-2013年2月13日午前1時/ルーマニア・黒海沿岸-
月明かりもない真っ暗な海から二艘のゾディアックボートが現われ、海岸に乗り上げる。
数名の武装した兵士がAK-74Mを構え、周囲を警戒する。
兵士の一人がハンドサインで敵がいないことを伝えると兵士に比べ小柄な身体の人が降り立つ。
「杉崎大尉、隊員を急がせて。コンスタンツァ港に早く向かおう。」
小柄な身体の人、それは更識楯無と“盾”の部隊・第一小隊の面々だった。
なぜ彼らがルーマニアに乗り込んだのか、それは四日前の事だった。
-2013年2月9日/ロシア連邦モスクワ軍管区ジューコフスキー空軍基地―
モスクワ郊外にあるこの空軍基地は大規模な航空ショーをおこなう飛行場と知られていた。
飛行場の一角にある倉庫に基地の兵士の案内で
「おはようございます。突然呼び出してすみませんね、更識さん。」
「いえ、私達は亡国機業に関する情報を欲しています。そのためなら時間を割きます。」
倉庫には更識楯無と杉崎大尉を始とする“盾”の部隊の生き残りが本部にしていた。
IS学園から脱出した後、更識楯無は関係のあるロシア政府の助けでロシア本国に居候させてもらっていた。
彼女が持つ情報網をロシアの為に使うことと亡国機業の行動を阻止する為に彼女の経験が必要だとロシア政府は考えていた。
局長・更識・杉崎大尉の三人はパイプ椅子と簡素な机に向き合って座った。
「早速本題に入りますが去年、我が国のIS基地が襲撃されたのは覚えていますね。」
「はい、確かロシア連邦空軍の保有するISの半数が完全に破壊されたと聞きました。」
「そうです、それも国籍不明のISにです。ですが我々が保有する衛星と軍事レーダーの情報をつき合わせた結果、襲撃したISは黒海で消息を立ちました。その後、ルーマニアの協力者からの情報でコンスタンツァ港に一隻の不審なコンテナ船が入港したと情報がありました。」
「不審な?」
更識は首を傾げる。
「はい。停泊したコンテナ船からは殆ど人が降りず、船上には常に見張りの船員が張っていたとのことです。そして亡国機業だと判明したのはつい先程入手した写真に幹部のスコール・ミューゼルの姿が認められました。」
局長は机の上に数十枚の写真をおいた。
彼の話を聞きながら写真を手に取ると次々と流し見ていった。
「そのコンテナ船の航路を調べた結果、国籍不明のISが消息を絶った同時刻に周辺海域を通っていた事が分かりました。このことからこのコンテナ船に偽装した母艦を拠点にし、破壊活動をおこなったものと我々は考えています。」
更識は写真を次々と見る。
スコールが部下達と会話する写真を手に取ると目を見開いた。
そこには初めて恋愛感情を抱かせた男、五十嵐裕也の姿があった。
彼はスコールの傍で指示を聞いているようだった。
「なぜ...あなたがあいつのもとにいるの?」
五十嵐は琉球で作戦行動中に撃墜されて戦死したと聞いていた。
生きていることを喜んだが、なぜスコールのもとにいるのか疑問に思った。
今まで共に自分と戦ってきた戦友が敵側にいるのか。
それを知りたい。
「局長、我々はすぐにルーマニアに向かいます。移動手段を用意してくれますか?」
「はい、大統領から『彼女の要請に出来る限り応えろ』と言われております。三日以内に用意させます。」
「お願いします。」
局長が立ち上がって倉庫を出ると、杉崎に命じた。
「大尉、すぐに部下達に出動準備を。我々はルーマニアに行く。」
亡国機業を倒す為に。
彼を取り戻す為に。
-2013年2月13日午前一時/ルーマニア・黒海沿岸-
田園地帯に一機のIS“紫電”が偽装をして佇んでいた。
『こちらブラウニー1-2、目標を捕捉。』
『フュリーズ了解、各員目標がキルゾーンに入るまで待機。』
「こちらフェニックス、了解」
五十嵐は静かに44口径120mmM258ライフル狙撃銃を構える。
存在を隠す為に電子装備を一切停止したため、周りは暗闇しかなかった。
これから彼女を撃ち抜くことを思うと今までの戦闘で味わった緊張と違う緊張を味わう。
今は敵とはいえ昔、祖国のために共に戦った者だ。
簡単には決心がつかなかった、しかしこれが祖国の為であるならやらなければならない。
