学園の守護者   作:新稲結城

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第五話 戦争犯罪

釜山への空挺作戦が成功してから一ヶ月が経った七月末。

日本国防軍は抵抗もなく進撃を続け七月中旬に首都であるソウルを占領することに成功したが、韓国軍は主力部隊を朝鮮半島北部に移動させていた。

政府機能も北部の平壌に移され、残ったのは多くの瓦礫で埋まったソウルの町であった。

ソウル占領後も進撃を続けたが、当初より速い進撃スピードで進軍した為に補給線が伸び切り、また占領地域各地で韓国軍兵士と住民によるゲリラ戦で補給線が寸断されるようになった。

そのために北緯三八度線で進撃を停止、一部の戦力を引き抜いてゲリラ掃討作戦を行った。

国防陸軍の要請を受け、国防海軍第一航空団は群山空港に展開して近接航空支援を行っているある日のことだった。

陸軍の要請で五十嵐少尉と五反田少尉は愛機のF/A-3A『流星』戦闘攻撃機に飛び乗り、エレメントリーダーである大尉の機体に続いて離陸した。

突然の緊急発進で大慌てで乗り込んだために、支援の内容などの詳細を聞かされていなかった。

だが、五十嵐少尉は乗り込む際に一瞬左翼のハードポイントを見て疑問に思った。

ハードポイントには〇七式空対空誘導弾と共に白い増槽のような物がふたつ吊り下がっていたが、すぐに何か分かった。

ナパームと呼ばれる爆弾の一種とされている兵器だ。

 

「こちらグローリー10からグローリー4へ。今回の任務はどのような任務ですか?そしてなぜナパームが搭載されているのですか?」

 

上官に対して五十嵐は無線で今回の任務と搭載されているナパームについて聞く。

すると無線越しに怒声が響いた。

 

《こちらグローリー4!ナパームではない、“特殊爆弾”だ!正しい名称を使え!》

 

「...了解。」

 

その後に任務についての詳細を説明された。

任務は陸軍が発見したゲリラの拠点となっている村に対し、“特殊爆弾”を用いて空爆して破壊・殲滅することであった。

山間部を数分間飛行すると開けた土地が見え、畑が一面に広がる先に集落の様なものがあった。

 

《グローリー10。あれが目標だ、攻撃しろ。》

 

「了解。」

 

HMDを対地攻撃モードへの変更をするとエンジン出力を絞り、低空で接近する。

目標との距離が近かった為に一度確認の為に上空を通過して旋回後に攻撃を仕掛けることにした。

低速で接近して機体を傾けて集落を見ると古い家屋が立ち並び村人達がこちらを見上げていた。

洗濯を干していた者や収穫した農作物を纏める者、そして無邪気な笑顔を見せて五十嵐に手を振る子供達の姿が見えた。

通過すると五反田が思わず言葉を漏らす。

 

「見たか?子供達が手を振るのを、彼等を攻撃するのか?」

 

「信じられないが、この集落が目標らしい。」

 

五反田は思わず無線でエレメントリーダーを呼び出す。

 

「グローリー4へ。目標の再確認を願う!」

 

《グローリー10!目標は貴様が上空を通った集落だ!早く攻撃しろ!》

 

五十嵐は操縦桿を握り締め、旋回を始める。

この間にも前線で戦っている徴用兵の仲間達は韓国軍と戦い続けている。

そんな仲間達の為にも補給路を確保させ、少しでも前線に食料・弾薬を届けたい。

その為には目の前にあるゲリラの拠点とされる集落を空爆しなければならない。

仲間の為にも、そして日本国の為にも一個でも多くの拠点を破壊しなければならない。

徴用兵である俺達は常に上官の命令に従い、日本国の為に戦い死に行くことが存在理由。

五十嵐は自分にこう言い聞かせる。

旋回を終え低速低空で村落に近づき、HMDが示した最適の投下地点まで真っ直ぐ行く。

ゲリラ兵というのは民間人に隠れて背後から攻撃する卑怯者。

民間人の中からゲリラ兵を見分けることは困難であり、見分けている間にも仲間達は死んでいる。

ゲリラ兵を匿っている村人が悪いんだ、これは正当な攻撃手段なんだ。

自らにこう言い聞かせている間に投下地点に到達した。

 

