インフィニット・オーケストラ   作:剣とサターンホワイト

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この章が終わる頃には竹内くんと一夏くんのヒロインが固まってくる予定です……あくまでも予定です、言い切れないのが少し残念……。




2-7:見えない壁 AIC

――――シャルルが正体を明かしてから2日後、

放課後の第3アリーナ――――

 

鈴音が1人でトレーニングの準備をしていると、そこにセシリアもやって来た。

 

「あら、私が一番乗りかと思いましたのに」

 

「残念でしたっ♪アタシはこれから学年別トーナメント優勝に向けて特訓するんだけど」

 

「私も全く同じですわ♪何より最近皆さんとご一緒する機会が減ってしまって、そろそろ遅れを取り戻さなくてはと思ってましたの」

 

―――――――――

 

優勝……彼女らがそこに執念を燃やすのにはワケがあった。

 

実は、ここ最近1年生の間ではある噂で持ちきりになっていた。それは「今度の学年別トーナメントで優勝すれば男子生徒の4人のうち誰か1人と男女交際できる」という、本人の意思度外視のものである。

 

もちろん火のないところに煙は立たぬ、噂の素となった出来事がある。

 

――――回想開始――――

 

それはシャルルとラウラが転校してくる前日……そう、部屋の都合がつき、今まで男子生徒と同居していた女子生徒が引っ越すことになった日である。

 

癒子が引っ越すことになったのと同じように、1025室の篠ノ之箒も引っ越しを余儀なくされていた。その去り際に、彼女はあることを一夏に宣言した。

 

「その……今度の学年別トーナメント……私が優勝したら………つ………付き合ってもらうぞ!!」

 

それだけ言った後、彼女は一夏が完全に理解する前にすたこらさっさと去っていった。

 

――――回想終了――――

 

だがそれを目撃した者がいて、そこから次第にこの話が伝わっていく。さらに悪いことに何をまかり間違ったのか、噂はどんどん膨らんでいき、終いには竹内や岩崎、シャルルをも巻き込んだ話になってしまった。この事態に、結果的にとは言えこの噂の発端となってしまった箒は「何故こんなことに……」と頭を悩ませる日々を送ることになってしまったのだった……。

 

―――――――――

 

そんなわけで、話は戻って第3アリーナ。噂の真偽はともかく、そして目的が何であれ、優勝にかける思いは紛れもなく本物。ライバルになるであろう2人は、早くも互いを意識している。

 

「ねぇ、この際どっちが上かハッキリさせない?……この間の借りもあるし」

 

「ええ、私も全く同じことを考えていましたわ……この間の借りがありますしね」

 

彼女らの言う"この間の借り"というのは、2人でコンビを組んで戦った真耶との模擬戦のこと。お互いに「相方さえ良ければもう少し満足に戦えたのに……」と思っているらしい………。(2-2話参照)

 

そうこうしているうちに2人はそれぞれのISを展開し、いざ勝負!と言うところで、突如2人に向かって砲弾が撃ち込まれる!

 

「ッ!」

 

だがそこは流石に代表候補生、2人とも見事に躱してみせる。そしてすぐさま弾が飛んできた方向や自分たち以外の存在を探るとその人物がいる方を見た。そこにいたのは………

 

「アンタは………!」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ………!」

 

そう、黒いIS"シュバルツェア・レーゲン"を身に纏ったラウラ・ボーデヴィッヒだった。レールガンの発射口から煙が上がっているのを見ると、先程の砲撃は彼女のものと考えて間違い無さそうだ。

 

―――――――――

 

一方その頃、竹内たちはと言えば………

 

「………そうかそうか、織斑先生は参戦してくれる方向……と」

 

「えぇ、場所や日程が決まったらまた連絡するように、とのことです」

 

