-9月1日午後4時/IS学園一年生寮食堂-
五十嵐は食堂の席に織斑と共に座っていた。
食堂には生き残った一年生が集められ、ある者は悲しみある者は恐怖で怯えていた。
その中で篠ノ之が二人を見つけて駆け寄ってきた。
「大丈夫か、一夏?」
織斑はテーブルに伏し、制服の袖を涙でぬらしていた。
少し前、五十嵐と共に織斑は姉の織斑千冬の身元確認をおこなった。
彼女は地下特別区で銃撃を受け、大量出血によるショック死であったらしい。
五十嵐はIS学園襲撃の一報を受けて佐々木隊長の命令で岐阜基地を飛び立った。
三機のIS“紫電”と共にIS学園に急行したが、到着した頃にはすべてが終わっていた。
敵は目的だった学園所有のISのオリジナル・コアを約七割を奪取し、我々の接近に気付くと即座に撤退したらしい。
残ったのは瓦礫と化した校舎と幾多の死体だけだった。
織斑は虚ろな目を篠ノ之に向けて言った。
「千冬姉が死んだ...」
その言葉に篠ノ之は驚き、五十嵐に視線を移す。
「事実だ。学園施設内で銃撃を受けて死んでいた。」
五十嵐は淡々と遺体を見つけた際の事を端的に話した。
織斑は頭を抱え今起きてい悪夢を振り払おうとするが不可能だった。
顔を上げると形相は鬼面を思わせるように殺気立っていた。
鋭い眼光を五十嵐に向けると五十嵐に襲撃者について聞いて来た。
「五十嵐...千冬姉を殺した奴等は何者なんだ?」
五十嵐は正直に答える。
「わからない。今調べているが彼らは撃墜されたISに自壊機能を持たせて証拠を残さなかった。特定できるのはまださ」
すると食堂にある空中投影ディスプレイに流れていた報道特別番組が切り替わる。
首相官邸の記者会見室に映り変わり、村瀬首相代行の姿が現われた。
そして演説を始めた。
『国民の皆様。今日の朝、我が国は凶悪な独裁国家中華連邦の奇襲攻撃により国際平和の象徴とされるIS学園が攻撃されました。無害な教員・生徒達が殺され、勇敢なるIS学園警備隊・第一国家保安隊の隊員の多くが殉職した。しかし彼らの攻撃は止まらないだろう。中華連邦、いや野蛮な中華民族は我々日本民族の最後の一人を殺すまで殺し続けるだろう。多くの方がテレビ・インターネットで残虐な中華民族の姿を見ただろう。奴等は野蛮で残虐な民族だ、この世界から消し去らなければならない!この奇襲攻撃に英国・ドイツは中華民族の野蛮さに気付き我々と行動を共にすることを決めた!我々は野蛮な中華民族の弾圧に屈しない!我々日本民族は団結し、野蛮な中華民族の攻撃から国家・民族・家族・友人・愛する人を守ろう!そして中華民族を滅ぼそう!まずは君達の周りにいる奴らを排除しろ!そして男達は銃を取り、女性達は銃後の守りを固めろ!日本国の独立、日本民族の将来の為に!』
演説が終わると画面が切り替わった。
首相代行は中華連邦の仕業だと断定をしたが、軍の調査ではわかっていない。
彼女はこの事件を利用し、国民の対中感情を煽り戦争に向かわせるのだと考えた。
そしてそれはすぐ傍の男を動かした。
「中国人が千冬姉を殺したのか?」
織斑はそう言うと立ち上がる。
五十嵐は織斑の肩を掴み引き止める。
「何処へ行く?」
「職員室だ。」
職員室には佐々木隊長を含めた国防軍・親衛隊の指揮官が集まっている。
「職員室に行ってどうする気だ?」
「お前の上官に直談判して軍に志願する。千冬姉の敵を取ってやる。」
「お前に軍人は務まらん。足手纏いになるまえにやめろ。」
五十嵐がそう言うと馬鹿にされたと感じて織斑は怒声を上げた
「軍人になれないだと!俺は第四世代IS“白式”の操縦者だ、各国が喉から手が出るほど欲しがっている人材なんだろ!なら軍で使い物になるはずだ、いくらでも中国人を殺してやる!」
「本当に困った奴だ。いいか?俺が断言する、戦場に行ったらお前は壊れる。」
「は?人を殺して精神おかしくなるようなお前とは違う。お前が助け来ない間俺は二人殺した!」
この言葉に五十嵐は戦ってきた戦歴を馬鹿にされたと想い怒りを露にする。
「何人殺したかは関係ない!お前が好きな正義なんて無い世界だ、お前のような頭がお花畑の奴があの場所でまともに生きていけるはずが無い!」
この言い合いに気付いて生徒達が集まり、二人を中心に円を作っていた。
「二人ともやめろ!」
篠ノ之が止めようとするが二人の言い合いは止まらない。
