先月末の活動報告をご覧になったのなら薄々お察しの事かと思いますが、前回の予告分を1話でやるにはあまりにも文字数を使いすぎたために、分割することにしました。それでも今回は分割調整した結果5桁に届いてしまいましたが……
それでは例によって、気分など害された場合は直ちに閲覧を中止し、ブラウザバックすることわおすすめします。
あ、ちなみに今回のサブタイは十数年前に流行ったCMから……
竹内は目の前の出来事にまだ理解が追い付いていなかった。シャルルから明かされた秘密「ボクは本当は女の子だったんだ」……今まで信じて疑わなかった事実が覆され、頭の中が真っ白になった。
「お、おい優斗……」
隣の一夏もそれは同じようで、竹内に話しかける声も動揺しているのが見え見えだ。
「な、なんだい?」
「お前さ、部屋を間違えたんじゃないか?」
一夏はこの現実を受け入れらないあまり、妙なことを言い出した。
「……いや、そんなはずはない……と思うけど……」
「じゃああれだ!この人はシャルルの双子の姉か妹なんだ。実はシャルルと一緒に転入してきて、んで今シャルルを訪ねてきたんだな」
「な、なるほど…」
「ボケが長い!それにボクに兄弟姉妹はいないよ!ユートも簡単に納得しないで!」
一夏と竹内の無駄に長いコントにシャルルがツッコミを入れた。
「2人とも、現実を受け入れよう……この人が紛れもなくシャルル・デュノア、君たちのクラスメートだ」
「「………………」」
「ト、トシはトシで落ち着きすぎじゃない…?」
現実逃避する2人を岩崎が宥める。そんな岩崎の冷静さが気になり、シャルルはそのことを尋ねた。
「あーうんうん、実を言うと僕ァ初めて会った時から薄々『そうなんじゃないかな』って思ってたんだ」
そう、岩崎は薄々感付いていたのだ。確かに数分前にこの部屋に入ったとき、シャルルの姿を見て言葉を失いはしたが、驚いた様子はなくむしろ「やっぱりな…」と納得のいった感じだった。
「え、えぇぇ!?」
「マジですか!?」
「…さ…さすが岩崎くん…」
ほぼ見抜いていた岩崎に驚きを隠せない3人。
「……何で教えてくれなかったんですか」
今度は一夏が非難交じりの目をして尋ねてきた。
「うんうん、それはその時はまだ確信が持てなかったからさ。結果として事実だったけど、本人にも事情があるかもしれないのに、変に騒ぎ立てるのは
「う……」
が、岩崎の反撃に遭い敢えなく撃沈してしまう。
「まぁ何にせよ、この話をするにはまず一旦全員が落ち着くことが必要だ。そこでお茶を淹れようと思うんだけど……竹内くん、そういうわけだからこの部屋のお湯とお茶っ葉、あとついでに予備の湯呑みもちょっと使わせてもらうよ?」
「あ、はい……わかりました……」
――――と言うわけで数分後――――
「ホイ、お待たせ」
一同は岩崎が用意した緑茶を頂くことにし、飲んでは岩崎にお礼を言ったり感想を言ったりしている。
やがて、それぞれの湯呑みの底が見えてきた頃……
「さぁて、そろそろみんな落ち着いた頃だよね。それじゃあ本題に戻るとしよう」
"落ち着く"を通り越して緩んでいた一同の顔が引き締まった。
「まずは……デュノアさん、男装をするほどの事情ってやつの説明を頼めるかい?」
やはりまずは事の起こりを知る必要がある、そう踏んだ岩崎はまず事情説明を尋ねた。
「……うん」
どことなく浮かない表情をしていたシャルルだったが、覚悟を決めたか、深呼吸をした。
「……実は、実家からの命令でね……」
彼女の話によると、彼女はデュノア社社長の一人娘で、その社長から男装を命じられた。さらに彼女の口からまたもとんでもない事実が明かされる。
「………ボクはね……父の本妻の子じゃない……愛人の子なんだ……」
「「「!!」」」
ただ事ではない様子に、3人は物凄く驚いた。
曰く、2年前に彼女の母親が亡くなった際にデュノア社長に引き取られ、その後の検査でIS適性が高かった事が判明し、非公式にテストパイロットをやらされていた。それでも、社長である父と話をしたのはたったの2回程度、時間にしても、1時間にも満たないらしい。おまけに本妻とされる女性からは泥棒猫呼ばわりされた挙げ句叩かれるなど、事実上居場所がない状態だったとか。
