学園の守護者   作:新稲結城

50 / 86
※誤字脱字があった際、報告お願いします。


第五十話 クーデター

夏祭りの三日後、五十嵐は公用車の後部座席に乗り込んだ。

 

「...なんで...なんで今日に限って呼び出されるのよ...」

 

乗り込むと凰鈴音が隣席で落胆した表情で嘆いていた。

話を聞くと織斑の家に遊びに行こうとしたが、突然本国から呼び出しを受けて一時帰国することになったらしい。

五十嵐は護衛兼見送り要員として付き添わなければならなかった。

残念な事に今日は織斑を含めた五人は遊びに行っているらしい。

 

「運が悪かったとしかいえないな...」

 

凰が普段見せないほどに意気消沈しているのを見て五十嵐はかける言葉も出なかった。

助手席には中国候補生管理官の楊麗々が乗り込み、警備車輌二両に挟まれて車列は学園を出発する。

 

「見送りにも来ないなんて...絶対に後悔させるわ...」

 

空港に向かう車内で凰の怒りや悔しさが混じったような泣き言を永遠と聞かされる。

織斑といえども突然の呼び出しに対応が出来るわけが無いのだが、凰が帰国した際には痛い目を見るのだろうと思う。

 

「しょうがないだろう、代表候補生は国の命令に従わなければならない。特に専用機に関する事は。」

 

「分かってるよ!...でも一夏と一緒に...」

 

何時ものように彼女は恥らって後に続く言葉を小声で言う。

五十嵐はその態度に苛立っていた。

彼は数ヶ月、織斑と取り囲む女子達の行動を見て彼女達が織斑に対して特別な感情を持っていることに気付いた。

どういう感情か五十嵐自身は分からない。

徴用兵教育団時代や国防軍では学ぶことの無かった感情。

それは尊敬や敬いとは違うまた別な感情だと言うことは気付いた。

だが彼女達の曖昧な態度と織斑の鈍感さで双方ともに結ばれず、結果的には自分達を巻き込む。

二週間前にオルコットと凰が起こした“事故”のようにいつも巻き込まれる。

それに五十嵐はうんざりしていた。

 

「その態度が気に入らない、言いたい事があったら織斑に直接大きな声で伝えろ!」

 

「ふぇ!」

 

凰は突然五十嵐が強い口調で言ったのに驚いて変な声を出してしまう。

 

「そんな態度だから織斑との関係が発展しないんじゃないか?」

 

「と、突然何言ってるのよ五十嵐!」

 

酷く狼狽しているが、そのまま続ける。

 

「帰国した日には俺が織斑を連れて行ってやる、他の奴らはなしで。帰国したら直接言え、自分の想いを。」

 

「そ、そんな事...突然言われても...」

 

「覚悟を決めろ、ウォーターワールドの件みたいに俺達を巻き込まないで欲しい。」

 

公用車は学園島の近くにある羽田国際空港のプライベートジェット用施設に入り、中国政府が用意したビジネスジェットの横に乗り付ける。

五十嵐は降りると凰の座る方に回りドアを開く。

彼女は公用車を降りるとそのままタラップを登りビジネスジェットに乗ろうとする。

タラップを登り終えると凰は振り返って五十嵐に大声で叫んだ。

 

「分かったわよ!帰国したら一夏に“好きだ”って伝えてやる!」

 

そう言って凰はビジネスジェットに乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

―六時間後/IS学園食堂―

 

 

 

 

 

 

 

「よっ、五十嵐。隣いいか?」

 

「ああ。」

 

織斑は隣に座ると五十嵐は凰の見送りについて話した。

 

「お前がいないせいで車内で凰に文句を聞かされたよ。」

 

「すまん、でも突然すぎるだろう。昨夜に突然帰還命令なんて。」

 

「まあな。そうだ凰の帰国する日に一緒に迎えに行くぞ。」

 

「ああ、いいけど。」

 

織斑からあっさりと約束を取り付ける。

すると食堂にある空中投影ディスプレイに映っていたバラエティ番組が突然中断して、臨時ニュースに切り替わった。

 

「ここでニュースをお伝えします。」

 

男性アナウンサーの緊迫した声が食堂に流れ、その場にいた生徒達が食い入るように見つめる。

 

「政府の発表によりますと中国で軍事クーデターが発生したとの情報が入りました。情報によりますと汪総書記は処刑され、北京にある在中華人民国大使館が襲撃されたとの情報がありました。繰り返しお伝えします。」

 

生徒達は突然の事ですぐに理解する事が出来ず、アナウンサーの繰り返される言葉を数回聞いてやっと何が起きたか理解できた。

 

「今、中華人民共和国政府の会見の模様が海外メディアを通して生中継されています。」

 

映像が切り替わり、そこには一人の初老の男性が演説をしていた。

 

『我々第十九期中央政治局常務委員会は第十八期中央政治局常務委員会の漢奸共を一掃することに成功した。現在国内に小日本に繋がっている漢奸を摘発している。我々の目的は中華人民共和国を卑怯な小日本から守り、アジアの人民解放と小日本の軍国主義を徹底的に打倒する。』

 

「今映像に映ったのは処刑された汪総書記に変わり中国共産党中央委員会総書記に就任した朱炳煥と情報が入っています。」

 

織斑は臨時ニュースを見ながら呟いた。

 

「何が起こるんだ?」

 

「わからない、ただひとつ言える事はまた戦争が始まるかもしれない。」

 

五十嵐は織斑にそう言い返した。




第五十話です。

やっとゴールデンウィークですね。
うちの大学は29日も授業をしてやっと今日からゴールデンウィークです。
出来ればもう一話ぐらい投稿したいな~でもドイツ語の勉強しなければ。
あとバイトも探さないと。

ここから先はとにかくきな臭くなっていきますね。
自分は日常を描くのが苦手なことを小説を書いていて分かりましたよ。

ではまた今度。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。