「...俺は悪くない...投下。」

 

最後に小声で言うと同時にナパーム爆弾を投下した。

投下した二発のナパームは放物線描いて、村の中心部に落ちた。

激しい炎が村を包み、家屋は一瞬にして焼けて村の体も燃え、苦しみながら死んでいった。

燃えながら走って行き水田に飛び込む村人の姿を五十嵐と五反田は見せ付けられた。

自らの犯した過ちに何も言えずにただただ眺めることしか出来ない。

その惨状の前でエレメントリーダーは更なる攻撃を命じた。

再び旋回して残ったナパーム爆弾を二発を連続投下して村を完全に焼き尽くした。

その時に必死に逃げる親子の姿を見つけた。

 

《グローリー10、ゲリラの残党を掃討しろ。》

 

エレメントリーダーは五十嵐に目の前を必死で逃げる親子を殺せと命令された。

だがどのように見ても目の前にいる母と幼い子はゲリラには見えず、武器を携行していない。

 

「ゲリラが見当たりません!」

 

五十嵐は自らが思った事をただ伝えた。

目の前の親子を見逃す事で少しは罪滅ぼしになるのならと思っての命令拒否であった。

 

「五十嵐!」

 

五反田が叫び、再び五十嵐は親子を見る。

だが現実は残酷であった。

草むらに隠れていた陸軍兵が現れて親子を目の前で射殺した。

この任務で起きた出来事を思い出し、目に涙を浮かべながら群山空港に降り立つと先に降りていたエレメントリーダーが五十嵐の事を殴りつけた。

 

「この根性無しが!」

 

堅いコンクリートの上に倒れた五十嵐を大尉はさらに蹴り続けた。

 

「お前は海軍の面汚しだ!命令を最後まで完遂できない馬鹿だ!」

 

「...面汚し。」

 

「そうだ!お前は面汚しだ!お前が情なんか見せるから日本は舐められるんだ!」

 

さらに大尉は蹴り続ける。

 

「徴用兵はな!ただ上官の命令に!従えう!ただの兵士だ!こんな事が出来ない兵士は!いらん!」

 

大尉は気が済むまで一時間以上罵倒し、蹴り続けた。

その夜、五十嵐は自らの立場を再確認した。

自分はただの兵士、日本の為に戦う兵士に心はいらない。

今回の“失敗”は日本を体面を汚す事になった、自分に心があったからだ。

情なんかなければ、流星の25mm機関砲を一連射浴びせて殺せた。

徴用兵は日本国の為に上官の言う通りに従い、日本国の為に戦い死に行く兵士であり心は必要ない。

そして五十嵐は心という物を捨てることを決意した。

数日が立ったある日、五十嵐がナパームを投下した集落はゲリラの拠点ではなく、陸軍への協力を拒んだ見せしめとしての攻撃だったと知ったが彼は気に留めることはなかった。

そしてあの任務から同じような任務を淡々とこなすようになった。




第五話目です。
ここ最近は高校最後の冬休みに近づき、残すは終業式だけという時期になりました。
そういえば政府は防衛大綱と中期防衛力整備計画が発表されましたね。
新聞で見た別表を見ると陸海空の大きな戦力増強が見られますが、少し心配する内容でしたね。
特に中期防衛力整備計画によると陸自では最近発表された機動戦闘車を五年で99両、水陸両用車を52両、そしてオスプレイを17機などを五年で整備するのは体験したこともない配備スピードになると思いました。
また特に海自も護衛艦五隻と潜水艦五隻と建造ラッシュになるのは間違えない。
今まで埋蔵金やら騒いでいた政府の予算にこんな余裕があるのは驚きでした。
また海自では今でも艦艇に乗り込む乗組員の定員割れが起きている状態でさらに新造艦を作っても乗る人はいるのだろうか。
急に募集人員を増やしても高い錬度を維持できるのか心配だ。
ではここでさようなら。
すぐにでももう一話投稿する予定です。お楽しみに。
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