インフィニット・オーケストラ   作:剣とサターンホワイト

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UA1000突破!こんな拙作にこれだけの方がどういう形であれ来てくれたことに感謝!…もっともこの1000のうち50~100ほどは私が"見回り"と称して踏んだものですが…


1-4:残された期間は1週間 訓練開始!

翌日の早朝。

 

竹内が先に目を覚まし、欠伸を噛み殺しつつ体を起こした。2つのベッドの間に立っているついたてで隠れていて癒子の姿は見えないが、まだ眠っているようで可愛らしい寝息をたてている。竹内は彼女を起こさないように静かに部屋備え付けのシャワー室へ行った。

 

シャワーを浴び終え、制服に着替えて部屋に戻ってくると…

 

「あ、おはよー竹内くん…ふああ~…朝早いのね~…」

 

ちょうど癒子が目を覚ましたところだった。まだ眠いのか、挨拶が欠伸混じりだ。

 

「おはよう。まだ朝御飯の時間まで少しあるから、準備はゆっくりできるよ」

 

「うん、じゃあシャワー浴びてくるから…のぞかないでね♪」

 

癒子が茶目っ気たっぷりに付け加え、竹内は「の、のぞきませんよ!」と慌てて返すしかできなかった。

 

―――――――――

 

その後、癒子と竹内は朝食をとるために食堂へ来ていた。

 

「おはよー…って、何でアンタ竹内くんと一緒にいるのよ」

 

「そうよ、抜け駆け禁止って言ったじゃない」

 

癒子の友人と思しき人物に遭遇する度に恨めしそうな視線を向けられたが、癒子はあっけらかんとして

 

「ゴメンね~でもしょうがないの♪私、彼と同室なのだ~♪」

 

と言ってのけた。その様子はどことなく嬉しそうだ。

 

「くぅ~!そうか竹内くんは癒子と同室だったのか~!」

 

「織斑くんも篠ノ之さんと同室だったしな~…いいな~羨ましいな~」

 

みんな口々に羨ましがる。しかし、渦中の人物・竹内優斗はみんなが何を羨ましがっているのか理解できず、さっきから「アハハハ…」と愛想笑いを浮かべつつ、「みんな何の話をしているんだろう…」とか思っている。

 

――――――――

 

「なぁ…いつまでそうやって怒ってるんだよ」

 

「…別に怒ってなどいない」

 

「顔が不機嫌そうだが…?」

 

「生まれつきだ」

 

竹内が朝食が盛られたトレーを持って空席を探していると、相手の機嫌をうかがう一夏の声と、それを突っぱねる箒の声が聞こえてきた。

 

「おはよう織斑くん、篠ノ之さん」

 

2人の周りには空席がそれなりにあったので、竹内は近くの席に座り、2人の会話に割り込んだ。

 

「お、優斗か、おはよう」

 

「……………おはよう」

 

2人は挨拶を返したが、反応がそれぞれ明らかに違う。特に箒は不機嫌オーラがもろに出てる。

 

「織斑くん、彼女どうかしたんですか?」

 

竹内が声を潜めて一夏に箒の様子を尋ねた。

 

「あぁ、俺が昨日ちょっとやらかしちまって「…お・り・む・ら?」うっ…悪い、これ以上は聞かないでくれ…」

 

一夏が事情を説明しようとしたが、箒の剣幕に気圧されて何も言えなくなってしまった。その様子に竹内は頭上に"?"を浮かべている。

 

「あ、竹内くんいたいた」

 

「お、織斑くんもいっしょだ~」

 

「ご一緒してもいいかな~?」

 

そこへ、癒子をはじめとした1年1組の生徒数人がやってきた。

 

「う~ん…僕はいいけど…」

 

竹内は先に座っていた一夏と箒のことを考え、「お2人はどうですか?」といった感じに目線を送った。

 

「俺も構わないぜ」

 

「…私も構わん、ちょうど食べ終えたところだ…私は先に行くぞ織斑…」

 

一夏はあっさりとOKを出したが、終始不機嫌だった箒は空になったトレーを持ってさっさと行ってしまった。

 

「…何があったかわからないけど、あとで誠心誠意ちゃんと謝った方がいいよ」ヒソヒソ

 

「ぐっ…そうだな」ヒソヒソ

 

見かねた竹内が小声で一夏にあとで詫びをいれろとアドバイスを送る。

 

