と言ったのは良いけど、前回の予告した範囲では本文が長くなり過ぎてしまったので、またまた分割してしまいました。欲張ったつもりはないのですが文章を書いていると自然に文字数が嵩んでしまって……いやぁ執筆って難しい……。
さて、お礼と愚痴はこのくらいにして、本編をどうぞ!
さて、ここは医務室。竹内と岩崎が、セシリアと鈴音の様子を見ている。そこへ……
「トシさん、2人の様子は!?」
一夏が勢いよく入ってきた。少し遅れてシャルルも到着する。
「まぁまぁ静かに、ここは医務室なんだから……で、2人の様子だけど、ご覧の通りさ」
「「……………………」」
岩崎は騒ぎ立てる一夏を咎めつつ、ケガ人2名の様子を見せた。2人ともあちこち包帯を巻かれ、動き辛そうだ。そして何より、いつもなら2,3言ほど強がりを言ってるところだが、今回の件は流石に堪えたのか、2人とも一言も喋らず、表情も暗い。
「それで、ボーデヴィッヒさんとの決着は?」
一夏とシャルルを除く4人は決着を見ることなく医務室に来たため、その結果を聞くべく、今度は逆に竹内が一夏たちに決着の行方を尋ねた。
「……織斑先生が止めに入って、『この決着は学年別トーナメントで着けろ』って……でもボクも一夏も全然敵わなかったよ……」
「……そう」
シャルルが少し悔しそうにしながら答えた。実際シャルルも満足に攻撃を当てられたわけではなく、あの戦いではセシリアの至近距離ミサイルでビックリさせる程度が関の山だった。
セシリアたちのケガの様子、そしてシャルルでも歯が立たなかったと言う事実。それだけラウラ・ボーデヴィッヒの壁が厚くて高いと言うことを表している。
「………織斑くん……シュバルツェア・レーゲンとの戦闘データ、後で僕にも見せてくれないかな?」
「優斗……どうして……?」
空気が重さを帯びてきたとき、竹内が決意したように顔を上げ、一夏にデータを見せてくれるように頼んだ。
「……学年別トーナメントで決着を着けるんだよね?それなら僕にもボーデヴィッヒさんと当たる可能性がある。だから対処法を考える必要がある。そのために、戦闘データがどうしても必要なんだ。……それに、今回ばかりは彼女のやったことを許せそうにない……」
「……ユート……」
怒りからか、竹内の手は固く握られ、震えていた。
「………わかった。だけどアイツを倒すのは俺だ!アイツが俺との決着を望んでいた、俺がアイツと向き合わなくちゃダメなんだ……だから俺にもその特訓をやらせてくれ!」
一夏にも"打倒・ボーデヴィッヒ"の決心がついた。
「じゃあ、ボクも手伝うよ!2人より3人、人数が多い方がいろいろ出来るしね!」
シャルルにも、
「……でしたら、……ッ……私も……!」
「えぇ……やられっぱなしじゃ………ッ……終われないしね……!」
ケガをして今まで暗かったセシリアと鈴音にも、闘志に火がついた。
「(……君たちはまだ休んでた方が良いんじゃないかな……)えーっと、盛り上がってるところ失礼するけど、今回のトーナメントについて1つ聞いた話があるんだ。さっきもそれを言おうとしたんだけど……」
岩崎が割り込み、トーナメントについて話をしようとしたところで……
――ドッドッドッドッドッ……
「ちょっと待ってください!……何か聞こえません?ほら、足音みたいな」
遠くの方から大きな音がしてきた。
――ドッドッドッドッドッ……
「……そうだね……こっちに近づいてる……?」
――ドッドッドッドッドッ……
シャルルの言う通り、足音らしき音は次第にこちらの医務室に近づいており、
――バァン!
