学園の守護者   作:新稲結城

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・特殊貫通炸裂弾
装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)と同じ構造の砲弾。
発射すると装弾筒が四つに別れ、炸薬の入った矢型の弾体が着弾と共に遅延信管が作動して装甲や装備を破壊させる。
また高い貫通力を持ち、絶対防御を破って操縦者を直接攻撃することが出来る。
その為に試合での使用は禁止され、リミッターを解除しないと使えない。

※今回は長いです


第二十九話 クラス対抗戦

クラス対抗戦の当日。

第二アリーナの会場は最新鋭の機体を持つ一組の織斑と二組の凰による第一試合が行われ為に多くの生徒と関係者が押し掛けた。

アリーナの席は全席満員となり、入りきらなかった観客は場外のモニターで観戦しなければならなかった。

 

「教えた通りに戦え、お前が勝つにはこの戦法しかない。」

 

「大丈夫だ、何回も練習したんだ。じゃあ行って来るぜ、裕也。」

 

織斑の白式は五十嵐にそう言うと電磁カタパルトで打ち出され、空に上がった。

五十嵐は織斑を送り出すとピット上部にあるコントロール室に上がる。

 

「それでは両者、規定の位置まで移動してください。」

 

山田真耶先生の指示により両者が規定位置に移動する。

 

「それでは両者、試合を開始してください。」

 

そしてブザーが鳴ると同時に戦闘は始まる。

織斑は開始早々攻勢掛け、“雪片弐型”で切りかかるが凰が両端に刃を備えた翼形の青龍刀“双天牙月”で防がれる。

装備が刀しかない織斑が勝つには守勢に回らず攻勢を掛け続け、隙を見て“瞬間加速”で間合いに入り“バリアー無効化攻撃”でシールドエネルギーを削るしかない。

だが現状ではジャブのような攻撃に守勢に立たされ、拘束されている。

身動きが取れない織斑は第三世代IS“甲龍”の肩アーマーから現われた“龍砲”の砲撃を受ける。

 

「なんだあれは...」

 

篠ノ之の呟きに五十嵐が答える。

 

「“衝撃砲”だ。空間自体に圧力をかけて砲身を生成、余剰で生じる衝撃それ自体を砲弾化して撃ち出す兵器。砲身も砲弾も眼に見えないのが特徴で砲身斜角がほぼ制限なしで撃てる。」

 

と言っても撃ち出される方向は敵機である自機しかない。

止まらず高機動で回避し続ければ避けれる。

現に織斑は持ち前の機動力でジグザグにアリーナーステージを飛行して避け続けている。

長期戦となれば一回の攻撃で大きく消費する白式は追い込まれて撃墜されるだろう。

だが織斑の攻撃が決まれば勝利は確実だ。

この状況を理解している五十嵐を含めその場にいる観客達はぎりぎりの戦いに息を呑む。

 

 

 

その頃、横田にある国防軍宇宙空間防衛司令部で衛星軌道上から物体が降下しているのに一人の空軍オペレーターが叫んだ。

 

「緊急!衛星軌道上から大型物体が降下中!」

 

すぐに地下にあるスーパーコンピューターにより瞬時に計算され、落下地点が割り出される。

その結果に呼び出された司令官は驚愕した。

 

「やばいぞ...神奈川・東京・千葉にジェイアラート発令!」

 

 

 

試合に集中する五十嵐に、突如として鳴ったサイレンが呼び戻す。

 

《ミサイル発射情報。ミサイル発射情報。当地域に着弾する可能性があります。屋内に避難し、テレビ・ラジオをついけてください。》

 

コントロール室にあるテレビを急いで点けると“国民保護に関する情報”と表示されるが発射した場所は“不明”と表示された。

 

「全員伏せろ!」

 

織斑先生が叫ぶとオルコットを除いた室内にいた全員が机の下などに伏せた。

避難訓練を頻繁に行う日本国民には慣れた状況であったが、日本に来たばかりの外国人は戸惑った。

 

「これは一体...」

 

「危ない!伏せろ!」

 

その場に棒立ちしているオルコットに五十嵐は突き飛ばして覆いかぶさる。

丁度その時、大きな揺れと共に衝撃が襲う。

コントロール室のガラスが割れて砕け散り、揺れで照明や備え付けのテレビが落ちてくる。

 

