-2013年6月8日午後23時/埼玉県狭山市・入間基地-
基地内は混乱に陥っていた、それは先日起きた国防軍の蜂起だった。
旧自由党の党員を中心とした臨時政府が建てられ、国防陸軍大森和幸陸軍大将を総司令官とする国防軍蜂起部隊が村瀬政権の打倒を掲げて大阪に集結した国防軍蜂起部隊に東進を命じた。
この状況にIS戦略航空隊の隊員は混乱し、佐々木隊長の指示を仰いでいた。
村瀬政権側につくか、臨時政府側につくか。
織斑一夏は待機室でIS戦略航空隊の隊員と共にラジオに耳を傾ける。
テレビは政権側の放送以外止められ、ネットも回線が全面的に切られていた。
ラジオからは妨害電波を押し退けて雑音交じりの臨時政府側の放送が流れていた。
『全国民に告ぐ!今すぐに我々と合流し、圧政を敷く村瀬政権を打倒しよう!この圧政者から祖国を解放する為に我々は立ち上がった!この正義の行動を成功させる為には国民全員の協力が不可欠だ!皆我々と共に武器を取れ!共に戦線に並ぼう!圧政者に裁きの鉄槌を!』
すると通信兵の一人が飛び込んできた。
「報告します!国家武装親衛隊第一親衛歩兵師団が静岡の天竜川で蜂起部隊と戦闘が発生!」
「そうか、御苦労。」
「隊長、我々はどうされます?」
副隊長が佐々木隊長の前に出て聞く。
「まだ動かない。まだだ。」
そして臨時政府の放送の声が変わる。
『私は日本国防海軍の五十嵐裕也大尉です。』
その声に隊員達は驚き、特に織斑と篠ノ之は驚いた。
『皆様、私が生きていることに驚きでしょう。なにせ私は半年前に琉球の空で散った撃墜王として盛大な国葬によって皆様の前で葬られましたからね。私はある事により村瀬首相に目をつけられ、戦死するように仕向けられました。しかし私は数ヶ月間の捕虜生活を脱して、あの村瀬首相を倒す為に戻ってきました。』
ラジオから流れる五十嵐の声に織斑は涙を流してラジオに迫る。
「生きていたのか!五十嵐の奴め、悲しませやがって!」
そして演説が続く。
『私はこれを聞いている徴用兵に告ぐ。村瀬政権は君たちが忠誠を誓うべき指導者ではない!そして君達は戦いに参加すべき人間ではない!本来なら家族と共に幸せに生きる人生があるはずだ!指導者の為に死ぬ為ではない!人を殺すためではない!君たちの人生は何かの為に捨てられるものではない!徴用兵に告ぐ!自由な人生を得る為に君たちは今すぐ武器を捨て投降せよ!』
五十嵐大尉による演説が待機室に響き渡る中、再び通信兵が来る。
「隊長、総司令部から出撃命令が届いております。」
待機室で全隊員と共に佐々木隊長は黙って聞く。
「『IS戦略航空隊は反乱部隊の鎮圧の為、出撃を命じる。』とあります。」
通信兵は命令を読み上げる。
この命令に一人の隊員が立ち上がった。
「誰が国民を殺す側につくか!」
それに続いて他の隊員も立ち上がって口々に言った。
「我々は国民を殺す為にいるのではない!」と。
「隊長!すぐにここを脱出して臨時政府側の部隊に合流しましょう!」
「いや、我々だけで村瀬とその取り巻きどもを探し出して処刑しよう!」
「我々のISがあればどんな敵も皆殺しに出来ます、隊長!」
隊員達は皆が興奮気味になり、過激な言動が飛び交った。
これに織斑と篠ノ之はたじたじになる。
「待て!」
そんな中で佐々木隊長は一喝して隊員達を静める。
そして咳払いをすると隊員達に向けて言った。
「君達は人を殺し足りないのか?」
その言葉に隊員達は動揺する。
「い、いえ。ただ圧政に苦しんでいる国民を思ってのことです。」
一人の隊員がそう言うと頷いて続ける。
「そうだろうな。だが君達はこの戦争でISの本気を知っただろう。たった数機でひとつの都市を滅ぼし、万単位の人間を短時間で殺すことが出来る能力を!それをこの国で使いたいか?想像してみろ、ISの力で同じ兵士である国家親衛隊の少年達を一気に殺戮し、いくつかの都市を廃墟に変えることを!この国はもう充分な被害と損害を被った。これ以上、人を殺しても町を破壊してもなんにもならない。...なに、我々の力がなくても少数の陸上戦力しか持たない国家親衛隊に臨時政府の軍に負けることはない。我々がいない分、短い間で少ない戦死者で終わるさ。」
