インフィニット・オーケストラ   作:剣とサターンホワイト

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ついにUAが2000件突破しました!このような稚拙な作品にどんな形であれアクセスしていただき本当にありがとうございます。これを励みに精進していきたいと思います。

………とは言うものの、今回も相変わらず雑な文章になってしまっていると思います故に、そこら辺はご注意ください………


1-11:嵐の前に宴 つかの間の平穏

この日は初の実技授業の日。…とは言っても、今日実践するのは専用機持ちだけで、他の生徒はそれを見学するというものだ。

 

「ではこれより、ISに置ける基本的動作を専用機持ちに実践してもらう。専用機のない者はしっかりと見て学ぶように。では織斑、オルコット、竹内。まずはISを展開して見せろ」

 

千冬に指名された3人は前に出てくる。

 

「時間は限られている、急げ。熟練のIS操縦者は展開まで1秒と掛からないぞ」

 

千冬が3人を急かし、3人は急いで自分のISを展開しようとする。セシリアが先に展開を終え、一夏と竹内がそこから少し遅れて展開する。

 

「…まぁ3人とも及第点だ。だが織斑と竹内はもっと早くできるはずだ。精進しろ……次は飛行操縦をやってもらう。準備が出来次第飛べ」

 

千冬の指示を聞いて、竹内は待ってましたとすぐに飛び立った。続いてセシリアが、最後に一夏が浮上していく。しかし、試合の時とは違い、一夏の飛行はフラフラと頼り無げだ。

 

「何をやっている。スペック上ではブルー・ティアーズより白式の方が出力が上だぞ」

 

一夏の頼りない飛行に千冬の声がとぶ。

 

「……そうは言われてもなぁ…『自分の前方に角錐を展開するイメージ』って何だよ、さっぱりわかんねぇ…」

 

一夏はぶつぶつ呟いた。わからないことを考え続けているせいか、どんどん高度が下がっていく。

 

「一夏さん、イメージは所詮イメージでしかありませんわ。自分にやり易い方法を模索する方が建設的でしてよ」

 

セシリアが一夏の近くに寄ってアドバイスを送る。ちなみにセシリアはあの謝罪の後、竹内と一夏のことをファーストネームで呼ぶようになり、対応も柔らかいものとなり、入学当初の高飛車な性格がウソのようにすっかり丸くなった印象だ。

 

「そうか…でも空を飛ぶ感覚そのものがまだあやふやなんだよなぁ…。大体何で浮いてるんだこりゃ?」

 

一夏の考え事は深まるばかりで出口がまったく見えてこない。

 

「あら、説明しても構いませんけど長いですわよ?反重力力翼と流動波干渉の話になりますもの」

 

「………わかった、説明はしてくれなくていい」

 

一夏はひとまず思考のるつぼから抜け出し、飛ぶことに集中することにした。余計な考えを捨てたお陰か、少し高度が上がってきた。

 

「……………それにしても、何でアイツはあんなに元気なんだ…………?」

 

一夏の視線の先には、2人の遥か前を行く竹内。

 

「………きっとユートさんはご自身に合ったイメージをお持ちなのでしょう。…私でも追いつけないのが、少し悔しいですわ」

 

「悔しい」………そうは言うものの、セシリアの表情は実に穏やかなものである。

 

一方その頃、先を行く竹内は全力で空を楽しんでいた。何度も言うが、竹内は元々航空機パイロット志望。空を飛ぶイメージを思い描くことなど、彼にとっては容易いこと、空を飛ぶことで楽しそうな笑顔も溢れ出てしまうほどだ。速いスピードで飛び回り、綺麗にターンを決め、このまま放っておけば宙返りやスピンまで繰り出しそうな勢いだ。

 

『竹内、もうその辺にしておけ。お前の飛行操縦は"基本的"という概念を大きく逸脱している』

 

「あ…はい、ごめんなさい!」

 

千冬のストップがかかり、竹内はスピードを緩めて一夏たちと合流した。その直後…

 

『いつまでそこにいる一夏!早く降りてこい!』

 

箒の怒号がこだまする。3人が下の様子を見ると、どうやら箒が真耶のインカムを強奪し、それを使って叫んだようだ。

 

「それにしてもつくづくISはすごいなぁ、こんな高いところからでも地上の様子が鮮明に見えてる!」

 

「……ホントだ。箒のまつ毛までしっかり見えるぜ……あ、箒が千冬姉にド突かれてる」

 

男子2人がISの性能の高さに改めて感心してると、千冬から通信が入った。

 

『お前たち、無駄話している暇はないぞ。次は急降下からの完全停止をやってもらう。1人ずつ順番に、目標は地上から10cmだ』

 

