学園の守護者   作:新稲結城

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第五十二話 将来

―8月20日―

 

中華人民共和国はフランス共和国・琉球共和国と軍事同盟を締結。

イギリス連合王国・ドイツ連邦・日本国は三国の軍事同盟に対して強く非難、対抗する同盟構築を目指す。

日本大使館襲撃により事実上中国と日本の国交は断絶。

 

―8月21日-

 

中華人民共和国は国名を中華連邦に変更。

中華連邦は東南アジア各国に対して連邦への編入を要求。

ミャンマー連邦共和国・ラオス人民民主共和国は中華連邦への編入を承認。

ベトナム社会主義共和国・フィリピン共和国は中華連邦への編入を拒否。

 

―8月22日-

 

中華連邦は編入を拒否した二ヶ国と中華民国に対して最後通牒を送る、期限は8月25日午前零時まで。

ベトナム社会主義共和国・フィリピン共和国・中華民国は日本国とアメリカ合衆国に軍事的支援を求める。

アメリカ合衆国は三ヶ国の要求を拒否、中立を宣言。

フランス共和国はアメリカ合衆国から購入した二隻のニミッツ級航空母艦を中心とする機動艦隊が実戦レベルに達したと発表。

 

-8月23日―

 

琉球共和国は中華民国に向かう商船の領海内の通過を禁止、海上封鎖を行う。

フランス共和国を中心にポルトガル共和国・ポーランド共和国・スペイン・イタリア共和国などを加えたヨーロッパ連盟を設立。

ヨーロッパ連盟に対してイギリス連合王国・ドイツ連邦を中心にオーストラリア共和国・ハンガリー共和国・チェコ共和国・スロバキア共和国などで構成する対仏同盟が結成される。

 

-8月24日-

 

中華民国に向かう中華民国船籍タンカーが琉球共和国海上自衛隊の停戦を無視、海自の駆逐艦により撃沈させられる。

中華民国、琉球共和国に宣戦布告。

中華民国の琉球共和国に対する宣戦布告に対してフランス共和国・中華連邦は自動参戦。

イギリス連合王国・ドイツ連邦・日本国は中華連邦・フランス共和国・琉球共和国の軍事行動に対して非難する。

 

-8月25日午前零時-

 

中華連邦はベトナム社会主義共和国・フィリピン共和国に対して宣戦布告。

 

 

 

 

 

 

 

-8月25日午前七時/IS学園一年生寮食-

 

 

 

 

 

 

 

中国で軍事クーデターが発生して五日目の朝。

中国国内の映像が報道機関やネット上の動画サイトを介して流れるようになった。

食堂に集まった生徒達は食堂にある空中投影ディスプレイに映し出される映像に釘付けになる。

日の丸が掲げられた日本大使館は炎に包まれ、街灯には大使館員らしき男性が首に縄をかけられ吊り下げられていた。

映像を見る限り目玉をくりぬかれ上半身は蜂の巣のように突き刺され、酷い殺され方をされているのが分かった。

さらに映像は切り替わるとネット上に投稿された動画が流れる。

そこには女性の裸体で陰部を露出したまま射殺された死体が積み上げられた山が映し出された。

それを見ていた一部の生徒が気分を害して退席し、多くの生徒は人間の所業とは思えない行為に何も言えなかった。

さらに映像が続き鼻に針金を通された子供や片腕を切られた老婆、腹部を銃剣で刺された妊婦等の死体が続く。

 

「なんて酷いことを...」

 

篠ノ之は一言言うのが精一杯だった。

同じ席に座る織斑・オルコット・シャルロット・ボーデヴィッヒは目の前にある朝食を食べることが出来なかった。

篠ノ之も同様だった、このような残虐なシーンを見せられれば食欲を失せるのは当然であった。

だが隣に座る五十嵐は残虐のシーンが映し出されるニュースを見ながら次々と目の前にあるパンを頬張る。

 

「五十嵐...こんなのを見てよく食えるな...」

 

篠ノ之は五十嵐にそう言うと彼は自虐的な言葉で返した。

 

「こんなことは戦場では普通さ...村人を焼き払った後、飯を食べるのが俺達の日常だったから。」

 

五十嵐自身は冗談で言ったが篠ノ之は真に受けてしまう。

 

「す、すまない! 嫌味で言った訳では」

 

「...すまん、気にしなくていい。」

 

篠ノ之に謝ると視線を前に座る織斑に向ける。

彼の心配に堪えないような顔をしていた。

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫といえるか...幼馴染があの画面の向こうにいるんだぞ!」

 

織斑は五十嵐の言葉に触発されて不安が爆発する。

立ち上がって画面に指差しながら叫ぶ。

 

「凰なら大丈夫だ。」

 

「なぜ大丈夫って言えるんだ?」

 

織斑は座りながら怒りを含んだ声色で聞く。

 

「凰は国家代表候補生であり中国の第三世代IS“甲龍”を扱える数少ないパイロットだ。そんな人間を簡単には殺せない。」

 

「そうだったらいいけど...」

 

「今は信じるしかない。俺達に出来るのはそれしかない。」

 

一方、五十嵐はある懸念を抱いていた。

中華連邦と戦争になれば日本は対抗する為に我々徴用兵を招集するだろう。

そうなった時、もし戦場で凰と出会ったら“殺せる”のか?