その後、デュノア社の経営状況は悪化、それは第3世代型ISの生産の目処が全く立っていないことによるものらしい。この会社は世界シェア第3位を誇る量産型IS"ラファール・リヴァイヴ"があるが、結局それは第2世代型、最新型のIS開発の目処が立たない会社に国からは支援できないと、最悪開発許可まで剥奪されると言うところまで追い詰められているとのこと。
「それが、君の男装にどう繋がるんだい?」
岩崎が優しく尋ねた。
「………簡単なことだよ、ボクを男と言うことにしておけば、その存在だけで広告塔になる……それだけじゃない、同じ男子なら君たち特異ケースにより近付くことが出来る……そう、ボクは君たちのデータを盗んでこいって言われてる……要するに、君たちをスパイをしに来たんだ……」
「…………」
一夏は何か思うところがあるのか、険しい顔つきとなった。
「なるほどね……君が男装をしなければならなくなった理由は、間接的とは言え僕たちにもあるのか……」
対して岩崎はボソッと呟いた。
「………本当の事を話したら少しだけ気が楽になったよ。ボクの話を聞いてくれてありがとう。それと、今まで黙ってて……ううん、騙しててゴメン…」
シャルルは溜まりに溜まっていたものを概ね吐き出し、ややスッキリしたような表情となった。だがそれも一瞬、謝罪をするときには申し訳なさからか、また曇ったような顔色となった。
「いやいや、こちらこそ本当の事を打ち明けてくれてありがとう。………ところで、君はこの後どうなるんだい?」
「…………そうだね……3人にもバレちゃったし、本国に戻されて、良くて牢獄行きかな………」
「…………ふざけるなよ………」
ここまで黙っていた一夏がついに口を開いた。
「一夏?」
「……俺も子どもの頃、千冬姉と一緒に両親に捨てられたんだ………」
「っ!」
「……へぇ、そんなことが……」
「俺のことは良い、今さら会いたいとも思わないし、会って話すことも何もない!そんなことよりシャルル、お前はここにいればいい」
「お、何か考えがあるのかい?」
一夏が力強くシャルルに言った。キョトンとして声がでないシャルルに代わって岩崎がその方法を尋ねる。そんな岩崎に一夏は「当然!」といっておもむろに生徒手帳を開いた。
「IS学園特記事項第21項:本学園における生徒はその在学中においてありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする。………これなら少なくとも3年生の3月までは安全だ。それまでに何か策を練ればいい」
「なるほどねぇ、その手があったか……」
「特記事項って55項もあったのに、よく覚えていたね」
「…へへっ、こう見えて勤勉なんだよ」
一夏の出した案で、事態はよくなる。そう思ったのもつかの間……
「確かに良い案かもしれない……けど織斑くん、その作戦には致命的とまでは言わないが、いくつか穴がある」
岩崎が喜びムードに水を差すような一言を告げた。
「なっ!?なんですか、その穴って!?」
自分の案にケチをつけられ、一夏はムッとして岩崎に尋ねた。
「まず1つ・彼女の秘密は僕ら4人だけの秘密と言うことになるが、その秘密を守りきれる保証がない」
「はぁ?そんなの簡単じゃ……」
「果たして簡単と言えるかな?みんなはシャルル・デュノアの美貌に魅せられて気づいていないみたいだけど、立ち居振舞いがどうみても女の子のそれだったよ。僕でも気づけたんだ、僕より鋭い人ならもうとっくに気づいているはずさ………僕の見立じゃあ……そうだね、織斑先生にはもうバレていると思うよ」
「………でも千冬姉なら……」
「そう、織斑先生なら何ら悪いことにはならないだろう……けどもしも彼女の事を良く思わない者がこの秘密を知ったら………」
「だから!そうならない為にも俺たちが守っていけば「甘いね」何ッ……!?」
「嘘を貫くと言うのはかなりエネルギーを消耗するものだ。自然にしてるつもりでも、隠そう隠そうとして次第に動作がぎこちなくなり、そこからボロが出る……。竹内くんみたいな正直者には結構な苦行だ。それにね織斑くん……前に僕が『君は考えてることが顔に出やすいタイプだ』って言ったのを覚えているかい?秘密を守ろうって言うのに、その癖は致命的だよ?」
「………くっ……」
一夏は岩崎の言葉を否定したかったが、出来なかった。前にも岩崎に指摘されたことがあったこの癖は、まだ治っていなかった。
