学園の守護者   作:新稲結城

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第二話 日本国

日本。

極東アジア、朝鮮半島から満州までを領土とする大韓帝国と日本海を挟んで東にある島国。

幕末の開国から急速に発展し、当時の清・ロシア帝国を破り列強の一国に数えられる国家となった。

だが太平洋戦争における敗戦により、旧帝国海軍・陸軍は解体される運命を辿ろうとしていた。

しかし終戦直後の大韓帝国で革命が勃発し、当時のソ連に援助された共産主義者を中心とする政権が立てられると、日本に奪われた領土の奪還と称し『対馬』に侵攻。

アメリカ政府は日本への共産主義の拡大を阻止する為に日本本土へのアメリカ軍の派遣を決めたが、大韓帝国と戦端を開けば背後に控えるソ連が参戦してくるのではないかと考えた。

そのためアメリカは日本へ石油などの物資を満載した輸送船を数十隻送り込み、帝国陸海軍を復活させた。

石由を得た海軍は対馬を包囲する韓国艦隊を大和型戦艦三番艦『信濃』率いる残存艦艇で突破し、陸軍は対馬への増援を送り込み韓国陸軍と激闘を制し対馬を奪還した。

この出来事は『対馬紛争』と呼ばれ、連合国は日本への賠償よりも共産主義の拡大に対して恐怖を覚え、日本を共産主義の防波堤とするべく多大な復興支援や経済支援を行った。

そして大日本国憲法は廃止され、新たに制定された日本国憲法は平和を願う条文と共に国防の為に『国防軍』の創設を条文を盛り込んだ。

結果、帝国陸海軍の流れを汲んだ国防空軍・国防陸軍そして国防海軍が創設された。

西側諸国の支援により、最新鋭の軍備を備えた国防軍はその後アメリカの平和を守る為に共闘した。

ベトナム戦争・湾岸戦争などの戦争に参戦、また国連の平和維持活動に参加した。

一方、経済は西側諸国の経済支援と復興支援により瞬く間に経済は復活し西側諸国を日本製の製品で埋め尽くした。

高度経済成長・バブル景気と続き日本は世界第二位の経済大国にも上り詰めたが、バブル崩壊後の混乱による不況に陥った。

だが二〇〇一年を迎え、白騎士事件がすべてを変えた。

白騎士事件により、篠ノ之束とよばれる女性が開発した“IS”と呼ばれる兵器が核兵器に変わるものだと認識された。

さらに“IS”に使われている電子装置や推力系・材質は数世代進んだ技術であり、様々な分野に応用した。

特に遅れていた航空機産業は大きく発展し、国産旅客機と国産戦闘機を開発した。

政治では時の総理大臣による経済対策により、アメリカ発の恐慌を最小限に食い止め、“IS”技術を応用したインフラ設備や兵器産業に大きく力を入れた。

だが“IS”が女性しか乗れない兵器として認知されると、女性は国家の根幹を構築する重要な存在だと認識された。

結果、二一世紀始めての衆参総選挙は国民の反対を押し切ったアラスカ条約を調印により支持率は下落により議席を大きく減らし、代わりに女性の権利拡大を要求する過激なフェミニストが集まった政党である社会国民党が選挙により大幅に議席を獲得し、当時与党であった自由党は社会国民党と連立政権を作り上げた。

