「なにがどうなっているか、早く報告を上げろ!」
駐屯地の地下にある学園警備総隊本部指揮所では、小室准将が周りの兵士に怒声を上げた。
陽が落ちると港湾部・研究所地域の爆破と共に島内各所で武装勢力が現われた。
現状は駐屯地を包囲され、駐屯地内にいた部隊が応戦している。
「学園には状況を伝えたか!」
「はい!向こうは生徒の避難を行っています!」
通信兵が答える。
同時に爆音と共に天井の埃が落ち、床が揺れる。
どうも敵は対戦車ロケットまたは迫撃砲を持っているかもしれない。
「報告!」
指揮所に転がるように入った来た五反田大尉が小室准将のもとへ来て報告する。
「包囲している武装勢力は100名以上!武器は小銃・汎用機関銃・対戦車ロケット等!」
「港湾部・研究所地域で孤立している第三警備隊と救援に向かった第二警備隊。それに国家親衛隊の報告を合わせると200名近く...」
しかも重武装の兵士。
この島に入るにはふたつの橋にある検問を潜らなければならない。
そこでは車体全体を検査するⅩ線検査や身分証明の提出等、アメリカの国境検問所を参考にして作られた検問所だ。
そこをすり抜けられるのはIS学園生徒・外交特権を持つ外交官・学園へのIS又は装備運搬中の輸送車輌ぐらいだ。
「司令、発言よろしいですか?」
「ん?いいぞ。」
五反田大尉は気付いた事を小室准将に伝えた。
「正門のところに築いた土嚢まで行きましたが、敵の動きは訓練されたか戦場に行った経験がある者の動きです。少数でありながら動きには無駄がありません。」
「だろうな。」
司令は知っていたかのように答えた。
各部隊の位置が書かれた地図を指しながら五反田大尉に説明した。
「敵は各部隊を学園に向かわせないように足止めしているだけだ。じきに学園を警備している第四警備隊から」
「報告!学園正門詰所に襲撃、第四警備隊が応戦中!」
「一刻も早く包囲を突破し、学園に向かわせなければならない。問題は五十嵐大尉と連絡が途絶えたままだ。」
「何のつもりだ、デュノア?」
五十嵐はデュノアに銃を向けられ、指示された通りに西側にある人気の無い倉庫群まで歩かされた。
止まるように指示されると振り返って、デュノアと面を向かって話す。
島の東側にある駐屯地や港湾部から聞こえる銃声と爆発音は遠くに聞こえ、西側は暗闇と静粛に包まれ街灯が点々と道を照らす。
「ごめんね、裕也。」
「謝るくらいなら銃を捨てろ。」
「それは出来ない。」
彼女は目に涙を浮かべながら、首を横に振る。
なにを思って泣いているのか、五十嵐は分からない。
この行為に至った理由をデュノアに聞く。
「なぜこのようなことをする?」
「学年別トーナメント前に手紙が来たんだ、父から。内容は『最後のチャンスをやる。』って書いてあって裕也と紫電を確保してフランスに持ち帰ったら家族の一員として認めるって、今頃だけど。」
二年前に母親が死んでデュノア家に引き取られたが、愛人の娘にである為に家族の中に入れなかった。
そのデュノアの父親は娘をいいように自分の駒として使う。
俺の母親と同じだ、と五十嵐は思った。
「でも一夏と裕也がここに居場所を作ってくれた、だから断った。私は日本に亡命するって、でもそれじゃあ父は引いてくれなかった。今度は一夏を人質に脅したんだ。」
「なに!?」
五十嵐は驚きを隠せず、仮面のような顔を壊した。
「裕也でも驚く時は驚くんだね。」
その表情を意外と思いデュノアの口元がほころぶ。
「IS学園教員の中に所謂スパイがいるんだ、高橋先生ていう英語の教師。もし裏切ったら一夏を殺すって脅された。それで協力するしかなくて、今日の学年別トーナメントで来たフランス大使に付き添っていた武官から拳銃を渡された。」
彼女もといフランスとデュノア社の目的は俺の体と紫電。
これらは日本の国防に関わる重要な技術でもある、渡すわけにも行かない。
なんとしてでもここを切り抜けたいが、最終手段として自殺することだ。
紫電には心肺停止が確認すれば自壊する機能が組み込まれている。
そうすれば日本の国防に影響は最小限に済むだろう。
「デュノア。」
「なに?」
「俺を撃て。」
五十嵐の言葉にデュノアの表情は固まる。
「裕也...なに言ってるの?」
「いいから俺を撃て!撃ってくれ!」
「そこまでだ君達。」
すると倉庫の陰から黒い覆面と迷彩服をした男が現われた。
100連ドラムマガジンにM203グレネードランチャーを装着したM4A1を構えていた。
「フランス海軍の海軍コマンド『コマンドー・トレペル』のロベール中尉だ。」
英語で自己紹介しながらヘルメットを脱ぎ覆面を脱ぐと白人の男性であった。
見渡すと彼の部下が周囲に展開している。
「君がユウヤ・イガラシ、『ISキラー』か。」
「ISを撃墜したのは確かだ。自己紹介するとは大胆だな。」
「君はすぐにフランスに来てもらうからな。腕を後ろに回せ。」
五十嵐は指示通りに腕を回すと両手首に金属製の手錠が掛けられる。
ロベール中尉は五十嵐を傍に寄せるとデュノアに銃を渡すように求める。
「デュノアさん、もう終わりました。部下に拳銃を渡してください。」
デュノアは傍に寄って来た隊員に拳銃を渡す。
するとロベール中尉はレッグホルスターから拳銃を引き抜きデュノアに向ける。
彼女の顔は恐怖で引きつる。
「...僕を殺すの?」
「我が祖国には裏切り者は必要ない。」
向けられた拳銃の撃鉄が起こされ、引き金がゆっくりと絞られる。
デュノアは覚悟を決め、目を閉じる。
パァンッ!
そして人気の無い倉庫群の間に銃声が轟く。
第三十六話目です。
評価欄で『五反田の性格が違う。』と書かれました、反省してます。
残念ながらあのままの性格で五反田が過ごしてしまうと徴用兵不適合で臓器提供者にされてしまいますので、大幅に変えて五十嵐の頼れるパートナーの役に徹してもらっています。
あと今回、五十嵐の回収にフランスの海軍コマンドを選んだのは適役だと思ったので。
フランス軍の特殊部隊には第1海兵歩兵落下傘連隊・第13竜騎兵落下傘連隊・海軍コマンド・空軍第10落下傘コマンドー・空軍特殊作戦団・国家憲兵隊治安介入部隊・国家憲兵隊空挺介入中隊・第11落下傘旅団落下傘コマンドーグループ/潜入情報行動コマンドー - 11BP GCP/CRAPなどありますが、これらの中で今回の任務に最適なのは海軍コマンドだと思いました。
外人部隊は取り上げて見たいと思いましたが、精鋭部隊であり特殊部隊ではないので適役では無いと判断しました。
また別で取り上げようと思います。
では、また今度。