学園の守護者   作:新稲結城

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第三十八話 野望

フランス、パリにある共和国大統領官邸エリゼ宮殿。

その執務室ではフランス共和国第五共和政第七代大統領ダニエル・モルカドはソファに座っていた。

彼は“共和国戦線”という極右政党の党首であり、白騎士事件後の移民による暴動などが頻発する中で票を伸ばして当選した。

 

「まさかジャック・デュノアがあんなことをするとはな。」

 

「ですが我々の計画には丁度良いマッチポンプになりました。」

 

対面するアルフレッド・アラゴン統合参謀総長は笑みを浮かべながら話す。

 

「そうだな。それで彼はどうする?」

 

「ジャック・デュノアは娘を奪われた父親を演じてもらいます。」

 

「そうだな。お陰で二区にある日本人街が襲撃を受けている。いい気味だ。」

 

デュノア事件はフランス国内で野蛮な日本の横暴として報道され、フランス国民は民族主義に即発された。

パリの二区では日本人狩りが起き、日本大使館は連日包囲されていた。

大統領は立ち上がると執務室の壁に貼られた巨大な地図を見上げながら話す。

 

「世界の再建、西洋を中心とした世界支配を取り戻す。我々“世界再建委員会”の目的だ。第二次世界大戦後米ソ冷戦を経てアメリカ・EUを中心とした世界構築を行った。しかし東洋の黄色い猿共が我々の世界を破壊した。」

 

「白騎士事件。覚えていますよ。」

 

「そうだったな、あの時、国連軍フランス艦隊指揮官は君だったな。」

 

統合参謀総長は目を閉じて思い出しながら語った。

 

「はい。あの日、旗艦“カサール”の艦橋から米海軍の“キティホーク”が撃沈するのを見た時はひとつの時代が終わったと思いました。」

 

 

 

十一年前の太平洋、グアム沖。

旗艦カサール級駆逐艦“カサール”に乗る当時中将だったアラゴン統合参謀総長は艦隊を率いて未知の兵器『白騎士』に向かって行った。

 

「何が起きているんだ...」

 

アラゴン中将は目の前に広がる光景に絶句した。

そこにいるはずの米海軍第七艦隊は存在せず、海には油と米海軍兵士の死体などが浮かぶ中を“カサール”は進んでいた。

 

「司令官!米海軍“キティホーク”の艦尾が見えます!」

 

「なに!」

 

水兵が指差す先にアメリカの力の象徴“キティホーク”の艦尾だけが海面から見えていた。

 

「敵機、左舷方向から接近!」

 

左舷側にいた駆逐艦“フォルバン”とフリゲート“ゲプラット”が100mm艦砲と20mm機関砲で弾幕を張るが、“白騎士”は砲弾をすべて回避し、“フォルバン”の後部甲板を刀みたいな物で切り付けた。

するとヘリコプター甲板を貫通し、機関室のガスタービンを真っ二つに切ってしまった。

“フォルバン”は一拍子おいて機関部から火の手が上がり爆沈した。

そして後方にいた“ゲプラット”に飛び、大型荷電粒子砲を発射した。

“ケプラット”は艦上構造物は一瞬にして融解し、残った構造物は赤々と溶けてしまった。

熱で弾薬庫の砲弾やミサイルが誘爆を起こして真っ二つに船体が折れる。

この出来事はアラゴン中将の目の前で一瞬にして起こった。

 

「なんなんだ、あの兵器は!」

 

なす術も無く撃沈された怒りで壁を殴る。

 

「“フォルバン”並びに“ゲプラット”が撃沈!」

 

「敵機がこっちに向かってきます!」

 

水兵達が悲痛の叫びを上げる。

 

「なんとしてでも落とせ!」

 

そして“白騎士”は“カサール”の対空射撃を掻い潜り一気に近づく。

100mm艦砲の砲身を叩き切り、20mm単装機関砲を切る。

アラゴン中将はその時、艦橋から“白騎士”の操縦者が見えた。

顔はバイザーらしき物で隠されていたが、一つだけわかったことは女だったことだけ。

“白騎士”は大型荷電粒子砲を出し、砲口が光った。

アラゴン中将はそこで気を失ってしまい、起きたのは救命ボートの上だった。

だが周りの惨状を見て絶句した。

すべての艦艇が沈没していた。

 

 

 

 

統合参謀長は目を開けた。

大統領は白騎士事件後の世界を思い出しながら語る。

 

「ああ、あの日から世界は崩れた。アメリカの衰退、地域紛争の激化、移民の大量流入、移民による大規模暴動に独立騒ぎ、EU崩壊とあの兵器は我々の世界を引っ掻き回した。そしてその兵器を作り、世界の覇権を狙う日本には制裁が必要だった。」

 

「それがアラスカ条約ですか。」

 

「そうだ。日本にISを独り占めさせず、力を削ぐ為に条約を作ったのだ。」

 

「あの律儀な日本は従順に従い、最新技術を自ら教えてくれる。お陰で苦労せずに我がフランスは第三世代IS“グロワール”は極秘裏に開発を進めることが出来ました。実戦配備にはもう少し時間が掛かりますが。」

 

それを聞くと大統領は上機嫌な表情で笑みを浮かべる。

 

「計画には残念ながらISが必要だ。だが米国からそれは供給される。」

 

「はい。」

 

「しかし、イギリス・ドイツ連中の馬鹿共はこの計画の偉大さに気が付かない。」

 

呆れたような顔で大統領は言った。

話を戻して計画の進捗状況を聞く。

 

「海軍は準備しているのか?」

 

「将兵には大規模な演習だと通達しています。抜かりはありません。」

 

「そうか。先日アメリカのターナー大統領と会談で計画の承認を得た、あとは何時動くかだ。」

 

すると統合参謀総長の携帯電話が鳴る。

 

「出ていいぞ。」

 

「失礼します、大統領。」

 

統合参謀総長はいくつか言葉を交わすと携帯電話を閉じて大統領に報告した。

 

「ハワイでアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代ISが暴走した模様です。」

 

 




第三十八話目です。

フランス第三世代IS“グロワール”の登場。
しかし作者自身、その兵器の装備・性能を思いつかない!
紫電と被っちゃう!ワンオフアビリティーはなに!

なにかいい案は無いですか?

ではまた今度。
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