「2つ・この学生寮は日本の所謂お盆や年末年始の時期は誰1人として残ることはできず、ここを出なければならない……所謂閉寮期間ってやつだね」
「そ、その時は俺たちの家に………」
「おいおい、根本的なことをド忘れしてるんじゃないのかい?そうするにはここを出なければならないんだよ?その間は僕らが責任を持って彼女を奇襲や誘拐犯その他から守らなくちゃいけない。けど、それだけの実力なんて僕らにある?」
「………うぐっ………」
「まぁあってもなくても、僕たちみんなで4人……相手に数で攻められちゃ多勢に無勢……歯が立たないだろうね。今から訓練しようにも、僕たち
岩崎の言うやることの多さに、一夏は目が回りそうになった。
「3つ・君はこれ以上彼女を苦しめるつもりなのかな?」
「………はぁ………?」
まだ何か言われるのか……一夏は気が遠くなりそうになった。
「さっき彼女が言ってたよね。『本当の事を話したら気が楽になった』って。あとこれは僕がさっき言ったことけど、嘘を貫くことは思った以上に大変なことだ。主に精神的にキツいものがあるね。……それなのに織斑くん。君のその作戦はせっかく気が楽になったって言う彼女を、また苦しめるつもりかい?」
「………………っ」
「せっかく出してくれた意見だけど、この作戦は何の解決にもなってない……むしろ、問題を先送りにしているだけだ」
「………」
一夏はここまで言われるとは思っておらず、これまでの岩崎の評価にもう正直心が音を立てて折れそうだった。シャルルも一夏の策の穴を岩崎からさんざん聞かされ、表情がまたしても落ち込んでしまった。
「さて…さっきからずっと黙ってるようだけど、竹内くんは何か良い案を思い付いたかい?」
次なる意見を求め、岩崎はシャルルが秘密を明かして以降、一言も発していなかった竹内に声をかけた。
「…………………」
しかし竹内は今の岩崎の言葉が聞こえていなかったのか、すっかり考え事にハマりこみ、心此処に在らずといった様子だ。
「オイ、優斗!」
「っ!?あ、はい、何でしょう?」
一夏が少し乱暴に呼び掛けることで、ようやく竹内が反応を見せた。
「お前なぁ、シャルルの一大事ってときに……もっと真面目にやれよ!」
「………ごめん………どうしても引っ掛かることがあって………」
一夏は緊急時にのんびりしているように見えた竹内に腹を立て、強く当たってしまった。対して竹内は、一夏の言っている通り自分に落ち度があることがわかっているので特に反論もせずすぐ謝った。
「それにしても…普段はどちらかと言えばすぐ決める方の君が、1人でここまで深く考え込むなんて、なかなか珍しいね」
一方で、岩崎は竹内の考え事に興味を持ったようだ。
「そこまで引っ掛かることって何か、教えてはくれないかい?」
「ちょ…トシさん!そんな無駄話をしている余裕は……」
「まぁまぁ織斑くん、焦らない焦らない。ふとしたところから彼女を救い出すヒントが出てくるかもしれないだろ?」
「………くっ……っ」
一夏がそんな話を聞く余裕はないと抗議した。しかし岩崎に諭され、しぶしぶ彼に従うことにした。
「さぁ、聞かせてくれよ竹内くん、君の引っ掛かりとやらを」
改めて岩崎が問う。
「………気を悪くしたらごめん、僕が気になっているのは………デュノア社長の事だよ」
「……っ!」
『デュノア社長』この単語が出てきた瞬間、シャルルの身体がピクッと震えた。
「ほぅ、そのデュノア社長がどうしたんだい?」
「はい………その、デュノア社長は本当にシャルルく……じゃない、シャルルさんを邪険に思っていたのかなって………」
「「「……………」」」
1030室に妙な間が空く。
「何を今更な事を言ってるんだ!だから今シャルルがこんな目に遭ってるんだろう!」
「だけど……」
「自分の子にこんなことをさせる親だ!まともじゃないに決まってる!」
一夏はまるで自分の事のように腹を立てて捲し立てる。
「!…………じゃあ聞くけど、織斑くんは何でそこまで言い切れるの?」
「っ……それは………」
竹内からまさか反論されるとは思わず、一夏は怯んでしまった。
「……それは……」
「シャルルさん、デュノア社長……否、君のお父さんのことはどれくらい知ってる?」
「え?えーっとぉ…………」
シャルルは急に話を振られて戸惑った。
