八月に入り、国防軍は北緯三八度線の韓国軍防衛線を突破して平壌近郊の防衛線を攻撃していた。
あれから五十嵐少尉は淡々と任務をこなしていくつもの村や町を焼き払っていた。
また韓国軍の度重なる攻撃を迎撃して、多くの敵機と戦車を破壊した事により五反田と共に中尉に昇進してエレメントリーダーの資格を得た。
そして今日、五十嵐中尉は初めてエレメントリーダーとして同じ徴用兵出身のパイロットを率いて空に上がり、ゲリラ的に現れる敵攻撃機の警戒にあたっていた。
五十嵐が前席で機体を操っているのを見ながら、五反田中尉はあの村を焼き払ってから大きく変わったのを思い出していた。
あの日から次の日には自分が手で目を覆い隠しているのに対し、五十嵐は無言で容赦なくナパーム爆弾を投下する。
そして兵士・民間人問わずに生き残っているか機関砲の弾薬が切れるまで徹底的に殺すようになった。
ある日の任務が終わってから五十嵐になぜ民間人を銃撃するのか聞くとこう答えた。
「徴用兵として敵を殺すのは当然の義務であり、日本のためであるから。」
昔は自分の冗談にツッコミを入れる五十嵐であったが、任務をこなすごとに口数を減らし反応しなくなってしまった。
今日の戦闘空中哨戒もコックピットの中では二人は無言で彼此一時間以上任務に就いていた。
「今日も暇だな。」
「...ああ。」
五反田が会話を振るが五十嵐は素っ気無く答える。
沈黙が嫌いで出来れば開戦前のように五十嵐と話しながら任務に就きたいと五反田は思うが出来なかった。
地上では国防陸軍の砲兵部隊が韓国軍陣地に向け砲撃を絶え間なく撃ち込んでいるところであった。
するとAWACSから通信が入る。
《こちらアスター1、高速で接近する飛行物体があり。確認せよ。》
「了解、グローリー10。グローリー11、行くぞ。」
僚機と共に旋回して確認に向かおうとした時であった。
空から発光が見えたと同時に多数の小型の誘導弾が砲陣地を襲い掛かり、山肌を削り取り榴弾砲や砲兵を吹き飛ばした。
「高度を下げろ!」
五十嵐は直感で僚機に命じると高度を下げ、北の方角を見る。
すると二キロ先から一機の人の形をした飛行物体が急速に近づいてくるのが見えた。
山肌を沿うように飛行しながら身を潜めて伺うと、飛行物体は通り過ぎ地上に展開する陸軍部隊に襲い掛かった。
《グローリー10!何が起きた!》
AWACSが報告を求め、五反田が報告する。
「こちらグローリー10!ISと思われる敵機が地上に展開する陸軍部隊を攻撃しました!」
《了...解...すぐに...》
ISの強力な妨害電波で無線通信が不可能になり、レーダー画面はホワイトアウトしていた。
僚機は五十嵐の横についてハンドサインで指示を求める。
五十嵐はすぐにハンドサインで攻撃をする事を決め、付いて来るように命じた。
それを見た五反田はすぐに五十嵐の決定に反論した。
「五十嵐!すぐに撤退しよう、ISに俺達だけでは追い返すことも出来ない!」
「目の前の陸軍部隊には俺達に仲間がいるのに見殺しにしろと言うのか五反田!」
五反田の言葉に五十嵐は強い口調で答える。
「そうではない!味方のIS教導隊が来るはずだ!俺達だけではただ殺されるのが落ちだ!」
「あいつらが来るまでに何時間掛かる!その間に目の前にいる仲間達は全滅する!」
五十嵐の考えは当たっていた。
日本国防軍が誇る実戦部隊IS教導隊が海外に展開するには内閣の閣議決定が必要だ。
そして承認されても日本国内にいる教導隊がこの戦場まで駆けつけるのに最低でも二時間。
その間に目の前で殺されている陸軍部隊、最低でも二個師団二万人は全滅するだろう。
その為にも時間稼ぎには自分達が行くしかない。
五十嵐は最後に言った。
「大丈夫だ、お前まで死なせはしない。」
左に操縦桿を倒すと速度を上げ木々に触れそうなほどの低空を飛行する。
五十嵐の考えは徴用兵教育団時代の授業を思い出した。
元々ISは宇宙空間での活動を想定されて開発されたマルチフォーム・スーツであり、レーダーなどの電子機器は無く代わりにハイパーセンサーと呼ばれる視野補助装置がある。
これは目視が出来ない遠距離や後方までも知覚できるようになっている。
問題は操縦者が全周囲を常に見ているかどうかだ。
一部の軍用ISにはレーダー類も追加装備されるが韓国のISは研究・競技用に導入されている為に電子機器は搭載されていないだろう。
また一方に集中している時に襲われればISと言えどもやられるだろう、さらに競技に出る操縦者の殆どは一対一の訓練しかしていないので二対一の戦闘には不慣れだろう。
それらを踏まえ接近して空爆で燃やし尽くされた陣地から流れた黒煙を抜けると一機のISが見えた。
白いISは右肩にミサイルポットを浮かべもうひとつの陣地を攻撃しようとする。
アフターバーナーを焚き一気に近づくと真下に入り機首を急角度に上げ、四発の〇七式空対空誘導弾を一斉発射する。
「FOX2!」
マッハで通り過ぎた戦闘機を見てISの操縦者は誘導弾から逃れようとしたが時既に遅かった。