新たな指示が入り、気を引き締める3人。

 

「では、私から失礼させていただきますわ」

 

そう言ってセシリアが先に急降下を始めた。竹内と一夏はその様子を上から見ている。そしてセシリアは見事に空中で止まった。停止位置の誤差も1~2cmに収まっている。

 

「うまいもんだなぁ」

 

一夏が他人事のように言う。

 

「………僕もあんなにうまく出来るかな」

 

竹内は先程の楽しそうな表情から一転、緊張しめ引きつった顔になってしまっている。

 

「じゃあ、次は僕がいくよ」

 

今度は竹内が落下を始めた。みるみる落下スピードが上がり、地面が近付いてくる。

 

「……!!」

 

竹内は「ここだ!」と言うところで勢いを殺し始めた。やがて地面が間近に迫ったが、何とか着地することなく空中で止まることが出来た。しかし…

 

「地上から23cm…初めてにしてはまずまずだが、勢いを殺すのが早すぎる。もっと訓練に励め、その誤差はまだまだ小さくすることが出来る」

 

「はい」

 

竹内が自分の結果を聞いて、ゆっくりと着地する。すると後ろから物凄い爆音がした。その方向を見ると、地面にクレーターが出来、その中心に一夏が埋まりかけていた。一夏が落下の勢いそのままに、地面に激突したのである。

 

「…誰が地上に激突しろと言った、馬鹿者が…。グラウンドに大穴を開けてどうする」

 

千冬が呆れつつツッコミをいれる。

 

「………すみません」

 

一夏がクレーターから這い出し、申し訳なさそうに謝る。しかし、体には傷らしい傷は一切見当たらない。

 

「情けないぞ一夏、あれほど私が教えてやっただろう」

 

一夏の体たらくに箒が不満そうに言う。確かに一夏は代表決定戦の後、箒のコーチの下でISを使った訓練も行っているが…

 

「…………」

 

一夏は一夏で何か言いたそうに箒を見る。

 

「……お前、今何か失礼なことを考えているだろ?」

 

その視線に気付き、箒が言う。すると一夏がピクリと反応してしまった。どうやら図星だったようである。

 

「やはりか!大体お前と言う奴は昔からだな…」

 

「まぁまぁ抑えて抑えて、今は織斑くんが無事だったんだから、それで良いじゃないですか」

 

箒の小言が始まろうとしたところで、事態の悪化を察した竹内が2人の間に入り仲裁にあたる。

 

「…………」

 

調子を狂わされたのか、箒は何も言い返さず引き退がった。

 

「……織斑、次は武装を展開してみろ」

 

千冬の新たな指示が出る。

 

「流石にそれくらいは自在に出来るようになっただろう」

 

「は、はあ……」

 

「返事は『はい』だ」

 

「は、はいっ」

 

一夏は返事を訂正すると横を向いて右手を前に出し、左手で右手首を掴み集中した。やがて掌から光が放出されて形を成し、剣となった。

 

「遅い。0.5秒で出せるようになれ。次、竹内!」

 

「はいっ」

 

千冬の評価に一夏はがっかりした。だが同時に「千冬姉はこういう人だ…」と己を納得させるしかないことを悟った。

 

そんな一夏を尻目に、竹内はまずは射撃武器の機関銃を展開。そしてそれを一旦しまい、今度は近接武器のナイフを展開し、誰もいない方を向いて構える。

 

「……織斑よりかは早かった。だが、結局はそれだけだ。遅いことに変わりない」

 

「…はい、精進します」

 

竹内は千冬の評価を聞くと一礼して後ろに下がった。

 

「次、オルコット」

 

「はい」

 

最後の1人セシリアは、余裕たっぷりに返事をして左手を横に突き出した。一瞬光ったと思ったら、すでにレーザーライフル"スターライトmkⅢ"がその手にあった。ポーズもバッチリ決まり、展開スピードも前の一夏や竹内と比べても明らかに速い。

 

「流石に代表候補生、良い見本となる素晴らしい動きだった………と言いたいところだったが、何だそのポーズは。銃身を横に向かって展開して…一体何を撃つ気だ?正面に展開できるようにしろ」

 

「で、ですが、これは私のイメージを纏めるのにはどうしても必要な……」

 

「直せ。いいな」

 

「……はい」

 

しかしそのポーズは実戦的ではないと千冬に切り捨てられてしまった。

 

「オルコット、近接武器を展開してみろ」

 

「は、はい」

 

