インフィニット・オーケストラ   作:剣とサターンホワイト

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……全国にわずか1桁しかいない剣サタファンの皆さん(そもそもファンなんているのだろうか?)、1ヶ月以上お待たせして申し訳ありませんでした。ようやっとの更新です。

例によって気分など悪くされた場合、即刻ブラウザバックをすることをおすすめします。


1-13:つかんだコツ つかめぬ心

クラス対抗戦が近付き、各クラスの代表は本戦に向けてスパートを掛ける。しかしそんな中、一夏の特訓は遅々として進んでいなかった。箒のコーチングだけではどうしてもわからない部分があり、教科書や参考書の説明もいまひとつ理解するには至らなかった。竹内やセシリアもときどき来ては協力したが、彼らにもそれぞれやるべきことがあるため、いつまでも一夏たちに付きっきりというわけにはいかず、一夏は完全に行き詰まってしまった。

 

「あ~あ、結局今日も何も掴めなかった…」

 

一夏は焦ると同時に、協力してくれるみんなに申し訳なかった。落胆して寮の廊下を歩いていると…

 

「どうした織斑。クラス対抗戦への策はあるのか?」

 

寮長の仕事中の千冬に遭遇した。

 

「千冬姉…いや、どうにも何も掴めなくて……」

 

「『織斑先生』と呼べと言っている………ちょっとついてこい」

 

千冬は仕方ないといった風にため息を吐き、歩き出した。一夏もそれに従い、ついていった。

 

―――――――――

 

連れていかれた先は千冬の部屋だった。

 

「…?どうした、入ってこい」

 

「……………」

 

いつまでも入ってこない一夏を急かすように千冬が言う。それでも一夏は入室を躊躇ってしまう。……無理もないだろう、その部屋にはまさに足の踏み場もない状態だったのだから……。

 

「……その前に……部屋の掃除をした方がいいと思うんですが………」

 

一夏はこの一言を絞り出すのが精一杯だった。

 

―――――――――

 

そんなわけで急遽、千冬の部屋の掃除が行われた。と言っても主に掃除しているのは一夏の方で、千冬は最低限自分の衣類などを片付けるだけだった。

 

「すまんな、わざわざ掃除してもらって」

 

「…………」

 

そう思うなら自分で少しずつでもやろうぜ…と思う反面、こういうところは変わってないなぁ…と半ば安心にも似た感情が一夏の心を駆け巡る。

 

「それで、俺をここへ連れてきたのは何でなんだ?」

 

「あぁそれはな…これを見ろ」

 

千冬はノートパソコンの画面を一夏に見せた。

 

「これは以前、代表決定戦でお前が竹内と戦った時の映像だ」

 

そう、そこには数日前行われたクラス代表決定戦、第2戦の様子が映し出されていた。今ちょうど、一夏が反撃のミサイル攻撃を喰らったところだ。すると、千冬が映像を一旦止めた。

 

「お前が覚えるべきは瞬時加速(イグニッション・ブースト)だ。お前はこの戦いで使っていたな」

 

「はぁ?俺そんなの使ってたのか?」

 

一夏は聞き慣れないテクニックを使っていたとは思わず、驚いて聞き返した。

 

「……やはり無自覚だったか……。だが使ったのは事実……この後だな」

 

千冬はやや呆れ気味にため息を吐き、そして再び動画を再生させた。

 

画面では竹内が一夏の回避先を見切り、そこにミサイルやマシンガンを撃ち込んでいた。しかし、その攻撃が一夏に当たることはなかった。…というより、一夏はすでにそこにはいなかった。白式はスピードを上げ、竹内の汐風にあっという間に迫る。

 

………

 

画面内の対決に決着がつき、千冬はノートパソコンを閉じた。

 

「……あれが瞬時加速だ。この時は偶然出来たのだろうが、自在に使えるようになれば間違いなくお前の力になるはずだ…だが勘違いするな、瞬時加速を覚えたからといって、必ずしもお前が勝てるという理由にはならない」

 

「お、おう…!」

 

希望の光が見えた一夏はやる気をみなぎらせ、気持ちを引き締めた。

 

「……お前は単純だからな、『これを使えれば俺は勝てる』そう思ってたんじゃないのか?」

 

「ぐ…そ、そんなことは…」

 

ない、と一夏は言い切れなかった。

 

「やれやれ……お前はもう少し戦術というものを考えて戦った方がいい。が、そこまでは私も教えられん。仮に教えたところでお前に合う保証はないし、何より私では思い付かない戦術をお前が思い付くかもしれん。これからの訓練ではそういうことを意識してやってみろ」

 

「……わかった。ありがとう千冬姉!」

 

一夏は千冬に礼をいって彼女の部屋を出た。

 

「フッ………まったく、我ながら甘いものだ」

 

1人綺麗になった部屋で自嘲気味に呟く千冬だった。

 

―――――――――

 

翌日以降、一夏の特訓は目標を見つけたことにより少しずつ充実したものになっていった。瞬時加速の訓練を重点的に行い、その他にも箒とは近接戦闘、セシリアとは対遠距離系武器の対策、そして竹内とは空中での機体制御の訓練をこなして着実に実力をつけていき、予想よりも早く瞬時加速を習得した。