「さっき少し言ったけど、父の存在を知ったのはお母さんが亡くなってからなんだ……だから知ってることと言えばボクの父であることと、デュノア社の社長であることと……あと名前…これくらいかな…?」
「(要するに全然知らないってことか……)わかった、ありがとう」
竹内はそれだけ言ってもう一度一夏に向き直った。
「事情があったにしろ、社長の実の娘であるシャルルさんが多くを知らないんだ、となるとそれ以上に社長に詳しい人はデュノア社の社員……いや、一番詳しいのは本妻の人でしょう。日本人で数ヵ月前までIS会社と一切関わりのなかった織斑くんが、フランスのIS会社の社長さんのことをそれ以上深く知っているとは思えない。だからデュノア社長のことをそこまで悪く言い切るのはおかしいと思うんだ」
「くっ…………それならお前はどうなんだよ、優斗。お前だって、デュノア社の社長が善人だと言う証拠でもあるのかよ!」
「ないよ。僕だってデュノア社長のことは全然知らないからね、証拠なんてあるはずがない……だから、織斑くんの言う通りのひどい人なのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない………いずれにしろ、この話は結局憶測の域を越えず、これ以上の議論は意味をなさない」
「っ…………」
いつになく強めに当たってくる一夏に対し、竹内もらしくなく冷たい対応をとっている。このままではまともな話し合いもできず、シャルルを救うどころではなくなってしまう。そのシャルルもそんな2人をみてオロオロしてしまっている。
「はいはいそこまで……織斑くん、何をカリカリしてるんだい?」
みかねた岩崎が間に入り、まずは一夏に話を聞いた。
「…………別に俺はカリカリなんか」
「いいやしてるね。主に僕が竹内くんに話を振った辺りから特に。そんなに自分の意見が通らなかったのが悔しいのかい?」
「……!!」
一夏の表情がギクッとなった。どうやら、そういうことらしい。
「やれやれまったく……子どもじゃないんだからそんなことで拗ねるんじゃないよ、みっともないったらありゃしない……」
「……………」
一夏は罰が悪そうに顔を逸らした。
「竹内くんも、織斑くんの怒りが不当なものだとしても、その態度はないんじゃないのかい?君らしくもない」
「…………」
竹内も決まりが悪そうに目を逸らした。
「いいかい?彼女の秘密を正式に知っているのは僕たち3人だけなんだよ?それなのに内部分裂なんて起こしてみなよ、星の数のような人間を相手にするのに3人だけでも大変なのに、連携もとれず個別でやるとなったら僕たちは全滅、デュノアさんも二度と陽の目をみることはなくなってしまう………」
「「……………」」
「それじゃあ本末転倒だ。だから内輪揉めはよそう。2人とも、デュノアさんを助けたいんだろ?だったら今は個人的恨み辛みは棚上げしよう」
岩崎はまず竹内と一夏に仲直りを求めた。シャルルは心配そうに行く末を見守っている。
「……嫌な態度をとって、ごめんなさい……」
先に竹内が謝り、右手を差し出した。
「……俺の方こそ、当たり散らして悪かった……」
一夏も己の非を詫び、竹内の握手に応じた。これで男子生徒グループ(仮称)での内部分裂は回避された。
「よし、それじゃあ話を戻して……竹内くん、さっき君は『デュノア社長が善人か悪人かを議論するのは憶測の域を出ず意味をなさない』って言ってたけど、それならここからどうするんだい?」
岩崎が仕切り直しとばかりに尋ねる。
「…………真実を知る、そのためにシャルルさんとデュノア社長とで直接話をする必要がある。仮にも血の繋がった父娘なのに、まともな会話がないって言うのも寂しいじゃない?だから決別するにしても、元の鞘に収まるにしても、1度真正面から話をした方がいい……と、僕は思う」
「っ!」
「ふむ」
「な、何!?」
デュノア社長と話す……竹内が切り出した危険とも思える方法に、三者三様の反応を見せるシャルルたち。
「そんなことをしたら………もしも相手が俺の言った通りの悪人だったら………」
中でも一夏はデュノア社長に対する不信感が強く、直接対談に難色を示した。
「そう、そこが問題なんだ……もし相手が織斑くんの言う通りの人物だった場合、最悪シャルルさんを危険に晒す事になりかねない……そこで、僕たち4人とは別に仲介役が必要になる」
「仲介役ねぇ……誰か候補とかはいるのかい?」
「うん……まず条件は………」
