学園の守護者   作:新稲結城

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第三十七話 後衛

「え...」

 

デュノアは銃声は聞こえてから何も起きないので目を開けた。

その先にいる五十嵐の顔には血がベッタリと塗られていた。

ロベール中尉の手は真っ赤に染まり、地面には血溜まりに拳銃が落ちていた。

 

「きゃ!」

 

すると五十嵐はロベール中尉の腹を肘で殴りつけるとデュノアに突っ込む。

デュノアは五十嵐に肩で押されながら走らされる。

 

「撃て!」

 

海軍コマンドの隊員達が一斉に銃撃する中、五十嵐は体でデュノアを角に倒した。

 

「大丈夫か?すぐに手錠を外す。」

 

そこにはM4A1カービンを構えたボーデヴィッヒがいた。

そばには流血した隊員の姿があった。

M4A1の銃撃で手錠を破壊させてもらうと五十嵐は一喝する。

 

「なぜお前がいる!」

 

ボーデヴィッヒは角から銃撃しながら答える。

 

「二人が外に出るのを見かけた。雰囲気がいつもと違うから追ってみただけだ。」

 

「体は大丈夫なのか?」

 

「お前が私の体の心配か?私も軍人だ、これぐらい大丈夫だ。」

 

ボーデヴィッヒは今まで見せなかった微笑で返した。

 

「とにかくデュノア、ボーデヴィッヒと一緒に織斑を助けに行け!」

 

「私の嫁がどうした?」

 

五十嵐とデュノアはボーデヴィッヒが言った言葉に気付かずに事の顛末を話した。

 

「それはヤバイな。すぐに行きたいがマズルフラッシュからして十人以上はいるぞ。」

 

「ここは俺が食い止める。二人は織斑を守れ。」

 

五十嵐は死んだ隊員から手榴弾と弾倉を引き抜きながら答えた。

デュノアは五十嵐の肩が撃ち抜かれているのに気付いて制服の一部を切り裂いて傷口に当てた。

痛みに顔を歪ませる五十嵐にボーデヴィッヒは決定を決めた。

 

「わかった、五十嵐。後衛を任せる。」

 

ボーデヴィッヒはM4A1カービンを五十嵐に渡した。

 

「これを織斑先生に渡してくれ。」

 

交換に五十嵐はボーデヴィッヒに認識票を渡した。

 

「これは...」

 

同じ軍人であるボーデヴィッヒには死を覚悟した行為に捉えられた。

彼女の表情に五十嵐は察しがついて、説明した。

 

「それは認識表に模した紫電の待機形態だ。本物はもう一枚ある。」

 

「そうか、ならいいんだ。生きて帰ってくれ。」

 

「善処する。俺が合図したらデュノアを先に飛び出して逃げろ。」

 

デュノアから拝借した手鏡で角を見ると二人の兵士がこちらに近づいている。

五十嵐は確実に殺せる距離まで誘き寄せると合図した。

 

「今だ!」

 

飛び出したデュノアに二人の隊員が視線を逸らすと銃口を向けて顔面に銃撃する。

三点バーストで即座に一人の隊員の顔を破壊する。

次に飛び出したボーデヴィッヒはP12でもう一人の隊員を銃撃しながら去った。

五十嵐はM4A1カービンの銃身の下にあるM203グレネードランチャーで威嚇に撃ち込む。

この角にいることを示して、ここに引き付ける。

フランス兵の任務は俺を持ち帰ることなら、ボーデヴィッヒやデュノアではなく俺を狙うだろう。

十分間、この時間があれば二人は学園まで逃げれるだろう。

再度身を乗り出すと多方向から銃撃を浴びせれ、倉庫の外壁や地面のコンクリートの破片が五十嵐を傷つける。

 

「くそ、ここじゃあ十分も持たない。」

 

五十嵐は近くの倉庫に目を付けると最後のグレネードランチャーを撃ち込む

ドアを吹き飛ばすと一気に走り込む。

相手は銃撃してくるがどれもわざと外しながら銃撃してくる。

だが一発の銃弾が左足を撃ち抜いて倉庫に辿り着く前に倒れる。

左足は使えず右足で立つが右足も撃ち抜かれる。

匍匐前進で必死に倉庫に入るが、その間にも左腕もやられる。

脂汗を制服に滲ませながら奥まで行くと、壁にもたれ掛けた。

体をぶつけて前にある箱を倒させて、箱の上に銃身を載せる。

丁度良くドアから月明かりが入り、人が入ったらシルエットを目標に撃てる場所だった。

 

「面倒な場所に入られたな。」

 

右手を失ったロベール中尉はそれを見て困った顔をした。

 

