《シュウター!車列を攻撃しろ!》
五十嵐大尉は機首を車列に向け、使用武器をクラスター爆弾に選択する。
韓国軍の車列はF/A-3A“流星”が迫って来るのに気づき、兵士達が降りて各々の小火器で応戦する。
だが高速で飛び去るジェット戦闘機に豆鉄砲の弾では落とせない。
「投下!」
クラスター爆弾は投下されると、空中で破裂して子弾をばら撒く。
子弾は車列の周囲で一斉に爆発を起こしてトラックが横転する。
横転したトラックから多くの人間が飛び出して蜘蛛の子を散らすように逃げ惑った。
《シュウター!逃げる兵士を殺せ!》
「了...」
“
そこには兵士と違う服を着て、子供や老人・女性が逃げ惑っていた。
「あれは民間人です!」
五十嵐の攻撃したのは避難民を乗せた車列であった。
攻撃中止を求めるが、上官は聞き入れず攻撃を命じる。
《いいか!お前の任務は日本のために目の前にいる“敵”を全員殺すことだ!》
「...了解。」
旋回を終えると逃げ惑う人々に照準を合わせ、使用火器を機関砲に変える。
そして発射ボタンを押した。
「ウワァァァァ!」
五十嵐は起き上がると、状況を掴めず辺りを見回す。
自分はベットに起き、この部屋はIS学園一年生用の寮。
「またか...」
クラス対抗戦時の襲撃時件以来、あの戦場での出来事が悪夢としてよみがえる。
時間は午前四時、授業が始まる八時半まで時間はある。
寝ている間に噴き出た冷や汗をシャワーで流し、新たに送られた報告書を読みながら9mm拳銃の整備をする。
「三人目の男性IS操縦者か...」
HRが始まると副担任の山田真耶先生から転校生二名の話が切り出される。
「ええとですね、今日はなんと転校生を紹介します!しかも二名です!」
クラスにいる女子達は驚き、転校生について色めき立った。
教室のドアが開き、シャルル・デュノアともう一人、銀髪で黒い眼帯を左目にしている女性。
歩き方と身に纏う雰囲気で彼女が軍人、しかも我々徴用兵と同じような人間だと悟った。
そして戦艦大和のように対空火器が大量に並べられたように警戒感を周囲に撒き散らす。
五十嵐は危険だと直感で感じると腰に手をやり9mm拳銃の安全装置を解除する。
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします。」
礼儀正しい立ち振る舞いと中性的な顔立ちにクラスの女子は一斉に歓声を上げる。
デュノア自身女子達の熱気に驚かされる。
「み、皆さんお静かに。まだ自己紹介が終わってませんから~!」
副担任が場を収めると忘れかけていた軍人だと思われる転校生の哨戒に移る。
「・・・・・・・・。」
だが黙って腕を組み、このクラスにいる生徒をくだらなそうに見ている。
織斑先生が自己紹介するように言った。
「・・・・・・挨拶をしろ、ラウラ。」
「はい、教官。」
するとドイツ連邦軍の敬礼をする。
「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ。」
織斑先生は昔ドイツ連邦軍の顧問として現地に飛んだことがあるらしい。
その時の教え子なのだろうと推測した。
「了解しました。」
ラウラと呼ばれた彼女は自己紹介に移る。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。」
ラウラ・ボーデヴィッヒはただ自らの名を言うと口を閉ざした。
「あ、あの、以上ですか。」
「以上だ。」
山田先生は出来る限りの笑顔でボーデヴィッヒに訊くが、帰ってきたのは通信の終わりを示す言葉だった。
すると一夏とボーデヴィッヒの目が合うと一夏に向かって歩き出した。
「貴様が!」
席から飛び出す、そしてボーデヴィッヒは手を振り上げ、一気に降ろす。
五十嵐は織斑の頬に当たる瞬間に手首をつかみ捻る。
「うっ!...何するんだ!」
五十嵐はボーデヴィッヒを冷徹な目で睨む。
「日本国国防海軍大尉五十嵐裕也だ。織斑一夏の護衛任務を受けている。」
軍人に対して任務だと言えば引く。
彼女が織斑を殴るには五十嵐と一戦交えなければならない。
こいつを殴るのにそこまでの価値は無い、無駄な労力だ。
ボーデヴィッヒは腕を振りほどくと五十嵐を一瞥して自分の席に向かった。
転校生の突然の行動に教室には微妙な空気が流れていた。
「ゴホン!ではSHRを終わる。各人はすぐに着替えて第二グランドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」
次の時間は実習で、ISスーツに着替えなくてはならない。
一夏が立ち上がると感謝の言葉を送った。
「いつもすまないな、裕也。」
「いつもの事だ、今度から対人格闘の訓練も必要だな。」
すると織斑先生から言い付けられる。
「おい織斑、五十嵐。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろ。」
「了解。」
デュノアは初対面の織斑に挨拶するが、織斑は遮る。
「君が織斑君?初めまして。僕は・・・。」
「ああ、いいから。とにかく移動が先だ。女子が着替え始めるから。」
織斑はデュノアの手を取るとそのまま教室を出る。
五十嵐は俊足を生かして先を走り、偵察を行う。
「とりあえず男子は空いてるアリーナ更衣室で着替え。これからの実習のたびにこの移動だから、早めに慣れてくれ。」
「う、うん。」
デュノアは妙に落ち着かなそうにしている。
織斑は心配して声を掛ける。
「トイレか?」
「トイ・・・・っ違うよ!」
「そうか。それは何よりだ。」
すると先発する五十嵐が、廊下から迫る他クラスの女子達の波を捉える。
「織斑!早くしろ。包囲されるぞ。」
そして階段を下って一階からアリーナまで迂回することにした。
「ああっ!転校生発見!」
だが先回りされ尖兵に出会ってしまう。
「者ども出会え出会えい!」
ここは戦国時代なのか、とにかく迂回路を使いここは凌ぐしかない。
「こっちだ!」
五十嵐は誘導すると走り出し、一夏とデュノアも走る。
デュノアはこの状況が飲み込めずに一夏に聞く。
「な、なに?何でみんな騒いでいるの?」
「そりゃ男子が俺達だけだからだろ。」
だがデュノアは理解できずにいたが、これに関しては五十嵐も同じであった。
その間にも女子達は距離を詰める、五十嵐は腹を括り上着からあるものを取り出した。
筒状のそれは発煙手榴弾だった。
「ふたりとも次の角で飛び込め。」
そう言うと五十嵐はピンを歯で引き抜き、後ろに投げ込むと女子達の目の前に煙が焚かれる。
そこに突っ込んで煙を突き抜けるとその先には誰もいなかく、火災報知機が鳴り響きスプリンクラーが撒かれる。
なんとか更衣室に着くとすぐに着替え第二グランドに向かうが時既に遅かった。
腕を組んだ織斑先生が怒鳴ると織斑、五十嵐に出席簿による打撃が加えられる。
「五十嵐、いくら追っ手を撒くとは言え室内で発煙手榴弾を使うな。水浸しになったぞ。」
「以後気を付けます。」
「まあ各担任には厳しく言うようにした。後ろに並べ。」
お辞儀すると織斑と共に最後尾の列に並ぶ。
それから五十嵐は実習授業を受けるが、常にボーデヴィッヒに見られているのに気づいた。
第三十一話目です。
今回の話は旧・学園の守護者とあまり変わりません。
次話から新たな展開を入れ込もうと思います。
しかしISについての設定議論はすごいですね。
あそこまで考える人々がいるとは...
ではまた今度。
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