インフィニット・オーケストラ   作:剣とサターンホワイト

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祝 インフィニット・オーケストラ 連載開始一周年!

………などと盛大に祝うには遅すぎたストーリーペース。1年経ってもシャルロットさんやラウラさんはおろか、鈴音さんもまだ出て来ず…

あ、そういや"オトナのストレッチマン"に岩崎くんとシャルロットさん(…の中の人)が出ましたね。いやぁお二人ともエロい良い声で…

サブタイだけ見れば甘い展開がありそう!……あれ?確か予告ではそんな話じゃなかったはず……どういうこっちゃ?それは読んでみればわかること。

何らかの負の感情が沸き上がってきた場合、早めのブラウザバックをおすすめします。

そうでない方々、お待たせいたしました。多少文章が雑な部分がありますがご容赦くださいませ。


1-10:嵐の後の告白 呼び出された竹内

第3アリーナは沸きに沸いていた。今年現れた3人の男性IS操縦者の内の1人である竹内優斗が、イギリス代表候補生セシリア・オルコットに勝利したのだ。それだけではなく、ISを強制解除されて生身のまま落下していくセシリアを竹内が寸でのところで救い、その行動に全員称賛の声をあげていた。

 

竹内はセシリアを抱きかかえたまま、彼女が呼吸していることを確認するとホッとし、そのまま通信機能を使った。

 

「管制室、応答願います。こちら竹内。管制室、応答願います」

 

―――――――――

 

その管制室では真耶と千冬が先ほどの試合について話し合っていた。

 

「竹内くんのあの光…飛んできたミサイルを一瞬にして跡形もなく消してしまいましたね…あれは一体何なのでしょうか…?」

 

「…資料にこの類いの記述がない以上、開発元や本人に話を聞く外あるまい…竹内をここに…」

 

『管制室、応答願います。こちら竹内。管制室、応答願います』

 

その時、竹内からの通信が入った。すぐに真耶が気付き、返答する。

 

「竹内くん、山田です。どうなさいましたか?」

 

『…オルコットさんが気を失ったままなので、医務室に運んできます』

 

真耶が返事をしようとしたら千冬が割り込んできた。

 

「わかった、いいだろう。しかし、私たちもお前に聞きたいことがある。オルコットを医務室へ運び次第、管制室に来るように」

 

『…わかりました、織斑先生』

 

竹内は一瞬言葉を詰まらせるも了解し、そこで通信は切られた。

 

―――――――――

 

「…それでは、彼女のことをよろしくお願いします…」

 

竹内は校医の人に事の次第、セシリアの現在の容態を自分でわかる範囲で説明した。そしてセシリアをベッドへ寝かし、後のことを校医に託して医務室を出ようとしたその時…

 

「………お待ち……ください…………竹内さん……………」

 

セシリアの呼び止める声が聞こえた。

 

「オルコットさん…!…良かった、目を覚ましたんですね…!」

 

竹内は安堵の表情を浮かべてベッドの横へ向かった。

 

「…私は…あなたたち日本人に大変失礼なことを言ってしまいました…あなたにも…それなのに……なぜあなたは…私を助けてくださったのですか…?」

 

セシリアは途切れ途切れになりながらも尋ねた。

 

「………人を助けるのに、理由なんて要りませんよ。まぁ強いて理由があるとするなら……もう僕の知ってる人が死ぬのが嫌だった…それだけです」

 

竹内は微笑んで答えた。

 

「それに1週間前のことなら、僕もいろいろ言い過ぎてしまって…ごめんなさい」

 

「そんな…あれは私が…」

 

今度は真剣な表情で頭を下げた竹内に、セシリアは自分が悪いと続けようとしたが、竹内がそれを制した。

 

「…悪かったと思うのなら、明日みんなにちゃんと謝りましょう。みんないい人ですから、きっと許してくれますよ!…だから、あなたと僕の間の問題は解決してノーサイド。それでいいですか?」

 

「…わかりました…」

 

「では、僕はこれで…」

 

今度こそ竹内は医務室を出ようとした。

 

「…竹内さん!」

 

しかし、またしてもセシリアに呼び止められた。

 

「…?」

 

「その…ありがとうございました」

 

「…どういたしまして」

 

セシリアが照れ臭そうにお礼を言った。それを聞いた竹内はもう一度微笑んで会釈をし、今度こそ…今度こそ医務室を後にした。

 

―――――――――

 

数分後、管制室

 

コンッコンッ

 

「織斑先生、山田先生、竹内です。入ってもよろしいでしょうか?」

 

「…あぁ、入れ」

 

千冬が入室許可を出し、竹内が「失礼します」と入ってくる。

 

「思ったよりも遅かったな…何をしていた?」

 

予想よりも遅い竹内の到着に千冬は理由を尋ねた。

 

「すみません。オルコットさんが目を覚ましたので状況の確認その他諸々してきたので遅くなりました」

 

竹内は素直に遅れてしまった理由を述べた。

 

