学園の守護者   作:新稲結城

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第七話 二〇九高地

「...うっ。」

 

五十嵐中尉は体が揺れているのに気づいて目覚める。

目を開けると暗く天井は土らしく、口の中がジャリジャリして揺れると共に細かい土が降ってくる。

 

「起きたか、五十嵐。」

 

聞き覚えのある声を聞き、聞こえた方向に顔を向けると見覚えのある顔だった。

 

「久しぶりだな、五十嵐。ここで会うとはな。」

 

「荒井...亮太...久しぶりだな。」

 

荒井亮太、東部徴用兵教育団時代の同期であり首席の自分に次いで二位で五十嵐の良き友人である。

彼は五十嵐と教育団時代に両者共にライバル視しながらも協力し合って教育団時代を生き抜いた。

そして五十嵐は海軍航空士官候補生、荒井は陸軍士官候補生と別の道を歩んだ。

 

「今は国防陸軍第四海兵師団第二連隊の一個中隊を預かる中尉だ。」

 

「そうか...お前も中尉か。」

 

「今度からはどちらが早く昇進するかの競争だな。」

 

少し世間話すると五十嵐は現状を聞く。

 

「荒井、今外では何が起きているんだ?」

 

「それはだな....」

 

荒井中尉は五十嵐中尉が撃墜されてから目覚めるまでの二日間を語った。

ISは撃墜されたものの、韓国軍は隠していた戦力を一挙に繰り出して前線に近い空軍の航空基地を短距離弾道誘導弾で攻撃すると同時に地上戦力と航空戦力を一気に我々の防衛線に叩き込み防衛線は崩壊。

第四海兵師団第二連隊が防衛を担っている二〇九高地以外の拠点は壊滅、味方部隊は後退した為に第四海兵師団第二連隊は二〇九高地で包囲されて、現在包囲されて砲撃を受けているとの事だった。

またこの陣地は韓国軍の補給路の近くにあり、韓国軍の障害である事。

 

「撃墜されるのを目撃したうちの偵察隊の兵士がお前を見つけてここに運んで来た。これで一通りの説明は終わりだ。」

 

「五反田...五反田弾中尉は知らないか?」

 

荒井は首を振る。

 

「そうか。」

 

丁度話が終わるのと同時に断続的な揺れが収まり、着弾音が聞こえなくなった。

それと共に遠くから幾人もの雄叫びのような声が聞こえ、新たな揺れが感じる。

 

「教本通りの砲撃の後の突撃だ。お前もこれを持って戦え。」

 

すると荒井は八九式小銃を手渡し、5.56mm普通弾の三〇発用弾倉が六個入った弾帯を渡す。

本来なら射撃訓練をあまりしない航空兵に渡さないが、荒井は五十嵐が教育団時代に優秀な狙撃手と同等の射撃の腕を持っていることを覚えていた。

 

「期待に答えないとな。」

 

二人は他の兵士と共に退避壕から飛び出し、目の前の土の壁に体を預け銃を構える。

目の前にある鉄条網の先にはこの二日間で戦死した韓国兵の死体が倒れ、死臭の臭いが鼻につく。

下の斜面から大量の韓国兵が陣地に向けて銃剣を取り付けた小銃を構え突撃する。

荒井はまだ撃たないように命じ、距離が詰まるのを待つ。

段々と韓国兵の走る地響きが近づき、緊張で額から汗が垂れるのを感じる。

 

「撃て!」

 

新井の号令と共に塹壕に取り付く兵士達が一斉に銃撃を始め、五十嵐無我夢中で撃ち続ける。

後方の何門かの迫撃砲の砲撃と地雷、そして機関銃による十字砲火を浴びせられ、韓国兵は数を減らす。

数人が鉄条網に取り付くがすぐに歩兵の銃撃により殺されるが、それでも勇敢な韓国兵は突撃を続け鉄条網を突破しようとするが阻止される。

五十嵐は韓国兵の波の中から指揮官らしき兵士と通信兵を探し出して狙撃する。

指揮官を失った韓国兵は最後まで突撃を続け、少数の生存者を除いて全滅した。

戦場の静けさと鉄条網の先には先の戦闘で死んだ兵士に折り重ねるように大量の死体が横たわるのを見て、終わったと感じた。

呆然としていると荒井は大声で退避壕に退避するように言った。

 

「退避!退避しろ!」

 

同時に戦場の静けさを切り裂き一発の砲弾が塹壕に着弾する。

爆風が大量の土を巻き上げ、破片が降り掛かる。

反射的に走ると頭に何かが当たり、落ちたものを見るとそれは切断された人間の腕だった。

 

「走れ!」

 

荒井に押されて退避壕に飛び込み、砲撃から逃れる。

息を切らして退避壕に入ると荒井を含めた陸軍兵はダンボールから食事を取り出して昼食を取っていた。

 

