学園の守護者   作:新稲結城

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第三十五話 射殺許可

学年別トーナメント当日を迎えた。

前回の襲撃を踏まえ、この日は各国の政府関係者等が観戦に訪れる為に警備が強化された。

島内の空き地にはPAC-3と03式中距離地対空誘導弾が配備され、海上には二隻の秋月型防空駆逐艦が配備され空からの襲撃に備えていた。

またIS教導隊が羽田空港・入間基地・横田基地に第二・五世代IS『烈風改』が分散して配備されていた。

五十嵐と凰ペアは織斑&デュノア対ボーデヴィッヒ&篠ノ之の試合の次が出番である為にピット内で待機していた。

 

「裕也、どっちが勝つと思う?」

 

凰はピット内にある備え付け液晶テレビを見上げながら五十嵐に問いかけた。

 

「織斑&シャルルのペアが必ず勝つ。」

 

「なんでそう思うのよ?」

 

「『僚機を失った者は戦術的に負けている。個人技ではなくチームプレイの重要さを語っている。』」

 

凰は五十嵐が常識のように語った格言を分からず、首を傾げる。

彼女が怪訝な顔をしているのを見て五十嵐は付け加える。

 

「ドイツの撃墜王エーリッヒ・ハルトマンの言葉だ。織斑&デュノアは何日も訓練を重ねて上手く連携が取れる。一方ボーデヴィッヒ&篠ノ之は今日突然組まされたペアだ、連携を取ることは出来ない上に俺の作戦通りの環境だ。それにボーデヴィッヒは機体の特性と性格から最初から篠ノ之をいない事にして戦うだろう。」

 

そしてブザーと共に試合が始まる。

織斑は開始直後ボーデヴィッヒに突撃するが、手前でAICで止められてしまう。

 

「なによ、あいつ!開始早々捕らえられているじゃない!」

 

「いや、あれは罠だ。」

 

デュノアは織斑の後方から頭の上を飛び越えてアサルトカノンでラウラの大型レールカノンの砲弾を逸らす。

ボーデヴィッヒが後退するとシャルルは即座にアサルトライフルに換え追撃。

そこに篠ノ之が突撃してくるがボーデヴィッヒのAICから開放された織斑が瞬間加速でデュノアの背中に。

そしてデュノアが宙返りしてお互いの場所を入れ替えるという機動を行なった。

 

「訓練した甲斐があったな。」

 

篠ノ之の一撃を雪片弐型で受け止めると、織斑の背後に控えていたデュノアがショットガンを向ける。

至近距離から散弾を避けることは出来ない、五十嵐はそう思った時ボーデヴィッヒは予想外の行動に出る。

篠ノ之の脚にワイヤーブレードを巻きつけると、遠心力で投げ飛ばした。

それは味方を助ける訳ではなく、ただ織斑を攻撃するのに邪魔だったので“排除”したに過ぎなかった。

 

「あいつ、箒を!」

 

凰は威嚇する犬のように口元を歪ませて怒りを露にしていた。

ボーデヴィッヒの行動は編隊行動とは程遠く、ただ自分勝手に戦っていた。

 

「軍人とは思えない戦い方だ。」

 

すると織斑とデュノアは一瞬目を合わせると分かれた。

織斑がボーデヴィッヒの猛攻を一人耐える中でデュノアは篠ノ之を追撃する。

その行動は篠ノ之を先に倒して、二対一に持ち込む作戦だと直感的に伝わった。

五十嵐の読み通りにボーデヴィッヒは孤立すると二人は猛攻を加える。

ボーデヴィッヒは一人果敢に互角に戦うがとうとう終わりが近づいた。

織斑は零落百夜を発言させると切り掛かるがAICで止められる。

しかしAICは対象物に集中せねばならず、その隙を零距離からデュノアの銃撃で大型レールカノンは破壊される。

 

「マランの空戦十則の三。常に周囲を警戒せよ。特に後方に注意。」

 

AICの呪縛を逃れた織斑は零落百夜を纏った雪片弐型で再度切り掛かる。

だが刃先から光が消失した、織斑はエネルギーを使い切ってしまった。

ボーデヴィッヒはすぐに織斑を攻撃するが、デュノアの援護に邪魔され目標を瀕死の織斑からデュノアに変えた。

デュノアもボーデヴィッヒの猛攻に苦戦するが織斑の銃撃で戦況は変わる。

ボーデヴィッヒの間合いに入ったデュノアは第二世代最強の装備“灰色の鱗殻(グレー・スケール)”別名“盾殺し(シールド・ピアース)の連続砲撃でボーデヴィッヒのISは強制解除の兆候を見せた。

 

「やった!」

 

凰がガッツポーズをするが、事態はボーデヴィッヒの絶叫で急変した。

シュヴァルツェア・レーゲンは激しい電撃を放ち近くにいたデュノアの体を吹き飛ばした。

装甲の表面が溶けたチョコレートのようにドロドロと流れ、その液体はボーデヴィッヒの体を包み変形をした。

 

「裕也!」

 

凰はテレビ画面に注視していると五十嵐は紫電を展開と同時にリミッターを解除する。

アリーナーに出るピットの縁に立つと10式55口径120mm狙撃銃を展開させ、薬室に特殊貫通炸裂弾を装填する。

 

「こちらシュウター!緊急事態発生!」

 

紫電の頭部に載せられた小型カメラを中継して入間基地に指揮所を置く佐々木大佐のもとに映像が送られる。

 