「なるほど…わかった。…では本題に入る。お前の使っていたIS…取り分け、あの青い光についてだ。あれはあのISの唯一仕様特殊能力(ワンオフ・アビリティー)なのか?」

 

「ワン…オフ…?」

 

「ワンオフ・アビリティー。文字通り唯一仕様の特殊能力のことです。身近なところで言うと、織斑くんの零落白夜がそうですね」

 

聞きなれない単語に竹内は戸惑ったが、真耶がすぐにフォローを入れてくれたため、何とか理解できた。

 

「大概、ワンオフ・アビリティーが発動した場合は情報モニターに表示が出る。お前にはそういう表示はあったのか?」

 

「………いいえ、ありませんでした」

 

千冬の問いに竹内は首を振った。

 

「そうか…」

 

「あの…何かまずいことでも…?」

 

やや物々しい雰囲気に竹内がおずおずと尋ねた。

 

「あぁ…ミサイルを爆発させずに消し去ってしまう、恐ろしい代物だ…お前が故意にそんな愚かな真似をするとは思わないが、万が一と言うこともある…だから我々はお前のその光について知っておく必要がある…竹内、その光は何なのかを説明しろ」

 

竹内は頭を抱えて少し考えた。そして考えがまとまり、千冬たちにこう切り出した。

 

「わかりました…とは言っても僕自身完全に理解しているわけではないので、わかる範囲での説明になります」

 

「あぁ、わからないことを聞いても仕方がないからな…それで良い」

 

竹内の断りを受け、千冬はそれでも構わないと続きを促す。

 

竹内は1つ呼吸をおいてから話を始めた。

 

「ではまずあの光が何であるかをお話しする前に、前提として先生方に知っておいて欲しいことがあります。…僕の正体についてです」

 

「何?正体だと…?」

 

「…僕は…元々この世界の人間じゃありません」

 

「な、何だと!?」

 

「え、えぇっ!?」

 

竹内の思わぬ告白に、普段から素直な反応を見せる真耶だけでなく、感情があまり顔に出ない千冬ですら動揺を見せた。

 

「…どういう事だ…?」

 

竹内は説明した。この世界とは歴史の違う自分が元々いた世界の情勢、学兵として幻獣なる敵と戦っていたこと、そして…いつこの世界にやって来てしまったのかを…。図らずもそれはα社で問い詰められたときにした説明とほぼ同じであった。

 

「…不意打ちを喰らって、トドメも刺されたはずですが…どういうわけか僕は意識を取り戻し、その時にはすでにこの世界に来ていた…また聞いた話では意識を取り戻す3日前、僕はα社の正門付近に倒れていたそうです…これが僕の真実であり、僕の正体です」

 

「「……………………」」

 

思いの外重苦しい内容に2人の教師は言葉を失った。

 

「……………あの~……続けて大丈夫ですか…………?」

 

すっかり呆けてしまった2人の教師に竹内は尋ねた。

 

「あ、あぁ…それでお前はその年齢でα社で働いていたわけだな…すまない、続けてくれ」

 

千冬が一足先に現実に戻り、また千冬の声で真耶も戻ってきた。竹内は「はい、それでは…」と言いかけたところで咳払いをした。

 

「…本題に戻りましょう。あの青い光のことですが、あれは恐らく…"精霊手(しょうろうしゅ)"と呼ばれる絶技ではないかと思います…」

 

「?…しょう…ろうしゅ…?…ぜつぎ……ですか?」

 

聞きなれない単語に真耶が聞き返した。

 

「はい。…僕も詳しいことは全然わからないんですが…人伝に聞いた噂によると『万物の精霊が手に宿り、その精霊が力を発揮する際に青く輝いて見える』…らしいです…これは人の体に宿ると聞いているので、ISの機能云々の話ではないと思います」

 

「…そうか、なるほど…」

 

千冬は少し考えてから竹内に向き直りこう告げた。

 

「ひとまず、青い光…否、精霊手だったか…その件についてだが、緊急時以外での使用を禁止する。あれは得体が知れない分、危険性が高い…私が許可を出すまでは使うな」

 

「……わかりました」

 

竹内は素直にうなずいた。

 

「…よし、では我々からは以上だ。もう戻っても良い」

 

「…その前に先生方、僕の正体についてですが…」

 

話が終わり、退室許可を出した千冬だったが、竹内が新たな話を切り出した。

 

「…できればみんなには僕の正体については言わないでほしいのですが…情報開示については…織斑先生、山田先生、御二人の意思にお任せします」

 

竹内が真剣な目で訴える。

 

「…織斑先生…」

 

真耶が千冬の様子を伺う。

 

「……………わかった。この事は今は我々の胸の中にしまっておこう(…と言うより、あまりにも突飛で人には言えんな…)」

 

「ありがとうございます!」

 

千冬が秘匿してくれることに、竹内はお礼をいった。

 