 

「どうだ、大分サマになってきただろ?」

 

一夏が箒、セシリア、竹内に問いかける。

 

「そうですね、最初の頃と比べると動きにキレが出て参りましたわね」

 

セシリアは彼の成長具合に賛辞を送る。

 

「当然だ!この私が指導しているのだからな!」

 

箒が得意満面に言う。

 

「…でも箒さんの説明では全く理解が出来なかったようですが?」

 

「なっ……貴様の説明でもアイツは混乱してたではないか!」

 

セシリアの鋭いツッコミに箒が逆ギレして捲し立てる。

 

「まあまあ落ち着いて!確かに瞬時加速はマスターできたみたいだけど、訓練はまだ終わってないから」

 

事態の悪化を恐れた竹内が慌てて2人の仲裁に当たる。そう、まだこの段階では瞬時加速をモノにしたに過ぎず、やることはまだまだあるのだ。先日一夏が千冬に言われた戦術面の向上。この問題の解決はまだ見えてこない。

 

「まずは相手の攻撃を貰わないことが一番だと思いますわ。自身のシールドエネルギーを糧に発動する零落白夜をお持ちの白式でしたら尚のこと、余計なエネルギー消費は避けたいところですわね…」

 

「そうだよな…肝心なときに発動できないんじゃ、セシリアと戦ったときと同じことになっちまうし…」

 

「なら、まずは相手の攻撃にどう対処するかを考えるべきだな。回避専念か、防御専念か」

 

「そうそう、それによって戦い方も自ずと確立してくるはずだよ」

 

……この調子で、一夏の戦術特訓はつづくのであった……。

 

―――――――――

 

そんなある日……。

 

「……やってるわね」

 

一夏の特訓中、そこに鈴音が現れた。

 

「なっ…!り、鈴!?」

 

「貴様!コーチの件はクラス対抗戦が終わってからだと言ったはずだ!」

 

思わぬ来客の登場に一夏は驚き、箒が抗議の声をあげる。

 

「うっさいわね、アタシだって敵に塩を送るほどお人好しじゃないわよ」

 

鈴音は抗議を受け流し、一夏の方に歩を進める。

 

「………」

 

「…な、何だよ」

 

無言で近付いてくる鈴音に対し、変に警戒する一夏。

 

「……この間ビンタした事は謝るわ、ゴメン…。アンタは一応約束があったこと自体は覚えていたのに……」

 

「あ…あぁ」

 

いきなり謝罪をしてきた鈴音に一夏は呆気にとられた。

 

「俺も…「でも!」!?」

 

そして一夏も何かを言おうとしたが、それは鈴音によって遮られる。

 

「アンタ、どうせアタシが何で怒ったのか全くわかってないんでしょ?そんな状態なのに『俺も悪かった』って言って丸く納めようとしたんでしょ?そうやって謝られてもね、こっちは全然スッキリしないのよ!」

 

「……………」

 

鈴音の言ったことが図星だったのか、一夏は黙ってしまう。

 

「……だから……アタシはアンタをブッ潰す!徹底的にね!!」

 

「な、何ぃっ!?」

 

「…クラス対抗戦、覚悟してなさい!アンタを倒して、アタシの言いなりにしてやるわ!」

 

「……!…じゃあ、俺が勝ったらあの約束の意味、教えてくれよな!」

 

「…っ!いいわ、やってやろうじゃないの!」

 

鈴音は怒鳴ると、肩を怒らせて去っていった。……もうお互い、後には退けないような雰囲気になってしまった。

 

「「(……どうしてこうなっちゃうんだよ(のよ)…!)」」

 

2人の幼馴染みは偶然か必然か、同じことを考えていた。…ケンカがしたかった訳じゃない…久し振りに会って、色々と話がしたかった…。しかし現実は……。

 

結局この件が尾を引いたのか、一夏はこの後集中力を欠き、この日の特訓は中止となってしまった………。




鈴音との和解の糸口が見えぬまま、クラス対抗戦の日を迎えた一夏。初っ端からその鈴音との対決となってしまう。「ブッ潰す」そう宣言した鈴音に対し、一夏は特訓の成果を出しつつ何とか渡り合っていく。しかし次の瞬間、予期せぬ事態が2人を襲う!

to be continued...

どうも、先日久し振りに白の章をプレイした剣とサターンホワイトです。いやぁ、動きが緑と比べてもっさりしてらぁ…。

それにしても私はあの2人(一夏と鈴音)をどうしたいんだろうか…ちょっと自分で思ってたのと違う形になってしまい、その余波を受け一夏の貧乳発言が挟めなくなってしまう始末。あ、ちなみに鈴さんはこの後岩崎くんに「またやっちゃった」と泣きついたとか…蛇足。

そして前書きでも申した通り、前回の更新より1ヶ月以上も間を空けてしまったこと、その割にやたらと短く内容が薄いこと、合わせてお詫び申し上げます。誠に申し訳ありませんでした。

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