学園の守護者   作:新稲結城

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第十五話 徴用兵

東京湾に浮かぶIS学園島。

アラスカ条約において設置を求められた日本政府がバブル時代に巨大レジャー施設やカジノなどを擁した人工島の計画で作られバブル崩壊時に放棄された九割程完成していた人工島を買取り、その上に学園やIS関連企業・研究所を設置する特別区を作り出来た。

IS学園はIS操縦者育成の為に設置された特殊国立高等学校で、日本政府が国際社会からの要求により多額の予算を費やした施設の為、最新設備の整った教育機関となり世界中のIS操縦者候補が学び来ている。

学園内にある正門近くのビルの玄関口にIS学園警備総隊司令小室浩司准将は国防省の高官の到着を待っていた。

IS学園警備総隊は国防省警備司令部隷下にあり、IS学園並びに関連施設の警備・教員生徒の警護・IS関連の事件に対応する部隊ではあるが学園内は治外法権の為施設の周辺警備に限られ内部に入るには日本国首相と安全保障理事会の同意又は緊急時はIS学園理事長の要請の時のみ入れる。

この日はIS学園と国防省の会議が開かれることになった。

それはIS学園側が五十嵐大尉の入学に際して彼に関する説明を求めた為に国防省とIS学園との間で扱いに関する会議が開かれた。

時間通り一台の黒塗りの公用車が玄関口に停車すると車内から東部の徴用兵の教育を管轄する東部徴用兵教育団司令若葉少将が降りると准将は敬礼した。

 

「案内してくれ。」

 

小室准将は若葉少将を案内し、ひとつの会議室に案内した。

そこにはIS学園理事長と二〇一二年度新入生を管理する織斑千冬が座っていた。

双方が揃うと会議が始まった。

 

「私はIS学園理事長轡木です。こちらは五十嵐くんを預かることになる担任の織斑先生です。

 

「日本国国防省東部徴用兵教育団司令若葉少将です。」

 

「ここでの会話や書類はすべて最上級機密として扱います。ご安心してください。」

 

「ありがとうございます。一応、警備隊の“掃除”も丁寧してもらったので充分安心できます。」

 

挨拶するとまずIS学園理事長は口を開いた。

 

「若葉少将、我々教師一同は徴用兵について恐れています。我々は情報を今まで開示されずどのような人間達か分からない上に帰還兵となると扱いが難しいと考えます。アメリカではベトナム戦争後心に傷を負った帰還兵が事件を起こすなどの帰還兵問題が起きています。もし彼が何かを起こす可能性があると考えています。」

 

若葉少将は笑顔で答えた。

 

「確かに帰還兵問題はありますが、私達が育てた徴用兵はそんなことはありません。彼らは基準をクリアし長時間に及ぶ教育で日韓戦争では略奪・強姦などの問題を起こした徴用兵はいません。」

 

「どのような基準と教育ですか?」

 

織斑先生が質問すると若葉少将は丁寧に説明した。

 

「まず集められた子供達の中から選別します。当然ながら出産した病院の検査で身体的・知的障害が発覚した者・体が平均よりも貧弱な子供など軍務に支障がある者は除外します。」

 

「除外された子供は?」

 

「国民の為に異常のない臓器をすべて摘出して、病院で臓器移植を待つものに提供します。」

 

「臓器をすべて...摘出した子供は死ぬのですか?」

 

「はい、当然ながら。」

 

平然と答える若葉少将に二人が唖然としている間も説明を続ける。

 

「第二段階に基準をクリアした子供達に手術を受けさせます。」

 

「...手術ですか?」

 

「はい、医療技術の進歩で脳の構造がある程度分かり放射線治療で感情を司る部分の一部を破壊します。特に六情の喜怒哀楽愛憎の内愛の部分を破壊します、これにより民間人のように人を愛したり性的感情を抱く事を阻止します。本当であればすべての感情を無くしロボットのようにしようと思いましたが、そうなると思考能力を無くしてしまうと戦力にならなくなってしまうので中止しました。」

 

「あなたは人間として平気なのか?」

 

織斑先生は怒りを込めた言葉で言うが、若葉少将は言い返した。

 

「あなた方が運用しているISがあるせいで私はしなければならないんだ...それを知っているのか...」

 

少しの沈黙が三人の間で漂い、理事長が続けるように指示すると少将は説明を再開した。

 