『こちらフュリーズ、目標がキルゾーンに入った。攻撃開始。』
ミューゼルの命令と同時に我々同様にこの作戦に派遣された第1特殊作戦部隊デルタ分遣隊が攻撃を仕掛ける。
銃声が暗闇に響き渡り、悲鳴が聞こえる。
更識はある田んぼに伏せる。
銃声と共に先頭に兵士二名が銃撃され、周囲から銃弾が撃ち込まれる。
完全に包囲されている、すぐにわかった。
「大尉!後退しよう!」
泥で汚れた顔を上げて杉崎大尉に指示した。
だが大尉は撃ち返しながら答えた。
「後方からも銃撃されています。我々はまんまと誘い込まれたようです。」
そしてまた一人、会話している間に撃ち殺される。
マズルフラッシュを見るかぎり、敵の方が圧倒的に多い。
ここは一方に突破口を開き、脱出するしかない。
「大尉、私が突破口を開く。そこから撤退する。」
「了解。しかし敵はISも待機しているかもしれません。」
「そうでしょうね。」
更識はIS“ミステリアス・レイディ”を展開させると敵に突撃した。
『こちらブラウニー1-5!目標のISが出現!』
『フュリーズ了解、フェニックス出番よ。目標を無力化しなさい!』
一方的に命令すると返答を聞く前にミューゼルは通信を切る。
呆れながらも命令通りに行動をおこす。
「兵装システム起動。」
システムが起動して目の前に様々な情報が浮かび上がる。
ハイパーセンサーが周囲の光景を明瞭にし、レーダーが目標を捕捉する。
「目標αを捕捉。」
44口径120mmM258ライフル狙撃銃の照準器を覗き込む。
ゆっくりと息を吐き、集中するといつものように周囲の光景がゆっくりと流れる。
レーダー波が目標IS“ミステリアス・レイディ”に届いたのか更識がこちらをゆっくりと振り返るのが見えた。
その瞬間、引き金を引いた。
爆音と共に発射された徹甲弾は高速で飛翔して更識の脚部を破壊する。
さらに二発目を発射するがこれは液状防御フィールドで食い止められた。
二基のAIM-120D四連装発射器を展開、そして八発の対空誘導弾を発射する。
更識は“蒼流旋”に内蔵しているガトリング・ガンで迎撃しつつ、液状防御フィールドで食い止める。
彼女は接近戦に持ち込むため無理に突っ込む。
次々と命中する誘導弾の破片でアクアクリスタルが破損する。
そこに再度五十嵐が44口径120mmM258ライフル狙撃銃で砲撃する。
今度は近接信管入りの砲弾が撃ち出され、周囲で炸裂する。
破片が少しずつISのエネルギーを削っていく。
そして充分に接近すると更識は五十嵐にランスを突き出す。
それに五十嵐は突きを避けると片手に持ったM242アサルトライフルを至近距離で撃ち込む。
怯んだ瞬間に銃弾を撃ちきったM242アサルトライフルを捨て、一気に飛び込んだ。
更識はすぐに蛇腹剣“ラスティー・ネイル”を振り上げようとしたが間に合わなかった。
五十嵐はクリノリンフレームを剥ぎ取った。
すると更識の“ミステリアス・レイディ”の液状防御フィールドが制御不能になり、纏っていた水は地面に落ちた。
「え!?」
まさかクリノリンフレームを破壊されると思わなかった更識は思考停止に陥った。
そして五十嵐が近接ブレードで背後から斬りかかる。
ランスを持つ右腕がすっぱりと斬られ、腕が地面に落ち回し蹴りを喰らった。
ISは救命領域対応と判断して機体は消失し、更識は意識を失って地面に倒れた。
「こちらフェニックス。目標を無力化、すぐに隊員を寄越してください。」
『よくやったわフェニックス。彼女は隊員に任せて撤収しなさい。』
「了解。」
そこに別の無線が入る。
『こちらブラウニー1-1、目標を制圧。』
『フュリーズ了解、彼らは全員処分しなさい。』
『ブラウニー1-1了解。』
そして田園地帯に数発の銃声が響いて再び静寂に包まれた。
第六十九話です。
久しぶりに『IS(インフィニット・ストラトス)二次創作スレのまとめ @ ウィキ』を見たのですが何時の間にかハーメルンの項目にこの作品の項目が出来ていましたね。
でもどんな評価されているのかと考えると怖くて開けませんね(この文章の下手さとストーリーの稚拙さ、それにキャラクターを殺しているし)。
ではまた今度。