「俺達の装備では壁を壊して側面から襲うことは出来ない。」

 

「どうします。」

 

隊員が聞いてくると指示を出した。

 

「しょうがない、正面から行くしかない。」

 

五十嵐は銃を構えて敵が来るのをじっと持つ。

体に出来た切り傷や銃創から血が流れるのを感じる。

座った場所は一面に血の海が出来て、制服が濡れて不快に感じる。

意識が遠のきながらも必死に繋ぎとめていると、ドアから何かが投げ込まれる。

焦点が合うとそれが手榴弾であることがわかって、急いで伏せる。

炸裂すると眩い光と爆音が倉庫に響き渡り、一時的に聴力を失う。

だが敵が来ているのは明白だった。

起き上がると痛みを抑えながら左手で銃身を必死に押さえて銃弾をばら撒く。

100連ドラムマガジンが空になるとM4A1を捨て、PAMAS-G1に持ち替えて銃口を向ける。

目の前にはフランス兵が倒れていた。

その先にも一人が倒れ、二人を殺したのだろうと思った。

 

「ユウヤ!これ以上の戦闘は無意味だ、こちらに投降しろ!」

 

外からロベール中尉の声が聞こえる。

俺を説得しに来たのだろう、手段を失って。

 

「お前は祖国の為に必死に戦った兵士であるが、祖国はそれを称えず虐げた!」

 

ロベール中尉の言葉はその通りだろう。

だが。

 

「そんな国を捨て、新たな土地で新たな人生は始めようとは思わないか!?」

 

五十嵐は残った力を振り絞ってロベール中尉に言い放った。

 

「日本国軍人は裏切らん!」

 

ロベール中尉は五十嵐の絶対的な意思に屈した。

彼を説得することは出来ない、ならば強硬手段に出るしかない。

 

「しょうがない、総員」

 

《駐屯部隊がこちらに向かってきています!》

 

無線に道を監視していた隊員からの連絡が入る。

 

「時間切れか、遺体を回収して撤退する。」

 

隊員達はすぐさま回収出来る死体を集めて海辺に隠していたゴムボートに乗ると東京湾の海に消えた。

 

「五十嵐大尉!」

 

機動戦闘車を先頭に行軍する兵士達の列にいる五反田が叫ぶ。

するとドアを激しく破壊された倉庫の前に来る。

三人の兵士を引き連れて中に入ると、ライトの光の先に二体の死体が転がっていた。

その先をライトで照らすと五反田は息を呑んだ。

全身血まみれになった五十嵐の姿が現われ、目を閉じてその場に伏していた。

 

「五十嵐!」

 

五反田は駆け寄ると絶句する。

白い制服は全身が血で染まり、地面は大量の血で海が出来ていた。

すぐに衛生兵を呼び寄せ、五十嵐はすぐに同行していた救急車で1トン半救急車で運ばれた。

翌日、夜が明けると共に政府は発表がなされた。

IS学園の島内でのテロの死傷者は国防軍・国家親衛隊200名、民間人30名に収まった。

一方テロ行為を行った外国人は200人死亡、逮捕50名になった。

日本政府は国防省情報局と公安警察それに更識楯無の情報をもとにフランス政府の仕業だと発表した。

現場に残された死体、逮捕された外国人は多くが黒人でありフランスに関連する民間軍事会社に雇われた民間人達でアフリカの内戦で経験を培った人達であった。

またに二名のフランス兵の遺体を調べ、調査した情報を照らし合わせてフランス軍人であることを証明した。

同時にシャルル・デュノアはデュノア社の社長の指示をすべて暴露した。

その上で日本国に亡命を申請した。

一方学園側は織斑一夏殺害未遂で高橋先生を追放と検査結果を改竄した容疑で二名の教師が追放と同時に警察に逮捕された。

一連の騒動にフランス政府は関与を否定すると思われたが、逆に認めた上で発表した。

 

『日本政府の非合法な手段により誘拐された我が国の優秀なパイロットであるシャルル・デュノアは洗脳か拷問により強制的に女性であると言わされ、亡命を認めさせられた。我々は日本政府に対して秘密裏に解放を求めたものの日本政府は拒否した。フランス政府は彼を奪還する為にフランス海軍の海軍コマンドの出動を命じた。勇敢なる海軍コマンドは日本軍の軍事施設を攻撃した。しかし奪還に失敗したが日本軍に大きな損害を与えた。我が国は再度IS操縦者の返還を強く求め、平和的な解決を求める。もしこれを蹴った場合、様々な制裁と実力行使を行う。』

 




第三十七話目です。

次はフランス政府の登場ですかね?

ではまた今度。
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