学園の守護者   作:新稲結城

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第二十三話 掟

四時間目が終わり生徒達が食堂で友人達と食べている時に五十嵐は宿舎に向けて歩いていた。

授業終了後に彼が食堂に行くと先に来ていた国家代表候補生の先輩方に入口で止められた。

 

『ここは人間が食事するところだ、薄汚い害虫め!出て行け!』

 

そこで数人から殴り蹴りを喰らわされ、揉め事を収めるために退散すると彼女達は正義の勝利と祝った。

おかげで制服は汚れ、踏みつけられた旭日旗は半分が破られていた。

 

「五十嵐裕也。」

 

ふと名前を呼ばれて振り返るとそこには同じ教室である篠ノ之箒の姿があった。

彼女はこの世界を作り上げたともいえるISの開発者篠ノ之束の妹であり、監視も含めた意味での日本国の重要保護対象として認定されている。

特徴的な馬の尻尾のような髪で凛々しい顔は頼もしく見えるが、彼の姿を見た彼女は思わず二度見する。

 

「どうした篠ノ之。」

 

「い、五十嵐。少し話をしたい。」

 

「わかった。人目の付かない所でしよう。」

 

二人は場所を変えて学園内にある人気の無い庭園に来た。

 

「なぜそのような格好をしている?顔の傷は?」

 

篠ノ之は五十嵐に質問する。

 

「食堂で先輩方から数発殴り蹴りを食らっただけだ。すぐに宿舎で着替えるから大丈夫だ。」

 

「すまない!五十嵐、私の姉の身勝手な行いのせいでお前が苦しむことになった。」

 

突然彼女は頭下げて、五十嵐に対して謝り始めた。

 

「あのISのせいで戦場に送られ、戦わされたのだろう。しかもこの学園に入れられ暴力を振るわれる。私が謝って済むことではないのは重々承知だ。だがこの私に姉の代わりに謝らせてくれ!」

 

彼女は必死になって五十嵐に悔いるが、五十嵐は化石のように乾いた顔で表情を一切変えなかった。

これに篠ノ之は恐怖を感じて口を震わせて、口が利けなくなる。

彼は私に恨みを持っているのだろうか、だが姉が起こしたことを思えば当然だと思い覚悟を決めて目を閉じ歯を食いしばる。

 

「だからなんだ?」

 

彼から発せられた言葉に篠ノ之は驚いて目を開き、彼の顔を見る。

 

「ど、どういうことだ?お前は私に恨みを持たないのか、私はあの篠ノ之束の妹なのだぞ。」

 

「お前を殴ったところでどうなる。どうこうしたいという感情はもうあの戦場に捨てたんだ、もうどうでもいいんだ。自分は定められた運命を辿ることしかできないんだ。第一俺には罪がある。」

 

「...なんだ?」

 

「この世に生まれたことだ。」

 

五十嵐の答えに篠ノ之は驚いてその場に固まる。

彼は振り返っていなくなろうとした時言葉を発した。

 

「そうだった、篠ノ之。」

 

「なんだ?」

 

突然五十嵐は振り返ると篠ノ之の顔目掛けて拳を突き出す。

反射的にかわすが次に右ストレートをかわせずに腕で防御して、こちらも押さえ込もうと反撃に移る。

両者共に時間一杯までに激しい攻防を繰り返して、篠ノ之は息を切らして何食わぬ顔をする五十嵐を睨んだ。

 

「五十嵐...どういうつもりだ?」

 

「少し試しただけだ、あとで話があるだろう。」

 

五十嵐はただそれだけを言うとその場を立ち去ってしまった。

その夜、五十嵐は学園から与えられた寮の自室で破れた制服の修復を行っているとドアが激しく叩く音が聞こえた。

 

「なんだ?」

 

廊下には不機嫌そうな顔をした篠ノ之と困惑した表情の織斑の二人が立っていた。

 

「なんで一夏と同じ部屋にしたんだ!」

 

「千冬姉に聞いたら“五十嵐が提案したんだ”と言われたんだ!」

 

五十嵐は放課後、職員室で織斑先生に提案した時の会話を思い出した。

 

「織斑と篠ノ之を同室にするだと!?」

 

「はい。」

 

突拍子も無い提案に精悍な顔つきの先生は普段見せないようなキョトンとした顔を見せた。

なぜ先生が驚いているのか分からないが、五十嵐は理由を続ける。

 

「現在の政情から織斑には学園内での生活を続けてもらいます。そして同室の者として俺は篠ノ之箒を推します。彼女ならある程度護衛を任せられる人物です。幼い頃から友人であり信頼に値します、剣術も申分の無い成績を持っております。私が少し試しましたが近接戦も十分対応できるものだと考えます。」

