海面を五機のISが白波を立てながらシルバリオ・ゴスペルに進む。
彼女達は焦っていた。
更新される衛星写真をバイザーで見る限り、国防軍の作戦は破綻。
五十嵐が一人で有人島から引き離して戦闘をしているが、彼が戦闘に耐えられない状態なのは彼女たちも知っていた。
《目標まで10キロ!》
ボーデヴィッヒは逐次距離を報告してくる。
「わかった...!?」
篠ノ之はハイパーセンサーで目標を拡大した時、海面に落下する人を捉えた。
「裕也!」
五十嵐を助ける為に“紅椿”の展開装甲のすべてを推進力に回す。
《シャルロットは箒の援護を!》
《うん、わかった!》
オルコット・ボーデヴィッヒ・凰が即座に攻撃を仕掛けて引き付ける。
その間に篠ノ之は落下してくる五十嵐の体を受け止めた。
「裕也!」
ISスーツは左脇腹から右胸にかけて切り裂かれ、一筋の刀傷から流血する。
また治り切っていなかった銃創が開いて、紅椿の装甲を濡らす。
入学式の日に襲われたときと同じように重症だった。
「お前はいつもこれだ...裕也。」
おもわず篠ノ之は呟く。
《箒!すぐに近くの艦艇まで運ぼうよ》
「わかった!」
デュノアの提案で、二人は出せる限りのスピードで国防海軍の艦艇に向かう。
国防海軍の艦隊の位置は常に知らされていた。
そこに行けば五十嵐の治療をする事が出来ると考えた。
猛スピードで艦隊に近づく。
輪形陣の外側を形成する駆逐艦に差し掛かると、艦から発光信号が送られる。
《『戦艦“信濃”に受け入れる用意あり』だって。》
「戦艦信濃に向かおう。」
艦隊の間を抜けて、輪形陣の中央にある巨大な戦艦を見つける。
担架などを持った数人の乗組員が待っている後部飛行甲板にアプローチしてゆっくりと着艦する。
「走れ!早く運ぶぞ!」
着艦すると控えていた水兵達が駆け寄ってくる。
「ん?」
五十嵐の手が篠ノ之の頬に触れた。
それはひどく冷たかった。
「篠ノ之...絶対に...倒せ...」
「わかった、もう喋るな。」
五十嵐を担架に移すとすぐにシルバリオ・ゴスペルの迎撃に飛び上がった。
医務室に運ばれる最中、五十嵐は気を失った。
―一年前/朝鮮半島・二〇九高地ー
韓国軍の総攻撃が始まって一週間が経った。
塹壕の周囲には日韓両軍の将兵の死体で埋まり、夏の暑さで死体はすぐに腐り死臭が立ち込める。
戦闘服を着た五十嵐大尉は戦闘の終わった塹壕を歩いていた。
この日の攻撃で第一線塹壕は突破され、塹壕内は両軍の兵士の死体で一杯になっていた。
死体を避けながら歩いていると突然右足首を掴まれた。
掴んだ兵士の姿を見て五十嵐は驚いた。
迫撃砲か手榴弾にやられたのか、右腕を残して左腕・両足を失っている。
それでも彼は生きていた。
「大尉...大尉...大尉...」
その兵士は呻くように五十嵐大尉に助けてもらえるよう懇願していた。
だが彼を助ける為の医薬品はとっくのとうに無くなり、どうすることも出来なかった。
無言で五十嵐大尉はホルスターから9mm拳銃を抜く。
このまま生かしていても苦しむだけだ、苦しみから解放するには介錯をするしかなかった。
しかし同じ徴用兵であり味方の兵士を殺すのは抵抗があった。
「すまない。」
五十嵐は顔を背けると引き金を引いた。
一発の乾いた銃声が陣地に響き、金色に輝く空薬莢が土の上に落ちる。
その兵士は頭を撃ち抜かれ、脳漿があたりに散らばった。
―現在/IS学園医療局病室―
五十嵐は目を覚ました。
あたりを見渡すと白い壁に白い床、そしてベットに薬品の匂い。
見覚えのあるIS学園医療局の病室だった。
室内は暗く、窓を見ると月が高く上がり真夜中であることが分かった。
あの戦闘で切られてからどのくらい寝ていたのかは分からない。
その間、あの戦争での酷い記憶を駆け巡った。
切られた上半身の痛みを堪えながら起き上がる。
近くにある机の上には制服と共にホルスターに収められた拳銃があった。
痛みを堪えて腕を伸ばしてそれを掴むと手元において眺める。
もうあの時の記憶を思い出すのはもう嫌であった。
突然現われて五十嵐を襲う。
そして眠らせもせず、ただ自分に恐怖感を与える。
もうそんな生活が嫌だった。
どうせ死ぬのなら。
「一発撃てば...楽になれるか。」
ホルスターから9mm拳銃を抜くと弾倉を抜く。
一杯に銃弾が装填されているのを確認すると、挿入してスライドを引いて装填する。
そして自らのこめかみに銃口を当て、引き金を引いた。
パンッ!
銃声が医療局の建物全体に響いた。
第四十三話目です。
五十嵐裕也の異常とは。
そしてライトノベルではおなじみの夏休みイベント?
原作キャラが原作通りの事をする(予定)の中、五十嵐は苦難に立ち向かう。
そして漆原首相も変化する国際情勢に悩まされる。
昨日、高校の卒業生と集まって遠くの進路先に行く同級生を見送る目的で集まった。
久しぶりに集まった同級生とバイキングで食べながら楽しく過ごした。
最後に司会役の同級生が二次会について語ろうとしたが、皆がお喋りで聞かなかった。
まあ学校では何時も通りの事だったが。
さっさと済ませようと自分が「おい!」と低い声で言った。
そのせいでバイキングに来ていた他の高校の集まりまで沈めてしまった。
すみません。
その後二次会のボーリングに行って、久しぶりに盛り上がった。
精一杯頑張ったせいで、今も脚や腕が筋肉痛で昨日は眠れなかった。
痛い。