二機から計八発の空対空誘導弾を喰らい、操縦者はアサルトライフルを展開して銃撃する。
ISは五十嵐の機体に向け銃撃するがその間に僚機が再度〇七式空対空誘導弾を発射する。
標的が変わると次に五十嵐中尉が一気に近づき〇七式空対空誘導弾を発射し、顔面に向け25mm機関砲を撃ち込む。
相手は次々攻撃され混乱に陥りどちらを先に攻撃すればいいのか分からなくなり、空域を離脱しようとしたがすぐに攻撃され塞がれる。
この状況を打破しようとISはミサイルポットを展開し十八発の小型ミサイルを発射する。
五十嵐中尉はすぐ、フレアとチャフを放出し回避機動を行い半数はそれ、あと十発が追ってくる。
急降下し地上に向かい衝突警告が出るぐらいで機体を引き起こして一気に急上昇するとミサイルは五十嵐の機動に追いつけずそのまま地面に突っ込んだ。
《落ちろ!》
すると僚機が25mm機関砲を乱射しながら近距離で〇七式空対空誘導弾を発射する。
しかしISはミサイルをアサルトライフルで迎撃するとそのまま僚機を銃撃した。
回避する暇も無く機体全体が穴だらけになり機体は炎に包まれコックピットの電子機器を破壊し生き残った計器が警報を鳴らす。
僚機の部下は“上官”である五十嵐中尉に言った。
《五十嵐中尉...先に皆の所へ行きます...日本国万歳!》
最後の力を振り絞り操縦桿を握りアフターバーナーを点火させISに突っ込む。
火を吹いた戦闘機が高速で迫ってくるのを見てISは回避行動をするが、最後まで操縦し続けた部下の手で機体はISに突っ込んだ。
機体に残っていた空対空誘導弾が誘爆を引き起こし、引火したジェット燃料が飛び散り機体を焼く。
部下の死に怒りが込み上げ、五十嵐は叫びながら急旋回する。
再度攻撃しようと旋回する五十嵐の機体を見て、小型誘導弾を一発発射する。
「くっ!」
すぐに機体を捻りこみ、僅かな差で避けるが近接信管が作動して至近距離で爆発した。
爆風と共に金属の破片が機体を襲い、機体を切り裂いていく。
五反田はすぐに被害を確認すると、機体は幾つもの電子回路が切れ誘導弾は発射不可能。
右翼の翼はなんとか原形を保っているに過ぎず、燃料と油が漏れて油圧が下がる。
「五十嵐!もうこの機体は持たないぞ!」
警告すると五十嵐が叫んだ。
「射出させる!衝撃に備えろ!」
ロケットモーターが点火して五反田の座る射出座席はキャノピーを突き破って脱出した。
飛び出されパラシュートが開き、五反田は五十嵐の操る流星の姿を見た。
二門の25mm機関砲を連射し続け、エンジンを全力で吹かしてISに突っ込む。
五反田は五十嵐のやろうとしている事に気づく。
「あいつ突っ込む気か!」
五十嵐は操縦桿を握り締め、ISと一騎打ちで銃撃していた。
目の前をアサルトライフルから撃ち出される機銃弾が包み込み、こちらからも25mm機関砲の曳光弾がISに向かって行く。
ISは部下の特攻を受けてエンジンが破壊されたのか移動せず、アサルトライフルを撃ち続ける。
「...道連れにしてやる!」
そして25mm機関銃の銃弾が切れ、五十嵐はただ突っ込む。
ここで死にたくないという思いが一瞬よぎるが頭を振る。
「違う...俺は日本の為に死ぬんだ...日本国万歳!」
目を閉じすべてを覚悟に決めて突入した。
だがISのアサルトライフルが至近距離で放った一発の銃弾が左翼の根元に当り、その衝撃で機体は大きく傾き右翼がISパイロットの首元に衝突した。
強い衝撃を喰らいシールドエネルギーが切れ、競技用のISは強制解除されて右翼の翼は韓国のISパイロットの首を力ずくで切り落とした。
意識がある事に気づいた五十嵐は目を開き現状を確認した。
右翼は根元から引き千切れ、機体はバランスを失って回転しながら地面に向かっていた。
状況を理解した五十嵐は反射的に射出レバー引き、脱出する。
ロッケトモーターが点火して強制的に空へ打ち出されるが、急激なGを受けて意識を失った。
第六話目です。
IS第二期の第十一話を見ましたが・・・何やってくれてんだ!
亡国機業はなんで京都でテロ起こすんだ!そして何で学園は修学旅行させる!
・・・もともと原作的には第十話目で八巻の内容は終わっている。
出来ればアニメ原作ということにしてくれないかな~
大体京都を舞台に国防軍、特に学園警備隊はどのように警護すればいいんだ...
京都市内を封鎖してIS学園生徒と観光地の関係者だけを入れる。
...だめだ、そうすればアニメの中に出てくる他にも観光客の説明はつかないし、改変してIS学園生徒のみにすれば観光地としては大打撃。
それに京都に迷彩服の兵士と装甲車を展開すればそれだけで景観をぶち壊しだ!
しかも亡国機業はISを使って学園生徒を襲い掛かる...国防軍も京都市内で市街戦を展開しろとでも?
米軍でさえも京都への空襲を躊躇ったのに、その文化財を守るはずの国が壊したら国内外問わずに非難集中は必至。
...九巻目に京都の修学旅行がないように。
ではまた今度。