入学初日の深夜、学園全体が闇に包まれ学生達が疲れで寝静まった夜。
五十嵐が寝る寮の部屋の扉がゆっくりと開けられ、様々な工具を構えた三人の人間が忍び込んだ。
ハンドサインで目標である五十嵐裕也大尉が奥のベットにいる事を伝えるとゆっくりと周りを囲もうとした。
だが人間が近づいてくるのを感じた五十嵐は起きると枕で近づく人間に投げつて立ち上がる。
スパナを振りかざしてくるのを易々と避けると顔面に右ストレートで一発殴って倒す。
もう一人がトンカチで殴ってくるのを腕を掴んで床に投げると鳩尾にかかと落としを決める。
暗闇から女性の呻き声が聞こえ、日本代表候補生の生徒だと推測した時だった。
投げた時に潜んでいたもう一人の女子が後ろからハンマーで襲い掛かってきた。
思いっきり振ったハンマーは五十嵐の頭に当たり、衝撃で床に倒れると女子が飛び掛って馬乗りになると顔を集中的に殴った。
朦朧とした意識の中でハンマーを頭を動かして避けるが一発さらに殴られて傷口から流れた鮮血が飛び跳ね、壁や彼女の手や服には飛び散った血が付着する。
五十嵐は馬乗りになった女子の襟元を掴むと引き離して床に飛ばして立ち上がった。
その時、暗闇から金属音が聞こえ夜目が効いた目で凝らしてみると、引き離した女子の手に9mm拳銃がありこちらへ向けていた。
ホルスターに手をやると自分が持っている9mm拳銃がなくなっていることに気づいて、すぐに取り返そうと腕を伸ばす。
「死ね。」
女子が一言冷酷に言い放つと容赦無く引き金を何度も引き、銃声が数発轟き部屋一瞬明るくなる。
五十嵐は撃たれた腹を手で押さえると後ずさりして壁にもたれかけた。
女子三人組は銃をその場に落すとすぐに走って部屋から逃げると廊下の照明が灯って、隣室の織斑と篠ノ之が駆けつけた。
「五十嵐!」
鍵を壊された部屋に入って照明をつけると言葉を失った。
壁や床に黒い血が海のように広がり、五十嵐の頭や撃たれた腕や腹から血が流れその他にも殴られたあざがくっきりと残っていた。
「一夏!すぐに医者を呼べ!」
「わかった!」
織斑が外に出ると廊下では織斑先生と他の教員が三人の女子を確保していた。
暴れる女子生徒の顔を見るが一年生の生徒では見た顔ではなく、上の学年だと思いながらも階ごとにある備え付けの内線電話で医療局に連絡した。
「なにをやっているんだ!」
織斑先生は確保した女子生徒に怒号のように問いかける。
床に押さえつけられた女子生徒は織斑先生に口調が怒気が混じりながら言い放った。
「先生こそおかしいです!あんな奴を野放しにするとは職務放棄だ!貴方がたが処分するのが本来の役目ではないんですか!」
この日本代表候補生三人とここで尋問しても意味が無いと感じた先生達はすぐに生徒指導室に突っ込んだ。
そんな中、応急手当に心得ていた篠ノ之が備え付けの救急箱を広げ手当てを始めたが芳しくなかった。
腕の銃創や頭の裂傷にガーゼを当てて包帯を巻きつけて処置するが、腹の銃創は押さえても黒い血が絶えず流れ出る。
「くそ!血が止まらない!」
すると手に付いた血を見て五十嵐が微かに口元がほころび言った。
「...ふ、内臓がやられたみたいだな...」
「何も喋るな!」
篠ノ之が怒鳴りつけるが五十嵐はそのまま続けた。
「篠ノ之...俺の心配より織斑の心配をしろ。俺が襲われた以上...次は織斑にいくかもしれない。」
「ああ、分かっている!だが今はお前の命が危ないだろうが!」
救急箱にあるガーゼなどが血を吸って無くなる。
そこに織斑が戻ってくると惨状を見て、ベットのシーツを引き裂いて篠ノ之に渡す。
「医者は?」
「すぐに来る。容態は?」
篠ノ之は黙って首を振ると、五十嵐がうわ言のように話し続ける。
「...俺は徴用兵だ。任務の為に死ぬのは普通だ...俺に時間を掛けても無駄だ。」
「お前は生きようと思わないのか!」
五十嵐が諦めるような口調で喋るのに、篠ノ之は怒りを感じて怒鳴った。
「もう俺には友人と呼べる者は...あの世に逝った者が殆どだ。あいつらと同じ場所に行くのも悪くない...五反田には悪いが...」
すると織斑が五十嵐の手を取って言った。