竹内の考える理想の仲介役の条件
・自分達のことをよく知っている人
・相手方のこともよく知っている人
・それなりの地位・知名度・実力のある人
・フランス語を通訳できる人
「………ってのを考えているんだ。で、これらの条件がほぼ揃った候補者が2人ほどいるんだけど………」
「2人って……まさか、そのうちの1人は千冬姉か……?」
「……うん、その通り……織斑先生だ。僕たち4人の事情をまとめて詳しく知っている人は、担任であるこの人を置いて他にいないだろう」
「それなら、山田先生は?俺たちの副担任だし、あのIS技術もあるし、地位だって……」
どうも一夏は千冬を仲介役にすることに難色を示しているようだ。そこで、代わりに真耶はどうかと候補にあげた。
「うん……山田先生も候補の1人だった。確かに山田先生は元日本代表候補生……、けど本人も言ってた通り候補生止まりで国家代表にはなれなかった。……こういう言い方したら失礼かもしれないけど、結局山田先生は一教師でしかないんだ……」
竹内が1度深呼吸をした。
「でも織斑先生はちがう、確かに今は教師だけど、元日本国家代表で、第1回モンド・グロッソの総合優勝者。実力、地位、知名度、どれを取ってもNo.1だ。そんな人が僕らのバックについてくれれば、これ以上ないくらい心強いと思ってる……あくまで岩崎くんの見立だけど、シャルルさんの正体にも気付いているって話だし……あとはフランス語についてだけど……世界を相手に戦ってきた織斑先生ならそこもあまり心配はないとは思うけど………織斑くん、織斑先生が何ヶ国語話せるか知ってる?」
「俺がそこまで知ってるはずないだろう?……けど千冬姉のことだ、かなりの言語を扱えるかもしれない……」
「けどさ竹内くん」
岩崎が割り込んだ。
「確かに織斑先生は僕らの事はよ~く知ってると思うけど、先方の事も詳しいっていう確証はあるのかい?」
「……えぇ、実はそこが問題なんです」
岩崎の鋭い指摘に、竹内の顔が渋くなった。
「唯一の懸念する点が、織斑先生がどこまでデュノア社の件について知っているか……これは僕らじゃ知りようがない……」
「………」
ここまで割りと饒舌だった竹内が言葉に詰まる様子を見せ、またも暗い空気が立ち込める。
「……そこで、と言うか……まぁ、とにかくもう1人の候補者の話をしたいんだけど……理想……いや、欲を言うと、織斑先生と次の候補の人、どちらか1人じゃなくて、2人で仲介役をやっていただければ……と思ってる」
「それで、その候補者って……」
「……僕の知り合いに紫波って人がいるんだ。α社の……副社長のね」
「……なるほど、そういうことか」
竹内の考えがわかったのか、岩崎はニヤリと笑った。
「……え、何?どういう事?」
「俺たちにもわかるように言ってくれよ」
一方、シャルルと一夏は何の話か訳がわからずちんぷんかんぷんだ。
「うんうん……実は数日前α社に一時帰還したとき、紫波さんの過去の話を聞かせてもらったんだ。彼には学生時代、フランスへの留学経験があるらしくてね。んで、その時に出てきた友人の名前の1つが………『アルベール』だ」
「…ッ!」ピクッ
アルベール……その名前を聞いたとき、シャルルがピクリと反応を見せた。それを知ってか知らずか、岩崎は話を続けた。
「紫波さんの話によるとそのアルベール氏、今はIS会社の社長をしているらしい……」
「……!?」ドキッ
またも反応を見せるシャルル。
「さて織斑くんデュノアさん、2人に問題だ。この"アルベール氏"とは何者か?」
「はぁっ!?」
「……………」
岩崎の無茶振りともとれる急な問題に一夏は声をあげた。対してシャルルは言葉が出なかった。
「そんなの俺が知るわけ……」
「………アルベール・デュノア………ボクの父の名前………」
一夏が回答を諦めようとしたところに、シャルルがうわ言のように"アルベール氏"について答えた。
「な、何だって!?じゃあつまりデュノア社の社長で……」
それに引き続き、一夏が答えのピースを嵌めていく。
「そう、そしてその人はIS会社α社の副社長・紫波勝司氏のフランス留学時の友人と聞いた。さあさあ竹内くん、これらの情報から導き出した君の答えは?」