「…話は終わりか?ならお前も早く寮へ戻れ。ゆっくり体を休めた方がいい」

 

「はい、失礼します」

 

竹内は会釈をして管制室を出た。

 

「…………はぁ、青い光のことを尋ねるだけだったはずが、まさかこんな話を聞いてしまうとは………」

 

「えぇ……私、何だか疲れてしまいました………」

 

「私もです…山田先生は先にお休みになってください、私にはまだやることがあるので…」

 

千冬はそう言うと残っていた冷めたコーヒーを飲みほし、管制室を後にした。

 

―――――――――

 

「はい、今夜一晩ここで休めば、明日の授業には朝から参加できるようになりますよ」

 

「そうですか、では一晩オルコットのことをお願いします」

 

ここは医務室。千冬はセシリアの様子を見に、また校医にセシリアの状態を聞きに足を運んだのだった。

 

「オルコット、気分は悪くないか?」

 

千冬はベッドで体を起こしているセシリアに声をかけた。

 

「大丈夫です……織斑先生、クラス代表のことで少しお話が…」

 

―――――――――

 

翌日、1年1組のHR(ホーム・ルーム)

 

「これで1年1組のクラス代表は織斑一夏くんに決定しました!あ、"1"繋がりでちょうどいいですね!」

 

真耶が笑顔で告げた。クラスメートが拍手や歓声で盛り上がる。

 

「…何でだ!」

 

一夏は納得が行かず、思わず叫んだ。

 

「今言った通りだ、馬鹿者。昨日の試合終了後、オルコットはクラス代表の立候補を取り下げ辞任した。オルコットの場合は推薦されたお前たちとは違って()()()()()()()()()()()()()()()に過ぎん。それ故、誰かの厚意を無げにすることもない。…そして残ったのは織斑と竹内と言うことになるが、直接対決でお前は竹内に勝っている。故にお前が代表になるのが相応しいという判断になった」

 

「ぐ……」

 

しかし、一夏の抗議はあっさり千冬に論破されてしまった。

 

「とにかく、クラス代表は織斑一夏で異存はないな」

 

全員が肯定の返事をした。

 

「織斑先生、少しだけお時間をいただいてもよろしいですか?」

 

突然セシリアが声をあげた。

 

「………いいだろう」

 

千冬が許可すると、セシリアは立ち上がり、教室全体を見渡した。

 

「……先日は皆さんの祖国を侮辱してしまったことをこの場を借りてお詫び申し上げます。本当に…申し訳ありませんでした!」

 

そう言ってセシリアは頭を深く下げた。

 

「いいよいいよ、気にしないで」

 

「そうそう、ちゃんと謝ってくれたわけだし」

 

「それに、良い戦いも見せてもらったしね」

 

クラスメートのみんなは特に気にしていないようでニコニコと許した。

 

「竹内さん、織斑さん、あなたたちにはもっとひどいことを言ってしまい…本当にすみませんでした!」

 

今度は竹内と一夏に頭を下げた。

 

「…僕のことならもういいのに…僕の方こそ、言い過ぎてしまいました、ごめんなさい」

 

「…俺もよく知りもしないのにイギリスのことを悪く言って、本当にすまなかった…。これから改めてよろしくな」

 

「…はい!」

 

それぞれが己の非を認め謝罪したことにより、この教室に蔓延っていたピリピリした雰囲気は消え、1週間ぶりに穏やかな雰囲気が戻ってきた。竹内は、みんなに許されて安堵しているセシリアを見て、心の中で呟いた。

 

「(ね、みんないい人だから許してくれたでしょ?)」




うんうん、何事も丸く収まって、一件落着な訳だ。良かったねぇ竹内くん。さぁ、次のお話は僕の番だ。竹内くんたちが活躍している裏で、僕は僕でいろいろあったのさ。その一部始終を"エピソードof岩崎"として教えてあげよう。

to be continued...

どうも、懐かしい物好きな剣とサターンホワイトです。今回の次回予告は、特別に岩崎くんにやってもらいました。

……サブタイから漂う甘い展開なんて全くありませんでしたね…シリアス展開でした。

ひとまず前回言いそびれた誤算から…

誤算:銃撃をメインと考えていた竹内くんが拳闘士になってしまった。

まぁ、あの絶技を使う以上仕方のないことですが、私が思っていた以上に拳闘士になってしまいました。

ちなみに…もう聡い人にはバレてると思いますが、竹内くんの青い光、やっぱりというべきか精霊手でしたね。こんな感じで使えるようになって良いのか精霊手、そこは私の独自解釈で誤魔化していくしか…(コラコラ←

…てな訳で、竹内くんの精霊手はしばらくの間封印されることになりますぜ

クラス代表は原作通り一夏くんが就任、セシリアさんはみんなに謝罪し、竹内くんと一夏くんも自分の非を認めて謝罪、結果すべてが丸く収まり万々歳。これでいいのだ!

さて、次回は番外編ですが、どうぞよろしく!

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