"近接武器"…この単語を聞くと、さっきまで余裕綽々だったセシリアの顔が急に強張った。すぐさまレーザーライフルを収納すると、近接戦闘用武器を取り出そうとした。しかし、今度はいくら待っても何も起こらない。

 

「……………っ!」

 

「…まだか?」

 

内心頭を抱えながらセシリアを急かす千冬。

 

「す、すぐです!………あぁ、もうっ!"インター・セプター"!!」

 

いくら経っても何も起こらず、結局焦れったくなったセシリアは武器名を口にすることでようやくショートブレードが現れた。

 

「………こっちは初心者並みだな。実戦でも相手に待ってもらうのかお前は?」

 

千冬が呆れ気味に問う。

 

「じ、実戦では近接戦闘の間合いには入られません!ですから、何の問題もありませんわ!」

 

セシリアが弁解する。

 

「ほう、そう言う割には初心者である織斑との対戦では簡単に懐を許していたように見えたが?」

 

「あ…あれは…その…」

 

しかしそれも千冬の鋭い指摘に打ち砕かれ、セシリアには為す術がなくなってしまった。すると彼女は、一夏の方を恨めしそうに睨んだ。

 

『あなたの所為ですわよ!』

 

…プライベート・チャネルでの文句込みで。

 

「………何でだよ………?」

 

一夏からすればとんだとばっちりである。…この男、今日のこの授業ではとことんツイてないようだ。

 

するとここで、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。

 

「時間だな。今日の授業はここまで。織斑はその穴を直しておくように、解散」

 

一夏は改めて自分が作ってしまったクレーターを見る。…この穴を1人で元に戻すのは骨の折れる大変な作業だ。そこで一夏は助けを求めようとまず箒のいた辺りを見た。まだ箒はいたが、不機嫌そうに顔を逸らして去ってしまった。ならばと今度はセシリアのいた辺りを見たが、そのセシリアもすでにいなくなっていた。気付けばクラスメートのほとんどが帰ってしまっていた。しかし…

 

「みんな行っちゃったね……でも、僕も手伝うからそんなに気を落とすなよ、ほら」

 

竹内だけは違った。彼はシャベルを2本持って一夏のもとへ駆け付けた。

 

「あぁ優斗………ありがとな……」

 

一夏は心の中で涙を流して喜び、竹内への友情評価が大きく上がったことは言うまでもないだろう。

 

―――――――――

 

その日の夜、食堂。

 

「織斑くん、クラス代表就任おめでとー!!」

 

「おめでとう!」

 

「おめでと~♪」

 

一夏が食堂に入ると、クラスメートの女子に無理矢理テーブルど真ん中の席…所謂お誕生日席に座らされた。一体何が始まるのかと警戒していたら、鷹月(たかつき)静寐(しずね)の一声でみんなから祝福の言葉をかけられる。

 

「え?あぁ…ありがとう」

 

一夏は戸惑いながらも礼を言った。

 

「今日の『織斑一夏1年1組クラス代表就任パーティ』、盛り上がって行こうぜー!!」

 

『イエェェェェェェェェェェェイ!!』

 

「じゃあ主役の織斑くん、乾杯の音頭を何か一言添えてよろしくぅ~☆」

 

「え!?」

 

雰囲気に圧倒されていたところで、急にまた話をフラれて一夏は驚く。しかもいつの間にか手元にはコップがあり、すでにジュースも入ってる。一夏はコップを持って立ち上がった。

 

「えー、…俺なんかにこのクラスの代表が務まるかわからないけど、精一杯頑張ります。…乾杯!」

 

『カンパーイ!!』

 

シンプルにまとめた一夏の乾杯の挨拶。その後はみんな飲めや食えやの大わらわ、中には歌い出す者までいたとか。

 

しばらくみんなでパーティを楽しんでいると…

 

「……賑わうところに我ら在り……どうも~新聞部で~す!注目の新入生に取材したくやって参りました~!」

 

カメラやボイスレコーダー、メモ帳などを携えた新聞部の部員たちが乱入してきた。中心人物と思しき女子生徒が一夏と竹内を見つけると、「こっちこっち!」と他の部員を呼びつつ2人に近付く。

 

「はいは~い!君たちだね、織斑くんと竹内くんは。あぁ、私は2年の(まゆずみ)薫子(かおるこ)。新聞部の副部長をやってまーす。はいこれ、名刺ね」

 

「あ、ども…」

 

「これはどうも…」

 

薫子の勢いに圧倒され、小さく礼を言うしか出来なかった。

 

「ではではズバリ織斑くん!クラス対抗戦への意気込みを一言、どうぞ!」

 

そんな男子2人の戸惑いなど何処吹く風、薫子の勢いは止まらず、一夏にボイスレコーダーを向け迫る。

 

