汚れきった聖なる島に~ Fate/ outlaw プロローグ 作:グレン×グレン
月の出ている夜は好きだ。
自分の汚れを自覚することなく、しかし目の前の暗闇に惑わされることはないのだから。
そんなことを思いながら、まだ少年という表現ができる男が袋から缶詰を取り出す。
軍から横流しされたレーションだ。缶詰だが熱伝導率が高く、専用のパックに入れることで温めることが可能。火を使わないのでこういう時でも目立たない。
一応周囲の警戒は行っているが、だからといってこの仕事は危険以外の何物でもない。目立つような真似は避けたかった。
缶詰に入っているのは鯨肉。この国では某団体を「獣と人間を同列に語るとかいう狂人はテロリストだ」とみなして活動を発見次第即拘束する。抵抗したら射殺すると堂々と公表しているため、調子ぶっこいていた連中が脱退する騒ぎになった。国際社会でいろいろ緊張が高まったらしいが、いろいろな意味で下手に喧嘩を売れないためそれが理由で戦争になることはないだろう。
同時に付け合わせとして漬物と握り飯。握り飯は菜っ葉を混ぜられた混ぜご飯で、栄養バランスがかなり高いだろう。
「珍しいな。いまどき手作りの弁当なんてそうおめにかかれねえぞ?」
隣でスティック状の健康食品を食べていた同僚の中年男性が、少年に視線を向ける。
「つーか健康に気を使ってんなら普通に街行けよ。ただで手に入るだろ?」
「るっせえよオッサン。俺は飯食うために仕事してんの。誰が喜んでエサなんて食べるか」
そう吐き捨てながら、しかし食事はしっかりと食べる。
そしてそんなことをしているなか、目の前で取引は着々と進んでいる。
目の前で自分たちを雇った男たちがトランクケースを渡し、相手もトランクケースを渡していく。
「なあ、なんだっけ今回の取引の品」
「知らねえのか坊主? こっちが持ってきたのがマリファナで、相手が持ってきたのが酒だよ。家の国の酒はピンキリ激しいからよ、こう中間の類が人気なんだよ」
「この国のアルコール関係いろいろざるだよな。製造・販売・運搬が制限されてるけど所持と飲酒はフリーだからこういう商売が設けるわけだ」
「税金かけてねえから俺ら下級でも買えるしよぉ。なんでもかなりたくさん手に入るから俺らにも分けてくれるっていうけど、どうよ?」
「悪いが、酒に酔うのは好きでも酒の味はわからなねえからな。どうせ混ぜるのに上質もなにもねえ」
「そりゃ残念。アンタ楽させてくれたからいっぱいおごりたかったんだけどよ」
そういいながら、男は錠剤を取り出すとそのまま水であおって飲み干す。
この国では特に珍しくもない光景。だが少年は白い目を向ける。
「仕事中だ。もうすぐ終わるからってキメるのはやめろ」
「あとちょっとだろうがよ。それにこのあたりは穴場だし、誰も気にしたりなんてしねぇ―」
次の瞬間、少年は中年に足払いをかけ、同時に懐から拳銃を取り出す。
消音器を取り付けられたそれを三連発。同時に、銃声を鳴り響かせながら離れたところで男が倒れ伏した。
「散弾銃か。レアなもん持ちやがって」
「あ、あっぶねぇ! クソが、このあたりは依頼人の縄張りじゃなかったのかよ!?」
あわてて拳銃を取り出しながら、中年男性を岩に隠れながら周りを探る。
見れば、同じ色のインナーを着込んだ若い男たちが、何人も近づいていた。
そのほとんどが鉄パイプなどの凶器で武装し、拳銃を持つものも何人もいる。
「・・・忘れたか。この国じゃ大物からもうけを分捕ろうとする出稼ぎ小物集団が毎日クソのように出てくんだろうが。おかげで俺らもくいっぱぐれないんだがな」
「俺は便秘気味なんだよ! くそ、今夜は楽な仕事だと思ったのによぉ!!」
ぼやきながら銃撃戦を続けるが、しかし相手もなかなか強敵だ。
工場から奪ったのか、合金製のプレートを立てに何人もの男たちが取引現場に駆けだしている。
このままだとかなりの酒と麻薬が奪われるだろう。どうせ外道共の食い合いとはいえ、仕事の結果が悪くなると今後の稼ぎに響く。
「牽制は任せた。俺はとりあえず本命をつぶしとくぜ」
「あ、おい―」
あわてた中年が肩をつかもうとするより早く、少年は自分が持つ力を起動した。
「強化開始《レディ・ブースト》」
瞬間、彼の肉体は肉体の限界を超える。
ただの人間たちの中において、魔術使いという存在が与える影響を示すため、少年は駆けだした。
「・・・ストリートギャングってのはマジうぜえな。どこからか銃を調達してマフィア共とマジで打ち合いする連中が何人もいるしよ」