「うわ、織斑くんってすごい食べるんだ」

 

「竹内くんも見かけに反してなかなかたくさん食べるのね」

 

一方、男子2人のトレーを見た女子生徒たちがその量を見て驚いたように言う。2人ともなかなかの量だ。

 

「え?あぁ、まあ…1日のエネルギー源だからね」

 

「っていうか女子はそんなに少なくて大丈夫なのか?」

 

一夏たちも女子のトレーを見て尋ねる。男子2人に比べると、皆揃って量が明らかに少ない。

 

「いやぁ、私たちは~…」

 

「えへへ、体型とか気にしてるから~…」

 

「お菓子とか間食してるし~」

 

こんな感じで和気藹々とした雰囲気になってきたところで…

 

「いつまで食べてる!」

 

響き渡る声。それは竹内たち1年生の寮長もやっている千冬のものだった。

 

「食事は迅速に効率良くとれ!遅刻した者にはグラウンド10周させるぞ!」

 

この一声によって、食堂にいるみんなの食べるスピードが格段にアップした。

 

その甲斐あってか、この日遅刻したものは1人もいなかったらしい。

 

―――――――――

 

数分後。SHRが終わる直前にまた千冬が思い出したように言った。

 

「そうだ織斑、お前には専用機が与えられることになった」

 

「はい?」

 

一夏は訳がわからない様子だったが…

 

「嘘ッ!?1年のこの時期にッ!?」

 

「それって政府からの支援が出るってこと!?」

 

「いいなぁ~…私も専用機欲しいなぁ~…」

 

代わりにクラスメートたちがざわざわし出した。

 

「あれ?竹内くんのはないんですか?」

 

1人の生徒が尋ねた。

 

「静かに!竹内のISだが、彼はIS企業α社に所属している。故に専用機もそこから用意される。現在開発中と前に聞いたが…竹内、お前は何か聞いていないか」

 

千冬が竹内に尋ねた。

 

「は、はい。入学前に聞いた話では早くて今週末、遅くて来週中には完成すると言ってました。また仮に来週の代表決定戦までに間に合わなくても、企業の方から量産機を貸し出してもらっています。それで参戦しますので、問題ありません」※詳しく(?)は後書き参照

 

「わかった。完成し次第、カタログスペックを提出するように」

 

竹内の話を聞き、納得した千冬は授業に戻ろうとした。その矢先…

 

「あの~…篠ノ之さんってもしかして、篠ノ之博士の関係者ですか?」

 

1人の生徒が質問した。この時、竹内は箒の動きがピタッと止まったように見えた。

 

「……そうだ、篠ノ之はあいつの妹だ」

 

千冬はあまり来てほしくなかった質問が来てしまったことで、誰にも気付かれぬようにため息を吐き、その質問に答えた。この質問が来てほしくなかった理由。それは…

 

「えっ!?すごい!ってことは、このクラスには有名人の身内が2人もいるってこと!?」

 

「ねえねえ、篠ノ之博士ってどんな人?やっぱり天才?」

 

「篠ノ之さんもIS詳しいの?今度操縦方法教えてくれる?」

 

…このように生徒たちが興奮して箒に詰め寄るからである。篠ノ之束が()にとってどういう存在かを全く考えずに…。

 

「あの人は関係ない!」

 

耐えられなくなったのか、癇癪を起こしたように箒は大声で叫んだ。その声に唖然とする生徒たち。

 

「…大声を出してすまない…しかし、私はあの人じゃないから何も教えられることはない…実際どこにいるのか私にもわからないんだ…」

 

箒はみんなに謝ると気まずそうに窓の外の方を向いてしまった。みんなも困惑気味に席に戻っていく。

 

「…あー、では授業を始める」

 

こうして一時の騒ぎは収まった…微妙な空気を残して…。

 

―――――――――

 

時は少し飛んで昼休み。

 

「へぇ~、何か1組は入学早々、大変なことになってるみたいだねぇ」

 

竹内は岩崎と共に昼食をとっている。竹内は今日までの騒動を岩崎に話しているところだ。

 

「ところで、岩崎くんのところは?」

 

竹内は岩崎の近況を尋ねた。

 

「うんうん、実はね…」

 

岩崎が答えようとしたとき…

 

「優斗、トシさん!一緒に昼食っていいか?」

 

箒を連れた一夏がやってきた。

 

「やあ~、うんうん、もちろんいいとも」

 