「知るか!俺は職員室に行く!」
「待て!」
五十嵐が再度肩をつかむと織斑は振り返って殴りつけ、拳は五十嵐の右頬を殴りつける。
反射的に五十嵐は腕を伸ばし織斑の顔を殴ると、織斑はよろめいて背後にあったテーブルに突っ込む。
「何をしている!静かにしろ!」
食堂に現われた佐々木隊長は騒ぎに気付いて怒声を響かせる。
だが二人は喧嘩をやめない。
「二人を押さえろ。」
「はっ!」
引き連れてきた四人の兵士に命じて二人を捕らえさせる。
二人の顔にはあざが出来ていた。
「あと篠ノ之箒!お前も来い!」
「は、はい。」
取り押さえられた二人と篠ノ之は佐々木隊長と共に誰もいない会議室に連れて行かれた。
-9月1日午後5時/IS学園本部第一小会議室-
三人は小会議室に入ると佐々木隊長は手を払い四人の兵士を小会議室から出した。
「なぜ喧嘩を始めた、五十嵐大尉?」
佐々木隊長は恐ろしく低い声で質問する。
「はっ!織斑一夏が軍に入りたいと言い始め、反対すると口論となり殴り合いに発展しました。」
「織斑君、本当か?」
織斑は床に顔を向けただ頷いた。
怒られると思っていた五十嵐は鉄拳制裁に備え歯を食いしばった。
「そうか、じゃあ丁度よかったな。」
しかし佐々木隊長は呆れたものの、ポケットから一枚の紙を取り出すと読み上げた。
「国家特別指令第125号。織斑一夏・篠ノ之箒、以下二名を本日付で国防軍へ入隊を命じる。君達にはIS教導隊...いやIS戦略航空隊に配属後、防空任務についてもらう。」
「ありがとうございます!」
織斑は頭を大袈裟に下げ、篠ノ之は戸惑っていた。
「隊長!」
五十嵐は異を唱えようとしたが止められる。
「すぐに必要最低限の物を纏めて18時までに職員室に集合しろ。」
「わかりました!」
「はい...」
二人は小会議室を退室すると五十嵐大尉は佐々木大佐に異を唱えた。
「素人を戦場に行かせるのは反対です!足手纏いになるだけです!」
「ああ、わかってる。だがこれは村瀬首相“代行”の命令だ、従わなければならない。大丈夫、彼と彼女“達”には重要度の低い都市の防空を任せる。」
「彼女“達”というとボーデヴィッヒ・デュノア・オルコットのことでしょうか。」
「そうだ。彼女達の本国は未完成のISをこの国で完成させる気だ、まあ開戦までには間に合わないだろう。」
ヨーロッパの国々は隣接した国家と戦うことになり、初期のミサイル攻撃により工業地帯などは破壊される。
防空システムの展開も間に合わない速さで始まるだろう。
それに未完成のISを呼び戻したところで戦力にならないと思い日本に託したのだろう。
それほど日本の防空システムが信頼されているという事なのだろう。
「とにかく彼らには出来るだけ後方任務に集中してもらう。それでいいな?」
「はい。」
「よし、すぐに岐阜に戻るぞ。」
午後18時、佐々木隊長と五十嵐達三名は輸送ヘリで岐阜基地に向かった。
その後アジアでは中国・日本が睨み合い、ヨーロッパではイギリスとドイツ対フランスと一触即発の状態に陥った。
そして9月5日の深夜零時、ヨーロッパ大陸で第三次世界大戦の戦端が開かれた。
第六十一話です。
この前投稿してから約22日経ってしまいました、すみません。
三週間ほどバイト・テスト・レポートに追われ、極めつけは二泊三日の八ヶ岳行で遅れました。
高山病・低い気温・暴風・霰の3コンボに見舞われ雪があれば完全に八甲田状態の中で赤岳に登頂しました。おかげで疲れて二日間寝込んで授業をサボってしまった(笑)
まあ途中天候が晴れてとても綺麗な風景を楽しめ、自分の限界を知った合宿でした。
結果としては第六十一話は急ごしらえのクオリティになってしまいました、話のスピードを優先しました。
なんか昔もこんな感じで失敗した記憶がありますが...頑張ります。
そんなこんなでとうとう戦争です、ここから先悲惨な場面が続く予定(仮)です。
...読者減るな、評価はもっと減るな...まあ私は気にせず独自路線を進むだけなので。
ではまた今度、感想楽しみにしています。
追記
つい最近疎かにしていた艦これを久しぶりに再開しました。
次のイベントに向けて飛龍をレベルアップしている毎日ですが改二が増えて回すのが大変。
それに無課金プレイなので港があと八隻で満杯、・・・課金しようかな?
あとついでにWOTも再開しました。