「えっと、何と言うか…とにかく頑張ります」

 

「えー…もっと良いコメント頂戴よ~。『俺に触れると火傷するぜ!』みたいなキメ台詞とかさ~」

 

やっぱりこれもシンプルに…と言うか当たり障りのないコメントで乗り切ろうとした一夏だったが、当然それで引き下がるはずもない薫子。彼女はさらに一夏からコメントを引き出そうとする。

 

「自分、不器用ですから…」

 

「うわ古っ、前時代的!!まぁいいわ、テキトーに捏造しておくから」

 

それは学園内とは言えジャーナリストとしてはいかがなものだろうか…竹内がそう思っていると、薫子が今度は竹内に狙いを定めた。

 

「続きましては竹内くん!IS学園に入った感想はいかがかな~?!」

 

「え?そうですね…」

 

竹内は何と言えばいいのか答えに詰まったが、周りを見回してから改めて…

 

「…良い仲間たちに出会えて、楽しく過ごせています」

 

と答えた。すると、クラスメートたちが「イェーイ!」と盛り上がりをみせる。

 

「お、なかなか受け答えが良いね。じゃあもう少し質問しちゃおうかな…」

 

手応えを感じた薫子はメモ帳をパラパラめくり、さらに竹内に質問をぶつけた。中には竹内が回答に困るものもあったが、どうにかすべての質問を凌ぎきった。

 

「うん、これで良い記事が書けそう!ありがとね竹内くん!」

 

「…い…いえ、どういたしまして……」

 

色々と聞き出せて大満足の薫子と、初めてのインタビューに少し疲れた様子の竹内。薫子は上機嫌で次なるターゲットを探し、そして見つけた。

 

「じゃあ最後にセシリアちゃん、あなたも何かコメントちょうだい」

 

そのターゲットはセシリアだった。薫子はやっぱりボイスレコーダー片手にセシリアに迫る。

 

「あまりこういうのは好きではないのですが、仕方ないですわね、コホン…では、まず私がどのようにして…」

 

と、渋ったふりをしつつもノリノリでセシリアが語り始めたが…

 

「…あーゴメンね、長くなるんだったらいいや、写真だけちょうだい」

 

薫子に強制的に切られてしまった。

 

「さ、最後まで聞きなさぁーい!!」

 

当然セシリアは憤慨するが…

 

「ゴメンゴメン、竹内くんのインタビューが思いの外長引いちゃって、もうボイスレコーダーの容量がパンパンなのよね、生憎今は予備もないし…」

 

…と薫子が釈明する。セシリアの憤りは収まらなかったが、自らを無理矢理納得させるよりほかなかった。

 

「じゃあ写真撮るから、3人ともそこに並んで」

 

薫子が今度はカメラを持って撮影の指揮を執る。

 

「注目の専用機持ちだからね!ん~と並びは…代表の織斑くんを中心に、その両隣を竹内くんとセシリアちゃんが挟むように…そうそう、良い感じだわ」

 

3人は薫子の指示通りのポジションに着いた。

 

「それじゃあ撮るよ~、35×51÷24は~?」

 

薫子がやたら数字の大きい計算式で、3人の注意をカメラに引き付ける。

 

「えーっと…2?」

 

3人を代表して一夏が自信無さげに答える。

 

「ブブー!74.375でした~!」

 

薫子が悪戯な笑顔でシャッターを切った。竹内は思わず「なんじゃそりゃ!?」とツッコミながらズッコケそうになったが辛うじて踏み留まった。

 

「ありゃ?」

 

不意に薫子が不思議そうな声をだし、もう一度一夏たちの方を見た。するとそこには撮影するはずだった一夏たち3人だけではなく、他のクラスメートたちも紛れ込んでいた。"篠ノ之博士の妹騒動(命名:筆者)"でクラスから浮き気味だった箒も、ちゃっかり入って一夏の近くをキープしている。この事から、全員がしっかり入るように調整し直し、図らずもクラスの集合写真(教師抜き)が撮影され、新聞部は満足気に帰っていった。

 

宴はこの後も続き、9時過ぎまで大いに盛り上がった。

 

ちなみにその集合写真は、後日1年1組の教師・生徒全員に配られたとか。

 

―――――――――

 

一方、竹内たち1年1組の面々が就任パーティで盛り上がっていた頃、岩崎が整備室から出てきた。同じ体勢が続き、カチコチに凝り固まった体をほぐすように腕を回し、欠伸をした。

 

彼が寮への道を歩いていると…

 