「オルコット、大丈夫か?」

 

揺れが収まると五十嵐は起き上がる。

 

「はい、大丈夫ですわ...五十嵐さん!」

 

五十嵐の顔を見たオルコットは驚いた。

落ちてきた照明のガラス片で切った傷で頭から血を流していた。

 

「このくらい大丈夫だ...織斑先生!山田先生!篠ノ之!」

 

「大丈夫だ。」

 

「なんとか...」

 

「こっちも大丈夫だ。」

 

すぐさま点呼を取ると立ち上がってモニターを見つめる。

そこには熱線を回避する織斑と鳳の機体が映る。

 

「ステージ中央に熱源反応あり...所属不明のISだと思われます。」

 

「映像を!」

 

山田先生はカメラを操作して砂煙が立つ方向に向ける。

そこには全身を装甲で包み、異形なISの姿があった。

不規則なセンサーの並び方、異様なまでの腕の長さに纏められた砲口、そして本来なら必要の無い装甲。

到底バランスという言葉が抜けた機体だった。

 

「織斑くん!凰さん!すぐに戻ってください!」

 

山田先生はマイクに叫ぶが二人は所属不明のISに攻撃を仕掛ける。

 

「本人達はやる気だ。やらせてみてもいいだろう。」

 

「織斑先生!なにを暢気なことを言っているんですか!?」

 

織斑先生の言葉に山田先生は反論する。

そこに五十嵐が会話に入る。

 

「あのISは遮断シールドを破って入ってきました。あの威力で客席を吹き飛ばされたら二桁台の死人が出るでしょう。それなら二人に引き付けて貰う方が安全です。」

 

「先生!わたくしにIS使用許可を!すぐに出撃できます。」

 

オルコットは出撃を求めたが、織斑先生はタブレット型端末を操作して彼女に見せた。

 

「遮断シールドがレベル4に設定...?しかも、扉がすべてロックされて...あのISの仕業ですの!?」

 

この状況ではアリーナステージに入ることは出来ず、場外からの狙撃も遮断シールドで跳ね返される。

オルコットは二人が心配なのか織斑先生に食って掛かる。

確かに凰ならば大丈夫だろうが、素人同然の織斑がいる状態では重い荷物を担いで戦っていると同じだ。

心配になるのも当然だろう。

そこに内線電話が鳴り、織斑先生が出ると五十嵐に受話器を差し出した。

 

「五十嵐です。」

 

《小室だ。たった今、IS学園から政府に防衛出動の要請が入った。君は警備隊本部の指揮下、事件の対処に当たってくれ。》

 

「了解しました。」

 

受話器を返すと五十嵐は背筋を伸ばし足を揃える。

 

「日本国国防軍IS学園警備隊の五十嵐裕也大尉。要請により派遣されました。」

 

「大尉、IS学園内での作戦行動を認める。」

 

織斑先生が許可をすると五十嵐大尉はお辞儀をする。

 

「扉から全員離れろ!」

 

室内にいる者が全員ドアから離れるとISを一部展開する。

十式50口径12.7mm小銃を構えると扉に向けて銃撃する。

扉は銃撃されてボロボロになり、五十嵐が蹴ると倒れて出れるようになった。

急いで走り、障害となる扉や防御シャッターなどを吹き飛ばして外に出ると紫電を展開させたて飛び上がる。

 

「リミッター解除。」

 

競技用の制限がなされたISはリミッターを外すことで軍用に戻すことが可能だ。

学園の中央にある中央タワーまで一気に飛び上がると最上階に降り立った。

脚部の足底からスパイクが打ち出され狙撃体勢を固定すると十式55口径120mm狙撃銃を展開させる。

弾倉を特殊貫通炸裂弾が五発入った物に入れ替えるとボルト・ハンドルを引いて装填する。

そしてコマのように高速で回転しながら攻撃する謎のISに照準を合わせる。

目標までの距離2キロ、気温18度、湿度63%、気圧1012hPa、それに重力による弾道の下降を計算に入れ修正を入れる。

これらの計算は射撃管制装置が計算して割り出し、照準器に修正が入る。

それに合わせて五十嵐は狙撃銃を構え直して、十字レクティルに合わせる。

あとは遮断シールドを解除されるのを待つのみだった。

 

