-8月31日午後7時5分/生徒会室前-
五十嵐は第一強襲隊を率いて建物に入り、三階にある生徒会室を目指す。
暗闇の中、89式小銃の銃身に付属するライトの光を頼りに静かに階を上がる。
三階に着くと後ろに付く隊員に止まるように指示して、廊下を見渡す。
暗く長い廊下の先に唯一光が灯った部屋がある、生徒会室だ。
傍にいた一人の隊員と共に廊下に出て、互いにカバーしながら進む。
そして後数歩で生徒会室に辿り着くところで突然生徒会室が爆発した。
爆風で煽られ床に叩き付けられ、窓ガラスが粉々に砕け散る。
「大尉!怪我は?」
「...それより周辺を捜索しろ!まだ学園から出ていないはずだ。」
五十嵐は駆け寄った隊員に指示し、立ち上がると急いで階段を下りる。
更識は自らの牙城を爆破させた、そこにある組織の情報をひとつ残らず隠滅したのだろう。
これで彼女は何か関わっているのは確実だ、悪い方に。
だが本当に関わっているかは疑わしい、それなら直接聞くしかない。
そのためにも見つけ出さなければならない。
五十嵐はそう思いながら駆け下りた。
更識楯無は林の中で爆発を見届けた。
「よし、行くよ。」
兵士達が爆発に気を取られている間に林を出て静かに素早く近くの物陰に移る。
布仏虚と本音も後ろからついて来る。
更識がいる場所から200m先に学園の地下深くにある施設へ逃げ込もうと考えた。
学園の地下には日本政府にも報告していない施設から繋がる複数の脱出路が作られている。
そこを伝って学園の外に出ようと考えた。
そして外にいるはずの五十嵐と合流し、事情を説明し状況を打開させるしか無いと考えていた。
彼女達はテレビを見ていないために現状を理解出来ていないのでこう考えた。
理事長以下織斑千冬も含めた教師は全員拘束され、轡木十蔵は逮捕された。
唯一信頼できるのは五十嵐裕也しかいなかった。
右往左往する兵士達を尻目に三人は次々と物陰を伝って行きながら地下施設への入口近くに辿り着いた。
「これで外にいける。」
更識は確信して物陰を出た時だった。
頭に銃口を押し付けられ、瞬時に状況を理解した彼女の体は固まる。
「更識楯無、何処へ行く気だ?」
顔を銃口を当てている兵士に向ける。
そこにいたのは完全武装した五十嵐裕也だった。
更識は信頼出来、そして好意を寄せる人物に会える事がで来て感激した。
背後にいる二人もホッとする。
「丁度よかった!私たちは濡れ衣を」
更識は五十嵐に抱きつくような勢いで飛び上がる。
しかし五十嵐は彼女の目の前に89式小銃の銃口を突きつける。
「お前が母を殺したのか。」
恐ろしいほどに声の抑揚が無く、敵を見るような目で睨んでいた。
唐突に五十嵐が突きつけた質問に更識は言葉が出せなかった。
少し間をおいて言葉を出す。
「...どういう事」
「お前が俺の母親を殺したの聞いているんだ!」
答えを欲する五十嵐は苛立ち、恫喝するような口調で言い放つ。
更識は状況を理解して説得しようとする。
「私を信じて聞いて欲しいの、五十嵐くん!これは」
説得しようと口が開いた時、銃声が轟いた。
目の前にいた五十嵐の89式小銃の機関部に銃弾が撃ち込まれる。
さらに右肩と右足に一発ずつ銃弾が撃ち込まれ、彼はその場に崩れ落ちた。
「五十嵐くん!」
更識は五十嵐に近づこうとした時、一人の男が更識の体を捕まえる。
「当主様!一刻も早くここを離れましょう!」
その男は杉崎大尉であった。
慌てて背後を見ると地下施設の入口には第一小隊の面々が展開していた。
「早く!」
押されるようにして連れて行かれるが、抵抗する。
愛する彼を置いて逃げるのは嫌だった。
「待って!五十嵐くんを置いては」
必死に叫ぶが杉崎大尉は聞き入れずに、抵抗する彼女を力任せに引張り連れて行く。
銃声を聞きつけた学園警備隊の隊員や国家親衛隊の隊員が続々と集まり、第一小隊と銃撃戦を繰り広げる。
常に戦闘を潜り抜けていた第一小隊との経験は大きく差があり、次々と兵士達が射殺される。
近づこうとする者は正確無比な銃撃で頭や心臓を撃ち抜かれ、息絶える。
その中には年端の行かぬ少年もいる。
レンガが敷かれた道には幾人の血が血溜まりとなり、校舎の壁に飛び散った血で塗りたくられる。
それでも兵士達は負けじと必死に銃撃を浴びせ第一小隊の隊員に負傷を負わせる。
もう収拾はつかない、双方は今までの関係を絶ち敵同士となった。
「あなたは更識家の当主として組織を再建し、正常な日本を回復させなければなりません!」
「けれど五十嵐くんを」
「もう彼は敵なんです!諦めてください!」
彼女は諦めきれずに彼の名を叫んだが返って来たのは一発の拳銃弾だった。
五十嵐は伏せながら左手で拳銃を操作して更識に向かって一発の銃弾を放ち、彼女の顔を掠めた。
掠り傷から血が滲み出る。
「いつか必ず!地の果てを追いかけてでも絶対に母の敵を取ってやる!」
最後に五十嵐はそう言い放つと力尽き地面に顔を伏せた。
そして更識は杉崎大尉に担がれ、その場を去った。
この事件の翌日、日本は世界にアラスカ条約の破棄と国際IS委員会から脱退。
それをキッカケにドミノのように中華連邦、フランス、イギリス、ドイツ、と続々と離脱した。
最後にアメリカが離脱すると条約と国際機関は自然消滅し、ISの無条約時代に突入した。
各国は裏で計画していた軍事計画をもとにISの戦力化をおこなった。
そして村瀬首相代行は気に食わない者の粛清を始めた。
第五十七話です。
前回忙しくて投稿できないと言いながら投稿してしまいました。
もうストーリーは組み上がっているので、書きたい衝動に駆られてしまう(その分誤字脱字が増えるけど)。
ではまた今度。