またも勢いよく扉が開かれ、大量の女子生徒が流れ込み、竹内たちはあっという間に囲まれてしまった。首もとのリボンを見る限り、全員1年生のようだ。
「なっ、何ですか一体!?」
「えーっと……ケガ人もいるから、なるべく静かにしてね」
6人を代表して、竹内とシャルルが注意を促し、この騒ぎの原因について尋ねた。すると……
『これ!』
全員が全く同じ用紙を見せてきた。すると岩崎が「それについて今話そうとしたのに……」と誰にも聞こえないほどの小さな声で呟き、頭を抱えた。
「なにこれ?」
「えーっとなになに?『今月開催される学年別トーナメントについて』?」
「『今回開催される本トーナメントは、より実戦的な模擬戦闘を行うため、2人組での参加を必須とする。なおペアが出来なかったものは、抽選により選ばれた者同士で組むものとする。締切は』……」
「とにかく!私と組も、織斑くん!」
「私と組んで、デュノアくん!」
「私は、竹内くんと組めたら嬉しいなぁ…なんて!」
「じゃあ岩崎くんは是非、私と!」
みんな口々に「自分と組んで」と竹内たち男子生徒に頼んできた。だが、一夏と竹内はどうしても首を縦に振ることができなかった。その理由は、奇しくも2人とも全く同じだった。
「「(もしもシャルル(さん)が女子と組んで、秘密がバレるようなことになるとまずい……だったら俺(僕)がシャルル(さん)と組んだ方が……)」」
そう、2人ともシャルルの正体が露見することを恐れていたのだ。もしそうなるくらいなら自分と組んだ方が危険が少ない。2人がその考えを実行しようとした、そのわずか数秒前に彼らより先に動き出した人物がいた。
「いやいやぁ、こうして僕たちをパートナーにしたいって来てくれたことは、本当に光栄なことなんだけど……」
岩崎だ。
「ちょっと遅かったね、実はもう僕たちで組むって決めちゃったんだ。織斑くんはデュノアくんと、竹内くんは僕とね……だから今回はごめんなさい。もし次の機会があって、それでまた僕たちの内の誰かをパートナーに選んでくれるのなら、その時は……是非」
彼は持ち前の巧みな話術を用いて、ペアがもう決まったから組むことができない旨を伝え、「機会があれば……」とフォローも加えた。すると……
「まぁそういうことなら仕方ないか」
「他の女子と組まれるよりかはいいしね」
「男子同士って言うのも絵になるしね」
「何より今回は無理でも、まだ組むチャンスはあるかもしれないし!」
みんなあっさりと諦めて、医務室から退室していく。
「……トシさん、よくこの短時間でこれだけの出任せが思い付くよな……」
一夏が小声でシャルルと竹内に言った。
「うん……そうだね……」
「……本当に。……何かこう……尊敬出来るよね……」
シャルルも呆気にとられつつ同意し、竹内に至っては尊敬の念すら感じるようだ。とりあえず、これで一安心とホッとしたところに……
「一夏!アタシと組みなさいよ、幼馴染みでしょ!」
「はぁ?」
鈴音が一夏に、
「ユートさん!クラスメートとして、ここは私とペアを組んでくださいませ!」
「えっ、僕!?」
セシリアが竹内に、それぞれペアを組むように要求した。しかし、
「ダメですよ」
本人たちが答える前に、いつの間にか来てた真耶がその要求を止めた。
「お2人のIS、ダメージレベルがCを超えています……トーナメント参加は許可できません!」
真耶は手元の資料を見ながら、止めた理由とトーナメント参加を認めないことを説明した。恐らくこれを伝えるために来たのだろう。
「そんな!アタシ十分に戦えます!」
「私も納得できませんわ!」
ついさっき闘志に再び火が灯ったばかりの2人は真耶に抗議するが……
「ダメといったらダメです!当分は修復に専念しないと、後々重大な欠陥が生じますよ」
今日の真耶は2人の押しにも負けずキッパリと拒否した。
「そうそう、それに君たち自身だってそんな状態だ。明日から早速訓練に復帰したところで、満足に動けないだろうし、ケガの癖が残って一生それと付き合うことにもなるかもしれない。悔しい気持ちはわかるけど、はっきり言って今の君たちじゃいくら実力があっても、タッグパートナーからすれば旨味はまったくなく、むしろマイナスでしかない。君たちが100%の実力が出せない分、その穴埋めをするのがパートナーの仕事になる……けど、君たちの実力がありすぎる分埋める穴が大きすぎて、それがパートナーの負担になるからね。……そう言うわけで、僕も山田先生と同じ意見かな。ISの修復もそうだけど、君たち自信の体もしっかり治療しないと……」
岩崎も真耶に同調して、セシリアたちの参加を止めた。
「トシさん?……それはちょっと言い過ぎじゃ……」
少々きつめのことを言った岩崎に一夏が小さく抗議したが……