 

 

織斑は“零落白夜”を発現させた雪片弐型で敵ISの右腕を切り落とした。

敵ISは左拳で織斑を殴りつけると左腕の砲口を向け、ゼロ距離から熱線を叩き込もうとする。

 

「...狙いは?」

 

《完璧ですわ!》

 

オルコットの声と共にブルー・ティアーズが四基同時狙撃を敵ISを襲った。

外部から現われた三機目のISの攻撃を予測できなかった敵ISは攻撃を受けて爆発した。

 

《ギリギリのタイミングでしたわ。》

 

「セシリアならやれると思っていたさ。」

 

オルコットは織斑の言葉に驚いたのか酷く狼狽する。

 

《そうですの...とっ、当然ですわね!何せわたくしはセシリア・オルコット。イギリス代表なのですから!》

 

オルコットは胸を張って言った。

 

「...ふう、なんにしてもこれで終わ」

 

《敵ISの再起動を確認!警告!ロックされています!》

 

電子音声が警告を発する。

最大出力形態に変形させたISが片方が残った左腕を突き出して地上から織斑を狙っていた。

 

「くそ!」

 

織斑は雪片弐型を構えて突っ込む。

だがその時、真横になにかが通り過ぎる音と共に目の前にいる敵ISの左腕が爆発した。

さらに胴体の真中に“矢”のような物が突き刺さると爆発、敵ISはそのまま仰向けに倒れた。

 

「なにが?」

 

オルコットは突然の事に驚くと、後ろから砲声が聞こえたのに気づいて振り向く。

ハイパーセンサーで中央タワー最上部を拡大すると五十嵐の紫電の姿が見えた。

 

《最後まで油断するな。敵の死体を見てから会話しろ。》

 

オープン・チャンネルで織斑とオルコットに言葉を投げかけると紫電の展開を解除させて視界から消えた。

二キロもの距離からの小さいコアを一撃で仕留める五十嵐の狙撃にオルコットは驚きの色を隠せなかった。

いくら機械の補助があるとはいえ、長距離から連射で狙ったところを外さずに狙撃する。

オルコットは五十嵐の狙撃技術に感心させられた。

 

 

 

その夜、国防海軍の第一種軍装に着替えた五十嵐大尉はエレベーターに乗っていた。

学園の地下一五メートルにある空間はレベル4の権限を与えられた者のみ入ることが許された研究施設だ。

織斑先生に呼ばれた五十嵐大尉はエレベーターが止まり、ドアが開くと前のドアにを開く為の操作を行う。

 

「国防海軍五十嵐大尉です、入室許可を。」

 

カメラに向け顔を上げる。

 

《どうぞ》

 

スピーカーから織斑先生の声が聞こえるとドアが開き入室する。

そこには何面ものディスプレイが並べられ、山田先生と織斑先生がいた。

 

「遅れました。」

 

「そうか、山田先生。揃ったから始めよう。」

 

「はい、ISの解析結果が出ました。」

 

「ああ。どうだった?」

 

「はい。あれは無人機です。」

 

全世界の研究所が開発出来ていないISの無人兵器化、遠隔操作と独立稼動技術。

そのどちらか、あるいは両方の技術が使われているのなれば国防上危険な技術の登場だった。

国防軍はこれから死も恐れないIS兵器によるテロに怯えなければならない。

 

「どのような方法で動いていたのかは不明です。五十嵐くんの最後の攻撃でコアと機能中区が破壊されたので修復も、おそらく無理でしょう。」

 

「コアは判別できたか?」

 

「なんとか...ですが、登録されてないコアでした。」

 

「では、このことを国防省に報告します。」

 

「わかった。」

 

五十嵐大尉はドア出るとその足で警備隊駐屯地に出向き今回の事件の報告を行った。




第二十九話目です。

やっと一巻目を終わることが出来ました。
前話で単語登録について多くの人が教えてくれてありがとうございます。

さて二巻目は大変なことになりそうだ。
ドイツ代表とフランス代表が厄介ごとを持ってくる。
特にフランス代表の問題はきな臭い(旧・学園の守護者を読んだ人なら分かるかも)。

ではまた今度。
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