議席を脅しに使い社会国民党のフェミニスト達は様々な法案を通した。

『女性就職優先雇用政策』による女性の就職優遇、『女性減税政策』による女性への減税、『女性の学費無料化政策』による女性への教育優遇などを施行。

また同時に『特定機密保護法』を制定し、政権内で作られた法案や不正を機密にし、様々な男性差別法案を通した。

そんな中、東アジアにおける安定を保証してきた在日米軍の撤退により、国防の空白が生まれる事態が起きた。

日本の国防政策を担う国防省統合参謀本部は内閣の指示により、大陸の仮想敵国『大韓帝国』と『中華人民共和国』に対し日本国が単独で戦うには戦力不足していると報告した。

すぐに開発されたばかりの新兵器や装備・アメリカから購入した兵器を国防軍に配備したが、兵器を使い戦闘する人員がいない事が問題となった。

そんな時、社会に吹き荒れる女性優位論の中に『優残劣捨論』というのが流行っている事に連立政権の内閣は気がついた。

『優残劣捨論』は男性者別主義の過激な主張のひとつで“必要以上”にいる男子の内優秀な男子のみ残し劣っている男子を切り捨てる理論だった。

“必要以上”とよばれるのは知的・身体的障害者に棄児それに低所得者の子供を指していた。

これらの子供は将来的に成果を見出せず、逆に国の負担となるならば切り捨ててしまえばいいという主張だった。

それを知った政府はすぐさま『知的・身体障害者並びに棄児と低所得者の男児徴用法』と『高所得者及び著名人の子供出産減税法』を国会に提出された。

『知的・身体障害者並びに棄児と低所得者の男児徴用法』は知的・身体障害で生まれた男児を一人頭五万円と棄児並びに年収五百万円以下の家庭や生活保護を受けている家庭から生まれた男児を満五歳時に一人頭十五万円と交換しする法律で、兵士になるだけではなく人体実験や臓器提供にも使われる事だったが『特定機密保護法』により国民には伏せられた。。

それに対し『高所得者及び著名人の子供出産減税法』は年収七百万円以上の家又はオリンピック選手や各界の著名な家から生まれた男女を三人以上生むと減税されることを定めた法律。

この法案の真意を知った自由党は連立から離脱し、今までの社会国民党が行ってきた不正を纏めた資料を国民の前で公表しようとした。

だがそれを知った社会国民党は逆手に取り『特定機密保護法』により息の掛かっていた警察官僚達に命じて自由党の議員を全員逮捕し、そのまま国会で強行採決を行い法案を通した。

この法律は一年を必要とする施行準備を“国家の緊急事項”として翌日に施行。

また衆議院を解散し、総選挙で圧倒的多数で社会国民党は与党として君臨した。

『知的・身体障害者並びに棄児と低所得者の男児徴用法』により全国では病院から知的・身体障害者と棄児を強制的に徴用、また各市町村の役場では住民基本台帳を元に役場に呼び出した。

 

「次の方。」

 

市役所の中に置かれた受付所では小さな子供をつれた親が並んでいた。

列の中から一人の母親が子供を抱いて受付の窓口まで来る。

 

「・・・書類です。」

 

母親は茶封筒を差し出すと役人は受け取り、中の書類を見る。

すると母親は恐る恐る役人に聞いた。

 

「あの・・・書類の中にこの子の名前を書く欄が無かったのですが?」

 

役人は母親の顔を一切見ずに言った。

 

「名前は必要ありません、この子はもう国の所有物ですから。」

 

書類を見通すと茶封筒に入れ直す。

そして母親に宣言した。

 

「低所得者男児徴用法により国民番号56835904368の男児一名を徴用します。」

 

「・・・はい。」

 

もう一人の役人が腕に抱く男児を引き取ろうと手を差し出したが、母親は少し引いた。

自分で産んだ子を引き離される事に抵抗感を感じた。

すると机に座っている役人が母親に向かって低い声で警告した。

 

「これは国民の義務です。従わない場合懲役十年の刑に処します。」

 

役人は市役所の外に視線を向ける。

つられて目を外に向けると外には社会国民党の支持母体『女性優遇推進会』の街宣車と支持者が拡声器を使い周囲に言葉を撒き散らす。

 

《これは名誉ある国民の義務です!どうせ役に立たない劣った男は社会に必要ありません!》

 

《義務に従わない人は非国民だ!》

 

《いらない子供は国の為にりようされます。これこそリサイクルなんです、皆さん協力しましょう!》

 

もしここで抵抗すれば刑務所に入れられ、出所しても一生非国民のレッテルを貼られる。

母親は目に涙を浮かべながら子供を役人に引き渡した。

 

「ありがとうございます、この子を提供した事で国に貢献しました。これが貢献料です。」

 

役人は笑みを浮かべながら、たった十五万円の入った封筒を渡した。

国民は当初、集められた子供達がどのように利用されるかはわからず、公安警察の恐怖と社会の空気に逆らえずただ従うことしか出来なかった。

知的・身体的障害者と軍務につけない体の弱い子供は人体実験と臓器提供に使われ、選別された子供達は七年に及ぶ国防省直轄の『徴用兵教育師団』で過酷な訓練と勉学により兵・下士官・尉官に分かれ、さらに二年間の陸海空軍の各専門課程を学び実戦配備された。

そして『知的・身体障害者並びに棄児と低所得者の男児徴用法』が施行されてから十年後の西暦二〇一一年、日韓戦争勃発。

十年間が経ち、第一期徴用された三十五万人の十四歳の少年達は大陸に派兵された。

 




第一話に続けての第二話です。
今回は戦後日本の歴史と国防軍創設、そして白騎士事件以後の日本の混乱を取り扱いました。
これにより序章は終わり、第一章 日韓戦争を取り扱います。
それではよろしくお願いします。
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