五十嵐中尉は手を伸ばし、大韓帝国競技用IS“天弓”に触れる。
「え!?」
目の前で火花が飛び散ったと思うと突如眩い光に包まれた。
驚き頭の中が混乱する中、何かの記憶が一気に脳内に注がれ激しい頭痛を起こした。
《言語設定:日本語に設定。》
《皮膜装甲展開完了。》
《高周波ブレード展開。》
《ハイパーセンサー最適化終了。》
《・・・大韓帝国競技用IS“天弓”展開完了。》
頭を引き裂かれそうな痛みが引き、目を開けると画面が目の前に現れ次々と設定していた。
手足を見ると体にはISの器具が装着され、天弓の姿が現れた。
「俺はISを装着しているのか?」
五十嵐は自分がISに乗っていることが信じられなかったが、彼はもうひとつあることに気付いた。
現在進行形で海面に向けて頭から急降下していることだった。
すぐに前のバイザーを見るが特に書かれていなく、操縦装置も無く混乱した。
「どうやって飛ぶんだ!くそ!」
大声で叫び、心の中で“飛べ”と念じ続け頭の中で飛行中のF/A-3A“流星”で空を飛ぶ感触を思い出すとスラスターが点火してさらに高速で急降下を始めた。
「念じればいいのか?・・・いやイメージすればいいのか!」
操縦のコツを掴むと水平飛行をイメージすると、脚部スラスターが噴射され体を水平にすると全スラスターが噴射され飛行できるようになった。
「よし、あとは日本に・・・!?」
突然痛みと衝撃に驚き後ろを振り返ると一機の真っ黒なISがいた。
金属片のようなものが天弓から剥がれ、バイザーに映る100%が減る。
《警告!大韓帝国空軍軍用IS“黒豹”誘導弾発射体勢に移行。ロックオン確認。》
後ろから黒豹と呼ばれる軍用ISが機関砲のような武器でこちらに銃撃していた。
『韓国に提供されたオリジナルコア三個は回収された』
IS統合管理局の職員の話が本当であれば、量産型コアを使った黒豹よりオリジナルコアを使用したこの天弓には有利であったが五十嵐は海面に降下しながらスラスターを出力を全開までに上げて、黒豹を引き離そうとする。
相手は残り少ない量産型コアを託された熟練の操縦者であるに違いない。
数々の戦闘を乗り越えた航空兵と言えどもISに関しては素人だと五十嵐は考え、一刻も早く日本本土に戻り無事に天弓を運ぶことに決めた。
「日本までの飛行ルート検索並びに日本国防空軍中部方面防空司令部に通信繋げ。」
《了解。》
ISの電子機器は手で操作する訳ではなく、言葉や目の動きで必要な情報を取り寄せることが出来る。
スラスターを全開に吹かし、軍用ISから距離を取ろうとするが敵機は小型誘導弾を十発斉射する。
誘導弾を引き付けると一気に海面まで降下して、海面ギリギリで急上昇。
機動に追いつけない誘導弾は海面に叩き付けられ爆発するが、五発が生き残る。
しかし急激な機動でも操縦者を防護する機能があるのか急激なGに触れることもなくブラックアウトすることもない。
五十嵐はISの機能に感心しつつ、武装を確認し小銃を見つけると展開し、一気に後ろ斜め急上昇する。
誘導弾は彼の真下を通り過ぎ見失うが、再度五十嵐を捕捉した誘導弾は急旋回し突っ込んでくる。
小銃を構えると五発の誘導弾をロックオンし引き金を引くと次々と迎撃するが近距離で撃墜した為に破片が天弓を傷付けパーセントの数値が下がる。
一気に降下し五十嵐は速度を稼ぐとバイザーに地図が現れ現在地と最寄の飛行場までの赤い線が伸び、目の前にも赤い矢印が表れた。
《日本、石川県小松基地までのルートを検索、誘導します。通信を繋げます。》
海面上で急停止すると左スラスターを真横に吹かして右に旋回する。
針路を小松基地に向けると共に回避行動であり、後方から銃撃する黒豹の銃弾が海面を叩く。
必死に飛行場を目指すが急加速で接近した敵機が高周波ブレードで右肩を切りつけた。
衝撃で機体のバランスを崩すがすぐに建て直し、水平飛行に戻す。