「紫波さんほどデュノア社長を知る人は僕らの身近にはいない。つまり紫波さんにちゃんと事情を説明して、仲立ちしてもらうことが出来れば、デュノア社の実態も見えてくるかもしれない……そういうことだよ。それにフランス語についても何の問題もない。なかなか流暢に話をしていたよ」
「「……なるほど……」」
シャルルと一夏はようやく竹内の狙いを理解した。
「うんうん……まぁたしかにそう言えば聞こえは言いかもしれないけど、要はコネを使えるだけ使って何とかしようってことだね」
「……身も蓋もないけど……まぁ、そういうことです、はい……」
またも岩崎の鋭いツッコミが入り、竹内はたじろいだ。
「…で、いつ実行する……ん?」
岩崎が実行日を確認しようとしたその時、岩崎と竹内のスマホがなった。岩崎がいち早く確認すると……
「……いやいやぁ竹内くん、『渡りに船』とはこの事を言うのかね。君も今来たメールを見てみるといい」
ニヤリと笑って竹内にメール確認を促した。その指示に従い竹内も見てみると、彼の目付きが少し鋭くなった。
「なるほど、デュノア社長が訪ねてくる……と」
「何だって!?」
「いつ!?」
竹内が呟くと一夏とシャルルが食い付いてきた。
「今月の最後の土日だ。恐らくこの2日間のうちどちらかがデュノア社長との直接対決の日になるだろうね」
「…………」
この日はまだ月半ば。デュノア氏来訪まであと2週間弱といったところだ。
「岩崎くん、紫波さんへの交渉は頼んでいいですか?織斑先生の方は僕がやりますので」
「了解、任せておくれよ。……となると……デュノアさん、今週の土日と来週の土日はなるべく予定を空けておいてくれ」
「え?………うん、わかった!」
「なぁ優斗、トシさん!」
話がまとまりそうになったところで、一夏が割り込んできた。
「なんだい?」
「その……千冬姉や紫波って人に頭下げに行くとき、俺も連れてってくれ!俺だってシャルルのことは大事な仲間だと思ってるし、このまま俺だけ何もしないってのは気が収まらないんだ、頼む!」
一夏は真剣に頭を下げた。
「僕は構わない……むしろ織斑先生を相手にするから心強いしありがたいよ」
竹内はすぐ快諾し……
「うんうん、わかった。紫波さんに君が来ることも知らせておくよ。許可が下りるかどうかはわからないけどね」
岩崎も条件付きながら了承した。
「よし、それじゃあ僕は明日、さっそく織斑先生に掛け合ってみるよ……織斑くん、シャルルさん、それでいいね?」
「おう!」
「わかった!」
「じゃあ僕は僕で紫波さんに掛け合ってみる。詳しい日程の調整とかね………さぁ、大変なのは明日からだ。僕たちは何としてもデュノアさんの秘密を守らなければならない……もし失敗してしまった場合、彼女は二度と陽の目を見ることはなくなってしまうかもしれない……」
「「「…………………」」」
改めてことの重大さを岩崎に言われ、みんなは表情を引き締めた。
「……竹内くん、織斑くん、君たちもしっかり腹括って頑張ってくれよ……彼女の命運は僕らに掛かってると言っていい……2人とも嘘を吐くのが苦手みたいだからね」
「「…………」」
2人は気まずそうにうなずいた。その時……
コンッ、コンッ
「竹内くん、晩ごはん食べに行こうよ!デュノアくんも一緒にどう?」
1030室にノックの音が転がり込む。続けて竹内を呼ぶ声。1年1組のクラスメートで、竹内の元ルームメートだった谷本癒子の声だ。それだけではなく、シャルルにもお誘いの声が掛かる……しかし、今のシャルルを人前に出すわけにはいかない。竹内は想定外の事態にどうしたら良いのか頭の中が真っ白になってしまった……。
「(どうする?どうしよう僕……どうしよう!!?)」
彼に残された選択肢は?そして何を選ぶのか……?
to be continued...
(前回の予告分が終わっていないため次回予告はなし)
どうも、手を抜きたくないという理由で更新を怠り、結果投稿したのがこの出来の低さ、己に絶望しかできない作者・剣とサターンホワイトです………お待たせしてしまって申し訳ありませんでした!(ジャンピング土下座)
個人的に、インフィニット・ストラトスの二次創作小説で最もオリジナリティが出るのがこのシャルル・デュノアの正体バレのところだと思っています。それだけに力を入れてやりたいところでしたが……結果はこの有り様……何か突っ込みたいことがあれば是非感想欄へ、すべてにとは言えませんが対応します。
近々続きも投稿します、ではまた……