佐々木隊長はISの力を使った政権の打倒は反対だった。
この言葉に一人の隊員が意見する。
「では隊長。我々は何をすればいいのでしょうか?」
「簡単な事だ。ここに配備されている我が国のISをすべて破壊しろ。」
この命令に隊員達は驚く。
国防の根幹であるISを破壊することは強国としての地位を捨て、丸腰で戦場で戦うことと同じだった。
隊員達から反対する声が上がると隊長は反論した。
「我々が命令に従わないと知ればすぐに国家親衛隊の部隊を送ってくるに違いない。そして代わりの者にISで戦わせるだろう。IS学園の生徒とかにな。逆に臨時政府に合流しても先に言ったことと同じ事になる。このISは両陣営から喉から手が出るほど欲しい戦力だ。そうなれば結局膨大な人間が死ぬ。それにもうこの国にISを維持できるほどの国力は残っていない。それはこの大戦に参加した国々すべて言えるだろう。戦争どころか、国民の生活必需品も生産できない状態で。あと数十年はどの国も戦争が出来ず、ISの部品さえ生産できないならどの国も捨てるだろう。少なくても中華連邦のISはすべて潰した。ならば今ここで、破壊しようと私は思う。皆はどう考える?ここで殺戮と破壊しかもたらさないISを破壊するか、それとも残して思想や私利私欲のためにこの兵器を使うか?」
隊長の問い掛けに隊員達は顔を見合わせる。
そして少しの間をおいて、一人の隊員が手を上げる。
「私は隊長の案に賛成です。私はもともとISの大会に活躍する為にここに入りました、国民を殺す為ではありません。」
この隊員に続いて他の隊員も手を上げて賛成する。
そして織斑と篠ノ之を含めた全員が賛成した。
「よし、すぐに取り掛かろう。副隊長!すぐに整備隊に連絡して!」
「了解!」
「全隊員、全ISの破壊に取り掛かれ!」
隊長の命令で隊員達は一斉に待機室を飛び出して、格納庫に向かった。
織斑と篠ノ之もついて行こうとしたとき、佐々木隊長に呼び止められた。
「君達はISを破壊せずにここから逃げろ。」
この命令に織斑は異を唱えた。
「なぜですか!俺も一緒に手伝います。」
「駄目だ。君達二人にはまだ未来がある、君たちは生き続けなければならない。」
「しかし...」
「二人ともこの内戦が終わるまで隠れていなさい。君たちの持つISがあれば亡命する時にいい交渉材料になるだろう。」
すると完全武装の兵士が二名入って来た。
「寺内曹長と東条一等兵。二人を連れて内戦が終わるまで隠れていなさい、絶対にだ。」
「了解しました。」
佐々木隊長は二人を紹介した。
「二人はレンジャー訓練を潜り抜けた隊員だ。この二人について行けば必ず生き残れるだろう。」
すると机に置かれた電話が鳴り、受話器を取った。
相手は入間基地正門の歩哨からだった。
『国家親衛隊の部隊が来ました!数は』
爆発音と共に電話が切れ、窓を見ると正門の方から煙が上がっていた。
「すぐに二人を連れて脱出しろ!」
そう命令すると二人の兵士は織斑と篠ノ之を連れて出て行った。
そして佐々木隊長はホルスターから拳銃を抜くと数人の隊員に命じた。
「解体までの時間を稼ぐ。武器庫からすべての武器を持ってこい、戦うぞ。」
そしてここ入間基地は佐々木隊長とIS戦略航空隊の隊員達の死に場所となった。
彼女たちは基地にいる国防軍兵士と共に国家親衛隊の部隊に抵抗。
最後の一機を破壊した後、一人残らず殺された。
第七十二話です。
最近コンビニのバイトで夜勤に入っているのですが、客が殆ど来ないので楽ですが一方で暇すぎて辛いと思いました。暇なのも辛いですね。
ではまた今度。