BLEACH外伝 〜千年後、史上最強と称された集団〜 作:二毛目大庄
その動きを裏挺隊から報告を受けた山本元柳斎重國は、自身を含む護廷十三隊を五方に分けこれに対抗、東西南北四方に分かれた各隊長は、決戦の時を迎えていた。
一方八剣聖は、20年前の虚討伐の真実を知り落胆する者・その真実に加担した事実に縛られている者・先代総代の恩義に報いる為だけに動いている者など、様々な思惑が交錯する中、薄氷を踏むような関係性を保っていた。
300体を超える虚と八剣聖を相手に、護廷十三隊は尸魂界を危機から救えるのか。
そして八剣聖現総代・東元坂興征の真の狙いとは。
両者、激突。
数え切れない程の行軍の足音は轟音となって、まるで1つの塊のように1つの地点を目指して突き進んでいた。
それを率いるのは2人の男。
いや、厳密には、決して率いれてはいなかった。
その集団は、率いる程の統率力・判断力を持ってはいなかったからだ。
胸に穴の空いた異形の化け物・虚。
20年前に、自分達を英雄視させる為に起こした事件を、もう一度自らの手で引き起こす。
そうする事により、自分達の存在意義を、八剣聖の必要性を尸魂界に痛感させる。
その命題の元、2人の男は轟音と共に突き進んでいた。
「なぁ賽河原よ、走りながらで良い、聞いてくれ」
「今回の戦の大義、ですか」
賽河原と呼ばれた大柄で髪を短く刈り込んだ男・
「そうだ。 果たして我らに大義は有るのだろうか」
「大義など、20年前にすでに失われているかと」
確かに大義は20年前にすでに失われていた。
しかし今もこうして、大義無き戦に赴いている。
しかも、自分と反りの合わない、形だけの八剣聖総代・
「大義は有りませんがー」
賽河原は生熊の思考を読み取ったのか、言葉を続けた。
「大義は有りませんが、今回の戦の理由は有ります」
「ほう、どのような」
「今回の件で、八剣聖を終わらせる。 尸魂界を護るのは、護廷十三隊だけで充分だと知らしめるのです」
「という事はつまり」
生熊は賽河原の進言を聞くや、足を止め、振り返った。
一塊となった轟音が迫ってくる。
「この塊を壊さなきゃなぁ」
「それは良い考えですな」
尸魂界を背にし斬魄刀に手を掛け、虚の大群が目前に迫ったとき、生熊と賽河原の背後から声がした。
振り返ると、錫杖を手にした見覚えのある大男が立っていた。
「破道の十二 "
言うが早いか、霊子で編まれた網が広範囲に広がり、虚の先鋒部を包み込んだ。
包み込むと同時に炎が広がり、虚を焼いていく。
「鉄裁!」
「東はあなた方でしたか」
三番隊隊長・
その矢先、虚が次々と真っ二つになっていった。
その中心では、肌の浅黒い男が刀を振るっていた。
「止まってくれないと僕が怒られるんだよね」
肌の浅黒い男、五番隊隊長・
鉄裁も破道と縛道を自由自在に状況に応じて操りつつ、虚の数を減らしていった。
「生熊殿、賽河原殿、説明は後で聞くとして、 今は虚の数を一体でも多く減らし、中央に進みでましょう」
「一度のみならず、二度も鉄裁に助けられるとはな」
握菱鉄裁・二枚屋王悦・生熊真・賽河原康秀の4人は、護廷十三隊と八剣聖の垣根を超え、正しく『護廷』の為に、100体を超える虚と対峙した。
まさかこの日が来るとは。
1年以上もの間執筆期間を空けた今作品は、『平成』と共に失われたモノになるはずだった。
心の片隅に有りながらも、その存在を無視し続けていた。
何度も設定のメモを見返し、自分の創り出した登場人物を見るにつけ、自分では到底表現しきれない、そんな思いも、筆を止める一要因となっていた。
何より期間が空き過ぎた。
もう読者も居ないだろう。
そう思いながらも、増えたり減ったりするお気に入り登録者を見ながら、ハーメルンのマイページを開いたり閉じたりする事も有った。
転機が訪れた。
余りにも暇だった時、改めて自分の作品を一から読んでみた。
賛否両論有り、感想を下さった方より御指摘頂くことも多々有ったが、やはり面白い。
原作『BLEACH』の1ファンとして、読みたい部分が描かれており、そして一度書き始めたその続きを描けるのは自分しか居ない。 その想いがムクムクと沸き起こった。
もう一度設定を見直し、なるたけ原作と矛盾のないよう・自分の考えた設定と矛盾の無いように話の筋を思い起こし、今話を書き上げた。
1年以上間を空けた今作品は、平成から令和へと、その時代を跨ぎつつある。
平成と共に終わる予定は今のところ無いが、時代が変わり、年号が変わっても、再び筆をとったその想いを忘れる事無く、この作品の行方を見守りたい。