4組の教室に集まって、昨日、岩崎を除く3人が千冬に例の作戦について交渉した際の報告をしていた。曰く、交渉前は先日騒いだ件もあり引き受けてもらえるか不安で心臓バックバクの冷や汗ダラッダラだったが、しっかりと経緯を説明して頼み込んだところ、何とか仲介役を引き受けてくれる手筈となり、彼らは千冬の懐の深さを改めて実感したとか。

 

「僕も僕で、話をつけておいたよ」

 

その一方で岩崎も昨日のうちに紫波に電話し、週末に4人でα社を訪ねると言う旨を伝えていた。

 

「それで織斑くんも行きたいって話だったけど、紫波さんに話してみたら『重要部に行かないと誓えるなら来ても構わない』ってさ……まぁこれは君に限らず来訪者全員に言ってることらしいけどね」

 

「本当ですか、よかった……」

 

これで一夏のα社行きが叶うこととなった。

 

「……とまぁ、僕からはこんなもんかな……いや、もう1つあった……これは次のトーナメントの話なんだけど……」

 

岩崎がもう1つ連絡事項を伝えようとした。しかし……

 

「第3アリーナで代表候補生3人が模擬戦やってるって!」

 

「え、ホント?」

 

「見に行こう!」

 

何やらそのアリーナでは騒ぎが起きている模様。女子生徒たちがそれを見ようとアリーナへ走り出している。

 

「代表候補生3人?」

 

「3人ってことは……」

 

「うんうん、恐らくセシリアさん、リンさん、それからドイツの……」

 

「ボーデヴィッヒさん、でしょうね……」

 

「俺たちも行ってみようぜ!」

 

一夏の提案に全員賛成し、4人は第3アリーナへ向かうのだった。

 

―――――――――

 

4人がアリーナに来る頃にはそれなりに野次馬も来ていた。その中には……

 

「箒!」

 

騒ぎを聞き付けたと思われる篠ノ之箒の姿もあった。

 

―――――――――

 

フィールドではセシリアと鈴音がラウラを相手に戦っている。

 

「喰らえ!」

 

鈴音が龍砲を放った。しかし……

 

「無駄だ!このシュバルツェア・レーゲンの停止結界の前ではな!」

 

それはラウラに直撃することはなかった。

 

―――――――――

 

「龍砲を止めやがった!?」

 

龍砲の威力を身をもって知っている一夏が驚きを隠せずに言った。

 

「AICだ……」

 

シャルルが呟いた。

 

「なるほどね…あれがあるから、彼女は避ける素振りも見せなかったのか」

 

続いて岩崎も納得したように言った。

 

「A…I…C…?」

 

「……ってなんですか?」

 

一夏と竹内が尋ねた。

 

「シュバルツェア・レーゲンの第3世代型兵器、アクティブ・イナーシャル・キャンセラー……」

 

「うんうん、慣性停止能力とも言われているんだ。今のリンさんの龍砲もそれによって止められたと考えた方がいいね」

 

シャルルと岩崎が説明し、一夏が「へぇ~」と漏らす。

 

「……お前、本当にわかっているのか?」

 

あまりに気の抜けた返答に箒が確認するように尋ねた。

 

「…今見た。それで十分だ」

 

それに対して一夏は力強く答えた。一方、竹内は今の説明だけじゃまだ納得がいかないのか、まだ戦いの様子を見ている。

 

―――――――――

 

鈴音はなおも龍砲を撃ち続けるがことごとくすべてAICに止められてしまう。

 

「…ここまで相性が悪いなんて……うわっ!?」

 

鈴音が悔しそうに呟いた。すると甲龍に何かが巻き付いた。ラウラが放ったワイヤーブレードだった。

 

「フン……この程度の仕上がりで第3世代型とは笑わせる……」

 

ラウラが余裕たっぷりに言った。すると今度はそこにレーザーやミサイルの雨が降り注ぐ。セシリアのブルー・ティアーズのビットによる総攻撃だ。しかしこれもビットの動きを見切られ、AICで停止されてしまう。だが……

 

「動きが止まりましたわね!」

 