 

「それはわかる...しかし五十嵐。未成年の女子と男子を一緒の部屋に住まわせると言うことに問題があるだろう。」

 

「何か問題がありますか?」

 

徴用兵というのは戦いのプロではあるが社会で生きていくうえでの知識が無いことに先生は実感した。

 

「まあ、そのことは置いといて...お前では駄目なのか?弟なら誰とでも仲良くなるからお前ともいい友人になるだろう。」

 

人差し指を彼に指して示すと、首を振った。

 

「俺と同室になると彼女達の攻撃に巻き込まれるかもしれません。」

 

「それなら私と隣の部屋を使えばいい。そんな輩が襲ってきたら直接私が指導する。」

 

拳を握り、骨をポキポキと音を立てさせる先生に五十嵐はまたもや首を振った。

 

「いえ、教官に手を焼かせるわけにはいきません。この学園では教官は英雄的存在、それゆえ俺に肩入れした時の反発は必死です。この学園で織斑が頼れるのは貴方と篠ノ之以外にいません。それに俺は織斑と親友になろうとは思いません。」

 

「ここは軍ではない、先生だ。...それでなぜだ?」

 

「すみません先生...あいつには友人を失う気持ちを体験させないことも護衛任務のひとつだと心得ています。私は幼い頃に共に過ごした教育団の戦友をすべて失いました。自分にあるのはこの祖国の為に死ぬ事、ただそれだけです。ですからあいつとは友人になりません。」

 

腕を組んで少し考えると先生は決断した。

 

「...そうか。それなら許可しよう。」

 

五十嵐は同室にした理由をかいつまんで二人に話した。

 

「しかし五十嵐、男女が同じ部屋で同居...いや、なんていうかその...」

 

篠ノ之が言葉に困って色々と言っていると五十嵐は畳み掛けた。

 

「篠ノ之、お前は織斑のことが嫌いなのか?」

 

五十嵐はただ直感的に思った事を言っただけなのだが、彼女は焦りながら慌てて手を振る。

 

「いや!そ、そんなことはないぞ。任せろ、五十嵐、役目は心得た。」

 

頷くと織斑にも聞く。

 

「織斑、篠ノ之と同室になるが不満はあるか?」

 

「そりゃあ不満が」

 

織斑は異を唱えようとしたが隣にいる篠ノ之に肘で突かれ、恐ろしい剣幕で織斑を脅した。

 

「いや、なんでもない。大丈夫だ、問題ない。」

 

「よし、最後にここでの生活で守って欲しいことがある。」

 

五十嵐は七つの掟を提示した。

1.学園内では俺に挨拶をするな

2.学園内では俺と会話するな

3.もし俺が他の学生に襲われても助けず無視しろ

4.強要された際は手加減無く俺を攻撃しろ

5.もし話したいときは携帯電話のメールで伝えろ

6.緊急時は織斑先生に指示を仰げ

7.もし俺が死んだ際は喜べ

 

「これを守れと言うのか、五十嵐?」

 

織斑は納得のいかないような顔で顔を見るが五十嵐は目を真っ直ぐ見て頷いた。

 

「これはお前たちを守る為だ。どうせ大した事は出来ないだろう、今日のことぐらいは兵士には朝飯前だ。」

 

二人はゆっくりと頷く。

 

「では帰ってくれ、就寝時間だ。」

 

二人をドアまで見送り、篠ノ之が部屋を出ようとした時五十嵐は彼女に小声で言った。

 

「もしもの時は俺に代わってあいつを守れ。」

 

彼女は頷いて部屋を出るとドアを閉めて溜息を付いた。

五十嵐は緊急時の為に寝巻きは国防陸軍の迷彩服で、着替えると電気を消してベットに寝た。

そしてその日の夜に事件は起きた。

 




第二十三話目です。

やっと大学の課題文が終わりましたが、もう一冊分書く余裕があるので頑張っています。
皆様はどうしているのでしょうか?
最近ノロウイルスについて話題になっていますが、この私は中高六年間一度も無遅刻無欠席で過ごしてきました。
ただ小学五年生の頃にインフルエンザとノロウイルスを連続して発症したことがありますね。
インフルが直ったと思ったら二、三週間後にノロウイルスに感染するとは...
比べるとノロのほうが本当に辛いですね、ずっと下痢が出続けて水分がすぐになくなって喉が渇く。ミ皆さん、ウイルスに気をつけましょうね。

では、また今度。
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