学園の守護者   作:新稲結城

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第三章 IS学園~第一学期~
第二十話 再会


入学式の朝、五十嵐は警備総隊駐屯地の宿舎でIS学園の制服に袖を通す。

学園の制服はある程度のアレンジを認められ、緊急時に軍服と認められるために上衣の左腕には旭日旗と右腕はIS学園警備隊を表す部隊章を縫い付けられた。

さらに『二月反乱』を受けて学園側は特殊警棒と拳銃の携行が許され、ヒップホルスターに国防軍正式拳銃の9mm拳銃を収めると学生鞄を持って宿舎を出る。

 

「制服姿も様になっているな大尉。」

 

宿舎を出ると黒塗りの公用車の前に警備総隊司令の小室准将が待っていた。

 

「ありがとうございます、司令。」

 

皮肉にも徴用兵の立場の男が“高貴”なIS学園生徒の制服を着ている。

これ以上に学園生徒を挑発する姿はないだろう。

二人は公用車に乗り込むと駐屯地を出て、IS学園の正門で警備隊員に見送られ門をくぐると近くにあるビルの玄関口に乗り付けた。

 

「司令、講堂に行くのでは?」

 

五十嵐は予定と違う行動に怪しむような目で司令を見た。

 

「君に会いたい方がいるので会って貰う。」

 

「了解しました。」

 

ビルに入ると奥に案内され、歩くと国家親衛隊の警護官二人が立つドアの前へ来た。

警護官の一人がドアをノックして我々が来た事を伝えると中から入るように言われる。

 

「失礼します。」

 

小室司令に続いて部屋に入ると、そこには自分の出身部隊の指揮官である東部徴用兵教育団司令若葉少将と共にもう一人の女性が立ち上がり迎えた。

その女性は日本国総理大臣であり国防軍最高指揮官である漆原美由紀だと分かると五十嵐は一気に緊張が体を覆い、目の前に来ると十度の会釈をする。

 

「国防海軍大尉五十嵐裕也であります...!?」

 

会釈を終えて体を戻すと首相の目から涙が流れているのに驚いて、何か非礼があったのだと思った。

すると突然首相は泣きながら五十嵐の体を抱いた。

 

「裕也...今まで見つけられず、すまない...私が君の母親だ。」

 

首相が自分の事を母親だと宣言したのに非常に驚き唖然とした。

二人は小室司令に座るように勧められソファに向かい合って座り、五十嵐は若葉少将からDNA鑑定の結果を詳細に教えられ、首相からは今後の政策を教えられた。

将来的に徴用兵制度を廃止して徴用兵全員を一般人と同じ権利を与えて社会で暮らせるようにすると。

最後に首相は彼に自分の息子として軍務を辞めて欲しいと言った。

 

「裕也、私のところに戻って来ないか。君が本来いる場所は戦場ではない、一般人と同じ社会だ。」

 

だが彼は首相の言葉を聞くと怒りが込み上げ、最後の誘いに怒りが爆発した。

 

「首相、私はあなたの息子になりたくはありません。十一年前に私を十五万円で売り捨て、戦場に行かせておいて母親面されたくはありません。」

 

「あの時は法律で強制的に」

 

「ですが貴方はその法律に屈して売り捨てた、違いますか?普通の親なら最後まで話が子を守るのではないですか。あなたのような最低な親のもとに私は絶対に戻りたくはありません。」

 

淡々と語るが五十嵐の表情は無表情であるが目は猛禽類のような鋭い目つきで首相を睨みつけた。

あの幼い頃に見た息子の愛らしい目ではなく、野生の動物のような目に変わったのを見て罪悪感を感じた。

若林少将はこの目が戦闘時の徴用兵達の目つきだとすぐに分かり、彼は本気で怒っているのがわかった。

 

「それに私の居場所は戦場以外にありません。あの戦場で死んだ仲間達を裏切って兵士を辞めることは私の中で最大の恥だと考えます。」

 

五十嵐は立ち上がり部屋を出ようとする。

すぐに小室司令が止めた。

 

「待て、大尉。まだ話は終わっていない。」

 

「もう話すことはありません。部屋を出るなと命じるても私は部屋を出るので命令違反として国防軍法で銃殺刑にして下さい。私が一番欲しているのは死に場所です。」

 

そう言って五十嵐は部屋を出て入学式の行われる講堂に歩いて向かった。

 

「彼はあの頃とは大きく変わってしまったのか...」

 

窓から息子の背中を見つめる漆原首相に若葉少将は言った。

 

「残念ながら十一年前に我々が考えた教育は“人間から戦闘ロボット”に変えることを目指しました。結果として彼らの多くは怒りと憎しみ以外の感情を失くすことができたと考えます。もう彼は人間には戻る事は出来ないでしょう。」

 

するとドアがノックされて、入学式が始まるとIS学園の職員が伝えた。

 

「では、私は行きます。」

 

首相は警護官と共に入学式の壇上で祝辞を述べる為に講堂へ向かった。

若葉少将は副官と共に公用車に乗り込むと、東部徴用兵教育団が置かれる長野県に戻ろうとしていた。

すると高速道路を走行中に所持している携帯電話が鳴る。

 

「若葉だ。」

 

《司令!緊急をようすると思われる事態が...》

 

「思われる?はっきり言え!」

 

部下からの曖昧な電話に少将は一喝すると、部下はすぐに答えた。

 

「はっ!北部徴用兵教育団からの報告で徴用兵から“PTSD”と思われる症状が現われたと報告が。」

 

 




第二十話目です。

そういえば学園の警備についていろいろと考えたました。
仮に学園警備隊の警備を抜けて敷地内に侵入した際はどうするか。
日本人の女性で構成された別の警備員がいるとか、永世中立国であるスイス軍の女性兵士が国際IS委員会の要請で配置されている又は国連の常任理事国+日本の多国籍部隊が警備にあたるのかな~と考えたりしました。
しかし日本の女尊男卑の女性警備員と五十嵐は暴力沙汰になるのは目に見えるし、スイス軍は派遣してくれるか、多国籍部隊は部隊でめんどくさいですね。
普通の学校のように教師が不審者対処にあたってもらった方が自然ですね(まあIS学園の教師なら常人レベルではなさそうですしね)。

次話からはどのように五十嵐を追い込んでいくかを考えないとな。
あと学園警備総隊の部隊章とか考えておこうかな?

ではまた今度。
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