「手術後は第三段階として教育団で基礎教育を始めます。兵・曹・士官によっても違いますが五十嵐裕也は優秀な成績から士官課程で高卒程度の数学・国語・英語・理科・社会と第二外国語を十二歳までに終わらせます。並行して思想教育を行います。」

 

「思想教育?」

 

「思想教育の内容は基本的な命令服従と日本への忠誠心を育てる事です。彼らにはとにかく日本を本当の親のように慕わせます。お前達は親から十五万円で売られたと教え、だが金にしか目のない親のもとにいたらどうなっていたか教え、日本に救われたと思い込ませます。そして今、今度は俺達が親の日本の為に戦おうという心を作ります。日韓戦争では多くな危険な任務自ら率先して志願し戦死した兵士は多いです。五十嵐大尉もその思いでISに立ち向かいました。」

 

「何が売った?お前達が売らせたんだろう。」

 

織斑先生の言葉を若葉少将は気にせずに続けた。

 

「また同時に基礎的な戦闘訓練を行います。格闘から小火器・爆弾の扱いを一通り行います。五十嵐大尉は特に射撃に秀でていました。」

 

「しかし彼は海軍戦闘機パイロットでしたよね?」

 

理事長が質問する。

 

「はい、私達は彼らの希望と適性診断で海軍戦闘機パイロットの道に進めました。第四段階の専門課程は陸海空三軍に振り分けられ、そこでだいたい二年間となっています。そして最終段階です。」

 

「最終段階?」

 

「最終段階は実際に戦場に送り込み精神を鍛えさせます。それが日韓戦争で徴用兵を送り込んだ理由であり、結果は所謂PTSDなどの精神病は現れませんでした。特に五十嵐大尉は優秀で徴用兵教育団卒業時より精神状態も問題無く、いえそれ以上に良くなっています。」

 

「そうですか...」

 

理事長は説明を理解すると、織斑先生が質問した。

 

「そう言えば、なぜ五十嵐裕也大尉はISに操縦出来たのか解明されたのか?」

 

すると少将はアタッシュケースから書類を取り出して見せた。

 

「漆原首相から一切の情報を開示するように命じられているために開示します。」

 

その書類の表紙には『人体実験による男性のIS操縦者化計画』と表記され二人は驚いた。

 

「これはどういう事でだ!お前達は最初からISが男性でも動かせることを知っていたのか!」

 

織斑先生が大声で詰め寄ると少将は落ち着くよう言った。

 

「説明を最後まで聞いて下さい!」

 

「...すまない。」

 

謝ると説明を少将は始めた。

 

「十年前の徴用兵招集と同時期にこの計画は持ち上がりました。ドイツの遺伝子強化試験体に関する実験と共同で被験者三十名の子供を対象に人体実験を行いました。様々な実験を行いましたが男性にISを操縦させる事は出来ず、三十名中二十九名が死亡し生き残ったのが五十嵐裕也です。彼には脳の神経組織や筋肉組織などに薬剤を投与したり、またドイツで開発されたヴォーダン・オージェ、越界の瞳と呼ばれる処置を行いました。結果は身体能力の向上・知能の上昇・視覚能力の向上などが見られましたがISを操縦させることは叶わず計画は中止されました。原因は現在も解明されておりません。」

 

この話を聞いた織斑先生は怒りが込み上げ長机を殴り、立ち上がると少将の首元を掴む。

 

「貴様はよくもまあ平気で喋れるな、お前達の計画どれだけの子供が死んでいるんだ!知っているのか!」

 

少将は負けずに反論した。

 

「お前達が所有しているISが現れたのがすべての元凶だ!私だってやりたくはないが、政府の命令は絶対だ!...ただISが現れなければ...」

 

すると会議室に備え付けられている電話が鳴った。

 

「どうしました?」

 

理事長が受話器を取って聞くと、相手は慌てて言った。

 

《織斑一夏が襲撃されました!》

 




第十五話目です。

今回は東京湾にIS学園を置きました。
まあサイズなどのは一切無視して昔に感想欄で送られてきた東京湾説にしました。
・他の海域では水深が深すぎるか遠すぎる
・に国際色豊か(非日本人生徒が半分)のため国際空港が近くにある事が要求されるが出身国に至る直行便が無い国(日⇔生徒国でなく日⇔乗換え国⇔生徒国)の生徒に負担を掛けないように考慮すると東京湾が好立地
この二点に大きく説得させられました。
また自分的には湘南地域はないな~と地元民ですがそう思ってしまったのもあります。

では、また次話で。
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