東京都千代田区永田町、日本の政治の中枢であるこの町の一角にある首相官邸で漆原美由紀総理大臣は日韓戦争後の朝鮮半島及び満州の処遇についての会議に出席していた。
担当閣僚や経済団体の代表が集まり平和的な統治よりも朝鮮半島でどのくらい利益が出るかに、いやどのように利益を出させるかについて話し合わせれていた。
「・・・です。また朝鮮半島北部には鉱山資源が豊富で大韓帝国政府の管理下で調整しながら採掘されていますので多く残っているでしょう。出来れば満州地域は欲しかったですが最低でも朝鮮半島全土を我が国の支配下に入れませんと戦時緊急予算を回収することはできません。」
経済産業大臣が大韓帝国領内で採掘される地下資源を試算した報告を行った。
「国防軍には頑張っても貰わないとね。安上がりな徴用兵をどんどん突っ込ませて中国やロシアより多く領土を取って採算をあわせなくては。」
一人の経済団体の代表が発言すると他の代表も頷く。
首相はここにいる代表達を内心軽蔑するも、適当に答えて会議を流れを戻す。
彼女には戦争の利益よりも自らの復讐心に燃えていた。
九年前、授かった子供をあの『知的・身体障害者並びに棄児と低所得者の男児徴用法』が奪った。
ただ愛した夫との子を収入が少なく不幸だと言って、あの日役人達は私の前で番号を読み上げ愛する息子を無理矢理奪った。
それから子を失って夫との関係が上手く行かなくなり離婚してしまった。
あの日に抱いた政府への復讐心が自らを突き動かし、女性優遇推進会に入会して様々な活動で名前を売り、社会国民党の議員として入党してから様々な駆け引きを行い党内の一大派閥を作り上げ前首相の失態のお陰で計画よりも早く権力の座についた。
あの時、そしてそれからも子供達と低所得者を迫害してきた者に復讐をするために。
そして男女平等を訴えた九年前のように戻し、徴用兵を解放して幸せに暮らせる日本を作る。
それが漆原首相の考えていた新たな日本、その思想は一部の者しか知らない。
この政府や世間にはそれを反対する組織が必ずいる。
女性優遇推進会・社会国民党・女性真理教・そしてそれらのシンパの多くが幹部になっている警察庁を初めとする警察やIS統合管理局の元国家代表候補生で構成される代表会など数え切れない政治団体が妨害をするのは確実であった。
それらをどのように権力を剥がして影響力を排除し、最後はどのように罪を償わせるか目下の問題であった。
すると会議室のドアが会議中に関わらず開かれ秘書官が挨拶せずに真っ直ぐ漆原首相に駆け寄ってくる。
「何事だ?」
「国防省から緊急事態が起きたと連絡が。」
「対韓国戦争について?」
「首相本人にしか話せないと。総理執務室にて国防大臣と統合参謀長が見えています。」
「わかった。」
首相は立ち上がると会議の中断と延期開催を宣言するとすぐに執務室に向かう。
執務室に入ると背広姿の国防大臣と右胸にいくつかの勲章を下げた統合参謀長が立っていた。
女尊男卑の時代殆どの官僚は女性に入れ替わったが、死亡率の高く危険な職である国防軍には女性幹部は少ない代わりに多くの男性が重要な地位に就いていた。
特に国防は国家の重要な要素であり経験の少ない女性閣僚ではなく男性閣僚が国防大臣に就いている。
そのため国防大臣を含む軍部は漆原首相の考えに賛同する最大の後ろ盾であった。
「国防大臣、緊急事態とはなんだ?」
国防大臣は恐るおそる前置きをしてから言った。
「中部防空司令部の報告で日本海上空に大韓帝国空軍の軍用ISが出現。我が国のISが撃墜しました。」
「確かに緊急事態だ。だがそれだけではないな?」
ISの軍用使用は確かに重大な事態だが、会議を止めるほどではない。
実際に前首相の際にISが出現した際に首相の判断する前に国防軍が実力で倒してしまった事例がある。
「はい、その際韓国空軍のISは我が国の空軍の輸送機が撃墜されたのですが・・・」
一呼吸置き、国防大臣は言った。
「国防海軍航空兵が輸送していた競技用ISに乗り込み脱出しました。」
首相は執務室の椅子に深く座り、メガネを机に置くと大きくため息をついた。
「ちょっと待て!航空兵と言ったのは“男性"だよね!」
男性が主体の国防軍で航空兵は男性しかいない。
「はい。」
「ではISに男性が乗り込んだと!?」
国防大臣はただ頷いた。
常識的に考えればISは男性が操縦できないことを理由以外は誰でも知っている。
「ISは女性しか操縦できない兵器でないの?」
「本来そうなのですが、原因は分かりません。統合参謀長、説明を。」
アタッシュケースの中から書類を取り出し机に置いた。
メガネを掛け直すと一人の男性、いや少年の写真が載っていた。
首相は顔写真に写っている少年の顔が何となく九年前に奪われた子供に似ているように思えたが、偶然だろうと思い統合参謀長の説明に耳を傾ける。