セシリアはその瞬間を狙っていた。スターライトmkⅢでラウラを狙いを定めている。

 

「貴様もな!」

 

対してラウラも余裕綽々で右肩のレールガンの狙いをつける。そしてほぼ同時に発射した。互いの弾はちょうど2人の中間で衝突し、爆発を起こした。するとその時、爆煙に紛れて何かがセシリアに接近してきた。それは先程ラウラが捕らえた、鈴音の甲龍だった。ワイヤーに捕まったまま、セシリアの方に投げ飛ばされたのだ。セシリアが気付いた時にはもう鈴音がすぐそこに迫っていたため、回避する間もなく2人は激突してしまった。

 

―――――――――

 

「ああ!」

 

あまりに痛々しい光景に一夏が声を上げた。

 

「……ッ!」

 

竹内も声には出なかったものの、鈴音とセシリアの激突の瞬間には目を逸らすように固く閉じてしまった。

 

そう、この2人の反応からもわかる通り、最早この戦いは"模擬戦"などと言う生易しいものではなくなっていた。

 

―――――――――

 

叩きつけられて、まだ動けないでいる鈴音とセシリアにラウラが近づいた。ようやく鈴音が動けるようになり、もう一度龍砲でラウラを撃とうとする。

 

「甘いな、この状況でウェイトのある空間圧縮兵器を使うとは………」

 

だがラウラはあくまでも余裕で龍砲をレールガン1発で破壊した。

 

「!」

 

だが次の瞬間、一瞬の隙をついてセシリアがミサイルを撃ち込んだ。

 

「っ!?」

 

さすがのラウラもこれには驚いた様子を見せた。そしてそのままミサイルは爆発した。

 

「……こんな至近距離でミサイルだなんて、無茶するわねアンタ……」

 

その爆発から何とか逃れ、鈴音が呆れたように、それでいて感心したように言った。セシリアも体勢を立て直し、「苦情はあとで」と制した。

 

「けど、これなら確実にダメージが……」

 

未だ晴れぬ爆煙を眺めて相手の様子を窺うセシリア。やがて、煙が晴れてきた。

 

「…っ?!」

 

しかし、セシリアと鈴音はその光景を見て言葉を失った。何故なら……

 

「終わりか?………ならば、私の番だ……!」

 

ダメージを負った様子が全く見られないラウラが姿を現したからだ。そしてラウラはまたしてもワイヤーブレードを射出した。今度は何と2人の首に巻き付いた。

 

「「………っ!!」」

 

首が絞まってしまっては、もうまともに戦うことなど出来ない、こうなったら後はラウラの独壇場だ。鈴音を殴ったり、セシリアを蹴っ飛ばしたり……。何よりワイヤーがラウラのシュバルツェア・レーゲンと繋がっているため2人は逃げることも出来ず、そのワイヤーを引き千切ろうにも簡単に切れるはずもなく、それどころか首が完全に絞まらないように抗うのがやっとだった。だがその抵抗も次第に弱まり、ワイヤーが2人の首を確実に締め上げる。

 

すると、やられている2人の目の前にあること示すウィンドウが表示された。

 

- 警 告 -

生命維持警告域超過

 

それは、命の危機を表すものだった。だが、首を絞められている苦しみに耐えるので精一杯で、2人はそれを見ることも出来ない……。

 

―――――――――

 

「非道い!あれじゃシールドエネルギーが持たないよ!」

 

シャルルが叫んだ。その隣で一夏が息を飲み、竹内もラウラの一撃が入る度に目をギュッと閉じて見るのも辛そうにしている。

 

「うんうん、もしもダメージが蓄積して、ISが強制解除されるような事になれば……2人の命に関わるほどの大変なことになるね」

 

岩崎も最悪の状況を想定した。フィールドではラウラの一方的な殴打がまだ続いている。次第にダメージに耐え切れなくなった2人のISにはひびが入ったり、最悪砕けて壊れたりしている。そんな様子を見て、箒はあることを考えていた。