岩崎はあっさり一夏の提案を受け入れ、竹内も賛成した。

 

「話は竹内くんから概ね聞いたよ、いろいろと大変なことになってるみたいだね」

 

「う…まぁ、そうなんですけどね…」

 

「…一夏、この男はいったい…」

 

岩崎と一夏が軽いやり取りをしてすぐ、箒が一夏に尋ねた。

 

「そうか、箒は初対面だったな。この人は…「やあやあ、自己紹介が遅れてしまって申し訳ない。僕は岩崎仲俊。同学年ということで仲良くしておくれよ」…ということだ」

 

一夏が箒に岩崎を紹介しようとしたが、岩崎が自分で勝手に自己紹介を始めてしまったため、一夏は少し拍子抜けしてしまった。

 

「あそうだ、せっかくだしお近づきの印に…これをあげるよ」

 

すると岩崎はポケット探り何かを取り出すと、それを箒に渡した。

 

「はぁ、どうm…!?////」

 

箒は渡されたものを見て茹で蛸の如く赤面した。何故ならその手には"恋愛成就"と書かれたお守りがあったからだ。

 

「そうだそうだ、織斑くんにも昨日あげようと思っていたのにいろいろあって渡せてなかったね。君には…これをあげるよ」

 

「あぁ、ありがとうございま…す?」

 

一夏も岩崎から貰ったものを見て、お礼の台詞に疑問符がついてしまった。彼の手には"厄除御守"と書かれたお守りがあった。ちなみに何故か妙に厚い。

 

「なぁに、お礼なんて要らないよ。僕はこれからみんなの世話になるだろうからね」

 

押し付けも甚だしいところだが、岩崎本人は大変満足していた。一方、この件ですっかり蚊帳の外に置かれてしまっていた竹内は

 

「(いつの間に岩崎くんたら神社に行ってたんだろう…?)」

 

と頭によぎった疑問について考えたり、

 

「(僕も初対面の時にもらったなぁ)」

 

と過去を懐かしんだりしていた。

 

「それはそれとして、そこの男2人!君たちこれからどうするつもりかな?まさか無策のまま代表候補生とやり合おうなんて考えてないよね?」

 

「うっ…それは…」

 

急に岩崎に元の話に戻され、彼の質問に一夏は言葉を詰まらせた。岩崎の指摘通り、対策などロクに考えていなかった。

 

「何よりまずやることはISをもっと詳しく理解すること、そしてISに慣れる為に訓練を重ねること、またISの動きに体がついていけるように自分自身の訓練も必要…うーん…」

 

竹内はやるべきことを考えながら頭を抱えた。α社に戻ることができる休日ならともかく、それができない平日では教えてくれる人がいない。

 

「そうだ!なぁ箒、俺にISのことを教えてくれよ、このままじゃトシさんの言う通り、何もできずにオルコットのやつにやられちまう!」

 

一夏は至って真剣に頼んだが…

 

「ふん、安い挑発に乗ったお前が悪い。それにどこかの誰かが唆したりしなければ、少しは穏便に済んだものを…」

 

「「うっ…」」

 

箒の言葉は厳しいものだった。一夏だけでなく竹内にも飛び火している。

 

「ねぇ、君たちって噂の新入生でしょ?」

 

突然、割り込んでくる声が聞こえた。その声の主は胸元のリボンを見る限り同学年の生徒ではなく、昨日岩崎を連れていった女子生徒でもない、4人とも全く知らない人だ。

 

「中でも今話題なのは…黒髪のキミとキミ、織斑くんに竹内くんよね?」

 

「は、はぁ…」

 

「あの、何で僕たちのことを…?」

 

一夏は上級生の勢いに圧されて曖昧な返事を返すのがやっとで、竹内がなぜ自分達のことを知っているのかを尋ねた。

 

「だって今度君たちがイギリスの代表候補生と戦うことになったって有名になってるよ」

 

彼女の話を聞き、一夏と竹内は女子の情報伝達の早さに恐々とし、岩崎は逆に感心した。

 

「そこでなんだけど、私が君たちのコーチをしてあげる」

 

「「えっ!?」」

 

彼女の提案は2人にとって願ったり叶ったりなものだった。

 

「必要ありません、私が頼まれましたので」

 

しかし、その提案を箒が冷たく退けてしまった。

 

「あら、そう?でも君1年生だよね?私、3年生~♪」

 