「操縦したのは日本国防海軍第一航空団五十嵐裕也中尉です。彼は東部徴用兵教育団第一期訓練兵で二年前に首席で卒業し、海軍の戦闘機操縦課程を経て現在空母瑞鶴のF/A-3“流星”戦闘攻撃機航空兵です。」
「統合参謀長、徴用兵の名前は徴用した際の名前と同じなのか?」
首相は彼の名前を聞いて目を見開き、質問する。
「はい。当初は番号を振って番号で呼ぼうとしたのですが、何十万人もいる子供達にに番号を振り分ければ下四桁では済まず現場の混乱を想定して徴用時の名前を流用して運用させています。」
「そ、そうか。」
動揺を隠しつつも、気分が高揚した。
漆原美由紀の名は旧姓であり、結婚した際に五十嵐の名に変えて生まれた子供に『裕也』と名付けた。
目の前に置かれた顔写真の少年とあの日に取り上げられた子供と同姓同名であった。
「今はどうしている?」
「はい、現在石川県の国防軍病院で治療中であります。」
首相は内心安心すると今後の処遇について頭を悩ませた。
「しかしISを撃墜した徴用兵が操縦まで出来るとなれば今の日本を変えるキッカケになるだろう。しかしこのことが外部に漏れれば国内の過激派は何をしでかすか分からない。」
彼女の頭の中ではある新興宗教団体が思い浮かぶ。
“女性真理教”というすべての支配者は女性であり男性は女性の奴隷という主張をして、今は静かだが昔は自分たちの主張に反する主張をする人・団体は暗殺されたり施設を爆破を行った。
だが現在の彼女達を止めることはできない。
政府内部、特に警察官僚は女性心理教のシンパが多くいるからだ。
もし奴らがこの事実を知ったら何をしでかすか分からないが、理由もなく解任すれば問題だ。
だが五十嵐中尉の存在はこの日本にとって新たな可能性だ、簡単には失うことは出来ない。
「この件は第一級機密に指定する!すぐに関わった者に緘口令を敷け。」
「わかりました。」
国防大臣は命令を受けると統合参謀長はある提案をする。
「首相、出来れば彼を前線に戻したいと思います。」
この提案に首相は激怒する。
「何を言っている!危険な場所に送り込んでどうする!」
「戻さなければ内部で動いているシンパの目に止まるかもしれません。我々は内部の一新を図りシンパを一掃するまでを期限として彼には前線にいてもらいます。出来る限り任務に就くのを減らしますからお願いします。」
国防省内部にも女性至上主義者のシンパがいるのは確かだ。
そこから漏れるのを考え、統合参謀長の提案を認めた。
「ああ、そうしよう。だが統合参謀長、君達はできる限り戦争を早期に終結させろ。領土はいい、すぐさま首都に軍を送り込み会談の場に大韓帝国首脳を引き出せ!」
しかし、自分の子供やその他の少年達がこれ以上戦争で死ぬことは彼女は認めなかった。
統合参謀長に戦争の早期終結を目指すように念を押す。
「了解!」
すぐに統合参謀長は執務室を出る
残った国防大臣はある書類を取り出して、首相に手渡した。
「首相の命令で作らせた『国家親衛隊構想』の書類です。」
『国家親衛隊』それは漆原首相が就任直後に信頼できる国防大臣に計画を頼んだ警察に代わる組織であった。
公安警察庁の指揮下に徴用兵を主体とした部隊を作り、警察に代わり首都圏の治安維持と首相の警護や過激派・テロ組織への対処などを行う。
激化するテロや暴動に対して警察では実力不足とし、新たに対テロ部隊を設立するというのが表向きの理由であったが、今後の首相の計画を妨害するであろう警察を解体し、女性真理教などの過激派との対立を考慮しての事である。
その為に警察庁や公安警察庁でもなく徴用兵を所管する国防省に計画立案を命じたのだ。
計画では徴用兵を投入することにしたのだが、首相自身は少年達を自らの戦いに巻き込むのを嫌がった。
しかし警察庁から分離して作られた公安警察庁は情報機関としては優秀であるが独自の実戦部隊を持っていない問題があったからだ。
「出来れば徴用兵を投入したくなかった。」
「すぐに警察官以外で対テロ部隊を作るとなると長年訓練をし続けていた徴用兵を投入しなければ一年以内の設立は難しいです。これは彼等少年達を開放するための最後の戦いだと思うしかありません。」
「そうだな、そう割り切るしかないな。ご苦労であった、すぐにでも閣議に回そう。」
「ありがとうございます。」
国防大臣が部屋を出ると椅子に深く座り、机に置かれた顔写真を手に取った。
「まさか彼が・・・」
彼女は少しの間、写真も眺めた。
第十一話目です。
艦コレのコラボイベントは無事に終わりました。
資源を一万ほど溶かして最後は金剛がコンゴウに連撃で倒したのは感動的だった。
しかし不満を言えばハルナではなくキリシマの方が欲しかったし、超重力砲いらないからこれからも残してもらいたいと思う。
ハルナとタカオの二連続の超重力砲で空母を一隻だけ残して他の艦艇は沈んだのもいい体験。
あと軍神イオナは凄かった、夜戦まで縺れ込んでハルナだけをカットインで撃沈は衝撃。
では、また今度。