 

――――回想開始――――

 

箒はかつて、一夏と共に剣道を習っていた。しかし白騎士事件の後、箒は重要人物保護プログラムにより、転校・引越を余儀なくされた。それは即ち、一夏との別れを指していた。

 

両親とも離ればなれ、姉は已然行方知れず、執拗な聴取や監視を受けることもしばしば……だが、箒は転校先でも剣道を続けた。剣道こそが一夏との唯一の繋がり……そう信じて、彼女は剣の道にのめり込んだ。

 

そしてある年の剣道の大会では優勝するほどの実力を身に付けていた。だが、喜びはちっとも沸いてこなかった。何故なら対戦相手の選手が跪いて涙を溢しているのを見てしまったからだ。その時彼女は、自分がただ相手を叩きのめすだけの、憂さ晴らしの剣道をしていたことを悟り、そんな己を醜く、最低だと思った。あれはただの暴力で、強さとは違うものだとも後に振り返った。

 

この学園で一夏と再会したとき、彼はその時の優勝を称えたが、箒は久々に一夏を目の前にしたこともあって素直に喜べず、複雑な心境だった。

 

そんなことがあって、箒はもう二度と強さを履き違えないようにと、心に誓ったのだった。

 

――――回想終了――――

 

箒はその時の自分と、今のラウラが似ている……否、むしろ同じじゃないかと重ねて見ていた。

 

そんなことなど露知らず、一夏はもう見ていられなくなり、バリアを叩きながら

 

「やめろ、ボーデヴィッヒ!やめろぉぉぉおおお!」

 

と叫んでいる。その叫びが聞こえたのか、ラウラは一夏の方を見て冷たくニヤリと笑った。

 

「…!アイツ…………!!」

 

その意味を悟った一夏は一旦バリアから離れ、制服のまま白式を展開した。そして白式の力を使って、バリアを破り、そのまま飛び出していった。

 

―――――――――

 

「その手を離せぇぇぇ!」

 

一夏は叫びながらラウラに突っ込んでいった。しかし次の瞬間、彼にとって予想外の出来事が起こった。

 

「!?」

 

あともう少しでラウラにブレードを降り下ろして攻撃ができる……と言うところまで近づいたところで、彼は急に身動きがとれなくなった。

 

「(な……何だ……体が………動かない…!)」

 

動かない……そう、シュバルツェア・レーゲンのAICだ。あれは単なる目に見えないシールドなどではなく、対象を任意に停止させることのできるものである。先程彼は「今見た。それだけで十分」と言っていたが、それだけではわからないこともある…ということを今、身をもって体験していることだろう。

 

だがラウラの意識が一夏に向いた事により、セシリアたちへの注意が削がれてワイヤーが緩み、彼女らはようやく解放された。同時に彼女らのISも限界を迎えたのか、自動的に解除された。

 

「感情的で直線的、絵に描いたような愚か者だな」

 

そんなことなど気にも留めず、ラウラは一夏に対する感想を述べた。

 

「…っく」

 

一夏はまだ身動きがとれずにもがいている。

 

「やはり敵ではないな。この私とシュバルツェア・レーゲンの前では、有象無象の1つでしかない、消えろ!」

 

ラウラは言い切ってレールガンの砲門を一夏に向けた。織斑一夏、絶体絶命のピンチ!その時、上空から銃弾の雨が……!するとラウラはそれを避けるために一夏に張っていた停止結界を解き、回避行動に移った。

 

「一夏、離れて!」

 

先程の銃弾はシャルルのアサルトカノンから放たれたもので、シャルルがラウラに突っ込んでいく。

 

「雑魚がッ!」

 

憎しみの対象を潰す絶好の機会を逃してしまったラウラは、苦虫を潰したように言う。一夏はこの隙に鈴たちを…と思って彼女らのいるはずの方を見たら……

 

「優斗!トシさん!」

 

