八月に入って数日が過ぎたある日。
五十嵐はラウラ・ボーデヴィッヒに付き添われて都内の一等地にある公園の日韓戦争戦没者記念碑にいた。
二人は所属する日本国防海軍・ドイツ連邦陸軍の制服を着て訪れていた。
この公園には対馬紛争・ベトナム戦争・湾岸戦争などで戦死した国防軍戦没者を追悼する戦争祈念施設がある。
その中で日韓戦争戦没者記念碑は公園の置くに設置されていた。
大きな花崗岩で作られた壁には戦死した陸海空国防軍の戦没者の名前が刻まれ、徴用兵の名前もあった。
壁の下には何束かの花束が置かれ戦没者の遺族が訪れているのが分かった。
壁面を見ながら進むと五十嵐は壁の中ほどで止まる。
『荒井亮太』
二〇九高地で再会して目の前で戦死した友人の名前を見つける。
五十嵐は地面に花束を供える。
「ここの列に刻まれているのは二〇九高地で戦った兵士だ。」
壁の名前は亡くなった順番に刻まれている。
二〇九高地での数日間、多くの兵士が二〇九高地で戦死したので名前が集中した。
ボーデヴィッヒは目を閉じて壁にお辞儀をする。
「お前は二〇九高地の兵士と共に戦ったんだよな?」
彼女は五十嵐に聞くと彼は頷く。
「戦闘機から脱出した際に二〇九高地に陣取っていた第四海兵師団第二連隊に助けられたんだ。」
そうボーデヴィッヒに語ると五十嵐は親友の名前に触れると指でなぞり始めた。
「荒井は東部徴用兵教育団時代の同期で、色んなことで競っていた。」
五十嵐は荒井の後に続く名前をなぞりながら小声で呼んでいく。
それを続けていると五十嵐の頭の中で二〇九高地の記憶が自らの意思で思い出されていく。
再会・戦闘・交流そして最後を思い出した。
「二〇九高地の戦闘が終結したその日、俺は戦死報告書を書かねばならなかった。」
五十嵐の言葉をボーデヴィッヒは黙って聞く。
「荒井や加畑さんが戦死して二〇九高地唯一生き残った士官が俺だけになった。彼らの戦死報告書を書く仕事が俺に与えられて、一人ずつの認識票が入ったダンボールを置かれた。一人ずつ名前を書類に書いた。」
その時の感情を思い出して五十嵐は声を震わせながら語る。
「あそこでの二週間、多くの兵士と過ごした。その記憶が一人ひとり蘇るんだ、けれど俺は...俺はあいつらを二〇九高地に置き去りにしてのうのうと暮らしている。俺は毎日自分に問いただした、『あいつらを置き去りにして生きてていいのか』と。あいつらは死んで、俺は生き残った。あいつらは俺を卑怯者だと思っているんじゃないか?...だから...だから死のうとした...謝る為に。」
「...それは違うのでは?」
ボーデヴィッヒはボソッと答える。
五十嵐はそれを聞いて振り返る。
「少なくとも卑怯者だと思っていないだろう...私が言うのもおかしいが...もしも私が彼の地で共に戦った兵士ならお前が生きている事を喜んでいるだろう。」
「なぜそう思うんだ?」
「自分達が戦った事を覚えている友人が生きていれば、自分達の存在を忘れず語り続けてくれる。そして自分達が命がけで護った国がどうなったかを代わりに見てくれるから...私はそう思う。」
違う国の軍人と言えども思うことは同じだった。
五十嵐はボーデヴィッヒの言葉を聞き、荒井が死ぬ間際に自分に言った言葉を思い出した。
『俺達が...ここで死んだこと..が..無駄では...なかったことを...お前が生きて見てくれ!俺達の存在は日本国のためになったのか...を..』
今まで彼の言葉を忘れていた事を恥じて、五十嵐は地面に伏せる。
ボーデヴィッヒは驚き駆け寄って、顔を覗き込む。
彼は涙を流して謝り続けた。
「すまない...すまない!俺はお前の言葉を忘れていた!」
五十嵐は壁に何度も頭を地面に擦るほどの土下座をする。
ボーデヴィッヒは離れて見守ることしか出来なかった。
十分程が経って五十嵐は立ち上がると後ろに控えるボーデヴィッヒに言った。
「ボーデヴィッヒ、俺が生きる意味を見出せたかもしれない。」
「そうか。」
ボーデヴィッヒはただそう応えた。
「彼らの最期を語り続けることだ。」
彼が決意を決めるとポケットに入っている携帯が震える。
すぐさま出ると相手は副担任の山田真耶先生だった。
《五十嵐くんですか!?》
携帯越しに大きな声で言われ、携帯を一瞬耳から遠ざける。
とても焦っていることがわかる。
「そうですが、何かありました?」
《オルコットさんと凰さんがウォーターワールド内でISを起動して施設を破壊、国家親衛隊に身柄を確保されました!》
五十嵐は事情を知って頭を抱える。
「なんでそんな事を?」
《国家親衛隊の話だと景品を巡っての争いだそうで...すみませんが二人を迎えに行ってもらえませんか?》
「...わかりました。」
五十嵐は携帯を閉じると深い溜息をついた。
「どうしたんだ、五十嵐?」
その姿にボーデヴィッヒは首を傾げながら聞いてきた。
「オルコットと凰が馬鹿をやって国家親衛隊に世話になっているらしい。」
「あの二人が一緒だったら厄介ごとを起こすと私は前々から思っていた。」
「とにかくウォーターワールドというところに行くぞ。」
二人は公園近くの駐車場に駐車している公用車に乗り込むと、ボーデヴィッヒの運転でエンジンを始動させる。
少し時間が経つとラジオ放送が車内に流れ、ある重大な事件を知ることになる。
第四十七話です
④近況―大学での部活動
自分はアーチェリーを中高六年間やっていました。大学でも続けようと思ったらアーチェリー部が別キャンパスだった事で、しかも活動日に講義が入って活動できないのが分かりました。そこで自分は弓道部かワンダーフォーゲル部か二択に絞り考えた結果、ワンダーフォーゲル部にしました。弓道部は週四での活動に装備一式は親の金で買う、時間も無いし家にそのような余裕は無く弓道部は諦めました。一方で週2で体を鍛え旅行も出来て結構高い山に登るのに憧れてワンダーフォーゲル部にしました。(ちなみに山岳部は世界の山々に登るのが目的で経験者のみが入れるサークルで昔に死人が出たようですので選択から外しました。)サークルは?いいえ、本気でやりたいので体育会の部活に入りました。お陰で土曜日も部活があります。明日は新入生歓迎として高尾山に行きます、今から楽しみです。
次話に続く