内緒話?お姉さんにも教えて?」

 

「「うわっ!?」」

 

なんとその彼女は気配を消して3人に接近してきた。いつの間に近くにいたのかと、竹内と一夏は声を出して驚いた。

 

「ふむ…織斑くん、竹内くん、君たちは先に行ってくれ。どうやらこの人は僕にだけ用があるらしい」

 

岩崎は覚悟を決めてその女子生徒の指示に従うことにした。

 

「あ、そうだ」

 

彼女はそのまま岩崎を連れていこうとしたが、ふと思い出したように足を止めた。

 

「IS学園へようこそ、3人の男性操縦者さん。在校生を代表して歓迎するわ!」

 

女子生徒は歓迎の挨拶をして扇子を広げた。そこには「祝・入学」と書いてある。

 

そして彼女は岩崎をつれてどこかへ行ってしまった。

 

竹内と一夏は状況が飲み込めず、しばらく固まっていたが数秒後我にかえり、寮へと急ぐのだった。

 

―――――――――

 

「えーっと、俺の部屋は1025室…だから…ここか。優斗は?」

 

「僕は1030室のようだからもうちょっと先かな?」

 

「そうか、まぁ割りと近くて良かったぜ。じゃ、あとでな…」

 

「って、ちょっと待った!」

 

一夏が部屋に入ろうとしたその瞬間、竹内がそれを止めた。

 

「わっ、何だよ?」

 

「いや、せめてノックはした方がいいんじゃないかな?君だけの部屋じゃないんだから」

 

それを聞いた一夏はここがどういうところかを思い出し、自らを恥じた。

 

「あーそうだった!止めてくれてありがとな」

 

そう言って今度はノックをしてしばらく待った。竹内はそれを確認してから自分の部屋に向かった。

 

―――1030

 

竹内は自分の鍵の番号と部屋の番号を確認し、扉をノックした。

 

「はーい」

 

10秒待たずして中から同室の女子生徒らしき声が返ってきた。

 

「今日から同室になるものですが…」

 

「!?ちょ、ちょっと待ってて!」

 

竹内が中に入っても良いか尋ねようとしたが、相手は竹内の声を聞くなり慌てた様子でそれを遮った。

 

――ガサゴソ、バタバタ、ガタゴト

 

「……………」

 

大慌てで片付けでもしているのか、物音が通路まで響いてくる。

 

「よし、入っても良いよー!」

 

数分後、ようやく入室許可がおり、竹内は「失礼します」と言って中に入った。

 

「いらっしゃい、竹内くん!」

 

「君は…」

 

そこにいたのは同じ1年1組所属…

 

「谷本さん?」

 

「あ、名前覚えててくれたんだ…エヘヘ。竹内くんがルームメイトになるって聞いて、ビックリしちゃった」

 

谷本癒子だった。微笑みながら竹内を出迎える。

 

「えっと…1ヶ月で部屋の都合がつくって山田先生がいってたから、それまでの間よろしくお願いします」

 

竹内が礼儀正しく挨拶をした。

 

「よろしくね、そんなことより早いうちに荷ほどきしたら?」

 

しかし、同い年で堅苦しいのが苦手な癒子は未開封の段ボール箱を指さし、荷ほどきを促した。竹内もそれを見て「そ、そうですね」と彼女に流されるように荷ほどきを開始した。

 

そしてそこから数分がたった頃…

 

「えっとさ、竹内くん…クラス代表のことだけど、セシリアを相手にハンデ無しで戦うって…本当に大丈夫?勝算とかあったりするの?」

 

癒子が話しかけてきた。クラス代表決定戦の事についてのようだが、数時間前の授業中のようなバカにしたような口調ではなく、純粋に竹内の事を心配しているような口調だ。

 

「ハッキリ言って、勝算は何もないですね…僕と彼女じゃ経験値が違いすぎる。ISもこのまま訓練機で戦うことになると今度は性能差も出てくる…最悪運を味方につけるしか…勝ち目はないでしょう…」

 

「…じゃあ1つだけ教えて?今回は織斑先生が『推薦された者に拒否権はない』って言ってたけど、もしも辞退が許されるなら辞退してた?」

 

癒子が尋ねると、竹内は「う~ん」と少し考えてから…

 

「いや、推薦されたのであれば、辞退はしなかった。僕のことを代表に相応しいと思って推してくれたのだから、僕にはその期待を背負う義務がある…どんな思惑があったにしてもね」

 

…と、真剣な表情で言い切った。

 

「ふーん…じゃあ、私は竹内くんを応援するよ。頑張ってね!」

 

癒子は笑顔でエールを送った。

 

「…ありがとう。さっきも言った通り勝てる見込みなんてないけど、みんなをガッカリさせないようにベストを尽くす。…それにまだ1週間も日数がある、できることは全部やるよ!」

 

竹内も笑顔で、それでいて力強く応えた。

 

ちなみにこうして竹内が癒子と仲良くなっている間、一夏はと言えば同室になった箒と何やらトラブルを起こしていたとか…。

 

「一夏ァ!!貴様と言う奴はァァアアア!!!」

 

「ちょっ、待てぇ!誤解だぁ!!」

 

…やれやれ。




クラス代表決定戦に出る一夏に、なんと政府から専用機が与えられることになった。一方竹内には…。そして次の月曜日に行われるクラス代表決定戦に向け、一夏と竹内は別々に鍛練をして「お互い今より強くなって戦おう」と約束をする!

どーもー、ガンオケ白の章をプレイすると高確率で菅原乃恵留をクラスメートに入れている剣とサターンホワイト(花粉症)です。

うーん…セシリアに対しての竹内くん…あのくだりはちょっとやり過ぎた感が否めない…。…けど、彼に言わせないと誰も言わないだろうしなぁ…。

あ、ちなみに竹内くんがセシリアに言った「日本語上手い」発言、私が実際に思ったことを代わりに彼に言わせました。あれだけ日本を嫌うような発言の割りにはずいぶんとまぁ日本語が堪能だなと思ったわけですが…こういう作品において一番ツッコんじゃいけないところですよね…。

そして今回の目玉(…になるのか?)その1、一夏と岩崎の対面。岩崎に対し一夏をタメ口で喋らせるか、それとも敬語で喋らせるかも迷ったところ。最終的には敬語にしました。一夏くんならこの辺の礼儀はわきまえるでしょ。

ちなみに岩崎くんサイドのお話も話数が溜まり次第書こうかなと思っています。彼が何組に入ったのか、また彼が件の女子生徒に連れていかれた理由が明らかになるでしょう。

そして何より目玉(?)その2、竹内くんのルームメイトが"7月のサマーデビル"こと谷本癒子になるとは誰も夢にも思うまい…。と、ルームメイトにしたのは良いけど…彼女のキャラがつかめていないのでまたまたこの先苦労するかもね…。いやぁ見切り発車って恐ろしい…。

最後に、一夏と箒のシャワー上がり鉢合わせ事故なんだけど…あれはノックしたところで避けられた事故とは思えないのです…。ゆえに今作ではこの始末。また一夏くんは今回の主人公ではないので深くは掘り下げない方向でござる。

では、また次回お会いしましょう。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。