「……わかったわよ……それで負けるんじゃ意味ないし……(優勝したら、その娘が男子と付き合うのよね……)」
「……悔しいですけど、トシさんの言う通りですわね……(それだけは阻止しなければ……)」
セシリアと鈴音は渋々とではあったが、トーナメントの参加を諦めた。だが何やら思惑があるようで、互いに目配せすると……
「そのかわりアンタたち、絶対優勝するのよ!」
「私たちの分まで頑張ってくださいな、心から応援しますわ!」
4人に必ず優勝するように発破をかけた。
「は、はい……!」
「ま、任せておけ……」
「2人の気持ちに応えられるように頑張るよ」
竹内、一夏、シャルルは言葉通りの意味として捉えたが……
「(……なるほど、あの噂のために意地でも出ようとしてたのか……)ベストを尽くすよ、そうすれば自ずと結果はついてくるさ」
岩崎だけは彼女らの思惑に気付いたようだ。
「フフッ、美しい友情ですわね」
その様子を真耶が微笑ましく見ていた。
―――――――――
数分後、面会時間終了により、セシリアと鈴音を校医に任せて、一夏たち4人は寮へ帰ることにした。その道中…
「ねぇ、トシ……」
シャルルが岩崎に話し掛けた。
「ん?何だい?」
「あの……医務室で言ってたペアの組み合わせだけど……」
「うんうん……あ、もしかして組みたい相手でもいた?」
「いやっ、そういうことじゃなくて!」
「?」
「その……どうしてその組み合わせになったのかなぁって思って」
どうやら先程医務室で述べられた組み合わせの根拠を問いたいようだ。一夏も「あ、それ俺も気になってた」と興味を示した。
「あーうんうん、その話をするにはここじゃちょっとね……竹内くんデュノアくん、晩ごはんの後でまた君たちの部屋に集合ってことにしても構わないかい?………
岩崎はこの意見が身勝手なものだとわかっていたが、竹内とシャルルに「察してくれ……」と目で訴えた。
「うん、わかった。いいよ」
岩崎の意図を察したシャルルはすぐに承諾し、
「…シャルルくんがいいって言うなら、僕も断る理由はないので、いいですよ」
少し遅れて竹内もOKを出した。
「うんうん、それじゃあまず一旦各々の部屋に戻って、晩ご飯を食べ終えたら1030室に集合……でいいかい?」
「「「了解!」」」
「よしよし、じゃあここで一旦解散して、また後で会おう」
……と言うわけで、この場はこれで解散となった。
――――そして数時間後、1学年学生寮・
「うんうん、全員揃ったね。んじゃ、始めようか」
岩崎がお茶を注ぎながらミーティング(?)の開始を宣言した。
「さっき出た、『何でデュノア・織斑ペア、竹内・岩崎ペアという組み合わせにしたのか』という質問についてだけど……まず、デュノアさんの正体がバレてはいけない。だから彼女は女子生徒と組むより、僕たち3人のうちの誰かと組んだ方がバレる心配は少ない。これは僕たち全員の共通認識でいいね?」
岩崎が確認をとった。3人は揃って頷いた。
「じゃあ僕たち3人のうち誰と組むのかって話になるんだけど、僕としてはさっき医務室で言った通り、織斑くんがいいかなって思う」
「俺……ですか?」
一夏が自分を指差して尋ねた。
「そう、君だ。織斑くん、白式の武装ってさ、近接ブレード1本だけでしょ?つまり近距離戦闘しか出来ない、そうなってくると剣の届かない距離に逃げられて、その距離をキープされたまま射撃とかされたら、もう手の施しようがなくなるわけだ……まぁ、最悪剣を投げると言う手段もないわけじゃないけど、織斑くんの場合は本当に息詰まった時に奇策としてしか使わない方がいい。何てったってそれの他に武装が何もないんだ、投げた後は丸腰になってしまうからね。……だから、中~遠距離をカバーできる人とペアを組むのが理想的だ」
一夏の白式、その武装は近接ブレード・雪片弐型ただ1つ。相手に接近できれば何の問題もないが、必ずしも接近できるとは限らない。さらに言えば数少ない男性IS操縦者、加えて"ブリュンヒルデ"こと織斑千冬の弟ということもあり、一夏の注目度は学年で1,2を争うほど高い。ともなれば、一夏が近接攻撃しかしてこれないことはとっくに学年全体に知れ渡ってること請け合いだ。そこで、一夏のパートナーには彼の痒いところに手が届くタイプ、つまり中~遠距離を広くカバーできるタイプが最適である………というのが岩崎の見解である。
「でも、僕も竹内くんも遠距離か中距離、どちらか片方しかカバー出来ない。一方デュノアさんなら、全距離に対応できる豊富な武装、そしてそれらを素早く切り替えて扱う"
なるほど…3人は納得した。
「次の理由だけど、最近は君たち2人一緒に訓練することが多いそうじゃないか」
「まぁ、そうですね……シャルルの説明が一番分かりやすいですし」