「だよなぁ。こっちが劣悪な奴だとはいえ、俺たちがこれ買うのにいくら稼いだと思ってんだよ。依頼人の連中だって全部合わせて二十はねえはずだぞ」
カラーギャングは何とか追い払った。
どいつもこいつもやばいレベルの薬で理性を放火一世ていたらしく、結局全員殺す羽目になった。
とはいえおかげで依頼人と取引相手は無事助かり、取引も終了直前だったので速やかに撤収できた。
あんな離れたところの取引では、警察はまず一服してうっぷんを晴らしてから鼻歌交じりに後始末の準備をする者だが、万が一出くわすとさすがに仕事をしないわけにもいかない。
そういう意味では今回はだいぶ儲けたほうだ。
なにせ一番活躍している。覚えもよかったのかチップとしてボーナスを渡されたぐらいだ。
「おい、煙草は風下で吸ってくれ。煙を肺に入れたくない」
「へいへいエースさまはストイックなことで。・・・あ、落とした!?」
「この国煙草も高いだろうが。もうちょっと気を付けてすえよ」
呆れ半分で笑いながら、少年はふと横を見る。そこには、海を挟みながらしかしこの国より大きな大地が存在していた。
「・・・この国も、昔はあそこと一緒の国だったんだよなぁ」
・・・四聖国。かつて四国と呼ばれていた島が独立した国家。
突如発生した軍事クーデターにより勃発したこの国は、世界格好の諜報機関が首をかしげて相談し合うほどの鮮やかに大量の兵器と兵士を集め、瞬く間にクーデターを成功させた。
国内での反乱という想定外の事態に自衛隊は対処しきることができず、何よりその場所を防衛する自衛隊員はもれなく全員が参加したため対処できなかった。アメリカ合衆国の艦隊も、アメリカから亡命していた技術者によってモンキーモデルとはいえF22が開発されてきたこともあり、史上初のステルス戦闘機同士の激戦の果てに大打撃をうけ、抑えきることができなかった。
一時は核兵器の使用すら心配されたが、これだけの所業を行われたのにもかかわらず世界各国はこの国独立を認めている。手痛い目にあわされたアメリカすら、直接の貿易は小規模だが交流を行っているほどだ。
石油、石炭、ダイヤモンド。すべてにおいて世界有数の発掘量を発揮した四聖国はそれらをほかより安めに輸出することで世界各国から承認を得た。それら様々な地下資源の発掘は人手を呼び、人口においてもかつての四国のそれではなくなっている。
その豊富な資金力を元手に各種インフラはかなり整備されている。もともと日本なので水道水はそのまま飲めるし、街に行けば最低限の栄養を確保できる栄養食は無料で手に入る。大規模な都市開発計画で設計された公園のベンチは屋根もあるので雨風をしのぐのには十分すぎるし、地下街に入れば冬でもそこそこ温い気分を味わうことができる。
だが、同時にこの国はどこまでも腐り果てている。
この国警察がまずすることは、ギャングに対して金を請求することだ。その金の高さに応じて違法に拳銃を所有する量や、販売していい麻薬の量を指導しているとすら言われている。
昨日あいさつした隣人が次の日には荷物を残していなくなっているということも珍しくない。
爆弾を持ったテロリストと軍人の戦闘なんて、一日に一つはどこかで起こっている。もっと隠れてこそこそ攻撃したらいいんじゃないかなどと思ったことも何度もある。
そんな腐りはてたこの世界で、しかし少年は生きている。
強い信念も明確な大義も何もない。だけどただで手に入る餌なんかじゃなくてご飯と呼べるもので生きていきたいと思うし、できればもっといい生活を送りたいという俗物じみた願望を持っている。
ふとそんなことを思いながら、少年は腕に痛みを覚えて視線を向ける。
あんな骨董品といっても過言ではない粗悪な銃弾でやられるような装備をしていたわけではなかったが、どこかぶつけただろうか。
そう思う少年の視界には、三画の、赤い入れ墨のようなものが刻まれていた。
・・・書きませんよ? かけませんよ?
いや、聖杯という存在と、魔術師にとって撮影機器や治安維持関係の発達が驚異であることを考えると思ってたんですよ。
・・・どこぞの犯罪都市や失敗国家並みに治安が悪ければ、あまり気にしなくてもよくなるんじゃね?
そんなことを思ってつい妄想にふけっていたのですが、あまり作品をいろいろな方向に広げても持ちこたえられずに墜落するのが目に見えている。
だからちょっとだけ書いて情報を出して、もし作品を書きたいけど設定を練れない人に書いてもらえばいいんじゃないかという都合のいいことを考えてみました。
なので続きをくださいなんて要件は受け付けません。むしろ私がいいます。
だれか、ぜひ続きを書いてください。_(._.)_