学園の守護者   作:新稲結城

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第四十九話 夏祭り

八月のお盆週のある日、五十嵐は織斑と共に篠ノ之神社に来ていた。

鳥居の傍で織斑と別れると、人混みを避けて鳥居の柱に寄りかかる。

この神社は織斑の幼馴染、篠ノ之箒の実家だ。

だが白騎士事件以後に家族は日本政府の保護下に置かれ、家族は離れ離れになっている。

彼女もまたISの被害者なのかもしれない。

 

「おー、五十嵐。久しぶり~」

 

人込みから腑抜けた聞き覚えのある声が聞こえる。

五十嵐は近づいて声の主の腹に一発殴る。

 

「五反田、軍を辞めて腑抜けてるんじゃないか。」

 

「く~痛いぜ!」

 

その声は五反田だった。

軍を去ってから二週間、久しぶりに顔を合わせようと篠ノ之神社の夏祭りに二人は来たのだ。

 

「お前の私服姿は新鮮だな!」

 

この日、五十嵐は何時もの海軍の制服ではなくデュノアが選んだ服装だった。

 

「まあな、町じゃあ目立ってしょうがないからさ。」

 

「そりゃあそうだな!とにかく何かかって食べながら話そう。」

 

「そうだな。」

 

二人は参道の人込みを掻き分けながら進む。

五十嵐は人混みで狭い参道に鬱陶しく思ったが、来ている人々の顔を見ておかしく感じた。

多くの人が窮屈な参道を笑顔で進む、だれも嫌な顔をせず逆に笑い声で溢れる。

なぜこんな人が多くて窮屈な場所にいるのに楽しめるの分からなかった。

だが自然と祭りの雰囲気に呑まれ、だんだんと気分が高揚しているように思えた。

二人は汗を流しながらも屋台でプラスチックの容器に入った焼きそばを買うと近くに空いていたベンチに座る。

 

「そう言えばお前の妹は来ているのか?」

 

五十嵐は帰還時に弾を迎えに来た妹の存在をふと思い出して聞いた。

 

「今日は中学校の友人と回っているらしい。なんでも学園祭のアイディアを探すんだとさ。」

 

「そう言えばIS学園も学園祭があったな。そんなに学園祭は重要なものなのか?」

 

「そりゃあ年に一度しかない行事だからじゃないのか?それに蘭は生徒会長というのをしているらしい。」

 

「生徒会長?」

 

「なんでも200人ぐらいの生徒を束ねる指導者らしい。」

 

「すごいな、十四歳ぐらいで一個中隊程を率いているのか。」

 

二人は焼きそばを食べながら近況を語り合う。

 

「お前の方は大丈夫なのか?」

 

「なんとか症状は治まった、時々あの時を思い出すが。」

 

「まあいいんじゃね、簡単に治るようなものではないしな。時間を掛ければ完治するだろう。」

 

五十嵐は食べ終わって空となったプラスチックの容器を傍に置く。

 

「そうだな、時間も経てば治るだろう。だけど...これから先俺は何をすればいい?」

 

「は?」

 

唐突に五十嵐は五反田に聞く。

 

「突然なんだ。」

 

「俺達は軍務を離れて民間人として生きていくことになる。けれど民間人となって何をすればいいのか分からない。最低でもあと二年と六ヶ月はIS学園で過ごすだろう。けれどその後はどうすればいいのだろうか。五反田、お前は決めたのか?」

 

五十嵐は今まで自分を縛っていた規則が一気に取り払われ自由になったが、どのように行動すればいいのか分からない。

逆に自由というのに恐怖を感じ始めていた。

 

「もう決めたぜ。」

 

五反田は自信を持って答える。

 

「親父の店を継ぐ。まだどうすればいいか分からないがとにかく勉強をして、調理師免許を取る。それで定食屋を継ぐさ。」

 

「そうか。お前は継ぐものがあっていいな。」

 

「でもお前だって良くも悪くもIS操縦者だろ。」

 

「そうだが?」

 

五反田の言葉に反応する。

 

「世界でたった二人しかいない男性操縦者、これだけで他の者には無い能力を持っているんだぞ。」

 

「ああ、だがもう人を殺すのは...」

 

「五十嵐、俺が言いたいのはそうじゃない。元々ISは何の為に開発された?」

 

五十嵐は頭を抱え、目を閉じて思い出す。

 

「たしか...『宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツ。』だったか?」

 

「そうだ。本来は平和利用が目的だった、宇宙と言う未知の領域を冒険するのが。」

 

「...お前の言っている事がよく分からない。」

 

「とにかく、宇宙開発に協力するのはどうだ?歴史に残る偉業を達成するとか夢がある話だろ?」

 

五反田の言葉は五十嵐の興味を引く話だった。

けれど現実味がなく、納得できるような話ではなかった。

それを感じ取ったのか五反田がアドバイスを与える。

 

「まああと二年と六ヶ月もあるんだ、それまでじっくりと考えればいい。他人によらずに自分で考えるんだ納得するまで。お前だって帰りを待つ親がいるはずだ、親に相談するのもいいかもしれない。」

 

「...そうだな。」

 

あの戦争を指導した母親と打ち解けあうのは五十嵐には考えられなかった。

だが様々な情報を五十嵐は調べ上げて、あの戦争への自分の考えを持ち始めた。

心の中では心開いてもいいと思い始めていた。

すると迫撃砲の発射音と同じような音が聞こえ五十嵐は驚く。

 

「なに驚いてるんだ?ただの花火だ。」

 

「花火?」

 

夜空を見上げると一筋の光が真っ直ぐと空に上がり消えたと思うと破裂して煌びやかに光る。

次々と花火が打ち上げられ、空に幾つもの花が開く。

それは自分達の新たな門出を祝っているように感じられた。




第四十九話です。

⑥前置き

出来れば原作キャラを死亡ENDにしたくはありませんでしたが、ストーリー上二~三人必要な感じです(ただし主要キャラ六人は絶対に生存ENDです)。それで原作キャラを死亡ENDにするので注意&ご了承下さい。
最後に誤字脱字、改善点がありましたら教えて下さい。

ではまた今度。
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