「お前は俺の友達だ!だから死なないでくれ、お前にはISのことなどまだ教えてもらっていないからな!」
「...それはやめたほうがいいぞ。」
「なんでだよ!」
「俺は...俺を撃った奴の通り...殺人者だからだ。」
そう言って織斑の手から五十嵐の手がするりと落ちていき、眠るように目を閉じた。
すぐに来た医療班が医療局に運び、緊急手術を行って一命を取り留めたがその後が大変だった。
翌日に召集された職員会議で全会一致で三人を退学処分に処する決定を下し、門を出されたところで殺人未遂罪や凶器準備結集罪などで警察に逮捕された。
また処分が決まった際にIS統合管理局の一部職員による反乱騒ぎが起きようとしたが、国防軍IS教導隊により制圧された。
これに対して社会国民党の右派を始めとする女性至上主義を訴える人々が一斉に不当逮捕だと訴えた。
これは女性第一の国是を認めない国防軍や男性共に取り込まれた漆原首相などが女性至上主義者を排除するために起こした陰謀だと訴え首相に退陣要求を求めるデモや集会が都心でいくつも開かれ国会と首相官邸を連日包囲した。
だがそれらのデモや集会は女性至上主義の恩恵を受けている富裕層や女性至上主義者達が中心で大部分の国民は漆原首相についていた。
これを知っていた漆原首相は国会の場で女性至上主義を批判する演説を行い、右派の離党を促した。
結果社会国民党の議員半分が離党したところで首相は衆議院解散を行い総戦況を戦う決意をした。
「しかし徴用兵制度一時停止を閣議決定した後でよかったわ。」
首相は執務室でほっと一息を付いた。
徴用兵制度は初年度の二〇〇一年に第一期徴用で三十五万人以上を徴用して以来は年十万人を選抜徴兵制のように満五歳の国民から選ばれた子供が徴徴用兵としおて徴用される。
そのために徴用されなかった織斑と徴用された五反田のようになるものとならないものが現われた。
しかし二〇一二年度の徴用は漆原首相の尽力で停止まで踏み込んだ。
「この衆議院選挙で右派を追い出して、今度こそ徴用兵法を停止させるわ。」
《我々も上手くいくように願ってますわ首相。ただそれを伝える為に私に電話したわけではないですよね?》
電話の相手はIS学園生徒会長の更識楯無であった。
「そうよ、私の息子。五十嵐裕也についてだが、ふたつ頼みがある。ひとつは代表候補生で過激行動に出る生徒から彼らを守って欲しい。もうひとつは五十嵐裕也の心理状態を確認して欲しい。」
《ひとつ目はわかりましたが、ふたつ目はなぜ?》
更識会長が疑問を述べると執務机にあるひとつの報告書を一目見た。
『徴用兵のPTSD患者について』という題された報告書であった。
「徴用兵の中にPTSD患者が現われたわ。もしかしたら彼も学校内での虐めで病んでいるかも知れない。あと出来れば彼を人間らしくして欲しい。」
《人間らしくですか...得意な分野ではありませんが、学園の生徒会長として生徒の管理は私の職務の一部ですので引き受けます。》
「ありがとう。」
電話を切ると電話を掛け直してまた別の場所に連絡した。
「国防大臣?私だけど二人の専用ISについてだけど。」
《はい。織斑くんに関してはIS統合管理局を制圧した際にあったコアを使用した“白式”、五十嵐大尉には試験飛行隊で試験飛行中の第三世代IS“紫電”を与えることにしました。》
「私の我がままに付き合わせてしまってすまないわ。」
《いいえ、首相の理想のために我々は協力します。では。》
受話器を置くと椅子に深く座り、連日の公務の疲れで眠ってしまった。
第二十四話です。
今回は女性至上主義に染まった代表候補生の襲撃でした。
少し見直して思ったのですが、9mm拳銃を奪われたところは五十嵐の特徴ですかね。
設定的には射撃などは上ですが格闘などの近接戦闘が苦手であり、陸軍に選ばれなかったというのがあります。
ただもうひとつ言うことがあれば、流石に学園生徒が全員女性至上主義に染まっているのはどうかと思いますね。
なんせ女性至上主義が一番強い国である日本は分かりますが、外国人生徒も居ますからね。
特にイスラム教圏の国々から来た生徒はどうなるんでしょうね?
少しは良心ある生徒もいないとね、この状況じゃ五十嵐も本当に死んでしまう。
では、また今度。