そこにはすでに竹内と岩崎が救助に来ていた。

 

「この2人のことなら僕たちに任せて!大丈夫、2人とも意識はある!」

 

竹内がセシリアを抱えて飛び去り、

 

「僕たちはこのままこの2人を医務室に連れて行く、織斑くんはデュノアくんと一緒にあの子を止めてくれ!」

 

岩崎も少し遅れて鈴音を抱えて飛び去った。

 

「!わかった!ありがとう2人とも!」

 

一夏は竹内たちに礼を言って、再びラウラに向き直る。

 

―――――――――

 

時は少~しだけ遡り、一夏が飛び出したとき……

 

「あぁっ!」

 

「一夏っ!」

 

「え?織斑くん!?」

 

シャルル、箒、竹内が三様に声を漏らした。

 

「はぁ、やれやれしょうがないなぁ」

 

一方岩崎はため息をついた。そしてその分の空気を吸い込むと……

 

「篠ノ之さんはすぐ織斑先生を呼んできてくれ。恐らくあの子を制御できるのは織斑先生しかいない」

 

「わかった、任せろ!」

 

「デュノアくんは織斑くんの援護を!僕たちの中で一番実力のある君なら、僕たちの誰よりも上手く彼をフォローできる」

 

「了解!」

 

「そして残った僕と竹内くんでセシリアさん、リンさんの救出、及び医務室への搬入。……それで竹内くん、申し訳ないんだけど2人のところまでは僕を引っ張ってくれないかい?僕のIS、装甲が厚い分、機動力がからっきしなんだよねぇ……」

 

「わかりました、もちろんいいですとも!」

 

「ありがとう、それじゃあ行動開始!」

 

てきぱきとその場にいた3人に指示を出した。そして岩崎の号令を機に箒は千冬を呼びに、残った3人はそれぞれISを展開し、一夏が破ったバリアの穴からそれぞれの役目を果たしに飛び立った。

 

―――――――――

 

「(……私に専用機があれば……!)」

 

千冬を探す途中、箒はそんなことを考えていた。力のない自分が悔しい、一夏と並んで戦えない自分が悔しい、だが専用機があれば……しかし、

 

「(……今は私のやるべき事を、早く千冬さんを呼ばなくては…!)」

 

任せろと言った手前、余計な考え事をしていて手遅れになっては皆に申し訳が立たない。箒は無い物ねだりを一旦止め、千冬探しに集中することにした。すると彼女の前方から探していたその人、千冬が刀を持って現れた。

 

「千冬さん!ボーデヴィッヒが、アリーナで……!」

 

箒が事情を説明しようとしたら……

 

「……あぁ、わかっている。生徒たちの騒ぎを聞いて、まさかと思って来てみた……それと、学校では『織斑先生と呼べ』と言っている……!」

 

「!……すみません……」

 

千冬はすべてわかっていた。アリーナで起こっていることも、箒が自分を名前で呼んだことも。

 

「退け、アイツを止めに行く……」

 

「は、はい……」

 

千冬はそれだけ言い残し、アリーナへ向かっていった。

 

―――――――――

 

こちらはセシリアと鈴音の救助に向かった竹内と岩崎。竹内の汐風で、あっという間に倒れている2人のもとにたどり着いた。岩崎は小さく礼を言って、すぐに鈴音の安否を確認しに行った。竹内も、セシリアの状態を確認する。

 

「セシリアさん……?セシリアさん……!」

 

「リンさん、起きるんだ。意識を強く持って」

 

竹内と岩崎は呼び掛けたり、肩を軽く叩くなどしてセシリアたちに意識の覚醒を促した。すると……

 

「………ん………ト……シ…………?」

 

「……無様な姿を………お見せしてしまいましたわね……ユートさん………」

 

2人の意識が戻った。その事に竹内と岩崎はホッとしつつも……

 

「いえ、そんなことより命が助かってよかった……今、医務室に連れて行きますので、もし途中で痛くしてしまったらごめんなさい!」

 