右肩を見ると装甲が切り取られ、昔に怪我した銃創が斬り開き出血する。
《こちら中部方面防空司令部、所属を答えよ。》
「こちらグローリー10!第一航空団五十嵐裕也海軍中尉!敵ISに追われている!」
《五十嵐中尉ですか!つい先程行方不明になった輸送機に搭乗していましたよね?》
「ああ!ちょっとあって積荷のISを操縦している、レーダーで確認しろ!」
迎撃管制官はレーダーに表示される二機のISを見て驚いたのか、震え声だった。
《りょ、了解。確認しました。現状をどうぞ!》
「現在日本海上空をISにて小松基地へ向け飛行中!されど輸送機を撃墜した敵ISが攻撃してくる、すぐに救援を要請する!」
《了解!》
俺は通信を切ると飛行に意識を集中する。
敵機は一定の距離を保ち小銃と誘導弾を交互に発射する。
誘導弾は高機動で回避し、小銃の連射はジグザグに飛行し火線から逸れる。
だが時々銃弾や近接信管の誘導弾を喰らい、バイザーに現れる数値が下がる。
そしてまた銃弾を受けてとうとうシールドを貫通して太腿を貫いた。
白い塗装の装甲が飛び散った血で赤く染まりドロドロと流れ、激しい痛みが走るが飛行を続ける。
《警告!敵IS誘導弾発射体勢に移行。ロックオン確認。》
「またか、くそ!」
スラスターを噴射し急上昇するが、銃創から流れ出る血が多く意識が朦朧としてきた。
集中力が低下して左右スラスターの出力にバラつきが出始め、機体が不安定になるが気力で必死に意識を繋ぎとめる。
どうしても日本に帰りたかった、ISを操縦していると言う事実と共に。
急上昇し体を捻り急降下させ誘導弾を“兄弟殺し”させるが爆煙から一発の誘導弾が飛び出した。
すぐに回避しようとするが高速で背中に突き刺さり爆発する。
「ぐっは!」
背中の装甲やスラスターを吹き飛ばされ、一気に海面へ向け急降下する。
頭から噴出した血で顔を真っ赤に染め、赤い中に見えた敵ISは小銃をこちらに向け止めを刺そうとした。
「ここまでか・・・・」
意識が朦朧として目の前の光景が血で真っ赤になり、歪んで見える。
ここで終わりなのか、終わりたくないがもう眠りそうになっている。
だが黒豹に地上から発射された地対空誘導弾がISに突き刺さり爆発する。
そして一機のIS、肩の装甲に旭日旗が描かれた灰色のISが刀のような物で切りかかった。
識別からISは日本国防空軍航空総軍直轄部隊IS教導隊の主力IS“烈風改”だった。
だが煙から高周波ブレードが現れ刀を受け止め、振り払い距離を離すと小銃を素早く展開し至近距離から銃撃する。
五十嵐中尉は意識を取り戻しISの姿勢を戻すとそれを眺めてしまった。
空中での格闘技、五十嵐には戦闘機の格闘戦とは違う戦い方に魅了された。
すると隣に一機の烈風改が止まり、操縦者が俺に向けて言った。
《お前がどう言う訳で操縦できるが知らんが、ここは任せてすぐに小松基地に向かえ。その傷では意識がなくなるまでそう長くない。》
五十嵐は返答を言う力もなく、ただ頷いて残り数キロの小松基地までの飛行をする。
目の前が暗くなり掛ける中、目の前に長い滑走路が現れ周囲を陸軍の高射部隊が展開しているのが見えた。
五十嵐中尉は滑走路に入ると同時に意識を失い体を滑走路のコンクリートに叩き付けられ、回転したあと止まった。
シールドエネルギーが切れ光の粒となってISの機体が消えるとそこには血に染まった白い海軍士官服を着た五十嵐中尉の姿があり、すぐに憲兵が周囲を固め一般人から見えないようにブルーシートを上げ担架に載せられた五十嵐は衛生兵に運ばれ救急車に乗せられると病院に緊急搬送となった。
すぐに一連の事件の詳細は首相官邸に届けられた。
第十話目です。
とうとう今日はクリスマスイブ!
昔は両親と共に豪勢な料理を食べるのが楽しみでしたが、今年は艦コレのクリスマスイベントが楽しみ・・・昔のほうが無垢な少年だったな・・・すみません・・・
では、また今度・・・