「お前らは砲撃と死臭の中よく平然と飯が食えるな。」

 

五十嵐は彼等の行動に驚いて言うと荒井はこう返した。

 

「五十嵐、腹が減っては戦は出来ぬと言うだろ。それに人間は環境に順応する生き物だ。」

 

その言葉を聞いて、五十嵐は満更でもない顔をするが自らも思い当たる節があり納得する。

荒井は戦闘糧食Ⅱ型、通称パックメシのチキンステーキを持って来て食べるように進める。

 

「ここで休める時間は夜と砲撃の間だ。あとこれもな。」

 

それと別に戦闘服である迷彩服三型と八八式鉄帽などを受け取った。

 

「その格好だと戦いにくいだろう。」

 

自らの目で見るとパイロットスーツを着込み、動きにくく八月の暑さに耐えられない。

すぐに戦闘服に着替え、パックメシを食べ終えると砲撃が止む。

先程と同じように退避壕を飛び出すと土の壁に身を預け小銃を構え、ある程度の距離を詰めると荒井の号令で一斉に射撃を始める。

 

「時間的に今日はこれで最後の突撃だな。」

 

陽は大きく傾き、夜まで後もう少しであった。

すると突然近くの塹壕が吹き飛び土と共に兵士が撒き上がる。

五十嵐の後ろに死体が落ちて来て、後ろを振り返り直視すると食べたチキンステーキを地面に戻した。

死体は綺麗に上半身だけ飛んで来て、切断された体から腸がはみ出して顔の半分は原形を留めずにいたのを見て吐き気を覚えた。

 

「中隊長!敵戦車接近!」

 

目の前に視線を戻すと一両の戦車が歩兵の盾となって接近してくる。

 

「くそ!対戦車兵!」

 

「今行きます!」

 

後ろの塹壕から連絡壕を伝って84mm無反動砲を担いだ歩兵が向かっていた。

しかし近くまで来たた時に戦車の砲撃で歩兵は木っ端微塵に吹き飛ばされ、無反動砲は連絡壕の外である塹壕のない平地に落下した。

 

「くそ!今日はツイていないぜ!」

 

五十嵐は顔についた肉片を手で拭き取ると荒井に言った。

 

「俺が取ってくる!」

 

「おい!」

 

荒井は止めようとしたが遅く、八九式小銃と弾帯を捨てると塹壕から飛び出る。

気づいた敵戦車が同軸機銃で銃撃してくるが、ものともせずに走り続ける。

後ろから銃弾が跳ねた弾痕が近づいてくる中、84mm無反動砲のスリングを手掴みして拾うと近くの塹壕に飛び込んだ。

すぐに肩に担いで後方確認して強力な後方爆風の逃げ場を確認、そして立ち上がって照準器を覗き込んで戦車のキャタピラを狙って引き金を引く。

充分な距離に近づいた戦車のキャタピラに着弾して様々な部品が吹き飛んで擱座する。

その他の場所でも戦車は撃破されて韓国兵の戦意を挫き撤退に追い込んだ。

 

「今日はこれで終わりだ。」

 

五十嵐は続けざまの戦闘で忘れていた疲れが一気に体を襲い掛かりその場に座り込んだ。

 

「大丈夫か?」

 

心配して荒井が手を貸して姿勢を起こすと、目の前に中佐の階級章をつけた髭面の男性が来た。

 

「勇敢な海軍航空兵だな、君は。」

 

「ありがとうございます、中佐。」

 

「自己紹介はまだであったな、第四海兵師団第二連隊長加畑大智中佐だ。」

 

加畑大佐は握手を求めて手を差し出して、それに答えた。

 

「海軍第一航空団の五十嵐裕也中尉です。」

 

握手し終えるとその場にいた兵士に向けて加畑中佐は言った。

 

「今日の戦闘は終わりだ!今日の夜はこの勇敢な海軍航空兵の武勇伝聞こうではないか!」

 

「「「「「「「おお!」」」」」」

 

五十嵐は突然の事に驚きながらも、兵士の好奇心溢れる眼差しに答えた。

その夜は夕食を歩哨を除いた兵士達と共に取りながら、ISを撃墜した話や荒井のフリで教育団時代の話を語った。

この話は兵士達を勇気付けて、戦意を高めた。

だが死臭と死体・硝煙・爆音に包まれた二〇九高地での塹壕戦は一週間以上に渡って戦われた。

 




こんばんわ!第七話目です。
後もう数話で日韓戦争編は終わりそうですが、ISの設定について独自設定を入れるか考え中。
・アラスカ条約について
・軍用と競技用の棲み分け
・コアは五〇〇機以下なのに量産って...
・IS学園の場所

考えてはあるがな~これでいいのかレベルの状態だ。
もう頑張るしかないな。
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