昔の自分だったら殺せただろう、しかし凰は半年間の間毎日のように顔を見合わせた友人である。

考え込んでいると五十嵐の携帯が振るえ、ポケットから取り出す。

 

「はい、五十嵐です。」

 

《五十嵐くん、伝えたいことあるから生徒会室まで来て。》

 

相手は更識会長だった。

 

「了解しました...用事が出来たから俺は先に行く。」

 

五人にそう言うと食器を片付けて生徒会室に向かった。

ノックをして生徒会室内に入室すると更識会長が一人立っていた。

 

「失礼します。会長、お話とは?」

 

「おはよう、五十嵐くん。そこにどうぞ。」

 

更識会長に勧められ椅子に座る。

 

「一応、報告なんだけど。ここ最近国内で不穏な動きがいくつかあるの。」

 

「...テロですか?」

 

会長はゆっくりと頷く。

 

「その可能性は高い。けれど様々な所から不穏な動きがあって情報も錯綜しているわ。」

 

「どのようにですか?」

 

「目標が省庁・軍施設・インフラ施設・IS学園など色々上がっている、また国内で活動しているどのテロ組織も活発に行動しているわ。まあ君の母親からの要請でフランス・中国とつながりがある組織を私が持つ部隊で片っ端から叩いているのが現状なのよ。」

 

「それで私にはどうしろと?」

 

警備部隊を離れ、IS学園の一生徒の身分である俺に出来ることは少ない。

出来ることならやりたいが、場合には断らなければならない。

この判断も徴用兵時代には無かった自由なのだろう。

 

「出来るだけ織斑君に付き添って。」

 

「それだけですか?」

 

意外にも普通の頼みを聞いて拍子抜けをする。

 

「え、そうだけど。もしかしたらテロの標的は織斑君の可能性もあるから護衛を頼みたい。私もそろそろ織斑くんに接触しようと思っていたけれどこの状況じゃあ充分手を回せるかわからない。だからお願いできるかしら?」

 

「...はい。」

 

五十嵐はなぜわざわざ普通の事を携帯ではなく直接口頭で伝えたのだろか疑問に思えた。

更識会長は引き出しからヒップホルスターに収められた一丁の9mm拳銃を取り出して五十嵐に渡す。

 

「会長、他になにか話したい事があるのですか?」

 

そう聞くと会長は扇子を広げて口元を隠しながら微笑んで答えた。

 

「やっぱりわかる?君の将来について相談に乗ろうかと?」

 

扇子には“将来"と書かれていた。

 

「あなたもその話ですか?」

 

「“国民的英雄"の将来は皆気になる事よ。」

 

会長はからかうような言葉をかける。

ここ最近、織斑や織斑千冬先生からも聞かれる話題であった。

なぜそこまで自分に聞いてくるのかわからない。

聞かれる事に対して五十嵐は“まだわからない"と言って逃れていた。

実際に聞かれた時はまだわからなかった。

けれど今日までにはもう決めていた。

 

「俺は決めました。IS学園卒業後は国防軍に再入隊します。」

 

五十嵐は会長にキッパリと言う。

 

「なぜ?」

 

会長は予想していたのかわからないが表情を変えずに聞いてくる。

 

「俺はこのIS学園で一般人と同じような生活を送りました。けれど戦場を経験した私には場違いなような場所でした。俺の居場所はやはり国防軍にしかありません。」

 

毎日平和で友人と楽しく過ごしたり、恋愛に本気になるような生活には五十嵐は馴染まなかった。

常に命をかけた戦場で戦友たちと共に過ごす方が居心地が良いように感じた。

 

「でもお母さんは許さないと思うよ?」

 

「そうかもしれない、いえそうでしょう。母親の仕事が落ち着いたら話をしようと思います。」

 

「説得出来るの?」

 

「はい、昔とは違う。俺は"日本国"ではなく"日本国民"のために働くと言います。」

 

「そう。」

 

会長はなぜか残念そうな声色で言った。

 

「では失礼します。」

 

五十嵐は立ち上がり、踵を返すと生徒会室を出た。




第五十二話です。

なんとか一週間一話のペースに維持してきたなと思ったらこれから投稿間隔が開くかも。
バイトを始めたら週3は必ず仕事しなければならないし(面接零勝二敗)英語購読の翻訳は時間かかるし再来週はドイツ語のテストが二連続。
やっとストーリーの道筋が見えてきたのに。

では、また今度。
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