「竹内くんの声が聞こえたかい?彼の言う通り、無事とは言えないかもしれないけど、意識があるみたいで何よりだ。さぁ、医務室に行くから、しっかり掴まっててくれ」

 

緊張の糸を切らすこと無く、それぞれ怪我人をだき抱えた。

 

「優斗!トシさん!」

 

その時、一夏の通信が入ってきた。助けに行こうとした矢先、竹内たちがすでにいたことに少し驚いているようだ。

 

「この2人のことなら僕たちに任せて!大丈夫、2人とも意識はある!」

 

「僕たちはこのままこの2人を医務室に連れて行く。織斑くんはデュノアくんと一緒にあの子を止めてくれ!」

 

竹内と岩崎はセシリアたちの安否や今後やるべき事を一夏に伝えた。一夏のお礼の言葉も聞くこともなく、彼らはそこから最も近いピットに向かって飛び立った。

 

―――――――――

 

そして時は戻り、一夏&シャルルvsラウラ

 

今度はシャルルのリヴァイブの左腕がワイヤーブレードに捕らわれてしまった。シャルルは残った右腕でライフルを撃つなど抵抗するが、それもAICに止められてしまい、それどころか引っ張られ、2人の距離はジリッジリッと詰まっていく。

 

「おもしろい、世代差というものを見せつけてやろう!」

 

ラウラが左手首からプラズマ手刀を出現させる。これを見た一夏は、シャルルを助けようと大急ぎでラウラに接近する。しかしそれも間に合わず、ラウラがプラズマ手刀でシャルルにトドメを刺そうと飛び掛かった!

 

「くぅッ!」

 

間に合わなかった一夏が悔しさをにじませる。しかし、ラウラの手刀はシャルルに届かず、何者かによって止められた。

 

「…!?教官!?」

 

「やれやれ、これだからガキの相手は疲れる……」

 

「………千冬姉……?」

 

そう、千冬がI()S()()()()()ラウラを()1()()()止めたのだ。

 

「……模擬戦をするのは構わん。だがアリーナのバリアまで破壊する事態になられては、教師として黙認しかねん。この戦いの決着は、学年別トーナメントで着けてもらおう」

 

千冬の裁定が下り、

 

「教官がそう仰るのでしたら……」

 

ラウラは素直に聞き入れ、ISを解除した。

 

「織斑、デュノア、お前たちもそれでいいな?」

 

千冬は一夏とシャルルにも確認をとった。

 

「あ、あぁ……」

 

「……教師には『はい』と答えろ、馬鹿者……!」

 

「は、はい!」

 

相変わらず姉として応対する一夏に釘を刺す千冬。それはさておき、一夏はOKらしく……

 

「……ボクもそれで構いません」

 

シャルルも指示に従った。

 

「では、学年別トーナメントまで、私闘の一切を禁止する!解散!」

 

これにより、この場は収まることとなった。




ケガをした鈴音やセシリアを見舞いに、医務室を訪ねた竹内たち。すると彼らを追って多くの女子生徒が流れ込む。そして週末、竹内たち4人はα社へ紫波との交渉に向かうのだった。

to be continued...

どーも、いつも心に千葉!滋賀!佐賀!……などと言ってる場合ではない剣とサターンホワイト(脳内故障気味)です。いやぁ、ついに2-4の予告分が終わりまして少しホッとしているところです。

いやぁ前回までに話を分けたところ、今回の話は4人でアリーナに向かうところで終わりということになっていましたが、それではあまりにも短すぎるため話を膨らませた結果……連休中にあげる予定がその連休を過ぎてしまいました……あ~あ………。

しかし、執筆が終わり更新したと言うことは……そう、次なる物語の執筆がまた始まるのだ……できれば今月中にもう1話いきたいところ……だがウマイこといかないのが世の常……次の更新は本当にいつになることやら……こんなテキトー筆者ですが、今後ともよろしくお願いします。

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