「あぁもう!!この学園広すぎるのよ!どこがどこなんだかさっぱりパーじゃない!!案内人の1人もいないなんてどうかしてんじゃないの!?」

 

甲高い声が聞こえた。岩崎が声のする方向を見ると、ボストンバッグを提げた小柄な少女がいた。

 

「あ、ちょうど良かった…ちょっとそこのアンタ!総合事務所って場所まで案内してくれる?」

 

彼女は近くにいた人影に気付き、誰かもわからずその存在に声をかけた。

 

「……僕?」

 

「そう。っていうかアンタ以外誰もいないじゃない…って、男!?」

 

そこで彼女はようやく自分が声をかけた人物が男であることに気付いた。

 

「あれ?男性IS操縦者は3人ってニュースはとっくに知れ渡ってるもんだと思ってたけど…」

 

「あぁ…そうだったわね…」

 

「それで…総合事務所だっけ?うんうん、こっちの方だね。ついておいで」

 

「ありがとっ」

 

2人は暗い道をわずかな灯りを頼りに歩き出した。

 

「アタシは(ファン)鈴音(リンイン)。中国の代表候補生、リンで構わないわ」

 

「へぇ、中国から来たのかい?ようこそ日本へ…けどその割りには随分と身軽だね」

 

「フフン、フットワークの軽さがアタシの長所なのよ♪それに日本に来るのも初めてじゃないしね」

 

「ふーん…僕は岩崎仲俊。1年4組所属、よろしく」

 

「ナカトシ…呼びにくいからトシって呼ぶわ、よろしく。ところでトシ、織斑一夏って人知ってる?」

 

「うんうん、もちろん知ってるとも。クラスは違うけど、噂はいろいろと聞いてるよ」

 

「ふーん…例えば?」

 

「例えば?そうだなぁ…」

 

岩崎は夜空を見上げながら少し考えた。

 

「うんうん、もう1人の男子生徒と一緒になってイギリスの代表候補生に喧嘩を売ったとか、クラス代表になったとか…あとよく聞くのは、彼がとんでもない朴念仁だってことかな…あぁ、あくまでも噂だけどね」

 

「そう…」

 

「…?」

 

急に顔を伏せた鈴音に岩崎はどうしたのかと思ったが、少し考えてその理由を察した。やがて、目的地が近付いてきた。

 

「さぁ、ここが総合事務所だ。ここから先は自分で何とかやれるよね」

 

「うん…ありがとね、トシ」

 

「礼には及ばないさ、じゃあね」

 

岩崎はそう言って寮へ帰っていった。残された鈴音はそのまま入寮の手続きをした。

 

明日にでも一波乱起こるかもしれない………。




2組のクラス代表となった凰鈴音が1組に宣戦布告にやって来た!クラス対抗戦に向け、さらに気を引き締める一同。ところがその日の遅く、竹内と岩崎が寮への帰り道を歩いていると、1人涙を流す鈴音の姿があった。彼女にいったい何があったのか…?

to be continued...

どうも、意外と病弱な剣とサターンホワイトです。頭痛持ちです、花粉症(恐らくスギ花粉)です、さらには現在鼻詰まりです…持病を読者に暴露してどうするんだ私は…。

何と言うか…長ったらしいくせして全体的に消化不良って感じがしますね今回は。まだまだ私の腕が未熟ゆえ…どうもすみません。

さて、そんな1-11を振り返ってみましょう。まずは初の実技の授業、空での竹内くんは誰よりもイキイキしています。理由はあえて言う必要はありませんよね。しかし、結局のところ竹内くんは「空を飛ぶ以外能がない」のである…あら、どこかで聞いたフレーズ……。ともかくそれ以外の事は素人レベルでしかないのだ。…代田さんの特訓がまだまだ必要かな?

そして就任パーティーですが…あまりにも主役である一夏くんを蔑ろにし過ぎましたね、ほとんどが黛先輩に持っていかれたと言うか。反省反省…。

そして本作始まって1年ちょっと、ようやく原作における3人目のメインヒロイン、凰鈴音さんが登場。岩崎くんに一足お先に遭遇。………遅い、遅すぎるぞ!私の執筆スピード!

この調子で、シャルロットさんとラウラさんが出てくるのは本当にいつの事になるのやら…。

それでも、前書きにも記した通り、こんな拙作もついにUA2000件に到達しました。ありがとうございます。いまだに未熟者の剣サタではございますが、今後とも「インフィニット・オーケストラ」をどうぞよろしくお願いします。

【緊急……でもない告知】

速水くん視点のガンパレード・マーチ1話完結小説を本作と並行して手こずりながら執筆中。公開予定は未定。

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