上級生はなおも食い下がり、自分の赤いリボンを見せつける。

 

「そういうことだから、私なら君じゃ教えられないことまで教えられるのよ」

 

彼女は自信満々に箒に言った。

 

「ご心配なく…私、篠ノ之束の妹ですから」

 

「!?そ、そうなの…それじゃあしょうがないわね…」

 

箒の反撃の一言にさすがに上級生も驚き、スゴスゴと引き下がっていった。

 

「そういうことだ一夏。今日から放課後は空けておけよ」

 

「えっ、いいのか?」

 

「いいと言っている」

 

こうして、一夏に箒がコーチとしてつくことが決まった。

 

「じゃあ優斗はどうするんだ?なんならどうだ、一緒に」

 

「う~ん…せっかく誘ってくれたところ悪いけどその話、断らせてもらうよ」

 

竹内は一夏の提案を断った。

 

「2人いっぺんに教えるんじゃ篠ノ之さんも大変だろうし…それに一応僕たちもライバル同士になるわけだから、せっかくなら別々に訓練して、お互い強くなってから戦おうと思うんだ」

 

「…わかった、俺も箒との訓練で強くなってみせるぜ!その時は正々堂々と戦おう!」

 

一夏は"ライバル"という言葉に感動し、竹内の案に乗ることにした。そして2人は拳を合わせた。

 

「箒、改めてよろしく頼むぜ!オルコットにも、優斗にも負けられないからな!」

 

「わかった、私がお前を強くしてやる!」

 

やる気を見せる一夏と箒。

 

「それじゃあ僕はしばらくは1人で頑張ってみるよ」

 

「おや?てっきり僕に訓練の手伝いを頼むものと思っていたけど、いいのかい?」

 

「それも少し考えたんですけど、岩崎くんのクラスに情報が筒抜けになるかも知れないですし…そもそも手伝う気ないでしょ?」

 

「いやぁ~ハハハ、バレてたかぁw」

 

対していまひとつまとまりに欠ける竹内と岩崎。竹内は他クラスの岩崎に頼らず、まずは1人で試行錯誤することを決めたようだ。

 

対決まであと6日。IS初心者の2人はどんな訓練をこなし、どのようにしてイギリス代表候補生のセシリア・オルコットに挑むのか…?




箒と共に訓練する一夏。対する竹内は1人で訓練をしていたが、やはり1人では限界があった。この状況を竹内はどう対処するのか…?そして週末、1週間ぶりにα社に戻ってきた竹内は新たな力を手にする。
to be continued...

※実は竹内と岩崎にIS操縦者適性があることが判明したあと割りとすぐ、2人に専用機開発の話は出ていた。そして専用機が完成するまでの間、2人には練習機としてα社製量産型ISが貸し与えられていて、竹内は操縦訓練に、岩崎には整備訓練に使っている。本当はこのことはもう少し早く書きたかったのだが、書き進めるうちにタイミングを失ってしまい今になって書く羽目に…

どうも、緑の章の動物兵器に名前をつけるとき担当声優の他の役名を付けている剣サタです。…これで意味わかるかな…?

例…主:竹内優斗=CV:福山潤さん→動物兵器の名前=ルルーシュ(略称:ルル)

と、こんな感じです。私の陳腐な頭じゃこんな風でしか名前が思い付かないもので…。

竹内くんに限らずガンオケのキャラって朝の6時くらいにはとっくに起きてそうだよね、7時に家を出れるくらいだし。ただ緑の章はあと1時間…いや、30分早く行動できても良さそうだよね。青の章は…知らん!(青の章未プレイ←)

岩崎くんの御守ネタ、これは執筆中に思い付いたネタです。ちなみに竹内くんが彼からもらった御守、それは当然(?)安産のお守り。『借金で買ったものだけど気にしないでいいよ』。そう言うなら最初からそういうことは言わんでくれ、かえって気になるから…。

コーチを買って出た先輩。最初は彼女に竹内くんのコーチをやってもらおうと考えてたんですが、そうなると新たに名前を考えなければならなくなり、いい名前が思い付かなかったので退散させました…ゴメン、先輩さん。

しかし…なんか回を追う毎に作りが雑になってる気がする…ゴメン、読者の皆さん。こんな作品ですがまた次回も読んでください!質問があれば感想欄に、答えられれば答えます。

ではまた次回お会いしましょう、サラバダー。

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