《シュウター、あれはVTシステム(ヴァルキリー・トレース・システム)と呼ばれる条約で現在どの国家・組織・企業においても研究、開発、使用全てが禁止されている代物だ。》

 

シュヴァルツェア・レーゲンは形を変え、その姿は一種のISを模り手に持つ刀は織斑の白式唯一の武器“雪片弐型”と酷似する。

謎のISは織斑の雪片弐型を弾いて、切り掛かる。

 

《各基地から烈風改六機が支援に向かっているが、現在学園から支援要請は無い。学園指揮下で対応しろ。以上。》

 

「了解。」

 

五十嵐は照準器の十字レクティルの中心に謎のISの胴体を狙う。

薬室に装填した特殊貫通炸裂弾なら一発で搭乗者を仕留める威力を持つ。

即座にこの緊急事態を収拾するには射殺しかない。

 

「こちら五十嵐。織斑先生、ボーデヴィッヒの射殺許可を要請します。」

 

オープンチャンネルで織斑先生に要請する。

篠ノ之に押さえられた織斑がそれを聞いて割り込む。

 

《なにを言っているんだ、五十嵐!同級生を殺すなんて!》

 

「俺はお前を護衛する任務がある。任務を遂行する上で最適な手段を選んだまでだ。」

 

《ふざけるな!お前はただ人を殺したいだけじゃないのか!》

 

織斑は信ずるものを犯されたのか遠くにいる五十嵐を睨みつける。

 

「狙撃の邪魔だ、織斑。お前がいる意味は無い、退避しろ。」

 

《あるさ!あれは千冬姉の紛い物だ!》

 

「だからなんだ?」

 

《千冬姉だけのものを奪って気に入らない!わけわからない力に振り回されているラウラも気に入らない!...俺は真剣を初めて持った時に人を殺す武器の重さを知った。その重さを知らずに振る剣はただの暴力だ!》

 

織斑の言葉に五十嵐は一言言った。

 

「...なにを言っているんだ。」

 

五十嵐は銃口を構えながら織斑に語る。

 

「俺が構えている銃は引き金を引くだけでボーデヴィッヒを殺せる。同じように戦闘機の操縦桿にあるボタンひとつで多くの人を殺せる、その時何を感じると思う。」

 

《...なんだ。》

 

「何も感じない。ただ命令通りに人を殺すだけ、重さも何も無い。」

 

初めて民間人を殺したときは感じるものがあった。

だが戦場で戦っているうちに日常になり、いつもの風景として脳内の記憶が処理する。

あの時を除いて。

 

《織斑だ、この事態に教師部隊が対応する。五十嵐はその場で別命あるまで待機。》

 

「了解。」

 

織斑先生の指示を聞くと織斑に命じる。

 

「お前の機体はもう動かない。あとは教師部隊に任せろ。」

 

だが織斑は五十嵐の指示を聞かず、ただ立ち止まる。

 

《五十嵐、俺はあいつを殴りたいんだ。他の誰がやるとか、知らない。大体ここで引いたら俺じゃない。》

 

「いい加減にしろ、戦闘の邪魔だ。お前のISはもう動か」

 

《無いなら他から持ってくればいい。でしょ?一夏。》

 

電撃から立ち直ったデュノアが織斑の横に来てケーブルを伸ばす。

コア・バイパス、軍用ISならば必ず搭載される装備で他の機体へのエネルギーを供給できる。

なにをするのか五十嵐はすぐに察しがついて呆れる。

 

「勝手にしろ。」

 

五十嵐はそれを見てそう言った。

白式にエネルギーがすべて供給され、織斑は部分展開で武器と右腕だけ展開する。

零落白夜を発動し、ラウラのISが刀を振り下ろすがそれを避け一気に切りつけた。

切りつけられたところからラウラが出てきたのを一夏が抱きかかえた。

これで今回の試合は終わりだ。

 

 

 

 

五十嵐は一人、寮の自室に戻ると丁度携帯電話が鳴った。

 

《裕也、亡命の件で話があるの。》

 

電話を出るとそれはデュノアからだった。

 

《あとで第三校舎の裏に来て。》

 

そして電話が切れ、五十嵐は急いで第三校舎の裏にある庭園に足を踏み入れた。

 

「止まって。」

 

背後から声が聞こえ、後ろを振り返るとベレッタM92Fのフランス・ライセンス版“PA―MAS G1”を構えたデュノアがいた。

 

「ごめんね、裕也。銃を捨てて、こっちに蹴って。」

 

デュノアは涙を薄っすらと浮かべながら声を震わせて言った。

五十嵐は黙って拳銃を地面に置くとデュノアに向けて蹴った。

 

「どういう事だ、デュノア。」

 

睨み付ける五十嵐に背後から爆発音が響き、聞こえた。

それは駐屯地からだった。




第三十五話目です。

三日前に無事に卒業しました、あと一ヶ月で大学の入学式。
案外すぐですね、時が立つのは早い。

前に感想で『更識楯無の喋り方がおかしい』とありましたが、何処を直せばいいか悩んでます。
織斑一夏に対しての喋り方ではなく、轡木十蔵に対する喋り方のほうがこの作品では多いと思います。
関係的には一夏に対しては友人(恋愛対象?)ですが、五十嵐とは上官・部下のような関係ですからこの喋り方が妥当だと思います。
もしアドバイスがあれば教えてください。

あと遮断シールドとはなんですかね?
あのエネルギーがISコア以外であれば艦艇の載せて対空対艦防御につかえるのかな?
ふと思った疑問。

ではまた今度。
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