「うんうんなるほど……まぁ理由はともかくとして、長い時間一緒にやって来たってことは、互いの手をある程度知っているってことだ。必ずしもそうとは言わないが、よく知ってる者同士が組めば、そんなに知らない人と組むよりかは連携を取りやすいだろう……ちなみに、僕と竹内くんが組むのも、これと同じ理由さ」
そう、岩崎と竹内はこの学園の中では互いを一番よく知っている。さらに言えば、共に過ごした時間はシャルルや一夏との時間の比ではない。ゆえに、完璧にとまでは言わないが、互いの考えそうなことは概ねわかる。言い方を変えれば、お互い他の誰よりも連携を取りやすい。岩崎がこの2つの組み合わせを思い付き推奨するのも、この考えによるところが大きい。
「あと織斑くん、君は前にデュノアさんのアサルトライフルを借りたことがあるそうじゃないか。いざとなればそれも活用できる。君が近接戦闘しか出来ないだろうと思っている相手の裏を掻くことが出来るだろう。そういうわけで、織斑くんにはデュノアさんがペアとして相応しいと考えたんだ。正直言って、織斑くんにもデュノアさんにも悪い話じゃないと思うけど……君たちの意志はどうかな?」
いくら悪い話じゃないと言っても、本人たちにその気がなければ良い方の結果はまずついて来ない。ということで岩崎は一夏とシャルルにその意志があるのか尋ねた。
「俺は構いません。むしろシャルルがついてくれるなら、百人力ですよ!」
「うん……そこまで信頼してくれるのなら、ボクもそれに応えなくちゃ!」
その問いに対して、一夏は迷いなく、シャルルはその一夏にほだされる形で承諾した。
「よし、竹内くんもそれでいいね?」
「はい、改めてよろしくお願いします」
竹内も同意し、これで組み合わせに関する問題は解消し、ここに2つのペアが誕生した。
「うんうん、僕のわがままに付き合わせるような形になってごめんよ。けど、僕は今回に関してはこれがベストの組み合わせだと思ってる。ただし、いかにベストとは言え、僕たちの実力はまだまだ未熟。ケガをして僕たちに想いを託したセシリアさんやリンさんにいい報告が出来るように、明日からはそれぞれペアで訓練して、戦術や精度を磨いていこう。特に、ボーデヴィッヒさんにはみんな負けたくないよね?」
『ボーデヴィッヒ』……この名が出たとき、全員の顔がより真剣なものになった。
「何の考えもなしに彼女に挑めば、それこそあの2人と同じ轍を踏むことになってしまう………それだけは避けなければならない。となれば、シュバルツェア・レーゲンのAICについて何か対策を考えなければいけないね」
岩崎はここでチラリと時計を確認した。
「(時間がないな……)他の生徒を無視できるくらいの実力は僕らにはないけど、AICを無視しての優勝はあり得ない。彼女は必ず僕らツーペアのどちらか、或いは両方の前に立ちはだかるだろう。だからAICの対策について考える必要があるんだけど……」
「「「………(ゴクッ)」」」
「そこは明日から各々ペアで何とかしてもらうしかないな!」
3人ともずっこけた。意味深な溜めがあったので、何か重要なことを言うのかと思ったらこの始末。早い話が拍子抜けしてしまったのである。
「いやぁだって考えてもみてくれよ、僕は織斑くんみたいに剣を扱えないし、竹内くんもデュノアさんみたいに多くの武装を素早く切り替えながら戦う技術もない。君たちに出来ることが、僕たちにも出来るとも限らないからね。あと時計を見てもらうとわかると思うけど、残念なことに今日はタイムアップらしいよ」
そこで3人は岩崎に言われたように、時計を確認した。思いの外時が経っており、消灯前点呼の時間までもう残り10分を切っている。
「……そろそろ戻らないと、マズイ……ですよね……?」
「あぁ、マズイね……てなわけで竹内くん、明日から頑張ろう!お休み!」
「は、はぁ……お休みなさい……」
最後に言いたいことを言いたい放題言うだけ言って、岩崎は帰っていった。
「お、俺も千冬姉にどやされるのは御免だから、早いところ帰るとするぜ、じゃあお休みっ!」
一夏も慌てて帰っていった。………この展開、なんかデジャヴが……。(by天の声)
ともかくこれにてこの日の臨時会議は終了、竹内とシャルルも寝支度を整え、眠りに就いたのだった。
前書きにも書いた通り、前回の予告分が終わってないので、次回予告は無し。
以前活動報告に、「『主人公1人じゃ話が組み立てられない』という理由で竹内、岩崎両名を主人公にした」と記しましたが、「学年別トーナメントのタッグで男子生徒1人が溢れるのを防ぐために主人公を2人にした」という理由があったのを思い出しました。……何を言ってるのかわからない?大丈夫、私自身何を言ってるのかわかってない!
今回の後書きは以上!執筆を一旦終えると壊れてしまう作者・剣とサターンホワイトでした!